自称元徴用工の第三者弁済開始も…典型的な問題先送り

産経によると、今月、自称元徴用工に対する「第三者弁済」が開始されたそうです。産経の13日付の記事に基づけば、まずは大法院(※最高裁に相当)の判決で勝訴が確定した2人に対し、1人あたり約2000万円が支払われたとしていますが、そもそもウソをついて日本の名誉と尊厳を傷つけた問題に加え、大法院判決自体の違法性は解決しておらず、それどころか求償権の問題は将来に先送りされた格好です。

二重の不法行為

当ウェブサイトではこれまで何百回となく繰り返してきたとおり、日韓諸懸案は、基本的に、「韓国の日本に対する二重の不法行為」と分析することができます。

日韓諸懸案に関する韓国の「二重の不法行為」とは?
  • ①韓国側が主張する「被害」の多くが韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
  • ②韓国側が日本に対して要求している謝罪や賠償の多くは法的根拠がないか、何らかの国際法違反・条約違反・合意違反などを伴っている

(【出所】『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』等参照)

この「二重の不法行為」とは、韓国側が(ありもしない)「被害」をでっちあげて、日本に対して謝罪、賠償など、法的にまったく権利がないことを要求する行為を指します。その際、たいていの場合、何らかの国際法違反や条約違反、国際合意違反を伴っています。

岸田首相の実務能力の低さ

そして、その典型例が、自称元徴用工問題でしょう。

自称元徴用工問題自体、朝鮮半島で「戦時中、強制徴用(または強制動員)された」と主張する者たち(旧朝鮮半島出身労働者や応募工を含めた自称元徴用工)やその関係者が日本企業を訴えているという意味で、まさにこの「二重の不法行為」そのものです。

というのも、「強制徴用された」と主張するわりに、自称元徴用工側がその確たる証拠をまったく出しておらず、韓国の裁判所もこうしたいい加減な証言に基づく自称元徴用工側の主張を認定してしまっているうえ、結果的に1965年の日韓請求権協定などに反する法的状態を作り出したからです。

これに対し、『岸田ディールで垣間見える「キシダの実務能力」の低さ』でも指摘しましたが、韓国政府が先月発表した「解決案」では、こうした違法状態がいっさい解消されておらず、それどころか、「お互いが少しずつ譲歩する」といった考え方も垣間見えます。

というのも、韓国側が出してきた「解決策」とやらは、韓国・行政安全部傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が、韓国企業などからの寄付金を財源として、とりあえず自称元徴用工らに損害賠償金を支給する、という代物だからです。

これは韓国の民法的には「並存的債務引受」ないし「第三者弁済」に位置付けられるものだそうですが、これだと問題の解決にはいっさい寄与していません。

2018年10月と11月の国際法違反判決問題が放置されていることに加え、『徴用工「韓国が全額負担」でも問題解決にならない理由』などでも説明したとおり、「韓国がいわれのないウソをついて日本企業や日本国民に不当な損害を与えた」という事実は解決していないからです。

おそらくかなりの確率で発生する「蒸し返し」

さらに大きな問題があるとしたら、「並存的債務引受」ないし「第三者弁済」の場合、財団から自称元徴用工への賠償に伴い、日本企業と自称元徴用工の間での債権債務関係は解消されますが、その債権を財団が取得するからです。これがいわゆる「求償権」の問題です。

なんのことはありません。

韓国政府は違法状態をいっさい解消しないなかで、債権を自称元徴用工から財団に移しただけの話であり、尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が遅くとも4年以内に終われば、次の政権でおそらくかなり高い確率で蒸し返されることは確定しています。

ちなみに岸田文雄首相は3月、こうした韓国による「約束破り」のリスクを巡っては、「仮定のご質問にはお答えしません」と言い放ちました(首相官邸HP『旧朝鮮半島出身労働者問題についての会見』参照)。

余談ですが、それにしても迷惑な話です。岸田首相と同じ宏池会出身の宮澤喜一がそうでしたが、国家観のない者が首相を務めると、後々に大きな悪影響が及ぶからです(岸田首相自身、もしかすると「韓国が確実に約束を破るであろう4年後には自身が首相ではなくなっている」とタカを括っているのかもしれませんが…)。

産経「第三者弁済開始」

こうしたなかで、産経ニュースは13日、財団が今月に入り、自称元徴用工ら原告2人への「第三者支払」を開始したと報じました。産経は「韓国政府関係者への取材でわかった」としています。

徴用工訴訟「第三者支払い」開始 韓国政府傘下財団、原告2人に

―――2023/4/13 10:21付 産経ニュースより

問題の債務弁済は2018年の大法院(※最高裁に相当)判決で勝訴が確定した原告2人に対して行われたものだそうです。産経によると一部原告らが日本側の謝罪や資金拠出を求めているとしつつも、韓国外交部側は「相当数の原告に対する支払い手続きが進みつつある」と述べた、と報じています。

当たり前の話ですが、日本政府としては、これで終わりにしてはなりません。典型的な「問題先送り」と言わざるを得ないからです。引き続き、2018年判決の違法性を追及し続ける必要がありますし、また、韓国が国を挙げてウソをつき、日本の名誉と尊厳を貶め続けていることについても問題視しなければなりません。

いずれにせよ、日韓関係がこれで「正常化」すると見るべきではないことだけは間違いないでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. taku より:

     「徴用工被害遺族2人が賠償金受け取り…韓国政府の第三者弁済で初」(朝鮮日報)だそうで、まずは結構なことだと、考えております(それにしても、韓国政府ではなく、財団じゃないのかな、見出しからテキトーですよね)。
     ただ気懸りなのは、財団側は「『債権放棄』を明示すると、遺族が圧力を感じかねない」との点を考慮し、賠償金受領同意書には「債権消滅」に関する内容は含まれていない、とのことです。うーん、もし仮に将来、この遺族が「この資金はくれるというから貰っただけで、そもそもの債権は別途請求する」と言ったら、どうするんですかね?
     韓国の財団が、韓国企業の資金で、韓国民に支払うのですから、私がとやかく言うこともないのでしょうが、このあたりが、韓民族の思考パターンは読めないな、と感じてしまいます(論理より恨といった感情を重んじるのでしょうね)。
     こういう何を基準に考えるか判らない人との付き合い方は、とにかく「敬して遠ざける」です。どっちが正しいか、議論しても疲れるだけです。隣なので、全く付き合わない訳にもいかないのでしょうが、必要最低限にとどめることが、肝要です。
     岸田内閣全体の施策には、賛成しかねることも多いのですが、対韓方針については、現状支持しております(先般の、韓国による徴用工解決策の発表は、日本の外交勝利‼)

    1. ななっしー より:

      >うーん、もし仮に将来、この遺族が「この資金はくれるというから貰っただけで、そもそもの債権は別途請求する」と言ったら、どうするんですかね?

      絶対言い出しますよね。これはヒドイ。

      「債権消滅とは関係ない」(朝鮮)
      「債権消滅とは関係ない」(中央)
      「債権の消滅とは無関係」(聯合)
      「判決に〝関連〟して…支給を受ける」(産経)
      (〝〟記号はコメ主)

      ただの一時見舞金(贈与)じゃねーか。
      財団が債務を(併存的に)引き受けたのであれば、「債権」が消えないということは債務も消えないということ。
      またこの「債権」が求償権を指すものだとしたらなおのこと日本が受け入れられるわけがない。
      まあ、韓国外交部は以前から「これは始まりに過ぎない」と言ってるから、ある意味有言実行で尊敬するわー(見習いたくはないが)。
      〝実質的〟譲歩さえしなければ日本の勝利(*)とは言え、これからも毎度まいど「日本は呼応しろ」ってな態度で交渉してくる韓国に首相や外務省が〝ステルス〟譲歩しなければ良いが。

      (*) 100ゼロが 50-50 になっただけだけど。

    2. sey g より:

      お金に色はついてないので、立て替えのお金は貰います。
      もちろん、日本からのお金は当然貰えるものなんで、それは別腹で請求します。
      日本企業から貰えなければ、差し押さえです。
      エンドレスワルツです。

      昔古田博司先生が言ってました。
      “韓国人は嘘つきだが、正直だ”

      正直に金がほしいという気持ちを隠さず行動するので 未来は読みやすいです。

  2. CRUSH より:

    いわゆるリスカブスが、
    「手首切るわよホントに切るわよ」

    と、長く長くジラし続けた挙げ句に、ようやくカミソリで皮一枚を切って見せた、てなところでしょうか。

    自分の血を流す(韓国が自腹で払う)のですから、結構なことです。

    昔と違うのは、もはや日本&日本人は韓国政府が自腹で個人保証してるのをみても、
    「で?」
    と静観するだけで、誰も止めに入ったりはしないだろうというとこかな。

    いやほんと、どーでもイー極みのニュースかと。

  3. 伊江太 より:

    イサベラ・バードの『朝鮮紀行』の中に次のような記述が見られます。

    >朝鮮の不治の病は、「何千人もの五体満足な人間が自分たちより暮らし向きのいい親戚や友人にのうのうとたかる」人の親切につけこむ体質にあり、たかることをなんら恥とせずに、非難する世論もないとしている。朝鮮ではある程度の収入のある男は、多数の自分の親族と妻の親族、更には自分の友人、自分の親族の友人をも扶養しなければならなかった。

    右左を問わず、要職に就けば必ず職権濫用、利権あさりの走り、不正蓄財に走る。カノ国で特権階級に潜り込めた人士と、その周辺に蟻の如くに人が群がる様を見るに付け、百年経とうが二百年経とうが、社会に染みついた宿痾は容易には解消しないんだなあと、慨嘆せざるを得ません。

    濡れ手に粟みたいな形で、2000万円相当ものカネを手にしたら、もう満足だろうと思うのは甘すぎる考えでしょう。たちまちに親戚、姻族、友人知人が群がって、おこぼれにありつこうとするのはまず間違いないところ。それじゃあ、たったの2000万円ぽっち、ということになる。

    強制連行従軍慰安婦を騙った元売春婦が聖女にまで祭り上げられた如く、アチラの社会では、元応募工も日帝強制動員と名乗れば、これは『一種の勲章。その神通力を当てにし、付随して然るべきと考えるご利益を、死ぬまで追求し続けるのがカノ国流のあるべき処世術なんでしょうね。

    まあ、勝手にやってなさいってことですね。

  4. 朝日新聞縮小団 より:

    韓国が自らの不法を認めて日本に謝罪する。
    日韓関係はそれ以外に改善しないというのが私の持論。
    日本の譲歩で改善した風を装う事ができても、それは単なる対処療法でしかなく根源の病理が手つかずのままなので当然のようにぶり返す。

    安倍菅政権による正しい根治治療に動き出した日本を、また土下座外交に引き戻したこの岸田文雄の愚行は、私に未来永劫生ある限り自由民主党には投票しないという決意をさせました。
    メディアや特定野党の傀儡のような行動を取り続けるこの岸田政権のようなものが誕生してしまうのが自民党という政党の問題点です。
    党内に右も左も内包し、党内だけで勝手に政治をし、現在の日本の選挙制度=小選挙区比例代表制という、政党内がほぼ同色でないと民主主義が成立しない制度を冒涜しているのが自民党です。
    安倍に投票したつもりが岸田の、林の、二階の、河野の力になっていたじゃ自分の票が浮かばれない。
    同じような思想の者で成立している特定野党どものほうがなんぼか現代日本の政党の姿としては正しい。

  5. めがねのおやじ より:

    韓国政府は大法院の違法判決状態をいっさい解消しないで、債権を自称元徴用工から財団に移しただけの話であり、尹錫悦大統領は、左派系のご機嫌取りでやむなしなんでしょう。でも、必ずや日本に対して蒸し返して来ます。

    「もう済んだ話だ」
    「日本側は謝罪と賠償金を払って無い」
    「だから、尹氏がやっただろ!」
    「日本は道徳心が無い。婆像と爺像を建てまくるゾ」
    でしょうね。もうまったく韓国とは無理です。

  6. PON より:

    予想通り、事態の悪化を招きましたね。
    「解決済」の一点張りで良かったにも関わらず、交渉ととられかねな会談実施、「評価する」発言。
    日本以外の国から見れば、どう考えてもボールは日本にあるにも関わらず日本が何ら手を打っていない、と捉えられるでしょう。
    今はまだまだ序の口、情報漏洩&同盟国スパイを行ってしまった米国への不信感も相まって、韓国内左派の大反撃が次々と炸裂するに違いありません。

    岸田さんは日本を取り巻くリスクばかり高め、安倍さんのようにしたたかな交渉によるリスク低下をもたらす能力も意欲もありません。
    米国の単なる操り人形にしか見えませんね、国益第一主義のかけらもありません。

  7. 禹 範坤 より:

    関係正常化騙る報道がありますが
    対共の弾除けでも可哀想な後進国でもない韓国に
    日本が乳母日傘してあげる理由はない
    独立国として粛々と条約守ってください

  8. ねこ大好き より:

    韓国ごときをさばききれない岸田首相に、中露北とやり合うことは不可能です。更に同盟国や同士国からも相手にされなくなる。外交の岸田とは、一体誰の評価なのでしょうか。有能な外相と防衛相が必要なのにそれも対中弱腰の2人。西村氏、萩生田氏、それから高市氏。この3人の発言が頼もしく信頼できます。この3人を枢要ポストにつけることができれば、岸田首相も大したものです。

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