「玉川問題」で「視聴者の会」が放送法違反追及申入へ
テレビ朝日の「玉川発言」問題を巡り、「放送法遵守を求める新・視聴者の会」が放送法違反の疑いで玉川徹氏とテレビ朝日の責任追及を求める申入書を総務省やBPOに対して提出するそうです。同事務局長の上念司氏は「テレビ局が『公共の電波』を使用して放送している以上、玉川氏とテレビ朝日は、放送法を守る必要がある」と指摘したそうですが、まったくの正論でしょう。ただ、それ以上に重要なことがあるとしたら、ネット上では名もなき一般人の鋭い追及の声があふれている、という事実ではないでしょうか。
玉川問題の本質は「テレビ問題」
テレビ朝日の職員・玉川徹氏が出演した番組で虚偽の内容を話したとする問題を巡っては、『椿事件から玉川事件へと連綿と続くテレビ業界の問題点』などを含め、当ウェブサイトでもこれまでずいぶんと詳しく取り上げてきたところです。
この問題、表面的には「玉川徹氏」という「個人」が不適切な発言をした事件、と受け取める人もいますが、本質はそうではありません。
テレビ局という組織自体、放送法第4条第1項に規定されている「公安・善良な風俗を害しないこと」、「政治的に公平であること」、「報道は事実を曲げないですること」、「意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」という4つの条件を、かなり軽視しているのです。
放送法第4条第1項
放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
その意味では、「玉川問題」とは、本質的には「テレビ問題」なのです。
テレビ局の電波使用料一覧
放送法にこの規定が設けられている理由を著者なりに解釈すると、テレビ局は私たち日本国民の貴重な共有財産である電波帯を独占的に使用するという意味で公共性が非常に高いため、テレビ局が恣意的にゆがんだ情報を垂れ流すということを規制するものだと考えてよいでしょう。
しかも、現在の日本の場合、この貴重な電波帯は、オークション制度によるのではなく、事前に決められた額を国に支払えば良いこととされています。ちなみに2021年度におけるテレビ各局の電波使用料は、図表のとおりでした。
図表 テレビ各局が支払う電波使用料(2021年度)
放送局 | 金額 | 本社 |
---|---|---|
日本放送協会 | 25億2260万円 | 東京都 |
日本テレビ放送網株式会社 | 6億7690万円 | 東京都 |
株式会社TBSテレビ | 6億3470万円 | 東京都 |
株式会社フジテレビジョン | 6億3880万円 | 東京都 |
株式会社テレビ朝日 | 6億5070万円 | 東京都 |
株式会社テレビ東京 | 6億2620万円 | 東京都 |
株式会社毎日放送 | 1億2850万円 | 大阪府 |
朝日放送株式会社 | 1億2040万円 | 大阪府 |
関西テレビ放送株式会社 | 1億3280万円 | 大阪府 |
讀賣テレビ放送株式会社 | 1億3450万円 | 大阪府 |
テレビ大阪株式会社 | 230万円 | 大阪府 |
(【出所】総務省『令和3年度 主な無線局免許人の電波利用料負担額』を参考に著者作成)
この点、日本では電波オークションは実施されておらず、これらのテレビ局が支払っている電波利用料自体、彼らの売上に比べて低すぎます。格安の使用料で電波帯を独占し、問題があるコンテンツを垂れ流しているという意味では、やはり今回の「玉川事件」もテレビ局の問題の氷山の一角に過ぎないでしょう。
身内の組織で「自己監査」
さらには、放送業界がいちおう、「自主規制団体」などと称しているのが、民放やNHKなどの放送業界が共同で設立した「放送倫理・番組向上機構(BPO)」と呼ばれる組織です。
しかし、『「監査論」の立場から眺めるBPOと放送業界の問題点』でも指摘したとおり、このBPOには個別の放送局に対し、処分を行う権限もなければ、BPO自体が完全に独立の第三者であるともいえず、監査論の立場からすれば、事実上の「自己監査」と指摘されても仕方がない体制です。
正直、玉川事件でもテレ朝側は本人を10日間の謹慎処分にしたうえで、関係者を譴責処分にするくらいで幕引きを図っているフシがありますが、これも究極的には、テレビ業界側が「どうせ厳しい処分を受けることはない」とタカを括っている証拠でしょう。
視聴者の会が総務省とBPOに責任追及申入れへ
ただ、これに関してひとつ、興味深い動きも出てきました。
経済評論家で「放送法遵守を求める新・視聴者の会」の事務局長を務める上念司氏が夕刊フジの取材に対し、玉川問題を巡って、近く総務省とBPOに対し、放送法違反の疑いで玉川氏とテレビ朝日の責任追及を求める申入書を提出すると明らかにしたのだそうです。
テレ朝・玉川氏による「虚偽発言」問題 「視聴者の会」が総務省とBPOに申し入れへ 放送法違反の疑いで
―――2022/10/12 17:00付 Yahoo!ニュースより【夕刊フジ配信】
上念氏は夕刊フジの取材に対し、次のように述べたそうです。
「テレビ局が(国民の財産である)『公共の電波』を使用して放送している以上、玉川氏とテレビ朝日は、放送法(第4条)の『報道は事実をまげないですること』『政治的に公平であること』などを守る必要がある」。
まったくの正論でしょう。
そして、夕刊フジは玉川氏の「政治的意図がにおわないように」云々の発言を巡り、玉川氏自身が「政治的意図を持って番組制作をしていたことを示唆している」と指摘。放送行政を所管する総務省には、玉川氏の発言を巡って「放送法に違反している」という内容の意見が「数多く寄せられている」と指摘しています。
これは大変に良い動きです。
情報の発信手段がテレビや新聞くらいしかなかった時代、あるいはインターネットが出現して以降も、まだまだ新聞、テレビの情報発信力の方が強かった時代ならば、あまり考えられなかった動きではないでしょうか。
想像するに、「新視聴者の会」のような組織が発展してきたのも、(上念氏個人の努力という側面はあるものの)ネット発で「テレビ局の放送に納得がいかない」と考える一般人が自発的に多く参加し、同会をサポートしているからでしょう。
視聴者の会が動くこと自体に意味がある
ちなみに夕刊フジによると、上念氏は今回の事件について、こう指摘しているそうです。
「玉川氏の発言は、マスコミの信頼性に甚大な傷を付けた。視聴者の信頼感が失われると、マスコミがフェイクニュースの流布を正そうとしても、視聴者がそれを信じなくなるという恐ろしい事態になる」。
上念氏はこう述べていますが、正直、個人的な感想を申し上げるなら、「視聴者の信頼感」ならば、すでに失われているのではないかと思います。
それに、「新聞、テレビを中心とするオールドメディアがフェイクニューズを正す」のではなく、むしろ「新聞、テレビを中心とするオールドメディア自身が率先してフェイクニューズを発信している」と述べたほうが、昨今の実態には合致しているのではないでしょうか。
もっとも、視聴者の会が声を上げたとして、総務省もBPOもテレビ業界に対して厳しい処分を下すとも思えませんが(ちなみに著者自身は、テレビ業界の問題は総務省にも大きな責任があると考えています)、視聴者の会という「第三者」がこうやって大々的に声を上げること自体、非常に大きな意義があります。
彼らがそのような行動をとること自体、人々に問題意識を喚起するとともに、ネット上でも議論を呼ぶことが期待されるからです。現にこの『Yahoo!ニュース』の読者コメント欄を見ると、すでにこんな趣旨の意見が書き込まれています(文意を変えない範囲で抜粋・要約・修正している場合があります)。
- この問題をメディアがあまり積極的に取り上げていないということ自体が、日本の「報道の自由度」が低い証拠である。日本の報道の自由度が低い原因は、政府ではなく、各メディアにある。現にメディアはこの件を問題視した議員を批判している
- ジャーナリストは己の政治的信条を表現したいと思っているのかもしれないが、そもそも報道には中立が求められる。国葬儀には賛否あったことは事実だが、菅義偉総理の弔辞には、その素直な表現が人々の共感を呼んだ面もあっただろう。しかし、政治的中立が求められるはずの放送局の従業員という立場にある人物が一方的な立場の意見を表明すること自体が不適切ではないか
- 玉川徹氏の発言についてはテレ朝にも説明責任がある。総務省、BPOともテレビ局のお仲間なので厳しい処分はまずあり得ないだろうが、視聴者の会の動き自体はとても意味がある。テレビ局は表現の自由を主張する前に、まずは違法行為が絶対に許されないという当然のことを自覚すべき。他の業界ではこんなことがあれば少なくても営業停止等の処分が当たり前である。
…。
どれも正論です。
そして、私たち名もなき一般人がインターネット空間を通じて意見表明を行うことで、テレビ局の「幕引き」を許さないという状況が出現します。私たち有権者の声があれば、政治家も動きやすくなるでしょうし、私たち有権者の代表者である国会議員が動けば、総務省としても事態を有耶無耶に済ませることが難しくなります。
テレビ朝日による発言者本人の10日間の「秋休み」と関係者の譴責という「極めて軽い処分」での幕引きを許してはなりません。そして、本件も結局のところ、インターネットとテレビの「力関係の逆転」という大きな社会的流れがあることだけは間違いないといえるでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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騒動は、単なる「一客員」によるものではなく、『局員』の言に端を発したもの。
個人への𠮟責にとどまらず、組織自体にも社会的責任を科せられるべきですね。
本当にあきれた話です。テレビ朝日は放送法を自ら破っていますと公言したのはこれで二回目ですよね。個人的にも総務省には、「既存の新聞雑誌メディアと同じグル―プ会社の放送局のTV電波をNHK含めて全て取り上げオークションに掛けろ。NHKは即座にスクランブル放送に変えるべき。」と意見を出しています。
毎度、ばかばかしいお話しを。
テレ朝:「視聴者の会は、国民全員を代表していない」
ならば、テレ朝が絶賛している市民団体も、国民全員を代表していないのでは。そもそも、国民全員を代表している市民団体は、ありません。
テレ朝内部で、本当に、そう言っていたりして。
安倍晋三逝去、国葬終了という敵失で内輪揉めが始まりっている、なんて噂話もありますが、果たして。
統一教会で自民を叩きたくても特大ブーメランなる連中の多い事。
共通の敵がいなくなれば、鳩派とタカ派はギスギスしちゃうからね、仕方ない。
本論からは外れた話になってしまいますが、
本文中に出典としてある、総務省『令和3年度 主な無線局免許人の電波利用料負担額』によると、携帯電話、BWA、PHS事業者の電波使用料は下記の通りになっていました。
株式会社NTTドコモ・・・・・・・・188億3480万円
KDDI株式会社・・・・・・・・・・135億8670万円
沖縄セルラー電話株式会社・・・・・・9680万円
ソフトバンク株式会社 ・・・・・・・・162億96.50万円
UQコミュニケーションズ株式会社・・・80億810万円
Wireless City Planning株式会社・・48億1830万円
楽天モバイル株式会社 ・・・・・・・・・24億4220万円
地上テレビジョン放送事業者の電波利用料は明らかに過少な負担と思います。
地上テレビジョン放送事業者の電波利用料が適正になれば、
携帯電話料金の値下げなど容易いことと思いました。
とむ様
ナイスデータです。
私も比較として、このデータは欲しいな、って思ったので(^^)b
本件で声を上げても、TV局側は「どうせ一部のネトウヨが1000件書いたのだ」などと公言する者も出れば、公言しないにせよ「局のお客様はスポンサー企業であって視聴者など客ではない」と考えている者も居ると思われます。
こういった傾向に対し、一般人の隠れた多くの声であることを前面に出し、スポンサー側が無視できぬよう影響を強めるのは良い攻め口に感じます。
また最近は、悪質なクレーマーに対してお店などが「お客様は大事だが、あなた方はお客様ではない。」として相手をせずお断りをできる風潮になってきています。
ここでTV局が「お前ら視聴者など客ではない」とつっぱねたところで、実際に客ではないのだから、会や視聴者を困らせることなど出来ないのは皮肉です。ましてそんな動きを見られては、嫌われて視聴率を下げ、広告能力を下げて自滅するのですから。
なんか、TV局ってすでにすっかり弱い存在なのでは……まだ気が早い?
お客様はスポンサー
スポンサーは若者に訴求したい→若者向け番組増加するも若者はテレビを見ない→スポンサーがネットに移行→テレビ予算減少でつまらなくなる→わずかな若者もメイン視聴層の中高年も観なくなり視聴率低下→スポンサー離れ加速
お客様からも見放されてますね
テレ朝と電通のトップを国会に呼び質問するのがいい。
皆さんに、お尋ねします。
視聴者の会と言う市民団体が、玉川問題を問題視していることについて、野党は、どう発言しているのでしょうか。また、日本国民から、どう動いていると思われているのでしょうか。
既存のメディアが放送法第4条第1項の規定に抗って、事実と異なる情報やメディア自身の主張ありきの一面的な情報を一方的に撒き散らせば撒き散らすほど、一般人の批判の目に晒されて、メディア自身の首が逆に締まっていくという状況が、出来上がりつつあるんだなぁと思いました。
先日もコメントいたしましたが、既存のメディアが今後生き残っていくためには、放送法第4条第1項の規定を遵守することこそ必要なのではないかと思います。
>> 既存のメディアが今後生き残っていくためには、放送法第4条第1項の規定を遵守することこそ必要
もう、それで済む時期は過ぎたと思います。
放送法第4条第1項も第1条の一~三の原則も削除し、放送会社それぞれが、自分たち自身が守れる信条なり社是なりを自分たちで掲げて、国家に庇護して貰うのではなく国民の支持で存続する企業を目指せばいいでしょう。
自分が玉川氏に期待するのは、電通による角度をつけた報道について、ご自身の経験を洗いざらい話していただくことですね。
定年退職で逃げきる模様。
明石市長も、「任期満了で政治家辞めます。」で一件落着らしい。
つまらん。