「価格上げるな!」ベラルーシの斬新なインフレ抑制策
「物価上昇禁止!あすからではなく今日からだ!」。そんな命令だけで物価上昇が止まるなら、世の中の当局者は、さほど苦労しません。物価とは純然たる経済事象であり、命令で動くものではありませんし、岸田文雄首相あたりが「自然災害禁止!あすからではなく今日からだ!」と「命令」すれば自然災害がなくなるものでもありません。それを真顔でやろうとしている国が、ベラルーシだそうです。トルコのエルドアン氏、日本の水野氏と並び、なかなかに強烈で斬新なやり方です。
目次
インフレとデフレ
インフレは体力が弱い国に容赦なく襲い掛かるものですが、それと同時に経済理論的には、金利を引き上げるか、マネー供給量を減らすなどすれば、ある程度は抑制することが可能です。
インフレとは「物価上昇」、つまり「同じカネで買えるモノが減る現象」と整理することができます。たとえば昨日は1本100円だったダイコンが、今日には1本200円になる、といった現象のことです。
逆に、デフレは「物価下落」=「同じカネで買えるモノが増える現象」のことです。昨日は1本100円だったニンジンが、今日には1本50円になっていれば、これはデフレという言い方ができるでしょう。
(※ただし、厳密には、「インフレ」「デフレ」はダイコン、ニンジンといった個別の商品が値上がり、値下がりすることではなく、世の中の物価全体のことを意味しているのですが、ここではあくまでも貨幣現象のイメージを説明するものです。)
ここで「物価」とは、「おカネで測定したモノの価値」のことですが、逆に言えば、「モノで測定したおカネの価値」、ということでもあります。
インフレとは「カネの価値が落ちること」
「ダイコン1本100円」ということは、「ダイコン1本で測定したカネの価値が100円だった」という意味ですが、数学的には「100円は1ダイコン」、という意味でもあります。これが「ダイコン1本200円」に上昇すれば、おカネの価値は「100円は0.5ダイコン」に落ちる、ということです。
- 物価上昇=おカネで測定したモノの価値が上昇すること=モノで測定したお金の価値が落ちること
- 物価下落=おカネで測定したモノの価値が下落すること=モノで測定したお金の価値が上がること
わかりやすくいえば、物価とはモノとカネの交換レートのことであり、両者の価値の均衡は需給で決まります。
世の中にモノが有り余っていれば、モノの値段はどんどんと下がります。その典型例が、農家が作物を処分するという「豊作貧乏」でしょう。農業の現場では流通改革などを通じ、この「豊作貧乏」をどうなくしていくかは長年の課題でもあります。
「豊作貧乏」をなくしたい 産直売り場で農業流通を改革
―――2022.7.1付 日経ビジネスオンラインより
また、モノに対する需要が供給に対して多すぎるような場合には、逆に物価が上昇してしまいます。
ポストコロナで旅行需要などが爆発しているなかにも関わらず、中国の各都市におけるロックダウン、ロシアが始めたウクライナ戦争などの影響もあり、物流に混乱を来している、といった側面があるからでしょう。
したがって、物価をコントロールするにはモノ自体の需要を安定させることだけでなく、世の中のマネーの供給量自体を抑制する、政策金利を引き上げる、といった対策が必要です。
利「下げ」でインフレに対処しようとするエルドアン氏
ただ、『トルコが韓国から通貨スワップで資金を引出し=現地紙』などでも述べたとおり、国によってはこうした適切な対処ができないという事例もあります。
たとえば、トルコはレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が「金利は悪」という奇妙な価値観を持っていることでも知られており、世界でもおそらくトルコくらいでしか見られない「利下げでインフレに対処する」という奇妙な政策が行われている国でもあります。
レジェップ・タイイップ・エルドアン氏
インフレ下で利下げをすれば、インフレを加速させるだけですし、その国が国内資金市場を外国に開放している場合には、その国から資本流出が加速します(だからこそ中国や韓国からスワップで資金を引き出したのだと思いますが…)。
強制送還と贅沢禁止令でインフレ抑制を目指した水野氏
また、歴史的に見ると、インフレという経済現象に対して「命令する」というアプローチでこれを抑え込もうとしたケースもあります。
たとえば水野忠邦氏が実施した「天保の改革」は、都市の人々を農村に強制送還し、株仲間を解散させ、身分を問わず贅沢を禁止するなどの直接的なアプローチで需要をダイレクトに抑え込もうとしたものの、流通システムの大混乱をもたらしたうえで庶民の恨みなどを買い、大失敗に終わったからです。
物価を抑制するためには、短期的には貨幣供給量をコントロールするとともに、中・長期的には規制改革などを通じ、社会が効率的・円滑的に運営される仕組みを整えるのが鉄則なのに、水野氏の改革はこれらの鉄則をことごとく無視したものでした。
そもそも水野氏に最低限のマクロ経済学の知識があったのかどうかは知りません。しかし、徳川政権が崩壊する直接の原因については、世間では1853年にマシュー・ペリーが浦賀の領海を侵犯したことに始まる一連の改革にあるとされていますが、個人的にはこの水野氏のインフレ抑制策の失敗による経済の疲弊という要因もかなり大きいのではないか、などと考えているのです。
水野忠邦氏
ベラルーシでは大統領が「値上げ禁止命令」
こうしたなか、エルドアン氏と水野氏の両名以外にももうひとつ、インフレに対して興味深いアプローチをとっている人物がいるようです。
ベラルーシ大統領、値上げを禁止 インフレ抑制で
―――2022年10月7日 15:01付 AFPBBニュースより
AFPによると、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は6日、急激なインフレを抑制するために、「値上げを即時に禁止する」と発表したのだそうです。
アレクサンドル・ルカシェンコ氏
ちなみにベラルーシは旧ソ連構成国ですが、AFPによるとルカシェンコ氏は1994年以降、ベラルーシを厳しく統治している人物でもあり、また、2000年には「1日1杯ウォッカを飲めば新型コロナを予防できる」と発言するなどの「風変わりで過激な言動」でも知られているのだそうです。
記事ではルカシェンコ氏は政府の会合で「10月6日からあらゆる値上げを禁止する」などと述べたのだそうですが、それで物価上昇が収まるのなら、おそらく全世界の政治家がその真似をするはずです。
あるいはルカシェンコ氏のアプローチが成功するならば、日本を悩ませている地震、台風、火山などのさまざまな自然災害からも、日本は救われるはずです。岸田文雄首相あたりが「10月8日からあらゆる自然災害を禁止する」、「あすではなく今日から禁止だ」、と述べたら済むはずだからです。
いずれにせよ、円滑に運営されている制度をいきなり廃止して物流混乱をもたらした水野氏、(利上げではなく)利下げによって物価を抑え込もうとするエルドアン氏などの事例と比べると、ルカシェンコ氏の事例もなかなかに強烈です。
AFPによるとルカシェンコ氏は前年比18%上昇している消費者物価について、「常軌を逸している」と述べたのだそうですが、「常軌を逸しているのはルカシェンコ氏自身ではないか」と突っ込みたくなる人もいるかもしれない、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
毎度、ばかばかしいお話しを。
ベラルーシ:「もし日本が、鳩山由紀夫(民主党)政権なら、日本も値上げ禁止令を出していた」
間違いではないな。
引きこもり中年 様
彼なら ”最低でも(大気)圏外” とか言いかねないですね。
なす術もなく青天井の彼方へ・・。宇宙人なんですもの。
水野忠邦氏はいつからガイジンになったのでしょうか w
ルカシェンコ氏も銃刀法違反疑惑ですね。そういった法律がかの国にあるか知りませんが。
金正恩氏の物価統制政策ーーー多分これも「命令」方式の一種だと思われるがーーーについても対比して紹介すれば面白いかも。
>値上げ禁止令
まさか賃上げまで禁止、なんて事は無いでしょうな。
なるほど、
賃下げをすれば購買力がさがり、物価も抑えられるかもw
デノミしても賃金据え置き、これで万事解決!
「値上げ禁止」とは…
計画経済価格統制…共産主義国圏内育ちの御仁には親和性が高いのカモ?
コメント失礼します。
画像入れ替えは嫌味?
>2000年には「1日1杯ウォッカを飲めば新型コロナを予防できる」と発言するなど
は2020年のコレですかね?
https://www.asahi.com/articles/ASN7Y2S98N7YUHBI001.html
御疲れなのでしたらお大事にです。
日本国も値上げが酷いので、給料も上がる政策を実施して欲しいです。日本国民全員への減税とバラマキが一番単純で有効かな。
インフレの止め方ですか? うーん,難しいですね。2つのケースに分けて考えましょう。
1. ウイークカレンシーのインフレ。
アルゼンチンペソやトルコリラがそうでしょうが,正直,打つ手なし,というかIMFや諸外国に頭を下げて助けてもらうしかないでしょう。
2. ハードカレンシーのインフレ。
アメリカが典型ですね。原因は通貨の過剰供給ですから,金利を上げ,株価を暴落させて,市場の通貨量を減らすしかないです。副作用として通常は不況になります。教科書に書いてあるように程よく通貨供給量をコントロールするのは神業です。それから,官庁は規制強化が仕事なので,規制緩和は難しいです。
P.S. 価格統制しようすると,市場から商品が消えていくんですよね。経済学の初歩知識かな。
経済の詳しいことは、全く分かりません。
が、昔、歴史教科書に書いてあった、織田信長のやった「楽市楽座」は、無税で、誰が何を売ってもいい、というので、沢山の売る人買う人が集まって来て、城下は大変に繁盛した、と。
こういう政策は、何かヒントにならないのでしょうか?
インフレ対策には何の参考になりません。
あと、城下が繁盛したのは結果であり、目的ではありません。楽市楽座の真の目的は城下に集まった商人を支配体制に組み込む事です。
ご返信ありがとうございます。ちょっと子供じみたことを書いたので、気にしていました。
所で、ご返信を頂いて考えたのですが、「楽市楽座」は、、今でいうショッピングモールみたいなものではないのかな、と思いました。
とすると、商いが増えて、供給も増えるので、物価は下がりませんか?
ベラルーシの大統領は、大きなショッピングモールを、先ず造り、物の供給場所を提供すればいいのでは?
昔、ダイエーの中内さんが、日本の価格を破壊すると言って、スーパーを全国に造ったら、物価は下がりましたね。
ベラルーシ大統領も参考にしたら、いいですね。
> 「楽市楽座」は、、今でいうショッピングモールみたいなものではないのかな、と思いました。
楽市楽座は福岡県発祥のゲームセンターですよ(笑) イオンモールにも併設してるところがあります。
……冗談はさておき、ショッピングモールみたいな生やさしいものじゃありません。
各地の商人を城下に集めて競争させ、大店に成長した商人を御用商人として武器弾薬の調達を担わせ、零細商人を御用商人の下請けとさせて城下の商人を統制していくために行ったエサ、もとい目玉政策です。例えるならゴキブリホイホイで集めたゴキブリなどの虫から蠱毒を作るようなものです。
> 商いが増えて、供給も増えるので、物価は下がりませんか?
その供給が滞っていて増やせないので物価が上がってます。
>ベラルーシの大統領は、大きなショッピングモールを、先ず造り、物の供給場所を提供すればいいのでは?
ソ連末期みたいに売り物がない商店が増えるだけです。
>昔、ダイエーの中内さんが、日本の価格を破壊すると言って、スーパーを全国に造ったら、物価は下がりましたね。
価格と物価を混同しているようですね。中内功が下げたのは価格であって物価ではありません。
そもそもスーパーを全国につくったから物価が下がったのではありません。
商品価格を下げて薄利多売としたからスーパーを全国展開できたのです。
ダイエーが価格を下げられたのは問屋を介さずに産地直送する流通網の構築と「セービング」などプライベートブランドの商品開発を行ったからです。また、表には出てこない強引な値引きを行っていた可能性があります。
どちらにせよ、今の時代にはベラルーシにも日本にも全く参考にならない話です。
ご返信ありがとうございます。
「楽市楽座」そのものとは言っていませんので、楽市楽座から「連想」して頂ければいいのですが。
これ程、歴史と経済構造にお詳しければ、何か、ご提案はございませんか?
下手な鉄砲数打ちゃ当たる、瓢箪から駒、と言うこともあります。「衆知」と言う言葉もあります。
わたしは、そんなつもりで書かせて頂いておりますので、よろしくお願いいたします。
それにしても、詰まらぬ考えに真剣にご返信いただき有難うございます。
繰り返しますが、楽市楽座やその関連はインフレ対策に全く役に立ちません。楽市楽座を持ち出す事自体が不適切です。
今のインフレは世界的なものであり、一国で抑えるのは困難です。FRBなど世界の中央銀行が行うやり方をできる範囲でまねるくらいしかできません。
ただ、ベラルーシ固有の問題に限れば、国民を弾圧するルカシェンコのやり方に対して欧米が経済制裁を課している事がインフレの一因になっています。よってルカシェンコやその取り巻きを失脚させ、民主的な政権に取って代われれば経済制裁の解除とEUからの援助を期待でき、インフレ対策のためのお金を引き出す事もできます。
ルカシェンコが自ら引退するとは思えませんけれど。
農作物は工業製品などに比べて、
・生産を決定してから出荷までの時間がとても長くタイムリーな需求対応がほぼ不可能。
・合わせようとすると不足(輸入)と過多(廃棄)が頻繁に起こる。
・気象などの不可抗力の要素が多く経費も売上もともに乱高下。
・小売仲買からは高品質を求められるが品質のばらつきが大きい。
・生産者自身にはその価値が実感しにくく適正価格がある程度でしか決定されない。
・でも生命維持に必須。
等々、不安定に不安定を重ねた構造で、チョット何かを工夫した程度ではどうにも資本主義経済になじまないシロモノなので、解決策を探すのも長い目で大事ですが、場当たり的な対策を講じたほうが実際にはマシという感覚です。
リンクは豊作貧乏を問題視した記事のようですが、裏返しで不作で儲かってしまったり補助が手厚かったりするという面も確かにあるのでなんとも。直売は生産者の手間(場合によっては金より捻出できない)が増える事になりますし、直売が一般的なほど広まったら結局は大規模物流の方の需要が減るだろうし、効果としてはHDDのデフラグ程度のイメージだなぁ……
さて値上げ禁止令がもし適用されたとして、それで経費も販売価格も同時に抑制されるのならまだ良いですが。国内法(?)に過ぎないので、輸入業者などが一人負けになるのでしょうか?ウチのような農家(取引先は出るのも入るのも農協のみ)であれば影響は少なくて済むかもしれませんが、肥料農薬資材の輸入をしている所は価格転嫁ができずに壊滅か。結局その余波で壊滅かな。消費者のことしか考えていない。スリランカと同様、先が気になります(他人事)。
農民様のコメント。
農業に関する基本的なポイントが書かれており、農業を国の重要な基礎産業として、守って行くことは、どういう事かが分かりました。
昔、マスコミが散々叩いていた、補助金と農協は、農業を国の基礎産業として守り維持して行く為には、どうしても必要な事だと分かりました。
吶々とした文章の中にこれだけの説明説得力を、そして読後の納得感を持たせる筆力に敬服します。
どこの国でも、マトモな国なら、農業に補助金を出しています。昨年の天候不順による、玉葱の不作。玉葱大好き人間としては、価格は上がるし物も良くないので、ひたすら我慢しておりました。これで、国内に玉葱農家が無くなったら困ると心配しておりましたが、今年はまた、立派な玉葱が例年通りの価格で食べられるので、安心しています。
やはり、物価の安定には、供給が基本ですね。
昨年の玉葱農家には、補助金が出たのでしょうか?一年くらいの不作で、農業をやめなきゃならないとしたら、農業という産業は安定しないし、国家の食糧供給も安定しないですね。
インフレ退治は、ものの供給を第一に増やすことではないですか?
ベラルーシ大統領は、先ずそれを考えたのかな?
表通りに面したお店のショーウィンドウの中は空っぽ。
欲しいものがあれば、裏口に回って、店主と値段の交渉、
というのが、常態になるだけの予感(笑)。
ルカシェンコ政権、いつまで保つんでしょうね。
水野忠邦の失脚時みたいに、
屋敷外に集まった群衆から投石されるくらいのことで済めば良いんですが。
伊江太 様
失脚したらフルシチョフや華国鋒のように死ぬまで軟禁状態になるでしょう。チャウシェスクやカダフィのような末路もあり得そうです。
>あるいはルカシェンコ氏のアプローチが成功するならば、日本を悩ませている地震、台風、火山などのさまざまな自然災害からも、日本は救われるはずです。岸田文雄首相あたりが「10月8日からあらゆる自然災害を禁止する」、「あすではなく今日から禁止だ」、と述べたら済むはずだからです。
さあ,それは流石に暴論では?
地震・台風・火山噴火などの自然災害の発生は人間の活動とは基本的に無関係ですよね.(それらの災害による被害が大きくなるか小さくて済むかには,災害発生前における人間活動も発生後の人間活動も大いに関係がありますが,何時何処で地震(あるいは火山噴火でも台風でも)が発生するかには(人類全体のレベルの活動なら地球温暖化を介して台風の規模やコースあたりには関係するかも知れませんが,例えば日本という1つの国家の規模での)人間活動はまず無関係と言って良いでしょう.
ですが,経済でインフレが起こるか否かは偏に人間の活動によるものです.
ですから,国がここの品物に対して公定価格を決め,「これを超える値段で売買すれば,売った者も買った者も問答無用で死刑にする」と宣言し,実際に違反者を次々に死刑にするとか,生活必需品(典型的には食糧)の供給量が不十分な時には配給制を採り違反者を死刑も含む厳罰に処すといった手段を採用すれば,死の恐怖によって価格を安定させる統制経済を実現することは或る程度は可能だと思いますよ.
実際,戦時下においてはその手の(さすがに問答無用の死刑というのは稀でしょうが)統制経済を実施して価格を強制的に安定化させようとする試みは,前大戦での我が国も含めて色々な国々で繰り返し実施され,完璧な価格統制に成功したかはともかく,ある程度の価格安定は達成されて来た訳です.
経済活動なんてのは所詮は人間の活動に過ぎません.地震や火山噴火などの自然現象とは比較にならない規模の代物です.
台風の持つエネルギー総量には,史上最大の核兵器さえヘビー級ボクサーと赤ん坊以上の規模の差があるのですから.まして3.11などのM9クラスの大地震が解放するエネルギーは人類の持つ全ての核兵器を一気に爆発させて解放できるエネルギーよりも遥かに大きい.
ことほどさように人間の活動なんてのは自然災害に比べてスケールが遥かに小さい(ということは,言い換えれば人の手で制御できる可能性が遥かに大きい)ということです.
私の考えでは,人間の活動なんてのは自由主義や民主制や人権など我が国のような西側先進国の国民が空気のように「有って当然のもの」と考えている事柄を放棄すればどうとでも制御できると思います.
勿論,そんな事柄の放棄は私自身も願い下げですが,純粋に原理的な議論としては,人間の存在と関係なく存在する自然を支配している法則(つまり物理法則など)とは違って,(法律などの形で)社会的に決めた約束事は,それを否定する約束事を(社会あるいは独裁者が)決めることによって人間が自在に捨てたり変更したりすることも可能だということです.
人間がどうジタバタしようと変えられない物理法則(但し,ある法則がその適用範囲は限られているとか近似に過ぎない等を人間活動としての研究の結果として法則発見より後に見出されることは現実に繰り返し起こっているが)とは違って,民主制という政治の仕組みも自由主義も各種の人権やそれを保護することを保証する様々な法令あるいは社会的合意も,全て人間が決めたに過ぎないから人間の手で放棄することも可能だということです.(実際,大戦前のドイツは民主的な手続きによってヒトラーとナチ党による独裁…その最終的な結果は民主制・自由主義そして最後には基本的人権の放棄さえも…を実現したのです)
人は、何のために生きるのか?
自由と尊厳が無くても、生きていれさえすればいいのか?
マズローの5段階欲求説を取り出して考えてみる必要あり?
今自分はどの段階にいるのか?
この国はどの段階にあるのか?
インフレ抑制は、こういう根源に繋がっていたのですね?
水野忠邦氏が学校でマクロ経済学を履修しなかったことは事実かと思います。
近年政府による陳情によって給与の昇給の善処を大手企業に要請することは多々ありますが、命令はいけません。命令は。また、庶民としては1大根100円の固定相場制だと助かりますがそうした場合でも農家としっかり協議し話し合うことは大切なことだと考えます。
匿名のコメント主様
>水野忠邦氏が学校でマクロ経済学を履修しなかったことは事実かと思います。
やはりそのような判断になりますよね。というよりも水野氏自身が近代法治主義を理解していたのかどうかすら疑わしい部分があります。彼の言動自体に、どう考えても封建主義的な身分制に立脚しているとしか思えないものが多々含まれているからです。
水野忠邦の対極、田沼意次の政治はどうなのでしょう?彼は、新井白石によって極悪人にされてしまいましたが、実際には、新井白石よりは、マトモ且つ真面目なことをやっていますね。
食糧増産の為に、印旛沼の干拓もやっています。要は、供給を増やして、物価を安定させようとしたのではないですか?
幕府にとっては、田沼意次は、新井白石がひっくり返っても及ばない貢献しているように思います。
> 彼は、新井白石によって極悪人にされてしまいましたが
新井白石は田沼主殿頭意次より前の時代の人ですのでそれは不可能です。
新井白石ではなく、松平越中守定信では?
> 要は、供給を増やして、物価を安定させようとしたのではないですか?
それ自体は江戸時代の改革者全員が目指しました。違うのは物価高の原因の理解とそれに対して取った手段、そして結果です。
> 新井白石よりは、マトモ且つ真面目なことをやっていますね。
新井白石の政策も比較的まともです。インフレの抑制のためにマネーサプライを減らす事、それも市場の混乱を小さくするため20年くらいかけてゆっくり減らす事を考えていました。それはFRBが今やっている事に通じます。
白石の予想以上に経済を冷え込ませる結果となったので、現代では「正徳デフレ」と呼ばれる程評判が悪いです。しかし当時はそこまで評判の悪いものではなく、新井白石を失脚させた将軍徳川吉宗も享保の改革で白石の政策を引き継いでいます。
そもそも橋本龍太郎大蔵大臣や土田正顕大蔵省銀行局長が行った総量規制によってバブル経済が崩壊し、失われた30年を招いて日本社会に深い爪痕を残してしまった事に比べれば、新井白石の政策は言うほど酷くありません。
> > 幕府にとっては、田沼意次は、新井白石がひっくり返っても及ばない貢献しているように思います。
まっっっっっっったく貢献してません。
むしろ田沼主殿頭の時代は享保の改革で蓄えた幕府の備蓄金300万両の4分の3を食い潰した時代です。これは田沼主殿頭のせいではなく、立て続けに起こった天災や大飢饉で巨額の出費を要したからですが、儒教の徳治主義の影響や民衆の怒りのはけ口にされやすい立場だった事から、天災でさえも田沼主殿頭のせいにされたのです。
また、田沼時代は幕府の財政が毎年のように赤字であり、経済政策もうまく行きませんでした。田沼主殿頭の功績はそれが主目的ではないにしろ民間の商業や投資を促した事、それによって化成文化が花開くきっかけになった事です。政府の負債は増えても経済が活性化したら評価される現代では理想的な政治でしょうけど、幕府という組織に取ってはどうしようもない金食い虫でしかありませんでした。だから田沼主殿頭の当時の評判は非常に悪く、松平越中守の個人的な恨みもあって関係者が悉く失脚しています。
松平越中守ら寛政の遺老が引退した後、将軍徳川家斉は旧田沼派であった水野出羽守忠成を登用します。これは徳川家斉が松平越中守の政策に辟易し、個人的にも恨みがあったために反松平の人物を用いたためです。水野出羽守の時代は好景気かつインフレで化成文化が花開きました。民間に取っては良い時代だったのです。反面、江戸城では賄賂が横行し、幕府の財政も苦しくなりますので、幕府に取っては好ましからざる時代でした。
江戸時代は政府にお金を集めて幕府を安定させるか、民間にお金を供給して国の経済を活性化させるか、どちらかしか取れなかったのです。商業関係の徴税システムが貧弱であり、国の経済の活性化が幕府の増収につながっていなかったからです。よって経済を停滞させてでも幕府にお金を集める事が幕府へ貢献した事になります。その意味では新井白石と徳川吉宗が幕府に多大な貢献をした巨頭であり、田沼主殿頭は幕府を潰しかけたとんでもない人物、新井白石には逆立ちしてでも及ばないという事になります。
面白く読ませて頂きました。
新井白石と間違えるなんて、新井白石が好きではないからかもしれません。
これは嫌味と取らないで頂きたいのですが、とある福岡市民 様ほど、歴史と経済にお詳しい方でも、現在の日本の経済を復活させるアイデアは出て来ないものでしょうか?
匿名様へ
本文の中にインフレへの基本的な対処の答えは既に書いていますよ。
>>物価を抑制するためには、短期的には貨幣供給量をコントロールするとともに、中・長期的には規制改革などを通じ、社会が効率的・円滑的に運営される仕組みを整えるのが鉄則と
また日本経済復活させるアイデアについては
怪しげな公認会計士が書いた「数字で見る強い日本経済」を読み直せばアイデアが沢山書かれています。
掻い摘むと、消費税の減税を柱とする、国債の増発と海外へ逃げた製造拠点の国内回帰を促す政策を行う等々、様々なヒントが既に出いると思います。とは言え、水野が駄目なら田沼でいく。Aが駄目ならBでいくという真逆なアプローチでの対処法は単純ですが力強い対処法ですね。時に患者の体力がないと亡くなってしまいそうな方法ではあるけれども
新宿会計士様の提案は、わたしの考えと似ているのですが、それ以外にも、アイデアがあるかな?と思いまして、質問して見ました。
これは、ビジネスの現場ではよくあるのですが、日本人は、何かこれに対する解決策やアイデアはありませんか?と質問すると、誰も何も言わずにダンマリです。
ところが、このアイデアは不完全だがそれでも、誘い水で話して見るかと、口に出すと、即刻、ベテラン程、自分の経験と知識を駆使して、そのアイデアの欠点を滔滔と話します。
なるほど、そうだよね、と、これだけ豊かな知識と造詣があるのだから、引き続き、いいアイデアを出してくれるだろうと待っているのですが、今の饒舌は何だったの?と思うほど、又、沈黙に戻ります。以後、幾つかアイデアを出しても、同じ事の繰り返しです。多分、彼の頭の中の辞書には、アイデアを出すという発想がないのでしょう。
その他の人間は、反論もせずに、会議が終わるまで、ダンマリを通すだけです。彼らにとって、解決策やアイデアは、自分以外の他人が出すもの、自分は、与えられたことを、決められた通りにやればいいということのようです。
そして、自分の人生や生活の豊かさや安全は、誰か他人が自分に与えるのが当然だと考えている節も見受けられます。
ま、こんな知識偏重主義の教育と社会通念と他人依存の心根を無くさない限り、これからも、日本の停滞は続くでしょう。
長らく物価が上がらなかった日本では、金の供給量や金利で金の価値を変えるという考え方がもうなじまなくなっていますね。国内的には結局モノの供給量だけで価格が決まってしまい、貨幣の価値にはそれほど変化がないという。
ルカシェンコと水野越前守忠邦の写真が逆なのはわざとですか?
> そもそも水野氏に最低限のマクロ経済学の知識があったのかどうかは知りません。
ありませんでした(キッパリ)。
発行益を得る目的で貨幣を改鋳して金の含有量の少ない天保小判などを発行し、マネーサプライを大きく増やしていた一方で物価抑制策を出していたのですから。
でも水野越前守一人を責める事はできません。貨幣改鋳は元禄小判の改鋳以来しばしば行われていました。発行益を得るためです。
また、水野越前守が模範とした寛政の改革を主導した松平越中守定信も全く理解していませんでした。松平越中守の専門は朱子学ですから。
そもそもマクロ経済学を理解していた人が江戸時代に何人いたのでしょう?
江戸時代中期以降、朱子学が官学、つまり正統な学問とされてきました。朱子学者は理想ばかり唱えて現実を見ないため、経済への理解がありません。明清の科挙合格者や朝鮮の両班がそうですし、日本も新井白石、松平越中守がそうです。こんな学問を頭に叩き込まなければエリートになれなかった時代ですから、商取引や経済の知識は現代の経済学部の大学生にも劣るレベルです。マクロ経済学の理解など望むべくもありません。
マクロ経済学を理解していた人といえば、元禄小判の改鋳を主導した荻原近江守重秀、朱子学を否定した経世家である荻生徂徠と太宰春台くらいではないでしょうか。
>徳川政権が崩壊する直接の原因については〜個人的にはこの水野氏のインフレ抑制策の失敗による経済の疲弊という要因もかなり大きいのではないか、などと考えているのです。
天保の改革の失敗による影響よりも、開国後のインフレーションと流通の混乱による影響の方がはるかに大きいのではないでしょうか?江戸幕府が開国後に軍備を増強した事による財政の圧迫による影響もある事でしょう。
朱子学者は理想ばかり唱えて現実を見ないため、経済への理解がありません >
そのような見方もできるかとも思いますが、その一方で山片蟠桃や太宰春台らの如く、朱子学からスタートしつつも、広く実学(天文・地学・神道・経済等)にまで研鑽を拡大させた思想家がいたことは忘れてはならないと考えています。
日本の朱子学者の多くは、藤原惺窩のような原理主義者ばかりではありませんでしたし、そのことは後生に生きる我々自身にとっても、大変意義深いことであったと考えています。
江戸時代の経済に関しては米本位制から脱却できないと解決は難しかったんじゃないかな。人口が増えないのに石高が増えたら米の価値は相対的に下がるわけで。
水野忠邦 (ベラルーシのすがた)
アレクサンドル・ルカシェンコ (ニホンのすがた)
エルドアンはイスラム教徒ですから、「金利は悪」という価値観は理解できます。
独裁は怖いですね。
無能な独裁者が過ちを犯しても、止める者がいませんから。
ルカシェンコが価格統制ですか。
物資の流通が滞り、闇市が立つようになるんでしょうかね。