為替スワップはイエレン財務長官にとっては「管轄外」
下手に米韓スワップ待望論煽ればウォン市場に悪影響も
「韓米通貨スワップで共感を得ている」。「日本など他の国との通貨スワップも積極的に検討および推進している」。なんとも面妖な発言です。韓国メディア『中央日報』(日本語版)によると、これらは韓国政府や韓国の与党関係者の発言だそうですが、ジャネット・イエレン米財務長官の訪韓を前に、米韓通貨スワップへの期待感を一方的に煽りすぎるのは、韓国自身のためにもなりません。結果としてウォンの失望売りを招きかねないからです。
米国が韓国と「通貨」スワップを結ぶ可能性
「現在の状況で米国が韓国と通貨スワップ(あるいは為替スワップ)を結ぶ可能性は、ほぼ皆無に近い」という点については、『完全な勘違いに立脚した米韓通貨スワップ待望論=韓国』などを含め、当ウェブサイトでもこれまで常々指摘してきているとおりです。
その理由はいくつかあるのですが、順を追って振り返っておきましょう。
①米国は外国と通貨スワップをほとんど結んでいない
まず、重要な事実を指摘しておくと、現時点において「NAFAスワップ」を除くと、米国は外国との間で、いわゆる「通貨スワップ」、つまり「通貨当局が自国通貨を担保に相手国から外国通貨を借りることを可能とする取り決め」を結んでいるという事実はありません。
②為替スワップは相互にメリットがある場合にしか結ばない
一方、米国はFRBが5つの中央銀行との間で常設型・金額無制限の為替スワップ協定を結んでいますが、これらは相手国の市中金融機関に対して直接、お互いの通貨を貸し付けるという「流動性スワップ協定」であり、通貨スワップではありません。
また、FRBが日英欧瑞加5ヵ国・地域の中銀と締結している為替スワップは、FRBが相手国の金融機関にドルを貸し付けなければならないというものであるとともに、米国の要請に基づき、米銀に対してユーロ、円、ポンド、加ドル、スイスフランの融資を受けることができるという協定でもあり、米国にもメリットがあります。
③FRBにとっての金融緩和となる場合
米国はこれら5ヵ国・地域以外にも、昨年末まで9ヵ国・地域の通貨当局と為替スワップを結んでいましたが、これらは2020年3月、コロナ禍発生直後の金融緩和政策の一環として導入されたものであり、あくまでも例外的な措置です。
現在、FRBが金融引締め局面にあるのに加え、すでに「FIMAレポ・ファシリティ」などの流動性ファシリティが存在する以上、9ヵ国・地域との為替スワップをわざわざ復活させるとは考え辛いところです。
現在の韓国はどのパターンにも当てはまらない
以上をまとめると、米国が外国と結ぶスワップの概要は、図表のとおりです。
図表 米国が外国と結ぶスワップ
スワップの種別 | 契約相手 | 上限 |
---|---|---|
NAFAスワップ(FRB) | カナダ銀行 | 20億ドル |
メキシコ銀行 | 30億ドル | |
NAFAスワップ(財務省) | メキシコ銀行 | 90億ドル |
常設型為替スワップ | 日本、英国、欧州、スイス、カナダの中央銀行 | 無制限 |
時限型為替スワップ(※失効済み) | 豪州、ブラジル、韓国、メキシコ、シンガポール、スウェーデンの各中銀 | 600億ドル |
デンマーク、ノルウェー、ニュージーランドの各中銀 | 300億ドル |
(【出所】米FRB “Central bank liquidity swaps” 等を参考に著者作成)
この点、たしかに米FRBは韓国と2020年3月に上限600億ドルの為替スワップ(※通貨スワップではない!)を結びましたが、これはあくまでも金融緩和措置の一環に過ぎません。
現在は金融緩和局面でもなければ、韓国ウォンは国際的な外国為替市場で存在感がある通貨でもありませんので、米銀にとって韓国ウォンを調達するニーズはほとんどなく、米国が現時点で韓国との為替スワップを再開する可能性は非常に低いと見るのが自然でしょう。
中央日報の記事
ただ、韓国では現在、ジャネット・イエレン米財務長官の訪韓を踏まえ、「米韓通貨スワップ」に対する期待が一方的に強まっているようなのです。韓国メディア『中央日報』(日本語版)には本日、相次いでこんな記事が掲載されていました。
尹大統領、19日米財務長官と会談…外国為替市場の不安に対応、韓米通貨スワップなど議論か
―――2022.07.18 11:21付 中央日報日本語版より
政府・与党「韓米通貨スワップに共感…ウォン安ドル高にブレーキの役割」
―――2022.07.18 06:55付 中央日報日本語版より
記事の中身については、正直、あまり紹介する価値があるとも思えませんが、一箇所だけ抜粋しておくと、こんな具合です。
「政府と与党・国民の力は17日、韓米通貨スワップに対して『共感を得ている』として『通貨スワップが締結されれば、ウォン安にブレーキをかける役割を果たすだろう』と明らかにした。国民の力のヤン・グムヒ院内報道官はこの日、ソウル三清洞(サムチョンドン)首相公館で開かれた第2回高位党政協議会(事前審査制)後、記者会見で『政府は韓米だけでなく日本など他の国との通貨スワップも積極的に検討および推進している』と述べた」。
「共感を得ている」のくだり、いったい「誰の共感を得ている」のでしょうか?少なくともイエレン氏の共感ではないことだけは間違いなさそうですが…。しかも、ソウル日本大使館前や釜山日本総領事館前の慰安婦像を片づけてもいないのに、「日本などとのスワップ」などと日本をチラチラと眺めているのは、本当に困りものです。
この点、米韓通貨スワップに関していえば、当ウェブサイトではこれまで何度となく指摘してきたとおり、そもそもイエレン氏はFRB議長経験者ではありますが、現在の役職は財務長官であり、FRB議長ではありません。
そして、米国においてはメキシコとの90億ドル分の通貨スワップを除けば、基本的にすべてのスワップはFRBの管轄であり、イエレン氏が韓国を訪問したところで、管轄外のスワップ(とくに為替スワップ)について韓国側のカウンターパートと合意できるものでもないでしょう。
マイナスのアナウンスメント効果が生じるのでは?
ただ、それよりも気になるのは、さまざまな記事を通じてさんざん、米韓通貨スワップへの待望論を煽りまくることの弊害です。
ここまで通貨スワップ待望論を煽っておいて、実際にイエレン氏が訪韓し、韓国に「通貨スワップを供与する」どころか、むしろ逆に韓国に対し「為替介入をしないように」と牽制するという結果に終われば、韓国ウォンの「失望売り」が始まりかねない、とは思わないのでしょうか?
いわば、「マイナスのアナウンスメント効果」、といったところでしょうか。
いずれにせよ、明日か明後日の為替相場には、注目しておく価値はあるかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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素朴な感想ですが、(別に韓国メディアに限った話ではありませんが)マスゴミは、事実かどうかよりも、愛読者が信じたい、読みたいかで記事を書いているのではないでしょうか。(ファクトで買ってもらえないより、フェイクで買ってもらえる方が重要なのでしょう)
全くその通りだと思います。韓国メディアのさらに酷いところは、日本の読者に読ませてイライラさせたいというのも追加させてるところです。
韓国メディアの愛読者が、もっとも読みたい記事は、「何でも上手くいかないのは、全て日本の責任だ」ではないでしょうか。もっとも、(さすがに最近は表現を工夫していますが)「台風が来るのも、郵便ポストが赤いのも、みんな自民党政権が悪いんだ」というマスゴミがいる日本も、他国のことは笑えないのかもしれません。
アクセス数を稼ぎたいようです。要はビジネスということです。
金を貸してくれと言いたくないので(断られた時のかっこ悪いから)スワップを結んでくれといっている。
ここまで「スワップ」「スワップ」言ってると「金貸せ」「金貸せ」に聞こえてくる。
有りたい姿と現実の境界線を分かっていないのか、分かっていてわざとやっているのか。ま、後者でしょうね。国内外に瀬戸際会話をして、相手の譲歩を引き出せれば儲けものと思っているんでしょうけど。
韓国がスワップ結べとうるさいのならざ、日本は為替スワップを締結してあげれば良いのでは?韓国さんは為替も通貨も同様のスワップらしいのでわからんのではないのかな。
> イエレン財務長官にとっては「管轄外」
まぁ、そうでしょうね(笑)
断られたら、「後頭部を殴られた」までが様式美でしょう。
ほっとけばいいです。
「日本の邪悪なロビー活動」をお忘れなく。
自分たちの思い上がりで見栄をはった
韓国経済があたりまえに崩壊する過程において
米国は過去の通貨崩壊でも事前に助ける代わりに
崩壊の際韓国の財閥資本を外資に差し出させたように
助けてくれないことをよく知ってるはずです。
それなのに意味のない、
まもなく米韓スワップ論はそうした風潮作っておいて、
満を持して日本に
「米国と結んでもいいけど日本と結んで上げてもいいニダ」
としゃあしゃあと言って、あとは日本国内の
俵の爺さんや鳩ポッポさんが
「バスに乗り遅れるな」式でどさくさで
日韓通貨スワップを不当にゲット狙って
今は息を潜めて準備をしているところなのでしょう。
時事通信など日本のメディアが
米韓為替スワップをあえて通貨スワップと
間違えて呼んでいるのは
その画策協力のためと見透かされています。
金融緩和政策ではなく、米国債が投げ売りされて暴落するのを防ぐための施策だったと思いますね。FIMAレポファシリティーで対策済みなので為替スワップを結ぶ必要がますますなくなっちゃいましたけど。