政党支持率でも立憲民主党を上回り始めた日本維新の会
先月末の衆院選では、立憲民主党が100議席を割り込む敗北を喫する一方で、公示前勢力が11議席だった日本維新の会が一挙に4倍近い41議席を獲得する大躍進を記録しました。そして、いくつかのメディアの世論調査を眺めてみると、政党支持率においても「維新≧立憲民主」、という、一種の逆転現象が生じ始めたようです。
世論調査の特徴と世代の分断
当ウェブサイトでは6つの世論調査(読売新聞、朝日新聞、時事通信、共同通信の4社が実施するものと、産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同調査)に基づく内閣支持率、政党支持率などの調査結果を「定点観測」しています。
この点、以前からしばしば報告してきたとおり、どうもこの世論調査、実施する主体によって、内閣支持率にかなりの開きがあるほか、支持率とは直接の関係がない質問が含まれる傾向が強く、正直、これらの調査をもって有権者の声と決定づけるべきではないと考えていました。
さらには、これは現時点ではまだ「仮説」ではありますが、世論調査の多くは電話で実施されており、サンプルは携帯電話よりも固定電話に、回答者は若年層よりも中高年層に、それぞれ偏重する傾向があるように思えてなりません。
実際、『若年層ほど自民支持の状況を「民主主義の危機」=日経』でも取り上げたとおり、日経新聞に11月7日付で掲載された次の記事によれば、日本経済新聞社が出口調査や自治体ごとの得票データで分析したところ、40歳未満だけに限定して集計すれば、自民党が300議席近くを獲得していたそうです。
日本に潜む分断 衆院選分析、40歳未満で自民300迫る
―――2021年11月7日 2:00付 日本経済新聞電子版より
日経はまた、同じ手法で60歳以上だけに限定して集計してみると、逆に自民党の議席は223議席にとどまり、単独過半数(233議席)を10議席も下回っていたことが判明した、などとしています。
これ自体は、「なぜ世論調査の結果と実際の選挙結果に分断があるのか」などを考えるうえでも、大変興味深い調査結果ですし、若年層ほど新聞やテレビを見ない人の割合が増えるという調査結果(『紙媒体の新聞から10代が離れた』等参照)とあわせて考えるならば、大変示唆に富んでいます。
ちなみに日経新聞のこの記事では、末尾にこんな余計な一文が付け加えられています。
「衆院選で垣間みえた分断の芽を摘むことができなければ、米国のような政治の二極化、民主主義の危機ともいえる状況が日本でも進みかねない」。
ここでいう「分断の芽」とは、若年層と高年層で投票行動が分断されていることなのだと思います。
ただ、「社会のインターネット化に順応した若年層が自民党に投票している」とする当ウェブサイトなりの長年の仮説が正しければ、その社会的分断については、べつに「分断の芽」とやらを摘まなくても、放っておけば解消します。
おそらく新聞、テレビを見る人の人数は、これから減ることはあっても増えることはないからです。
最新の内閣支持率
もっとも、世論調査を読む際には、実施するメディアによって自民党政権への支持率に高い、低いという傾向があること、といった「癖」を理解したうえで、複数のメディアの調査を同時点で比較すること、同一メディアの調査を異時点で比較することなどを心がければ、世論調査もそれなりに役立ちます。
当ウェブサイトで観測している6つの調査のうち、10月31日の衆院選以降に実施されたものが、現時点で3つあります。それらの内閣支持率は、図表1のとおりでした。
図表1 内閣支持率(2021年11月)
メディアと調査日 | 支持率(前回比) | 不支持率(前回比) |
---|---|---|
読売新聞(11/1~2) | 56.0%(+4.0) | 29.0%(▲1.0) |
朝日新聞(11/6~7) | 45.0%(+4.0) | 27.0%(+1.0) |
日経・テレ東(11/10~11) | 61.0%(+2.0) | 27.0%(+2.0) |
(【出所】各社報道より著者作成)
岸田内閣に対する支持率は総じて高位安定しており、支持率は不支持率を大きく上回っていることが確認できます。朝日新聞の調査結果だと、読売新聞のものと比べ、支持率が10ポイント以上低いのですが、このあたりは当ウェブサイトでいうところの「メディアの癖」のようなものでしょう。
ただ、政権発足直後かつ衆院選直後には支持率が高く出る傾向があるため、今後の支持率については要注意でしょう。ことに、約8ヵ月後の来年7月には参議院議員通常選挙が控えていますので、選挙結果次第では政局もあり得なくはありません。
実際、日経・テレ東が実施した調査項目だと、例の「18歳以下への給付」を巡って、「消費喚起策としては適切でない」とする回答が67%に達していた、といった結果も出ています。
18歳以下給付「不適切」67% 内閣支持率61%横ばい
―――2021年11月11日 23:00付 日本経済新聞電子版より
この給付金については、当ウェブサイトでは『効果に疑問:子供1人10万円相当現金・クーポン支給』などでも述べたとおり、正直、個人的にはその効果には大変な疑問もあるのですが、日経・テレ東の世論調査における尋ね方はともかくとして、経済失策が続けば、支持率などあっというまに吹き飛ぶかもしれません。
それに、個人的には「内閣支持率など全幅の信頼を寄せるべきではない」と考えている反面、やはり、自民党内、政権内部などでは、支持率についてはいまだに気にしているフシがあります。
菅義偉総理大臣が事実上の辞任に追い込まれたのも、一部の報道によれば、内閣支持率が低迷したからだ、などとされていますが、同様に内閣支持率が今後低迷すれば、岸田文雄・現首相に対する「岸田おろし」という動きが出てこないとは限りません。
政党支持率で立憲民主と維新が逆転し始めた
もっとも、自民党はさきの衆院選で15議席ほど勢力を減らしたものの、メディアの大方の予測に反し、過半数を大きく上回る261議席を獲得し、公明党とあわせた連立与党全体の勢力は、依然として衆院の絶対安定多数(261議席)を超えています。
これについてはむしろ、立憲民主党が公示前の106議席から96議席と勢力を落とし、100議席の大台を割り込む敗北を喫したという「敵失」によるものが大きいのかもしれませんが、現在のままでいけば、8ヵ月後に立憲民主党が有権者の支持を大きく回復するということは期待し辛いでしょう。
その証拠が、政党支持率です(図表2)。
図表2 政党支持率(2021年11月)
メディアと調査日 | 自由民主党 | 立憲民主党 | 日本維新の会 |
---|---|---|---|
読売新聞(11/1~2) | 39.0% | 11.0% | 10.0% |
朝日新聞(11/6~7) | 36.0% | 9.0% | 9.0% |
日経・テレ東(11/10~11) | 44.0% | 9.0% | 13.0% |
(【出所】各社報道より著者作成)
これは、なかなか興味深い調査結果です。
立憲民主党は勢力を減らしたとはいえ、依然として「最大野党」なのですが、政党支持率だけで見たら、「フタケタ」台は読売新聞のものだけで、それ以外はすべて「ヒトケタ」台に低迷。さらには支持率で日本維新の会にほぼ追いつかれ、メディアによっては追い抜かれています。
もっとも、この調査結果は、逆に、日本維新の会に有利すぎるように思えてなりません。
今回の選挙でも日本維新の会は41議席を獲得し、公示前勢力(11議席)から4倍近くに勢力を伸ばしましたが、それでも議席数だけで見たら、立憲民主党が96議席で日本維新の会の倍以上だからです。
また、比例に限っても、立憲民主党は「惨敗」したとされるわりに1149万票(※得票率20%)で39議席を獲得したのに対し、日本維新の会は「躍進した」とされるわりに805万票(※得票率14%)で25議席でしたので、政党支持率とはずいぶんと大きな差があるように思えてなりません。
このように考えていくならば、今回の調査結果はちょっと誇張され過ぎていると見るべきか、それとも「調査結果がこれから現実に追いつく」のかについては、見極めが難しいところでしょう。
ただし、立憲民主党と日本維新の会は、立てた候補者の数も違いますし、維新は大阪などを中心とする「地域政党」色が依然として強いため、維新が議席のうえでも立憲民主党を逆転するためには、維新が今後、地域政党から全国政党に脱皮できるかどうかが大きなポイントなのかもしれません。
いずれにせよ、個人的にはスキャンダル追及型専門政党である立憲民主党には、「健全な野党」に脱皮していただくか、それとも国政の舞台からご退場いただくかのどちらかを選んでいただきたいと思っているクチですし、立憲民主党が支持率においても低迷しているというのは悪い兆候ではないと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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> 維新は大阪などを中心とする「地域政党」色が依然として強いため
とは言え、現状でも決して過小評価できません。
スコットランド民族党は庶民院全体で1割程度の議席数ですが、スコットランドの小選挙区の大半を制した事によってスコットランドに対する国の政策に影響を与える事ができてるようです。
今後、hung parliament になればcasting voteを握る事もできます。
維新については、大阪府住民ではない外部者の視点からみた私見ですが、大阪府のCOVID-19陽性者が多く推移したので、行政執行能力には疑問を持っていますし、大阪府の当選状況は、公明党との協調、大阪府の自民党は共産党との関わりがある結果とのことなので、実力以上に評価されている気がします。参院選では、候補をより広い範囲に立てると予想しますが、大阪府外では同じような結果は難しい感じがします。でも立憲との潰しあいになるなら歓迎です。自民とは潰しあってほしくないなぁ。
維新は保守だから自民党との潰しあいも起きるかも
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(そう自分に言い聞かせないと、素人が舞い上がってしまうので)
もしかしたら、政権批判の受け皿としての野党第一党の支持を除けば、(純粋な将来的期待値としての)立憲の政党支持率と維新の政党支持率は、すでに逆転しているのではないでしょうか。つまり、もし維新が野党第一党になれば、政権批判の受け皿としての支持が上乗せされるということです。だから、立憲も、政権批判の受け皿という支持率の下駄を、失うことを恐れているのではないでしょうか。そうだとすれば、政党支持の調査で、「政権批判の受け皿としての党」という項目を追加しなければなりません。
駄文にて失礼しました。
>政党支持率で立憲民主と維新が逆転し始めた
昨年辺りから、逆転する事は有った様に思いますが、維新が10%を超える事は、無かったでしょう。
立憲民主党の新代表、泉健太政調会長がトップ 緊急電話世論調査
https://www.nikkansports.com/m/general/news/202111110001164_m.html?mode=all
>調査全体では「分からない・無回答」が59・4%に上った。
泉氏、馬渕氏、小川氏の名前が上がったようですが、分からないが過半数という事です。
誰が党首になっても選挙の顔としては弱すぎで、人罪を除くと人材が居ない、立憲共産党の実態を反映しているでしょう。
う~ん、何となくで根拠もないですけど近い将来には自民>維新>国民>公明>>れいわ>>>共産>立民>他な感じになりそうな…
近い将来がどれくらい近いかもわかりかねますが、思ったより時が経過してしまうと共産が抜けて立民のとこに正式な立民共産(流石に党名は変更する?)が入ったりして…
あぁ、でもごく近い将来に立民左と立民かなり左に泣き別れ(分裂)する可能性の方が高いかなぁ?
れんげ草 様
共産党は、筆坂氏のようなのも居ますが、割れることは無いと思っていますし、他党との併合なども行わないと思います。そこは筋が通っていると思い、ある意味評価もしてます。
多分、党員の高齢化で、共産党のまま立ち枯れて行くのだろうと思っています。
分裂・併合はむしろ立民の方では無いでしょうか。党内右派は国民や維新に流れ、左派は社民の道をたどるような気がします。
https://www.sankei.com/article/20211111-VQRC4U5XI5LCZMK3WHEZVCP6NU/
東京都武蔵野市の事例だが
在留期間などの要件を付けずに外国人に住民投票の投票権を与える条例案が出た。
これは外国人に日本人と同条件で住民投票権を与える初めての事例だ。
武蔵野市の松下市長は立憲・共産・社民の推薦で当選している。
説明は不要だろう。
立憲、共産の衰退、退潮は明白で党首もそれを認識している。
なりふり構わない強引な手法が見られるのではないか?
今後、このような事例が全国で発生することが想定される。
決して注意を怠ってはならない!
>「健全な野党」に脱皮していただくか、それとも国政の舞台からご退場いただくかのどちらかを選んでいただきたい
もちろん後者しか選択肢はありません!
日本維新の会 衆議院議員数推移❶2012年54議席❷2014年41議席❸2017年11議席❹2021年41議席
前々回 様
2012年の結党時は自民・みんな・太陽などからの合流組が13名も居ました。
それを差っ引くと41名ですね。
2017年は分裂の影響で大阪だけに逼塞してた時代です。
まあ実力としては30~40名くらいでしょう。
今回、認知度を上げたのでどれくらい伸ばせるか、です。