韓国の「対北ビラ禁止法案」に米議会と国際社会が懸念

本稿は、ショートメモです。昨日の『韓国の政治経済を壊して去り行く文在寅政権が残す教訓』でも取り上げた、「対北ビラ散布禁止法」を巡って、米国で強い反発が続いているようです。とくに、来年1月にクリス・スミス議員(共和党)が主導して米議会で人権委員会による聴聞会が予定されているのだそうですが、韓国メディアは昨日、韓国政府が米国の懸念に「趣旨を説明する」と述べた、と報じています。

対北ビラ散布禁止法の衝撃

昨日の『韓国の政治経済を壊して去り行く文在寅政権が残す教訓』では、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)政権が自称元徴用工問題のみならず、国内外にさまざまな問題を作るだけ作って、おそらくそれらを片付けずに去っていくだろう、とする観測を提示しました。

そして、文在寅政権が作り上げた懸案のひとつが、北朝鮮が要求して立法化した、対北ビラ散布禁止法です。

これは、今月14日に韓国国会で成立した「改正南北関係発展法」に盛り込まれたもので、軍事境界線付近で北朝鮮に向けてビラを散布したり、拡声器使用のような行為をしたりすることを禁止するものです。違反者には3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金などが科されるのだとか。

ただ、この法律を巡っては、国際社会からもかなりの批判が寄せられているようです。

たとえば、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先週、「聖書やK-popを北朝鮮に送ると韓国で収監されることになった」とする記事を配信しています。」

Sending Bibles and K-Pop to North Korea Can Now Land You in a South Korean Jail

―――米国時間2020/12/15(火) 08:37付=日本時間2020/12/15(火) 22:37付 WSJより

WSJは文在寅政権が北朝鮮との関係を深めようとしてこの法律を推進したなどとしつつ、米議会の人権委員会で共同議長を務めるクリス・スミス議員(共和党、ニュージャージー州)が国務省の年次人権報告書で、「韓国が監視リストに載せられるのは間違いないだろう」と述べた、などとしています。

また、WSJの記事では、昨年発生した、北朝鮮の漁師2人が韓国に亡命を求めた事件で、韓国がこの2人を北朝鮮に送還したことなどを引用したうえで、「韓国のような国が北朝鮮に対して毅然とした対応を取っていない」と批判的に報じているのです。

ちなみに与党「ともに民主党」の関係者はこの法案について、「国境近くに住む韓国国民の安全を守るとともに、南北朝鮮間の合意を維持するために必要な措置だ」などと述べたのだそうですが、北朝鮮への継続的な情報流入が必要と考える米国側の理解が得られるとも思えません。

康京和氏「表現の自由は絶対のものではない」

一方、『サンケイビズ』が一昨日に報じた内容にも、なかなか驚きます。

韓国・文政権「表現の自由侵害」と国際社会から批判浴びる

―――2020.12.21 20:58付 SankeiBizより

サンケイビズによれば、国連で北朝鮮の人権問題を担当するキンタナ特別報告者が16日、この法に施行前の再検討を促す異例の勧告を行ったところ、韓国・統一部当局者は翌17日、キンタナ氏の勧告に遺憾を示すなどのやりとりがあったそうです。

さらに、康京和(こう・きょうわ)外交部長官は米CNNテレビのインタビューで「表現の自由は重要な権利だが、絶対的なものではない」などと述べたそうです。

英語に堪能な康京和氏のことですから、おそらく英語で直接述べたのかもしれませんが、これは大変に恐ろしい話です。韓国という国が自由主義陣営に属していながら、表現の自由を「絶対的なものではない」などと言い放ったのですから。

韓国外交部当局者「米国に説明をする」

サンケイビズは米議会が本件を巡って来年1月、超党派の議員で作る人権機関が聴聞会を予定している、としていますが、こうしたなか、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)には昨日、こんな記事も掲載されていました。

対北ビラ散布禁止法 米国の懸念に「趣旨説明する」=韓国

韓国外交部の崔泳杉(チェ・ヨンサム)報道官は22日の定例会見で、北朝鮮に向けた体制批判の<<…続きを読む>>
―――2020.12.22 16:23付 聯合ニュース日本語版より

聯合ニュースによると、韓国外交部の崔泳杉(さい・えいさん)報道官は22日、「米国側に法律の趣旨をよく説明する」としたうえで、「今後も韓国政府は米国を含む国際社会との意思疎通をさらに強化することで、この法案に対する幅広い理解を求めていく予定」などと述べたのだそうです。

ただ、崔泳杉氏は同法案が「韓国国民の生命と安全の保護に向けた必要最小限の制限である」などと述べたのだそうですが、この説明に米議会が納得するかどうかはよくわかりません。そして、崔泳杉氏は来年の聴聞会についても、「関連動向を把握し、留意している」と述べるにとどめたのだとか。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、今回の法案、米国にとっては、「北朝鮮に対する圧迫を加えることで非核化を実現する」という長期戦略を、米国の同盟国である韓国自身が妨げた、ということであり、WSJが報じたとおり、米国が韓国を「人権監視対象国」に指定するという意趣返しをする可能性はあるでしょう。

ただ、それ以上に西側諸国に衝撃を与えているのは、中国や北朝鮮と異なり、曲がりなりにも自由・民主主義国だと考えられていた韓国で、このような共産主義国と見まがうような法案が通ってしまったことではないでしょうか。

いずれにせよ、文在寅政権の5年で韓国は名実ともに「西側」ではなくなってしまう、ということなのかもしれません(※もっとも、韓国は1980年代まで独裁国家でしたから、そこに戻るだけだ、という言い方もできるのかもしれませんが…)。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    ドーラなら「戦時国家が思想統制して何が悪い!」と机を叩きながら言ってくれるかも。

  2. 藪彦 より:

    更新を有難う御座いました。

    さて、民主主義を謳歌する文明国家では「自由、平等、信義・信頼、相互尊重、規則や約束の公平性と順守」が社会の基礎となっていますが、韓国では「人間関係には上・下と我・彼の二次元があって、上の者は下の者や他人に対しては規則も約束も破っても構わないし、そもそも規則は自分達には適用されるべきではない」が大前提です。

    つまりこれまで韓国は米国のお陰で一応の文明国家としての体裁を保って来ましたが、文政権の下では韓国人の本能が打ち勝ち、親分である文大統領の命令通りに政治が動かされるようになりました。(文命国家? 文主主義?)

    北朝鮮と韓国の国民の本質はレッドチームかブルーチームに属するか以外には大した違いはありません。

  3. 匿名 より:

    北朝鮮との統一に向けて、計画的に韓国の仕組みを北朝鮮に少しずつ近づけているみたいですね。
    突然、自由を制約された独裁制に切り替わるのではなく、徐々に移行していくプランが実行中なのでは?
    そう考えると最近の動きがしっかりきます。

  4. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    韓国を一応、極東では日本に次ぐ自由主義、民主主義国家とボンヤリ思っていた西欧人、米国人らは北朝鮮人に阿る国、平和主義の国では無いとやっと思い知ったでしょう。

    「38度線でビラ撒くな!」「わかりました。仰る通りにします」(爆笑)。韓国民に向かって「いいか!伝単や拡声器はダメダゾ」、、、はて、主権国家でしょうか?

    文大統領になってから北へ北へと風が靡く。ここまで民主主義国家らをコケにしたら、南北共に監視対象国です。いっそのこと、もっと激しく民族同士の対立を激しくやってくれんかな。火の粉が飛んで来ないことを祈る。

  5. イーシャ より:

    国際社会が朝鮮人というものを正しく理解するきっかけになるといいですね。

  6. 匿名 より:

    表現の自由は絶対的なものではないというのは、名誉毀損だったりデマだったりする類のものはそうでしょう

    でも北朝鮮向けのほとんどはそういったものではないと思います

  7. 匿名 より:

    使えるネタはいくらでも転がっているわけで

    謎の日本政府関係者か、
    与党で大臣になれそうもない人で、
    韓国側のこういう行動を煽ってみればとは思うけど

    日本側「韓国人権だめだよねー」
    韓国側「日本のロビーで英米が非難してくるっ」
    英米側「韓国何も理解してねーな」

    こんな風に都合よく上手く行くはずはないですが、
    似たような方法でハメられてるのが慰安婦問題で

    ココで制裁についての議論が何回かありましたけど、
    もっとワルイ方法を考えたほうがよいと思いますよ

  8. りょうちん より:

    チラシの空中散布は、戦後、多くの国で既に法的に禁止されております。
    なんで韓国だけが責められるのでしょうかw
    (つい最近までやってたからですがな)

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