「中国に飲み込まれる韓国観光」2016年11月版

本日は予定を変更して、2本目の記事を掲載します。これは「韓国観光公社」が公表する最新の韓国観光統計に関する資料をまとめたものです。ポイントは、「韓国から離れた日本人が戻ってこないこと」、「韓国を訪問する外国人のほぼ半数が中国人であること」、「韓国が日本を訪問するトランジット客を『入国者』にカウントしている疑いがあること」、です。

本日も予定外の「2回目の更新」です。以前掲載した『韓国観光統計:中国人に飲み込まれる韓国観光』のアップデート版です。

客観的数値に見る「韓国入国外国人数の推移」

韓国観光公社ホームページ(※韓国語)に昨日、「韓国観光統計」の11月版(10月までのデータ)が公表されました。これを加工しておきましょう。

2016年10月までの累計データ(12か月ベース)

まず、公表されているデータについて、「前年11月から当年10月までの12か月間の累計値」を計算したのが、「12か月ベース」の数値です。数値については図表1、グラフ化すると図表2の通りです。

図表1 韓国に入国した外国人(総数、日本人、中国人)【前年11月から当年10月までの12か月間累計値、単位:千人】
年度外国人入国者日本中国
20076,0752,2641,020
20086,4752,2641,177
20097,5023,0481,313
20108,3693,0101,824
20119,1723,1632,142
201210,8453,6732,770
201311,7032,7874,175
201413,5382,3685,798
201512,8981,8635,893
201616,5802,2127,988
図表2 韓国に入国した外国人【前年11月から当年10月までの12か月間累計値、単位:千人】

20161122-sk-visit-12m

ここからわかることは、次の通りです。

  • 2016年における外国人の韓国入国者数は約1658万人で、2015年の数値(約1290万人)と比べると約368万人増加している
  • 2016年における日本人の韓国入国者数は約221万人で、2015年の数値(約186万人)と比べると改善しているが、2014年の数値(約237万人)より落ち込んでいる
  • 2016年における中国人の韓国入国者数は約799万人で、2015年の数値(約589万人)と比べ、さらに200万人以上増加している

2016年10月までの累計データ(10か月ベース)

次に、公表されているデータについて、「当年1月から10月までの10か月間の累計値」についても確認しておきましょう(図表3図表4)。

図表3 韓国に入国した外国人(総数、日本人、中国人)【前年11月から当年10月までの10か月間累計値、単位:千人】
年度外国人入国者日本中国
20075,0911,864885
20085,4111,891993
20096,3302,5611,139
20107,1162,5181,620
20117,8092,6581,887
20129,1873,0422,436
201310,0792,3103,774
201411,7521,9305,246
201510,7401,5135,011
201614,3591,8877,015
図表4 韓国に入国した外国人【前年11月から当年10月までの10か月間累計値、単位:千人】

20161122-sk-visit-10m

ここからわかることは、次の通りです。

  • 2016年における外国人の韓国入国者数は約1436万人で、2015年の数値(約1074万人)と比べると362万人増加している
  • 2016年における日本人の韓国入国者数は約189万人で、2015年の数値(約151万人)と比べると改善しているが、2014年の数値(約193万人)より落ち込んでいる
  • 2016年における中国人の韓国入国者数は約702万人で、2015年の数値(約501万人)と比べ、さらに200万人以上増加している

韓国入国外国人比率

最後に、韓国入国者に占める外国人の比率の推移も確認しておきましょう(図表5)。

図表5 韓国入国者に占める国籍の比率

20161122-sk-visit-share

データから客観的にわかること

それでは、ここから先は、「データから客観的にわかること」について、一つずつ確認していきましょう。

「2015年11月から2016年10月までの12か月間」の訪韓外国人動向を再掲します。

  • 2016年における外国人の韓国入国者数は約1658万人で、2015年の数値(約1290万人)と比べると約368万人増加している
  • 2016年における日本人の韓国入国者数は約221万人で、2015年の数値(約186万人)と比べると改善しているが、2014年の数値(約237万人)より落ち込んでいる
  • 2016年における中国人の韓国入国者数は約799万人で、2015年の数値(約589万人)と比べ、さらに200万人以上増加している

全体的な動向

まず、韓国を訪問した外国人全体が非常に増えており、前年比プラス368万人と非常に増えています。ただし、2015年は「MERS騒動」の影響もあり、世界的に韓国が訪問先として嫌気されていたという事情もあります。しかし、そのさらに前年である2014年(約1354万人)と比べてもプラス304万人となっており、全体として訪韓外国人が増えていることは間違いありません。

観光客の中国依存

ただし、増加している要因のうち、その多くは中国人観光客です。

以前、当ウェブサイトでは『訪日観光客2000万人計画に「穴」はないのか?』の中で、日本の場合、「2015年9月から2016年8月までの12か月間」で、訪日外国人人数が2292万人に達し、過去最高となったという話題を紹介しました。ただ、日本の場合は、訪日外国人の出身国割合で見ると、中韓両国出身者が訪日外国人の約47%を占めていて、「特定国に偏り過ぎるのは問題だ」と申し上げました。

そして、韓国の場合の「観光客の中国依存度合」は日本よりもさらに酷く、中国一カ国だけで、訪日外国人全体の49%と、ほぼ半数を占めています。上記図表5からもわかるとおり、近年、韓国の観光客の伸びは中国人が強力に牽引している格好となっています。

離れた日本人が帰ってきていない

データからもうひとつわかることがあります。それは「日本人の韓国離れ」です。

確かに、2016年の日本人の韓国入国者数は約221万人で、前年(約186万人)と比べて35万人増えています。しかし、前述の通り、2015年はMERS騒動のため、もともと訪韓外国人数自体が落ち込んだ年でもあります。そして、2016年の約221万人という数値は、一昨年(2014年)の約237万人と比べて、むしろ16万人ほど減少しています。

訪韓日本人数は2012年に約304万人という過去最高を記録したものの、2012年8月に韓国の大統領だった李明博(り・めいはく)が日本領の竹島に不法上陸するなどしたことを契機に、日本人の「韓国離れ」が一気に加速。ピーク時はおろか、「韓流ブーム」が発生する前の水準をも割り込みそうになっているというのが現状ではないでしょうか。

結局、「トランジット」を入国者にカウントしているの?

私自身は以前から、韓国観光公社が公表する外国人入国統計は、「トランジット」客で相当に水膨れしているのではないか、とする仮説を持っています。韓国国内のメディアによれば、仁川(じんせん)国際空港は「トランジット・ハブ」を目指す戦略を採用しており、日本人などの「トランジット需要」を取り込むことで入国者を水増ししている疑いが濃厚です。ただし、その仮説を直接、検証する手段はありません。

もちろん、仁川国際空港には「無料のトランジット・ツアー」のメニューが充実しており、こうした「トランジット・ツアー」に参加する人が「韓国に入国した」とカウントされていることは間違いないでしょう。このこと自体は別に「統計上の不正」ではありません。ただ、外国人が「トランジット・ツアー」に参加したところで、別に韓国の観光収入が潤う訳ではないとは思いますが…。

いずれにせよ、韓国を訪れる日本人が激減していることは事実ですが、韓国としては別に悩むことではありません。なぜなら、韓国が「トランジット戦略」を一種の「国家戦略」と位置付けている以上、日本を訪れる外国人が増えれば増えるほど、「日本人以外の外国人が日本を訪れるために韓国でトランジットをする」という需要を取り込むことができるからです。

実際、「日本人の韓国入国者数」は激減していますが、2016年における「日本人と中国人以外の外国人」の韓国入国者数は2015年と比べて約124万人増加しています。私は、この増加した部分のかなりが、「日本を訪れるために韓国・仁川国際空港を経由した欧米人観光客」ではないかと睨んでいるのですが、これについては引き続き、調査を続けたいと思います。

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