日本国債がデフォルトする日は絶対に来ない

先日、「国の借金が1062兆円で過去最大に」、「国民1人あたり837万円だ」、などのショッキングなニュースが流れました。「国の借金が増えすぎれば絶対に財政破綻するに違いない」、といったロジックです。ただ、こうしたロジックには基本的な誤りがあります。本日は、「資金循環統計」という「きちんとした根拠」をベースに、「財政破綻論」の大誤りを指摘しておきたいと思います。

近況報告

我ながら凄いと思うのは、最近、新著(金融商品会計に関する専門書)、新聞のコラム、経理雑誌の原稿などに加え、研修会資料を常時2~3本抱えていて、このウェブサイトまで更新している、ということです。そして、多忙ゆえに、こちらのウェブサイトに投稿した記事を後から読み返すと、書式設定ができていなかったり、段落の位置がおかしかったりすることがあります。

ただ、それでも嬉しいことは、当ウェブサイトが開設4か月目を迎え、もう少しで1か月のアクセス件数が1万件の大台に乗せるところまで来た、ということです。こんなマニアックなウェブサイトですが、アクセスしてくださる皆様には、改めて深く御礼申し上げたいと思います。

「国の借金」という報道

先日、「国の借金が1062兆円で過去最大に」、「国民1人当たり837万円だ」、というショッキングなニュースが流れました。また、「国の借金を返すために預金封鎖が行われる」、といった衝撃的な報道も流れています。

預金が下ろせなくなる? 国の借金1000兆円を国民に負担させた「預金封鎖」とは(2016/10/31 07:00付 週刊朝日より)

事実だとしたら大変なことです(もっとも、賢明な方であれば、報じているのが慰安婦問題を捏造したことで知られる朝日新聞の系列組織であることを考えると、「リンク先の記事は怪しい」と気付かれるかもしれませんが…)。

ただ、こうした「ショッキングな報道」は、誤りであるばかりでなく、時として「有害」ですらあります。

そこで、本日はこの「国の借金」と「財政破綻」という二つの用語に焦点を絞り、「何がおかしいのか」について説明を試みたいと思います。

「国の借金」とは何か?

「国の借金」という言葉遣いは間違い

さて、最初の間違いは「国の借金」という用語です。マクロ経済学上、こんな奇怪なで不正確な用語は存在しません。「国全体」には、家計部門、企業(非金融法人企業)部門、政府部門などの主体や、これらの主体相互間で資金融通を担う金融仲介機能が存在します。「国の借金」と表現すると、あたかも「国全体が借金を負っている」かのように聞こえてしまい、極めて不適切です。

マクロ経済的に正しい用語は、「政府部門の金融負債」です。

日本銀行が公表する「資金循環統計」によると、2016年6月末時点で、一般政府部門(中央政府+地方政府)の「金融資産・負債バランス」は、次のような状況となっています(図表1)。

図表1 2016年6月末の一般政府部門の金融資産・負債バランス
金融資産金融負債
株式等110兆円借入金160兆円
対外証券投資161兆円国庫短期証券118兆円
その他の金融資産261兆円国債880兆円
その他の金融負債119兆円
金融資産 合計532兆円金融負債 合計1277兆円

この「一般政府部門」のバランスを眺めてみると、負っている金融負債の額は1277兆円です(なお、「その他の金融負債」の中には地方債74兆円が含まれています)。ちなみに、この金額、先ほどの報道にあった「国の借金」の金額(1062兆円)とは全く一致していません。その理由はとても簡単です。「国の借金という定義が間違っているから」です。

日本の政府部門は財政危機ではない!

少し時点は違いますが、2016年6月末の「国債発行残高」を確認しておきましょう(図表2)。

図表2 2016年6月末の国債発行残高
発行体国債の区分金額
中央政府国庫短期証券118兆円
中央政府国債880兆円
財政投融資資金財融債108兆円
合計1075兆円

つまり、先ほどの報道にあった、「国の借金は2016年9月末時点で1062兆円である」という情報は、おそらく、「国庫短期証券・国債・財融債の発行残高」のことを意味しているのでしょう。仮にそうだとすると、用語として極めて不正確です。

正しい用語を使うなら、

  • 中央政府と地方政府の金融負債の合計額は1277兆円(うち中央政府の金融負債の合計額は1058兆円)
  • 中央政府の国債発行残高は998兆円、財政投融資資金の財融債発行残高は108兆円、両者を合算して国債の発行残高は1075兆円

です。

しかも、一般政府部門には、確かに1277兆円という「莫大な借金」(?)があるようにも見えますが、同時に532兆円という莫大な金融資産も保有しているのです。しかも、これに、中央官庁が保有している土地・建物、公共施設などの有形固定資産などの価値は含まれていません。

というわけで、政府部門の純粋な債務(金融資産・負債差額)の金額は745兆円(!)に過ぎません。

なお、「国債」とは「財務省が発行する債券」であり、「財政法」、「東日本大震災復興財源法」、「特別会計に関する法律」など、いくつかの法律に基づいて発行されるものです(図表3)。

図表3 国債の発行根拠法
国債の種別使徒発行根拠法
建設国債公共事業、出資金、貸付金の財源確保財政法第4条第1項但書
特例国債(赤字国債)公共事業等以外の歳出に充当毎年の特別の法律
年金特例国債基礎年金の国庫負担の追加に税収確保までのつなぎ資金財政運営特例法
復興債東日本大震災の復興東日本大震災復興財源法
借換債普通国債の償還額の一部借換に充当特別会計に関する法律

ただし、「国債」が「一般政府部門の負債」の全てではありません。

一般政府部門は民間金融機関などからお金を借りていますが(いわゆる証書貸付金)、この「借入金」部分については国債と異なり、流通市場で活発に取引されているという訳ではありません。

いずれにせよ、朝日新聞を含めたマス・メディアは、どうやら「国債の発行残高」のことを「国の借金」と呼んでいるようです。しかし、正確な議論をするうえでは、たとえば日本銀行の資金循環統計などの統計の知識は必須です(ちなみに資金循環統計自体は日本銀行ウェブサイト「時系列統計データ検索サイト」に行けば誰でも手に入れることができます)。マス・メディアが頑なに誤った用語を使い続ける理由は、単に朝日新聞をはじめとするマス・メディアが不勉強なだけなのだと思います。

「財政破綻」とは何か?

次に、「財政破綻」という用語についても調べてみましょう。

「財政破綻」という悪質な用語

こちらの「財政破綻」については、かなり悪質です。使用法としては、

  • 「日本は国の借金がGDPの200%を超えているから、必ず財政破綻する」
  • 「借金がたくさんあるから、日本は必ず借金が返せなくなって財政破綻する」

といったものがあります(ちなみに「国債発行残高がGDP比200%を超えると借金を返すことができない」という議論は、経済学的には大間違いです)。

ただ、この「財政破綻」という用語、恐ろしい印象の割に、何を言っているのかさっぱり理解できません(図表4)。

図表4 「財政破綻」のイメージ
項目概要備考
国債の債務不履行発行した国債が返せなくなってしまうこと自国通貨建てでの国債の債務不履行は発生しない
貨幣の価値の暴落日本円という通貨の信認が損なわれ、通貨の価値が暴落すること日本の場合、円安になるとなぜか株高となるが、その矛盾は説明できない
キャピタル・フライト日本から外資が一斉に資金を引き揚げてしまうこと日本は世界最大の純債権国であるという事実を無視している

強力過ぎる家計資産残高

じつは、ここに挙げた3つは、いずれも「現在のデフレ下の日本」では、絶対に発生しない現象ばかりです。

なぜそれが発生しないかといえば、資金循環統計を見ればすぐにわかることです。日本は家計部門が強力な資金ポジションを持っています(図表5)。

図表5 2016年6月末の家計部門の金融資産・負債バランス
金融資産金融負債
現金・預金920兆円借入金317兆円
株式等231兆円その他の金融負債65兆円
保険・年金520兆円?―
その他の金融資産76兆円?―
金融資産 合計1746兆円金融負債 合計383兆円

日本の家計が保有している金融資産の総額は、実に1746兆円(!)と、マスゴミさんのいう「国の借金」の約1.7倍に達しています。また、日本は家計部門の債務が少ないという特徴もあり、金融負債の総額は383兆円に過ぎず、金融資産から金融負債を差し引いた差額(金融資産・負債差額)は実に1363兆円(!)と、これも「国の借金」とやらの金額の約1.4倍に達しています。

ちなみに、ここに挙げたのは「金融資産」だけの話であり、家計部門が保有している不動産などの資産は計上されていません。つまり、日本の家計は、いわば「世界最強」クラスの金融資産を持っているのです。

これでどうやって「財政破綻」が発生するというのでしょうか?

国内で使いきれないお金が海外に出ていく!

単純に考えて、「金融商品」には、「誰かから見た資産は他の誰かから見ると負債である」、という性質があります。先ほど、「一般政府部門」の純債務が745兆円、「家計部門」の純資産が1363兆円という話を紹介しました。単純に考えて、「618兆円(=1363兆円-745兆円)」を誰かが借りている、という計算になるはずですが、この金額はいったいどこに行ったのでしょうか?

一つは、資金需要主体である「非金融法人企業」に流れて行っています(詳細は省略しますが、非金融法人企業の金融資産・負債差額は476兆円です)。

そして、もう一つこそが、「国内で使いきれずに海外に行っている」、という現象です。ここで、「海外部門」の金融資産・負債バランスを確認してみましょう(図表6)。

図表6 2016年6月末の海外部門の金融資産・負債バランス
金融資産金融負債
貸出金157兆円借入金130兆円
債券137兆円対外直接投資129兆円
株式等166兆円対外証券投資519兆円
その他の金融資産117兆円その他の金融負債126兆円
金融資産 合計577兆円金融負債 合計904兆円

いかがでしょうか?

「海外部門」は「日本全体」から見た「日本国外」という部門を意味しているので、「海外部門から見た金融資産」は「日本全体から見た金融負債」、「海外部門から見た金融負債」は「日本全体から見た金融資産」のことです。

これを見ると、「海外部門が日本に保有している金融資産」は577兆円であるのに対し、「海外部門が日本から借りている資金」は実に904兆円(!)で、日本全体で実に328兆円もの対外純債権を保有している計算です。

対外純債権328兆円と国債発行残高は表裏一体の関係

ここまで説明すればわかりますね。

日本全体でお金が有り余っているからこそ、海外にお金が出て行っているのです。「対外証券投資」(主に米国債などの外国債券)の残高だけで、すでに519兆円です。日本銀行が巨額の金融緩和を行っているという影響もあり、金融機関による外債保有残高は積み上がるばかりです。

こうなってしまった理由の一つは、国債の発行残高にあります。それは、

国債の発行残高が少なすぎること

です。そして、資金循環バランス的に言えば、日本国政府はさらに300~500兆円程度、国債を増発する余力があるのです。日本の最大の問題は、「国の借金」ではなく、家計がお金を貯め込み、使わなさ過ぎることです。

財政破綻について論理的な説明を見たことがない

「国の借金」が多すぎるから「財政破綻」するに違いない、といったいい加減な言説は、もともとは増税原理主義者の財務省が唱えている「トンデモ理論」です。ただ、不勉強なマス・メディアの記者らは、こうした財務省の唱えるロジックにコロッと騙され、冒頭に紹介した「週刊朝日」のように、有害な間違い記事を堂々と垂れ流している状況にあります。

ところで、「ギリシャはGDPの債務比率が200%に達していなかったのに『財政破綻』したじゃないか」、という反論があることは、私も十分承知しています。しかし、これについて議論するためには、「自国通貨と外国・共通通貨の違い」について知っておくことが必要であり、本日はこの議論には入りません。

いずれにせよ、「資金循環統計」という「誰でも手に入れられる統計」すら読まずに「財政破綻」を議論する日本のマス・メディアの低レベルさには呆れますが、我々日本国民が正しい知識を持てば、消費増税が全く必要ないばかりか、むしろ消費税法自体を廃止するくらいの政策が望ましいとさえいえる、とわかるのではないかと思います。

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