安倍総理の所信表明演説から読み解く価値と利益の外交

以前から当ウェブサイトでは、「外交というものは難しくない」と申し上げてきました。なぜなら、国もしょせんは人の集合体なので、国と国とのお付き合いも「人間関係の延長」で理解すれば済む話だからです。これに加えて古今東西、ありとあらゆる国は「国益の最大化」をしなければならない、という共通点を持っています。これは、難しい言葉では「経済的利益と軍事的安全保障の両立」ですが、わかりやすい言葉でいえば「平和と繁栄」のことです。このような視点から、昨日の安倍総理の所信表明演説にのなかで、「地球儀を俯瞰する外交」を読み解いてみたいと思います。

そもそも論の外交

国益とは何か、外交とは何か

最近になって、改めて考えているのが、そもそもの「国益」とは何か、「外交」とはなにか、という、概念的な話です。

といっても、べつになにも難しい話はありません。

国益とは、平たく言えば「平和と繁栄」のことであり、これは古今東西、ありとあらゆる国においてまったく変わりません。そして、外交もしょせんは国益を最大化する手段の1つに過ぎないのです。

ところが、意外な話ですが、この「外交とは国益を最大化する手段である」という点をわが国で最も理解していない人たちが、日本の外務省です。というのも、どうもわが国の外務省のなかには、外交とは「相手国と仲良くすることだ」と勘違いしている者も多数いるようなのです。

あえて実名を挙げることは避けますが、たとえば2015年7月、日本政府が明治期の産業革命施設の世界遺産登録を目指した際に、韓国から「強制労働が行われた施設である」などとするウソを吹っ掛けられるなど、猛烈な妨害を受けた事件がありました。

このときには外務省のユネスコ大使は「日本の産業革命資産の世界遺産登録」を優先するあまり、韓国が捏造した「強制連行」というありもしない与太話があたかも事実であるかのごとく認めてしまいましたが、これなどは「相手国に配慮する」という、外務省内の意味不明のカルチャーがなせる業ではないかと思います。

また、小泉純一郎元首相が首相在任中に北朝鮮を訪問した際、当時の独裁者で(2011年に死んだ)金正日が日本人拉致を認めたのですが、当時の外務省の審議官が一時帰国した日本人らを再び北朝鮮に戻せと主張した(らしい)と伝えられていることも、外務省という組織の問題を象徴しています。

ただ、最近だとインターネット環境が普及しつつあることで、外務省や新聞・テレビなどのオールドメディアに依存せずに情報を入手する人々が増えて来ました。

そして、有権者である私たち日本国民の間で、そもそも論としての「外交とは何か」に関する正確な理解がインターネットなどを通じて広まっていくことで、日本政府に対しても「正しい外交をやれ」という圧力として働くことは間違いありません。

ここで、当たり前の話ですが、重要な議論をまとめておきましょう。

  • 国益とは、平和と繁栄のことである。
  • 外交とは、国益の最大化の手段である。

人間関係の延長で理解するのが正解

かつて似たような話を掲載したことがあるような気がするのですが、外交といえば「国と国との付き合い」ですので、何か難しい世界ではないかと思う人も多いのではないかと思います。しかし、国もしょせんは人の集合体ですので、外交は人間関係の延長で理解すべきものです。

私たち一般人の場合も、人間関係は「ウマが合う人」(たとえば友人、共通の趣味仲間など)か、それとも「利害関係」(たとえば職場の上司・同僚・部下、取引先・顧客、学校の先生・学友など)のどちらかで構成されているはずです。

2種類の人間関係
  • ウマが合う人…たとえば友人、共通の趣味仲間など
  • 利害関係…たとえば職場の上司・同僚・部下、取引先・顧客、学校の先生・学友など

友人の場合だと、非常にリラックスして付き合うことができるはずですが、利害関係の場合だと、その相手と話をするときに、やはり多少なりとも緊張するのではないでしょうか。

国家の関係もこれとまったく同じであり、基本的には「価値を共有する相手国」か、「利益を共有する相手国」のどちらかしかありません。

たとえば、日本は自由・民主主義国ですが、中国は共産党一党独裁国家であり、日中両国については図表1にまとめたとおり、国としてはお互いにまったく価値を共有していません(というよりも、ことごとく対立しています)。

図表1 日中の体制の違い
区分日本中国
政治体制民主主義(多党体制)共産党一党独裁
経済体制自由主義・資本主義社会主義市場経済
人権基本的人権の尊重基本的人権の無視
法治法治主義(法による支配)人治主義(共産党幹部による支配)
軍に対する考え方平和主義軍国主義

(【出所】著者作成)

ただ、日本と中国はそれぞれお互いに貿易をしたり、投資をしたりして、経済的には「ウィン・ウィン」の関係を目指そうとしていますし、また、中国を常に軍事的・内政的に牽制しておかないと、工作員を送り込んで来て日本社会を弱体化させようとして来るかもしれません。

つまり、「経済的利益を最大化するため」、あるいは「軍事的利益を最大化するため(=少なくとも相手国に攻め込まれないようにするため)」などの観点からは、中国とは利害関係に基づいて、最低限のお付き合いをしていかなければならないのです。

2種類の外交関係
  • 価値を共有するかどうか→人間関係でいえば「ウマが合うかどうか」
  • 利益を共有するかどうか→人間関係でいえば「利害関係を持つかどうか」

外交とは常に騙し合い

古今東西、外交とは常に、相手国が「価値を共有する国かどうか」、「利益を共有する国かどうか」という2つの軸から判断していかなければならなりません。これを簡単に分類すると、図表2のような4象限に分解できるでしょう。

図表2 価値と利益の外交軸
区分価値を共有する価値を共有しない
利益を共有する①価値と利益をともに共有する②価値は共有しないが利益は共有する
利益を共有しない③利益は共有しないが価値は共有する④価値も利益も共有しない

(【出所】著者作成)

価値を共有していれば、「同じ価値を持つ国」と仲良くすること自体が国益につながりますし、相手が「価値を共有していない」にしても、その国と付き合うことによって国益を最大化することができるならば、相手国に応じた付き合い方を通じて国益を最大化しなければなりません。

図表2の象限のなかで、一番重要な相手国は①ですし、一番無害な相手国は③でしょう。また、④の相手国に関しては、せいぜい最悪の事態(たとえば、戦争)などに陥らないように最低限、コントロールして放置すれば良いと思うのですが、この4つのなかで問題となるのは②です。

②の相手先は、相手との共通の価値(民主主義、自由主義、法治主義など)がないため、そもそもうまく話が通じない可能性が高いということであり、また、国益を最大化するためには否が応でも付き合わなければならない相手だからです。

その際に気を付けなければならないのは、繰り返しですが、「外交とは国益の最大化手段である」、という命題です。

たとえば、中国は隙あらば日本を出し抜こうとして来る国ですし、日本がナヨナヨしていれば、あっという間に工作員を送り込んで来て日本社会を骨抜きにしてこようとするでしょうし、日本の重要な軍事拠点などには諜報員が多数入り込んでいると考えるべきでしょう。

ただ、これはべつに「中国が悪い」という意味で申し上げているのではありません。

国などというものは、しょせんは常に「仮想敵国の弱体化」のための工作をする存在なのであり、相手国から諜報員、工作員、スパイなどを送り込まれているという前提で賢く立ち回らなければならないものなのです。

もっと言えば、たとえば「日中友好」にしたって、交渉のテーブルに着いてにこやかに握手をしながら、テーブルの下では相手の足を思いっきり蹴っ飛ばすくらいのことをすべきであり、また、日本政府も習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席を失脚させるだけのスキャンダルの1つや2つを持っておくべきでしょう。

本来、外交をうまくやるためには、このあたりの点がうまく理解できていなければならないはずなのですが、歴代の日本政府は外交が驚くほど下手であり、改めて振り返ってみると、日本国民の1人として非常に忸怩たる思いがします。

たとえば、日本政府が昔から「日韓友好」を大切にしてきたことは事実ですが、「日韓友好」が前提条件になってしまえば、外務省にとっては「日韓の友好関係を壊さないこと」が至上命題になってしまいます。

実際、朝日新聞が捏造した、いわゆる「従軍慰安婦問題」という与太話についても、確たる証拠もなく、また、むしろ慰安婦問題自体が「捏造である」という証拠がいくらでもあるにも関わらず、現在、国際社会では慰安婦問題が「日本軍による戦時性奴隷の問題だ」として罷り通ってしまっています。

あるいは、(当時は人口20万人だった)南京で30万人を虐殺したとされる「南京大屠殺」(※日本語では「南京大虐殺」ですが、中国人は「南京大屠殺」と呼んでいます)についても、まるでそれが歴史的事実であるかのごとく扱われてしまっているのです。

日本が本当に外交上手を目指すのならば、せめて史実に基づいて、韓国の「ベトナム戦争当時のライダイハン問題」や中国の毛沢東時代の文化大革命などを題材に、もっと大々的に全世界で中韓を貶めて廻るくらいの狡猾さを身に着けなければならないのかもしれませんね。

(※もっとも、「日本は中韓と同じ土俵に立て」といわんばかりの提言をすれば、それに違和感を抱く日本国民が多いのもまた事実だと思いますが…。)

安倍演説に見る2軸外交

どの国がどの象限に該当しているのか

さて、ここで気になるのは、「どの国がどの象限に該当しているのか」、という認識です。

これについては私たち日本国民自身も有権者として常に考えていかなければならないものでもありますが、ここで1つ参考になるのが、昨日、安倍晋三総理大臣が臨時国会の冒頭で行った「所信表明演説」ではないでしょうか。

第二百回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説(令和元年10月4日付 首相官邸HPより)

この演説のなかで、外交に関する記述をそのまま抜き出しておきましょう。

地球儀を俯瞰(ふかん)する外交

日米同盟を基軸としながら、我が国は、英国、フランス、豪州、インドなど基本的な価値を共有する国々と手を携え、自由で開かれたインド太平洋を実現してまいります。

沖縄の基地負担軽減に引き続き取り組みます。普天間飛行場の全面返還に向けて、辺野古への移設を進めます。昨年度の牧港補給地区に続き、今年度末に予定されるキャンプ瑞慶覧の一部返還に向けて準備を進めます。沖縄の皆さんの心に寄り添いながら、一つひとつ、確実に結果を出してまいります。

現下の北朝鮮情勢については、米国と緊密に連携し、国際社会と協力しながら、国民の安全確保に万全を期します。何よりも重要な拉致問題の解決に向けて、私自身が、条件を付けずに、金正恩委員長と向き合う決意です。冷静な分析の上に、あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動してまいります。

日中新時代を切り拓きます。来年の桜の咲く頃に、習近平国家主席を国賓としてお迎えし、首脳間の往来だけでなく、経済交流、青少年交流など、あらゆるレベルでの交流を拡大し、日中関係を新たな段階へ押し上げてまいります。

北方四島での共同経済活動が動き始めました。航空機によるお墓参りは三年連続で実現し、長門合意は着実に前進しています。領土問題を解決して、平和条約を締結する。一九五六年宣言を基礎として、交渉を次の次元へと進め、日露関係の大きな可能性を開花させてまいります。

韓国は、重要な隣国であります。国際法に基づき、国と国との約束を遵守することを求めたいと思います。

いかがでしょうか。

あえて図表2に示した4つの象限に当てはめていくならば、

  • ①価値と利益を共有する相手国…米国(※最も重要な相手国)、英、仏、豪、印など
  • ②価値は共有しないが利益を共有する相手国…中国、ロシア
  • ④価値も利益も共有しない相手国…韓国

と分類できるでしょう。

(※ちなみに余談ですが、「③利益は共有しないが価値を共有する相手国」については、あえて触れていないのだと思いますが、これは「あえて言及する必要がない」からでしょう)。

参考:安倍総理(令和元年10月4日)

(【出所】首相官邸HP)

また、北朝鮮については安倍総理にとっては「私自身が条件を付けずに金正恩委員長(※)と向き合う」と述べているため、北朝鮮とは「利益を共有する」とまでは言えないにせよ、「国益を最大化するためには付き合わなければならない相手だ」との認識を持っている証拠ではないでしょうか。

(※「金正恩委員長」とは、金正恩の北朝鮮における正式な肩書だそうです。)

本当にインドは「価値を共有」しているのか?

安倍演説を見るに、安倍総理の念頭には常に「自由で開かれたインド太平洋戦略」という大きなビジョンがあります。これは、欧州からインド、ASEANなどを経由して日本に至る「自由民主主義の繁栄の弧」があり、それを米豪などが裏付ける、という構想です。

ということは、明らかに中国とロシアを「封じ込めるべき相手」と見ている証拠であり、この点の見方は常に一貫していると考えて良いでしょう。

そして、ここでカギとなるのは、「世界最大の民主主義国」ともいわれるインドです。

実際、日本はインドをかなり重視しており、国際金融協力の世界では今年3月に、総額750億ドルとうい破格の規模の通貨スワップを締結したほどです(『日印通貨スワップ協定成立の意味と予想される某隣国の反応』参照)。

日印通貨スワップ協定成立の意味と予想される某隣国の反応

しかし、以前から違和感を抱いている人もいると思いますが、安倍総理(あるいはドナルド・J・トランプ米大統領)はしきりにインドという国に言及していますが、果たしてこのインドという国が、日本(や米国)と「基本的価値」を共有しているのかといえば、それは大いに疑問です。

インドは形式的には民主主義国ですが、実際には時代遅れで厳格なカースト制度に支配されており、また、日印間には、社会の土台をつくる遵法意識、倫理観、宗教観などにおいて、きわめて大きな違いが存在しています。

むしろ「漢字」という共通の文化を持っている日中の方が、日印よりも近い関係にあるのではないかと思ってしまいますし、また、いまから150年前に西欧文化を受け入れた日本にとっては、インドよりもロシアの方が行動様式として近いという部分があるようにも思えてなりません。

ただし、ここでいう「インドは価値と利益を共有する相手国だ」という安倍総理の説明は、あくまでも「方便」のようなものでしょう。

実際、インドと良好な関係を持っておけば、中国やロシアに対する牽制として有効です。しかも、インドはほどほどに日本から距離が離れているため、日印が関係を深めすぎることによって、インドから出稼ぎ労働者が大挙して日本に押し寄せてくる、という懸念はそれほど強くありません。

中国、ロシアをどう位置付けるか

その一方で、「封じ込められる相手国」である中国とロシアについては、「日中関係を新たな段階に押し上げる」だの、「ロシアとの共同経済活動」だのといった安倍総理のメッセージを読んでいると、若干不安になることもまた事実です。

ただ、「自由で開かれたインド太平洋」に中国とロシアが含まれていないという時点で、安倍演説では中露両国が①の象限ではなく、②の象限に入っていることは間違いないと考えてよく、この点については過度に不安視する必要はないのかもしれません。

それよりも、中国、ロシアとの関係は、いずれも「毒を以て毒を制する」という側面があります。

中国と(表面上は)仲良くやることによって、ロシアに対しては「日中関係が良好だ」と思わせることは、少なくとも牽制としては機能します。また、ロシアとの共同経済活動を進めれば、中国に対しては「日露関係が好転した」と映りますので、中国に対する牽制としてはピッタリなのです。

もちろん、日本は本気で、中国やロシアとの関係を深化させるべきではありません。ただ、日中露3ヵ国は、お互いに地域で存在感を示し合い、「お互い違う国である」という事実を認識しながら、お互いに牽制しつつもうまく共存していくしかないのです。

あるいは、もう少し本音をいえば、表面的には中国やロシアとほどほどに仲良くしつつも、水面下では相手国を衰弱させるような工作活動を行っても良いと思います。

とくに、中国東北3省と極東ロシアを比べれば、ロシア側は人口が極端に少なく、中国側は人口が極端に多いため、「浸透圧」の理論ではありませんが、沿岸州などに徐々に中国人が押し寄せ、中国人コミュニティが出来上がりつつあるとの話も聞きます。

今から100年後(あるいは下手をすると数十年後)には、もしかしたらロシアが極東シベリアの領土を中国に売却し、撤退するという話は、十分にあり得ます。

こうしたなか、日本が北方領土を含めた千島列島や樺太などでロシアとの共同経済活動を進めれば、これらの地域の中国化を防ぐだけでなく、むしろ日本化を進めることができる、というメリットもあります。

要するに、日露共同経済活動とは、今後100年後以内にロシアを千島・樺太などから追い出すとともに、中国を太平洋に進出させないための布石、という側面があるのかもしれません(考えすぎかもしれませんが…)。

つまり、安倍演説を「価値を共有しない中露両国とも表面上はうまくやっていきましょう」と読めば、その裏側にある、「中露両国の足をテーブルの下で思いっきり蹴飛ばす」という発想も見えて来るのです。

「国際法を守れ」の意味

さて、安倍演説のなかで韓国については、「重要な隣国」としつつも、「国際法を守れ」と注文を付けた格好となりました。

じつは、安倍総理は2012年12月に再登板して以来、施政方針演説や所信表明演説のなかで、韓国の位置付けを「ダウングレード」してきました(図表3)。

図表3 安倍総理の演説に見る日韓関係
発言日韓国の位置付け情報源
2013年2月28日自由・民主主義といった基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国第183回国会における施政方針演説
2014年1月24日基本的な価値や利益を共有する、最も重要な隣国第186回国会における施政方針演説
2014年9月29日基本的な価値や利益を共有し、最も重要な隣国第187回国会における所信表明演説
2015年2月12日最も重要な隣国第189回国会における施政方針演説
2016年1月22日戦略的利益を共有する最も重要な隣国第190回国会における施政方針演説
2016年9月26日戦略的利益を共有する最も重要な隣国2016/09/26付 第192回国会における所信表明演説
2018年1月22日「両国間の国際約束、相互の信頼の積み重ねの上に、未来志向で、新たな時代の協力関係を深化させる」第196回国会における施政方針演説
2018年10月24日「日韓、日米韓」の下りのみで言及第197回国会における所信表明演説
2019年10月4日韓国は重要な隣国であり、国際法に基づき、国と国との約束を遵守することを求めたい第二百回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説

(【出所】首相官邸ウェブサイトより著者作成)

意外な話ですが、安倍政権発足直後、安倍総理は韓国のことを「価値と利益を共有する最も重要な隣国」と表現していました。つまり、図表2でいうところの①の象限(米、豪、印、英、仏などと同じ象限)に位置付けていた格好ですね。

ただ、その後は朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領(当時)の日本に対する態度があまりにも悪かったことに加え、慰安婦問題や世界遺産登録問題など、日本に対する国際社会を舞台にした嫌がらせが目立ち始めたため、2015年2月の施政方針演説から「価値の共有」の修飾語が消滅。

さらに、朴政権が倒れて文在寅(ぶん・ざいいん)政権が発足し、同政権が2015年12月の「日韓慰安婦合意」を蒸し返そうとすると、「利益の共有」「重要な隣国」という文言すらなくなりました。

ちょうど1年前、2018年10月24日の所信表明演説では、安倍総理は韓国について「日韓、日米韓」の下りで言及するにとどまりました。

ところが、今年の演説では「重要な隣国」という修飾語が復活し、一見すると「格上げ」されたようにも思えますが、その直後に「国際法に基づき、国と国との約束を遵守せよ」と主張しています。

これは明らかに、「今後、韓国と外交関係を持つとしたら、韓国が国際法に基づいて国と国との約束を守ることが最低限の条件だ」と付きつけているのと同じであり、いわば、最後通牒に近いものといえるのかもしれません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ただし、いますぐ日本がみずからの判断で日韓断交に踏み切ることは適切ではありません。なぜなら、日韓関係は結局のところ、米韓関係の従属変数のようなものであり、日本の国土を防衛するためには(つまり国益のためには)韓国との関係を今すぐ断つことはできないからです。

しかし、その一方で、米韓両国が米韓同盟消滅に向けた歩みを進めていることは事実であり、当然、米韓関係が薄まれば、日韓関係も同様に薄まることが想定されます。

いずれにせよ、価値も利益もいずれも共有しない相手国(つまり図表2でいう象限④の国)とは、関係が決定的に断絶しないように最低限の部分だけマネージしつつ、あとは丁寧に放置する、というのが今のところは正解なのでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    安倍総理の外交について、私は二つ不満があります
    一つは北方領土。あんなにプーチンに貢いで、これどうすんのって感じです
    もう一つは最近の北朝鮮に対する「前提条件なしで」金正恩に会うという方針です
    何のため? ここは前提条件なしに会いたいではなく、アメリカが会おうとも韓国が会おうとも、日本は北朝鮮が拉致被害者を返すまでは一切交渉はしないと言うべきじゃないですか
    それが喧嘩のやり方じゃないでしょうか
    まさか会って話し合えば北朝鮮がミサイルを撃つのをやめるわけじゃないし、なんで前提条件なしに会わなきゃいけないのか全然わからないです

    1. 隠居爺 より:

      匿名 さま

      ① 今の日本は韓国及び北朝鮮と戦争中みたいなものです。これ以上敵を増やしたくない。ロシアを金で大人しくさせておくに越したことはないですね。

      ② 北朝鮮は会ってやるから1億ドル支払えという国です。前提条件なしで会うということは、土産持っていかないけど話そうと言ってるのと同じです。実質的な会談拒否ですね。

      こじつけが過ぎるでしょうか?

  2. 愚塵 より:

    大村知事が、批判的意見・質問をブロックするにとどまらず、韓国軍の蛮行について論ずる自由は無い旨、言い放つ
    https://monqu.web.fc2.com/fjiyuseiryok.html#saikai
    理由を知りたい

    1. だんな より:

      多分ですが、支持母体が左巻きの方が多いせいでしょう。

  3. 隠居爺 より:

    >意外な話ですが、この「外交とは国益を最大化する手段である」
    >という点をわが国で最も理解していない人たちが、日本の外務省です。
    >というのも、どうもわが国の外務省のなかには、外交とは「相手国と
    >仲良くすることだ」と勘違いしている者も多数いるようなのです。

    よくぞおっしゃってくれました。外務省の本質を的確に分かりやすく表現されてますね。

    なぜそういうことになるかというと、日本の言い分を通すためには、相手に飴をしゃぶらせなければならないと外務省が考えるためでしょう。飴をしゃぶらせて、相手のご機嫌を良くする代わりに日本の要求を受け入れてもらおうと考えます。飴玉なしでは外交はできないというのが外務省のスタンスでしょう。

    そういうことばかりやってるもんだから相手に足元見られて、もっと飴玉よこせとたかられるようになってしまいます。

    きっと今頃は、徴用工判決を無効にするために、日本はここで譲歩するから、などと韓国にお願いしてるのではないでしょうか。

    1. 引きこもり中年 より:

       独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

       日本の外務省は、(建前にしろ)「国益」のために仕事をしているので
      ななく、「省益」のための仕事、先輩の「天下り先確保」の仕事が半分以
      上、占めているのではないかと、思います。

       蛇足ですが、外務省は財務省との権力闘争(?)のために、(その中身は
      なんであれ)「外務省の仕事」を強調しているのでは。

       駄文にて失礼しました。

      1. 隠居爺 より:

        引きこもり中年 さま

        >「国益」のために仕事をしているのでななく

        私もそう思います。
        でも、省益のためかというとそうでもないような気がします。
        私は外務省に鳩山由紀夫的な臭いを感じるのですがいかがでしょうか。
        外交官って「日本は日本人だけのものではない」などと言い出しそうじゃありませんか?

    2. 墺を見倣え より:

      仰る部分は、正にその通りだと思いますが、それ以外に、「典型的な文系お坊ちゃま」だという事です。
      おそらく、小学生レベルの理科知識すら、忘却の彼方な人々でしょう。

      以前にも書きましたが、日本の外交暗文は、第二次大戦中からほぼ100%米国に解読され続けている模様。
      1980年代の日米自動車交渉の時も、全部解読されてました。

      80余年も解読され続けているのに、一向に解消される傾向がない。理科知識ゼロではないかと思われる。
      または、飴玉だけでは飽き足らず、手の内全て提供してから交渉開始するのが、日本の外務省の流儀なのカモ知れない。

      悪気は無いのカモ知れないが、アホ過ぎないか?

      情報化社会時代のリテラシーを外務省に求めてはいけないのか?

      1. 隠居爺 より:

        墺を見倣え さま

        お坊っちゃまは間違いないところでしょう。

        それゆえに、友好という観念が狂っているのではないでしょうか。
        外交上の友好というのは、あくまで力と力のバランスの上に成り立つ取引きなのですが、日本外務省の友好はお互いを愛し合うということのような気がします。見ようによっては完全に気が触れていますね。

        きっと、暗号を解読させるのは、愛の証です。

        悪気はないのかもしれませんが、アホすぎます。

      2. 七味 より:

        墺を見倣え様

        >理科知識ゼロではないかと思われる。

        そんなことはないと信じたいのです。

        でも、暗号とか技術的にどう守るかとか、GSOMIAみたく制度的にどう守るかってのは、いろいろあるみたいだけど、肝心の何を守るのかっては、さっぱりな気がします
        情報なんて増えてくと、厳格に管理するのは難しくなる訳で、そうすると秘密ってのはそれなりに絞って、その他は流出を前提にしなきゃいけないと思うのです

        >情報化社会時代のリテラシーを外務省に求めてはいけないのか?
        って、そのあたりの感覚が昔のまんまなんじゃないかなって気がするのです
        外務省は海戦ゲームやってるつもりで必死に手の内の読み合いしてるんだけど、実際には手の内が見える将棋をやってるみたいな感じなのです。
        ただ将棋盤が9×9どころかもっと広くて駒も無数にあってその上ターン制ですらないような将棋をやってるんだと思うのです♪

  4. 無明 より:

    日韓は「お互いに」国際法を守る必要がありますね。

  5. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    国会所信表明演説で安倍総理の発言を見ると、日本の基本的な姿勢が分かりますし、この方針で良いと思います。

    外交では一番の問題は中国でしょう。今の共産党独裁政権が続く限り、敵性国の最大の中枢であるに違いありません。経済面では一時の熱は冷めてますが、太いパイプで結ばれてます。でも一筋縄では行きません。香港、台湾、南シナ海問題でも日本は中国と相反する関係です。

    露とは取られっぱなしの資源開発協力ではなく、相応な果実を手に入れる方向でやるべきです。中国牽制の為にも、日露の良好関係を見せておくべきです。

    インドは数千km離れているという地勢に逆にメリットを感じます。豪と似た感じ。しかし、中国に隣接してる大国であるというのは、「中国への圧力」になります。

    20年30年前ならインドが大国になるとは想像も出来ませんでした。国民に「今年は食糧が不作で飢饉になる。皆さんネズミを食べて凌いで下さい」とテレビで演説した大臣も居たほどです。

    韓国には、【重要な隣国だ】と相手を持ち上げといて【だから国として約束は守れよ!】と落として見せる(笑)。正直、演説もカットしたいほど腹が立っているのが理解出来ました。

    次回は触れないかな。

    1. はぐれ鳥 より:

      めがねのおやじ様

      >外交では一番の問題は中国でしょう。
      その通りですね。

      中国は、周辺異民族相手の外交において、更には分裂時代の国内において、3千年にもわたり、ありとあらゆる外交経験を積んでいます。よって外交技術において、日本などと較べ格段の差があります。また政治体制的に、20年、30年先を見据えた長期外交が可能になっています。

      なので日本としては、今の関係(敵対関係が常態でたまに上辺だけの友好)が百年、二百年続くとの覚悟で、短期の関係改善・悪化に一喜一憂せず、根気強く、相手に呑み込まれないように注意しながら、是々非々で付き合っていくしかないと思います。

      共産党独裁が民主体制に移行すればとの期待もありますが、多分、その期待は裏切られるでしょう。それは、現在の韓国の例を見れば分かります。ただ仮に、中国が5つ、6つにでも分裂すれば、一部の国とはいい関係が築けるかも知れませんけどね。

      1. 団塊 より:

        下手くそですよ、支那は外交が下手というより外交ができない。
        我が国の方が遥かに上手ですよ。

        元々支那は周辺の民族に ちょう貢させるだけ。これは
        『俺に膝まずけ』ってことで

        交などしてこなかった、そもそも外交など意識にもなく、外交を担当する省(外務省や国務省)すらなかった。

        まあ、支那の外交下手は

        ランプに煽られてアメリカに逆上して
        次から次へ関税を増やされ支那は四苦八苦、フ
        ァーウェイはアメリカから排除され軈て先進諸国からも排除される…

        本当に外交ができてない。。

  6. gommer より:

    日本の基本的価値観って何なんでしょうね。

    国と個人とでは若干以上に乖離があるように感じます。

    思想信条に関しては、各人がもつ思想は自由故にバラバラで当然なのですが、異見に対する寛容を持たない人は左右を問わず沢山います。
    でも国としては断固として侵害しない。

    他国の文化に関しても、例えば人様の文化に口を挟まないなんてのは、日本人としてはかなり基本的な価値観だと思います。
    だから日本はアメリカに銃規制しろなんて言いません。でも欧米は捕鯨中止を強要する。
    証拠に基づいて歴史認識を正そうとすれば、修正主義だと批判される。

    基本的価値観って実のところよく判らない。
    実際に訪れた体感ではアメリカ人やオーストラリア人にも価値観の違いを感じたし、パキスタン人にも共感する部分がありました。

    要は同じ陣営に居る国は基本的価値観を共有すると見做すという方便なのでしょう。
    そこに個人の価値観はあまり関係ない。

    1. 隠居爺 より:

      gommer さま

      おっしゃられていることに異存はありませんが、もう少しマクロに見ると基本的価値の共有という表現もありかと思います。

      一党独裁体制を採らない、絶対的権力者を認めない、選挙を行う、法律や条約や契約を守る、法律に反しない限り刑罰を与えない、法律は国民に差別なく適用するなどで大きく括ると、日本と基本的価値を共有している国というのも出てくるのではないでしょうか。

      まあ、そのようなことについても、厳密に見ていくといろいろ食い違いは出てきますが、大雑把に見てというところで、価値の共有はありかなと感じます。

      1. gommer より:

        隠居爺さま

        列挙された事柄は大別すると政治制度と法治主義ですよね。

        制度面ではアメリカは日本より韓国に近いのでは無いでしょうか。日本の総理大臣に比べたらアメリカ大統領は絶対的権力者です。

        つまり、所信表明でいう共有する基本的価値観は社会システムより安全保障で、「どっちの陣営か」それが一番大きな判断基準だと思うんです。

        1. 隠居爺 より:

          gommer さま

          >「どっちの陣営か」それが一番大きな判断基準だと思うんです。

          それは否定しませんが、なぜ同じ陣営なのかという理由を考えたときに、いろいろな要素が出てくるような気がします。

          そのいろいろな要素について、一つ一つを比較していくと、それぞれ食い違いあることが分かりますが、一つ一つのプラスマイナスをトータルして価値を共有しているという結論が出るのでしょう。

          それは要するに、「同じ陣営に居る」ということと同義ではないかということになると、確かにそうかもしれませんね。

    2. 鬼首取乃介 より:

      Gommer 様

      安倍首相や外相が基本的価値という言葉を使う場合
      http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/free_pros/pdfs/shiryo_01.pdf
      〉自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済
      を指すのではないかと思います。人種的あるいは個人的な部分より、団体・国家的なものと考えた方が良いかと。中でも、首相が重視しているのは「法の支配」だと個人的に考えています。

      勿論インド人個人の遵法意識の話ではなく、例えばG20の大阪トラックのように、自国の法と相容れない国際ルールは受け付けないが、一方で協力可能な部分は協力する旨をきちんと表明する所かと。

      一見似たような対応に見せて、ギリギリでの参加拒否といいとこ取りのデジタル政策を推し進めた結果、安倍首相の信頼を失いG20唯一の「立ち話」国家となった、インドネシアとの違いでもあります。

      大阪トラックの参加セッションに部下を出席させながら、自分はその裏でインドとの首脳会談を行う某国大統領は言わずもがな、です。

      1. gommer より:

        鬼首取乃介さん

        アメリカは安保上最重要で、言うまでもなく基本的価値観を共有する国家に分類されますが、国際法規の体制を遵守する国だと思われますか?
        近年の動向を見ても歴史的にもアメリカは自身の都合だけで国際法を運用する国です。

        世界にはアメリカなどよりも余程条約を尊重する国が幾つも有りますが、日本の安保と関わり無ければわざわざ言及されません。

        施政方針演説で使われる「基本的価値観」とはそのようなものだと思います。

        ただ、日本と同じ陣営に居ることが相手国にとってもメリットであり続けるなら、結果として日本の価値観に近付いてくる可能性もあるでしょう。
        それは日本にとって良い事だろうと思います。

        1. 鬼首取乃介 より:

          Gommer 様

          そうですね。歴史的なものはともかく、近年のトランプ政権は「法の支配」の意識に欠ける所がありますね。

          ところで今回の首相所信表明では

          〉日米同盟を基軸としながら、我が国は、英国、フランス、豪州、インドなど基本的な価値を共有する国々と手を携え、自由で開かれたインド太平洋を実現してまいります。

          と表現しており、2018年1月のものと異なりドイツ・イタリアと並び(当時は欧州と表現)、アメリカについても「基本的価値を共有する」とは言っていないんですね。

  7. じゃっく より:

    「図表2 価値と利益の外交軸」は、議論の軸としては非常にわかりやすいですが、「ある国がどの象限に属しているか」についてはあまり有益だとは思えません。
    そもそも、価値や利益を100%共有している国も、共有が0%の国もあまりありません。
    例えば「北朝鮮が、核ミサイルをバンバン飛ばすことは止めさせよう」ということについては中国ですら価値や利益を共有しますし、貿易では米国ですら価値観が異なります。
    ○か×かで2つに分けることはわかりやすいですが、2つに分けても、個々のケースを無理矢理当てはめることは思考の停止につながります。

    「インドは①か②か」を考察されていますが、おそらくインドは②よりの①であって、「①に分類して良いか」は不毛だと思います。

  8. オールドプログラマ より:

    ちょっと思いついたのですが、韓国「共に民主党」の議員が福島の放射能についてあり得ない数値を捏造して発表し。データ元の団体が猛抗議しています。保守党n国会議員ですから韓国政府と同じよみてICJに名誉棄損とし提訴すればよいと思います。
    ついでに日章旗問題、上皇陛下の日王、戦犯の息子呼ばわり、等も含めると威力が増します。韓国は無視するか、裁判に応じるか、逆に日本を名誉棄損で提訴すえうか分かりませんがやってみる価値はあるt思います。

  9. はぐれ鳥 より:

    他人を動すための2本のハンドル(アメとムチ)とは数千年来の金言です。外交も同様で、他国を動機付けするための武器は、経済・文化など(アメ;甘言)と武力(ムチ;脅し)だと思います。

    処が日本は、平和憲法により、この外交手段としての武力を最初から放棄しています。ですから戦後の日本外交は、アメ1本やりで戦わざるを得ませんでした。ですから、これまでの日本外交がいかにも柔弱・惰弱なのは仕方ない面があるでしょう。もっとも、だからと言って、弱腰一方で、良い意味での狡猾さに欠ける外務省を弁護する積りは有りませんが。

    そんな条件下、安倍外交は、現憲法下でなしうる最善に近い形で健闘しているのではないでしょうか。
    ですから、日本外交にさらなる力を与える意味でも、憲法9条の改正が待たれます。

  10. とある福岡市民 より:

    新宿会計士様、いつも勉強になる記事を書いていただきありがとうございます。特に金融や財政については知らない事ばかりでしたのでためになります。

    以前からお尋ねしたい事がございますので、勝手ではありますが、ここに書かせて下さい。記事の内容と関係ない話で申し訳ありません。金融の記事のコメントで投稿したかったのですが間に合いませんでした。

    以前、「日本の財政破綻はあり得ない」という主旨の記事について、国債の買い手との関係や具体的な数字を基に書かれておりました。私は会計の基礎知識がない事、昭和22年に日本国債が事実上踏み倒された過去がある事から財政破綻を心配してましたので、当面は財政破綻が起きづらいとわかって少し安心できました。完全に不安を払拭できたわけではありませんけれど。

    そんな中で、一つ気づいた事がございます。
    国債残高を圧縮する事だけを目的とした方法ですが、このような方法は可能でしょうか?
    「日本銀行が過去に発行した日本国債を全て買い取り、それを政府に譲渡する事で事実上無効化し、国債残高を圧縮する」

    2019年2月20日の「繰り返す!日本は財政再建も消費増税も必要としていない」という記事で、新宿会計士様が次のように記載されてました。
    (引用)
    また、「国債残高を圧縮する」ことだけを目的とするならば、日銀法や外為法、財政法などを改正し、外為特会(外貨準備)を日銀勘定に付け替えることも有益です。外貨準備を時価(143兆円)で日銀に譲渡すれば、短期国債(97兆円)との差額の50兆円弱が、日本政府にもたらされます。
    50兆円といえば、年間の税収とほぼ同額です。これでさらに国債残高を圧縮することができるはずです。

    という事はその反対で、日銀の資産となっている日本国債、平たく言えば日本政府の借金の証文を、法律の改正さえできれば日本政府の勘定に付け替える事ができるはずです。日銀は政府へ毎年国庫納付金を納めてますので、それと同様に国債を納めるという事です。この方法ですと、日本政府の借金の返済先が日本政府自身になるという不合理が生じますので、付け替えられた国債は事実上消滅します。これができれば国債残高の過去最大規模の圧縮を増税一切なしで行う事が可能となります。

    さらに飛躍して、「政府が数十兆〜数百兆円の国債発行」→「金融機関、または独立行政法人が購入(財政法第5条の規定をクリアするため、間に組織を挟む)」→「日銀による回収」→「政府への国債譲渡」→「借金消滅」という流れができればどんな不景気が来ても財政出動をいくらでも行えますし、究極には国の歳入全てを国債で賄う「無税国家」を作る事ができます。さらに日銀の金融政策と上手に組み合わせればインフレ率をうまく誘導して、望ましいレベルのインフレに抑えつつ好景気を長期に渡り継続できます。

    もちろん、このやり方には大きな問題があるのは承知してます。思いつくだけでも次の通りです。
    1、財政規律を無視する事になりかねないので国債の信用がなくなり、国債の買い手がつかなくなる
    →だから自国で独自通貨を発行しており、なおかつ国債の大半を国内で消化できる国でしか行えません。
    2、事実上、政府の都合だけで通貨を発行できてしまう事態について市場の理解を得られるか不透明
    →管理通貨制度の根幹に関わる問題ですね。ただ、国務院が操作している人民元が市場である程度受け入れられてる現実を見るとクリアできそうではあります。
    3、インフレ率を確実にコントロールできる保証がない
    →コントロールの手段としては国債発行額の増減や臨時の増税、減税となりますが、それで適切にできるのかは疑問です。ハイパーインフレを抑えられない国は実際にありますし、日本だってバブル期の投機の過熱を抑える目的で行った総量規制が「失われた20年」の引き鉄となるとは予想だにしなかったでしょう。
    4、どのような副作用が隠れているのかわからない
    →だからどの国も採用した事がないのでしょう。成功すれば史上最高の錬金術となりますが、失敗すれば亡国どころか世界の金融市場を破壊しかねません。

    しかし「財政再建を理由に消費税増税」→「消費が冷え込んで景気低迷」→「税収の深刻な落ち込み」→「財政がさらに悪化」という悪循環を何回も繰り返す位なら日銀が国債を回収して政府へ譲渡する方がよっぽどましのように思えます。まずは国庫納付金と同額の国債を日銀から政府に付け替え、徐々にその金額を増やして慣らしていく、というのもありかと思うのです。平成に入って国債の発行額が徐々に増えていったように。

    新宿会計士様、この国債残高低減方法についてどう思われますでしょうか?専門家としての視点から考察いただければ幸いです。

  11. クロワッサン より:

    韓国の「関わると不幸になる国」という別名は健在って事ですね。

  12. 匿名 より:

    >もう少し本音をいえば、表面的には中国やロシアとほどほどに仲良くしつつも、水面下では相手国を衰弱させるような工作活動を行っても良いと思います。

    → それが基本です。兵糧攻めで弱体化させる。それしか道はない。

    >日本が北方領土を含めた千島列島や樺太などでロシアとの共同経済活動を進めれば、これらの地域の中国化を防ぐだけでなく、むしろ日本化を進めることができる、というメリットもあります。

    → 本当にそうでしょうか。

    ロシアについて一言。
    基本、全く信用できない国です。“物”を納めても“代金”を払おうとしない。弱国に対しては常に力による解決で型がつくとタカをくくっている。中国や、あの北朝鮮でさえもロシアよりは、はるかに信用できる。ロシアの領土欲はDNAに刷り込まれている。ロシアの国是は何を犠牲にしてでも領土保全と拡張。但し、障害は先住民族問題。本音はウクライナでもカザフスタンでも在住民族を皆殺して根絶やしにしたいのだが、さすがに至近距離でのドスの突き合いは難しいし、西側陣営から制裁されるので、やりたくともできない。そしてカネの問題。何しろあんな大国なのにGDPは韓国と同じ程度でジリ貧らしい。そんな奴らの常套手段がロシア民族の先住既成化。これはある意味正当で強力な方法だ。クリミア半島略奪がその典型的なやりくち。それを今、やつらは急ピッチで北方四島でやろうとしている。いやな話になるが、何事もアメリカ頼りで国防意識が全くない日本では外国人が日本の土地を買うのを規制していない。このままだと多分数十年したら沖縄と北海道は中国人に占領されるだろう。そして北海道は中国とロシアで取り合いになるような気がする。それが証拠にロシアは日本との平和条約締結交渉にからみ、しきりにロシア人の北海道ビザなし渡航を求めてきている。下心ありありなのだ。そんな奴らが、逆に共同経済活動とやらで日本人の北方領土進出を許すだろうか?あ・り・え・な・い。敵に塩をおくるだけ。安倍君、や・め・と・け。

  13. 狐の手のおじさん より:

    「利益を共有するか否か」と「利害関係の有無」は異なるのではないでしょうか。

    「利益を共有する」とすれば,「我が国の利益は相手国の利益にもなり,逆に相手国の利益は自国の利益になる」ということかと思います。

    しかし,「利害関係がある」という場合には,「利益を共有する場合」の他,「自国の利益が相手国の損害となり,相手国の利益が自国の損害となる」という場合もあるかと思います。

    としますと,「図表2 価値と利益の外交軸」の利益の軸の方は「利益を共有する」「利害が相反する」「利害関係がない」の三つに区分すべきではないかと思います。

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