訪日客「人数目標」の撤回が必要
国際交流プログラムで入国した外国人が就労ビザへの切り替えを目論む―――。そんな話題も出てきています。和田政宗・前参議院議員の尽力などもあり、入国段階で外国人をある程度シャットアウトできる制度も近く始まりますが、それでは不十分です。外国人観光客など「のみ」を対象としたひとり数万円レベルの入国税、外国人観光客らに対する消費税等の免税制度の廃止などとあわせ、外国人問題は改めて重要な課題となり得ます。まずは「2030年6000万人」目標は撤回すべきでしょう。
目次
「2030年までに6000万人」インバウンド大国目指す政府
外国人が大挙して入国する時代が到来しました。
日本を訪れる外国人が毎月のように過去最大を更新するなかで、観光庁などインバウンドを管轄する官庁の鼻息は荒く、政府は2030年までにインバウンド年間6000万人という目標を掲げ、まさに政府を挙げてその達成に向け努力している格好です。
これについてはコロナ禍の2020年、著者自身は産経新聞社のオピニオン誌『正論』上で、ちょっとした論考を公表する機会をいただきました(『【宣伝】正論2020年5月号に論考が掲載されました』参照)。
といっても、論考自体は非常にシンプルなもので、ざっくり振り返るとこんな具合です。
- 日本政府は2020年までに訪日外国人4000万人という目標を立てているが、人数目標ありきの観光客誘致はいかがなものか
- たしかに、大勢の外国人観光客が日本を訪れることは経済効果の観点からも望ましいうえに、欧米など外国に日本のファンを増やすことで、日本の外交上の立場を強める可能性もある
- ただ、それと同時にそもそも役所は政策目標を立てたらそれが独り歩きする傾向にあることを踏まえると、役所は訪日客1人あたりの支出額を無視して質の低い観光客を誘致しようとするかもしれない
- 一部の国の観光客は日本に不法滞在しようとするかもしれないし、一部の国は「ノージャパン」キャンペーンなどを政治利用しようとするかもしれない
- したがって、訪日外国人の「人数」を政策目標にするのはやめるべきだ
…。
訪日外国人数はコロナ禍期を除きうなぎ登り
まさか、5年かけてこの「提言」に含まれていた懸念が実現するとは、なんとも情けない限りです。
日本政府による「2020年訪日外国人4000万人」目標自体は、コロナ禍のため、実現しませんでした(ついでに2020年に予定されていた東京五輪も2021年に延期され、五輪史上例のない「無観客開催」となりました)。
ただ、『正論』記事が公開された時点で、訪日外国人がうなぎ登りに増えていたことは忘れてはなりません。これについては日本政府観光局(JNTO)が公表する『訪日外客統計』のデータで確認しておきましょう。
訪日外国人数は、第二次安倍政権が発足した翌年の2013年には1036万人と史上初めて「1000万人」の大台を突破し、そのわずか3年後の2016年には2404万人と「2000万人台」、2018年には3119万人と「3000万人台」を記録するなど、その急上昇ぶりは印象的でした。
- 2003年…*521万人
- 2008年…*835万人
- 2012年…*836万人
- 2013年…1036万人
- 2014年…1341万人
- 2015年…1974万人
- 2016年…2404万人
- 2017年…2869万人
- 2018年…3119万人
ただ、韓国による「ノージャパン」キャンペーンの影響もあってか、2019年の訪日者数は3188万人と2018年対比で微増にとどまり、続く2020年以降はコロナ禍の影響もあって訪日客数が激減してしまいました。
- 2019年…3188万人
- 2020年…*412万人
- 2021年…**25万人
- 2022年…*383万人
今年はおそらく4000万人を突破して過去最高に?
しかし、2022年10月以降、日本政府が外国人観光客の受け入れを再開するやいなや、翌・2023年には2507万人に激増し、2024年には3687万人と過去最多を記録。2025年は7月までですでに2496万人となり、このペースで推移したら、今年は史上初の4000万人台を達成する可能性が高そうです。
- 2023年…2507万人
- 2024年…3687万人
- 2025年…2496万人(※7月までの数値)
この点、今年の入国者数の増加は大阪万博(4月13日~10月13日)の影響もあるのかもしれませんが(したがって来年は多少の反動減も生じるかもしれませんが)、それでも長期的なトレンドとしてみれば、間違いなく訪日客は増え続けています。
増え続ける観光公害
ただし、ここで気になる点があるとしたら、観光公害の深刻化でしょう。
昨年話題になったのが、山梨県富士河口湖町にあるコンビニエンスストア周辺の「絶景スポット」に外国人を中心とする観光客が押し寄せた問題です。
富士山ローソン「黒幕騒動」とオーバーツーリズム対策
―――2024/05/23 05:00付 当ウェブサイトより
富士山黒幕問題と本質見失う批判
―――2024/05/25 12:00付 当ウェブサイトより
当ウェブサイトでも当時取り上げたとおり、問題のスポットとは「コンビニエンスストアの真上に富士山が乗っかっている」かに見えるというもので、この「絶景」を見るために大勢の外国人観光客やレンタカーなどが押し寄せ、交通ルールを守らずに写真を撮りまくるなどしていたものです。
実際、コンビニ正面の歯科医院のブログによると、ゴミの不法投棄はもちろん、違法駐車や無断駐車、柵内への侵入、喫煙、ところかまわず飲食、屋上への不法侵入―――、と、受忍限度を越えるトラブルが生じていたようです。
ただ、これらはあくまでも氷山の一角です。
たとえばつい最近もこんな記事が話題となりました。
中学生への当て逃げ事件も…『スラムダンクの聖地』で我が物顔に振る舞う「白タク」と外国人ドライバー
―――2025/09/10 07:00付 Yahoo!ニュースより【FRIDAY配信】
『フライデー・デジタル』によると、人気アニメ『スラムダンク』の「聖地」として知られる神奈川県鎌倉市の江ノ電・鎌倉高校前駅周辺が、「一部の外国人観光客による迷惑行為で無法地帯寸前」になっているのだとか。
「現地では、野外排泄やゴミの不法投棄などの問題が後を絶たない」ほか、「江ノ電は観光客で常にパンク状態」、などとありますが、ちょっと私たち日本人の常識に照らせば、どちらもかなりあり得ない話であることはいうまでもありません。
違法白タク問題、スリ、窃盗も!
また、「鎌倉つながり」でいえば、同じ鎌倉市で「白タク」(の疑いがある自動車)の違法な路駐で救急車が立ち往生するなどの事例も報告されています。『アエラ・デジタル』の次の記事が参考になるでしょう。
救急車がインバウンド向け「白タク」の路駐で立ち往生 運転手は道を譲らず… 「緑ナンバー」も急増の深い闇
―――2025/09/16 08:31付 Yahoo!ニュースより【AERA DIGITAL配信】
それだけではありません。
日本に入国する外国人が増えると、明らかな犯罪も増えていきます。
読売新聞オンラインが9日に配信した記事では「日本人は防犯意識が低くスリをしやすい」などとしてスリを繰り返した疑いがある中国人が逮捕されたこと、14日に配信した記事ではベトナム人によるドラッグストアでの窃盗被害が相次いでいることなどを相次いで報じています。
「日本人は防犯意識低くスリをしやすい」万博など観光地で犯行を繰り返したか 中国人の男を逮捕
―――2025/09/09 18:49付 Yahoo!ニュースより【読売テレビ配信】
ドラッグストアでベトナム人の万引き相次ぐ、被害額平均10万円超で日本人の12倍…化粧品など母国に運搬か
―――2025/09/14 11:21付 Yahoo!ニュースより【読売新聞オンライン配信】
ただし、記事で触れられている事例のうち中国人は(おそらくは)短期入国者ですが、ベトナム人は短期滞在者(つまり外国人観光客)ではなく長期滞在者である可能性もあり、その場合は本稿で主眼とする短期入国者問題とは少し論点がずれるのではないかと思う人もいるかもしれません。
短期入国が長期滞在の温床に?
もっとも、短期入国がそのまま長期滞在(いくつかのケースでは不法滞在)につながることもあります。
テレ朝NEWSによると「万博用のビザで日本に入国しながら、生活環境の良さにそのまま居座ろうとする外国人が増えている」のだそうです。
万博で日本に入国…「帰りたくない」 就労ビザに切り替えたいとの相談相次ぐ
―――2025/09/16 11:01付 Yahoo!ニュースより【テレビ朝日系(ANN)配信】
リンク先記事で紹介されている事例は、大阪・関西万博の国際交流プログラムで入国したエチオピア人女性が都内の行政書士の事務所を訪れ、就労ビザに変更する相談をした、というもので、相談を受けた行政書士が次のような趣旨のことを述べたのだとか。
- 就労ビザへの切り替えには日本企業との雇用契約が必要で、そもそも日本語も使えない状況では発行できないのが現状
- 「とりあえず難民申請しよう」みたいな感じの人もいる
- 難民申請した後は夜のバーや飲食店などどんな仕事でもできる
そのうえでこの行政書士の方は、こう述べたそうです。
「入国させることを止めるって、なかなか難しいじゃないですか。だから、来た人たちをどういう風に管理していくのかが、今やっぱり何もできていない状態だと思います」。
残念ながら、著者自身はこの見解に同意しません。
日本は島国なのですから、少なくとも入国段階でシャットアウトする仕組みを導入することは容易だからであり、また、国がその責務を負っているからです。短期入国の要件を緩和すると、それが長期滞在(とくに不法滞在)の温床になりかねません。
和田政宗・前参議院議員などの尽力により、いわゆる「JESTA」制度も近く始まるとみられますが(『「入口と出口で不法滞在者を減らせ」…和田議員の説明』等参照)、それだけではやはり不十分でしょう。
そもそもの「2030年インバウンド6000万人」という政策目標自体を撤回することが必要だと思いますし、そのことについては改めて強調しておく必要があります。
今後、当ウェブサイトでも、外国人観光客など「のみ」を対象としたひとり数万円レベルの入国税、外国人観光客らに対する消費税等の免税制度の廃止などとあわせ、外国人問題をあらためて継続的テーマとして取り上げる必要があると思う次第です。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
| 自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |




店をあげての集客キャンペーンで、バイト君に客引きを頼んだら、堅気のお客さんだけでなしに893やホームレスを連れてきた、みたいな?
(上質な常連客が迷惑)
「数値目標」が役人さんたちは大好きですから、質はどうあれ手当たり次第に連れてくる。
下手したら来る気がない人に甘言して押し込んでくる。
バカ丸出し。
目標設定が悪いと云えばそれまでですが、役人はバイト君ではありませんし、そういうファジーな要求でも臨機応変に指揮監督するために大臣が居てる訳ですから、みんなバカ丸出し。
民間企業経験がないだけで、こんなことすらできない集団になってしまうものなのですかね。
白タクも民泊も買い占めも転売も、不法滞在・難民申請も、不正医療利用や窃盗・盗難も、交通事故もゴミ問題も、ありとあらゆる外国人の犯罪がここに起因するところが大きと思う。
本当に観光で日本を楽しみたい人たちは迷惑でしょう。
先の記事にも通じますが、やはり、不良外国人を入れない為にも安くない入国税を課さないとダメですね。その上で、その資金で観光公害の問題を解決しつつ、コントロールする必要があるのだと思う。「人数目標」の撤回に賛成。
公明党が国交省を握っている弊害でしょうねえ。手段が目的化。
インバウンドによる目先の収益獲得のために、ICTAI投資を実施している暇がないという状況の業界も多いようです。これでは、いつまでたっても生産性が上がらない可能性があり、現状のICTAI化されていない状況での大量のインバウンド流入は、マイナス面も意外に大きいと思っています。まずは、入国税である程度調整が必要でしょう。入国税で80兆円回収できると良いのですが。
中国人の富裕層は日本は「中国人ばかりで行きたくない。」とか。その裏で尚も来る中国人中流より下の層目当てに中国人が飲食店を出したり違法民泊を開いたりでインバウンドも何もなくなってきていて、観光客数だけ増やしてもこういう有象無象が増えるだけなので、富士山みたいに入国制限した方が価値が上がると思う。
でも外国人は日本の宝だから…
税金上げて、外国人に還元したほうがいいんじゃない?
消費税率を上げるといいねw
観光客からも税金取り放題。
消費税万歳!
観光客には免税制度ってものがありまして…
すべてが免税されているわけではないですよ。
コンビニで買ったコーヒーなどいちいち免税されていません。
税金上げるは「広島県選出の国会議員様」が決めてるらしい
広島県の税金は日本一高い?のか
万引きは怖いよ
店員が一人か二人の所に「集団で」万引きされたら止められない
止めたら「何をされるかわからない」
彼らは普通に「武器」を持ってる
アメリカで見られることが日本でも始まってる
鳥取県、広島県、大分県、鹿児島県ではこの問題にどのように対処しているんだろう
聞いてみたい。外国人ウェルカムの国会議員を選出してるんだからね
売上高はあった大手相手だけどちゃんと原価計算やったら利益が無くて値下げ圧力に辟易してたのもあって取引止めたなんて話を聞いたことがあります
企業の試算表も国の統計情報も最終的に出た数字だけで論じては半分も効力を発揮せず暦年ではどうか、比較対象や数字の出し方は適正かまで把握しておかないところっと騙されちゃうんですよ
そりゃもう他所で賃金上昇ペースが先進国の中でも低いなんて言われて、へーと思ってたら根拠として呈示された比較グラフの起点が1991年でバブル景気華やかな頃と比較したら正確じゃないだろというコメント読むまですっかり騙されてた訳で、はい
大事なところが抜けていました数値目標が適正かって話でしたね
ただ単に税収の穴を埋めるためだけに導き出された数字か、よく言われる訪日外国人によって利用される宿泊施設や交通機関、清掃等の日本人の生産性を圧迫する分のコスト計算、無職が全員観光業に従事してくれるわけではないので他の労働人口の移動と移動元の人手不足に起因するコスト検討などなど
さぁてどうしたもんですか