設備投資負担に耐えられず?民放がBS4Kから撤退か

民放各局がBS4K放送から撤退するとの観測報道が出て来ました。当ウェブサイトでは5年以上前から予想してきた「テレビ業界の三重苦」、つまり視聴者離れ、スポンサー離れ、クリエイター離れがその後も進行し続けており、とくに若年層や中年層からもテレビが相手にされなくなっている現状を踏まえれば、ある意味で予測できた話題です。ただ、ネット動画配信サービス(VOD)は数年前から4Kが当たり前となりつつあるなかで、テレビ業界はさらに苦境に陥る可能性があります。

フジテレビ問題は氷山の一角

地上波テレビ業界の退潮が指摘され始めて、ずいぶんと経ちます。

当ウェブサイトではもう何年も前から、テレビ業界には未来の展望がないと申し上げてきましたが、ここに来て、テレビ業界の苦境がくっきりしてきたのではないでしょうか。

今年は1月に、大手テレビ局である株式会社フジテレビジョンにおいて、著名タレントを巻き込んだ大掛かりな不祥事、およびそれに対する当時の同社社長の説明責任から逃げるかのような姿勢が大炎上するという事件が発生。同社に対し主要スポンサーが一斉に離れるという事態に発展しました。

ただ、こうした事件は、べつにフジテレビだけに発生しているというものでもないでしょう。

たとえば日本テレビ放送網株式会社の場合は、同社が看板として掲げる『24時間テレビ』という番組・企画に関し、系列局である日本海テレビジョン放送株式会社の従業員によって、長年、募金の着服が行われていたという事実が発覚しています(同社・3月26日付『元幹部社員の起訴について』等参照)。

本件は日テレ本社で発生した事案ではなく、あくまでも地方の系列局の不祥事であるため、日テレを批判するのは適切ではない、といった意見もあるかもしれません。

しかし、あくまでも個人的見解ですが、募金の着服は番組を信じた人々の善意を踏みにじるものであり、一従業員の不祥事に矮小化させるのではなく、系列局も含め、番組に携わるすべての職員にどうやって倫理を順守させるのか、内部統制を含めた深刻な不備案件ではないかと思えてなりません。

正直、これらは氷山の一角に過ぎず、他局でも似たような不祥事がじつは頻発していて、それらが表面化していないだけではないか、といった疑念は払拭できないのです。

不祥事頻発の背景には利権構造か?

ではどうして企業倫理がぶっ飛んでいるかのような非常識な事案が続々と発覚しているのでしょうか。

これについてはさまざまな要因分析はあり得るものの、著者にとっては、端的にいえばテレビ業界自体が一種の「利権構造」と化しているのではないかとしか考えられないのです。

例えば多くの国で導入されている電波オークションなどの仕組みが、日本では導入されていません。本来ならば国民の共有財産であるはずの電波帯を、テレビ局は破格の料金で自由に独占利用することができるのであり、これなどは総務省とテレビ業界が癒着し、腐敗し切っている証拠に見えてなりません。

また、テレビ業界のなかでも、「公共放送」を名乗るNHKに関しては、放送内容自体が公共性に適合しているか、いや、組織自体が「公共放送」を名乗るに値するか、といった点からのクオリティを確保する仕組みが存在していません。

NHKの存廃を巡る国民投票が行われたことはなく、ただ放送法で「テレビを設置したらNHKと受信契約を結べ」と定められているだけです。

放送法第64条第1項本文<抄>

協会の放送を受信することのできる受信設備<略>を設置した者は、同項の認可を受けた受信契約<略>の条項(以下この項において「認可契約条項」という。)で定めるところにより、協会と受信契約を締結しなければならない。

放送内容、あるいは組織そのものが「公共放送にふさわしい」、「受信料を払うに値する」という点を、誰がどう審査・判断しているというのでしょうか?

謎です。

画質の問題が無視できなくなり始めた

テレビ業界はNHK・民放を問わず、いったん放送免許を獲得したら、電波を格安の使用料で独占使用できるうえに、テレビ局の新規参入もめったにないことから、独占的な利益を得られる体質が形成されてきたと考えられるのです。

完全な自由経済競争で勝ち残っている企業だと考えられないような不祥事が多く発生するのも、ある意味ではテレビ業界自体が規制産業だからといえるのかもしれません(ちなみにテレビ局には総務官僚を接待する専門の部隊がいるとの指摘もあります)。

大手新聞や民放キー局に存在 電波がらみの工作をする「波取り記者」

―――2021.03.25 07:00付 NEWSポストセブンより

ただ、こうした環境に長く身を置いていると、やはり技術革新などがあまり生じなくなってしまうのかもしれません。

そのひとつが、「画質」の問題です。

当ウェブサイトでは今から5年以上前の『日本のテレビ、「五輪に始まり五輪に終わる」』などでもすでに取り上げたとおり、わが国のテレビ業界は2K(約200万画素)の放送が主流であり、4K(約800万画素)の対応が遅れています。

あれから5年も経過していますが、これに対し、動画配信サービス(VOD)などでは、4K放送は数年前から当たり前となりつつある一方で、地上波の4K放送はまだ実現していません。一部では2028年頃から開始されるとの情報もあるものの、その詳細についてはよくわかりません。

民放各局はBSで4K放送を実施しているものの、もしかすると、テレビ局が地上波で2Kから4Kに対応するためのコスト負担に耐えられないのではないか、といった可能性も否定できません。

広告離れはじわじわ進む

実際、株式会社電通が公表する『日本の広告費』によると、テレビ広告費はこの四半世紀あまり、ほとんど伸びておらず、むしろ最近だと微減傾向です(図表)。

図表 広告費(ネットvsマスコミ4媒体)

(【出所】株式会社電通『日本の広告費』レポートおよび当ウェブサイト読者「埼玉県民」様提供のデータをもとに作成)

グラフからは具体的な金額がわかり辛いので、実数を補足しておくと、こんな具合です

テレビ広告費の推移
  • 2000年…2兆0793億円
  • 2001年…2兆0681億円
  • 2002年…1兆9351億円
  • 2003年…1兆9480億円
  • 2004年…2兆0436億円
  • 2005年…2兆0411億円
  • 2006年…2兆0161億円
  • 2007年…1兆9981億円
  • 2008年…1兆9092億円
  • 2009年…1兆7139億円
  • 2010年…1兆7321億円
  • 2011年…1兆7237億円
  • 2012年…1兆7757億円
  • 2013年…1兆7913億円
  • 2014年…1兆9564億円
  • 2015年…1兆9323億円
  • 2016年…1兆9657億円
  • 2017年…1兆9478億円
  • 2018年…1兆9123億円
  • 2019年…1兆8612億円
  • 2020年…1兆6559億円
  • 2021年…1兆8393億円
  • 2022年…1兆8019億円
  • 2023年…1兆7347億円
  • 2024年…1兆7605億円

(【出所】株式会社電通『日本の広告費』レポートおよび当ウェブサイト読者「埼玉県民」様提供のデータをもとに作成)

データが存在する2000年以降で見て、テレビ広告費が2兆円の大台を超えていたのは2000年(2兆0793億円)、2001年(2兆0681億円)、2004年(2兆0436億円)、2005年(2兆0411億円)、そして2006年(2兆0161億円)の5ヵ年しかありません。

2006年以降のテレビ広告費は常に2兆円の大台を下回っており、コロナ禍のためか1兆6559億円にまで落ち込んだ2020年は別格としても、その後はやや持ち直したものの下がったり上がったりを繰り返しながら徐々に衰退傾向にあることがわかります。

民放各社、BS4K放送から撤退か

しかも、例の「フジテレビ問題」の影響もあってか、(現時点ではあくまでも個人的な予測ですが)2025年に関しては、おそらく2024年と比べてさらに落ち込むでしょう。そして、その後、は若干持ち直すかもしれませんが、おそらくは中長期的に見て「ジリ貧」となるでしょう。

というのも、かなり以前の『テレビの三重苦:視聴者、広告主、クリエイター離れ』あたりでも「予言」したとおり、現在のテレビ業界は「視聴者離れ→スポンサー離れ→クリエイター離れ」、という負のスパイラルが生じていると考えられるからです。

あれから5年以上も経過していて、残念ながらテレビ業界の経営環境は芳しくない状況が続いています。

少なくとも在京局に関していえば、新聞業界と異なり「赤字を垂れ流している社が多い」という状況にはないものの、テレビ業界にとっての最も重要な収益源であるCMが伸びず、また若年層・中年層を中心にテレビ離れも続いているからです(『最新データで読む「高齢者の娯楽」となりつつあるTV』等参照)。

当然、地上波を2Kから4Kに増強するための設備投資に耐えられるのか、という問題もありますが、それだけではありません。

こんな話題も出て来ました。

【独自】民放5局、BS4K放送撤退へ 27年に、赤字続きで

―――2025/09/08 20:11付 Yahoo!ニュースより【共同通信配信】

BSの4K放送、民放各社が撤退検討 負担重く配信にシフト

―――2025年9月8日 20:14付 日本経済新聞電子版より

民放5局が「BS4K」から撤退へ 赤字続きで2027年に、ネット配信での代替を検討

―――2025/09/08 21:57付 産経ニュースより

共同通信や日経新聞、産経ニュースなどによると、民放キー局系のBS5局(BS日テレ、BS朝日、BS-TBS、BSテレ東、BSフジ)が2027年にも4K放送事業から撤退することを検討しているのだとか。

ネット4K配信ならVODと変わらない?

なんでも2018年以降の開局以来、赤字が続いているのだそうで、産経によるとBS4Kを取りやめる代わりに4Kで制作した番組を低コストのインターネットで配信することも検討している、などとしています。

また、この話題を受けてか、『ザ・ページ』が『Yahoo!ニュース』に9日、こんなオリジナル記事を配信しています。

【ヤフコメで話題】「4K放送よりもコンテンツ重視の声」「高画質より内容の面白さが大事」 – 民放各社の4K放送撤退と視聴者の意見

―――2025/09/09 07:04付 Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGEより

『ザ・ページ』は民放各社の4K撤退について、『Yahoo!ニュース』のコメント欄をまとめるかたちで、「スマートフォンやタブレットでYouTubeなどの動画を視聴する人が増えている」、「4K放送はコストが高い割に視聴者のニーズが少なく、画質よりも番組や動画の内容が重要だ」、などの意見を紹介しています。

ただ、前述の通り、すでにネット動画配信(VODなど)の世界では、数年前から4K配信が当たり前となっており、YouTubeなどの動画サイトでも限定的ながら4K動画の視聴が可能であることなどを踏まえると、テレビは画質面においてもうネットに勝てなくなりつつあると考えて良いでしょう。

そして、一部メディアが報じたとおり、民放がBS4Kから撤退し、番組をネット配信する道を選ぶとすれば、それはすでにテレビ事業を継続する意味がなくなりつつある、ということでもあります。ネット4K配信なら、それはVODと事業内容がほとんど変わらないからです。

そういえば以前、外国のアクティビストファンドが日本のテレビ局に対し、地上波放送免許を返上し、コンテンツビジネスに特化するという提案を行ったことがありましたが(『米系投資ファンド「日本の地上波テレビに将来性なし」』等参照)、ある意味で真理を突いています。

現代の世の中、すでに地上波やBSなどの放送事業よりも、通信・インターネットを通じてコンテンツを配信する方が、コスト面からも優位となりつつあるからです。そうであるならば、高コストな自前の放送設備を持つよりも、映像コンテンツビジネスに特化し、配信はネットというプラットフォームを利用する方が合理的です。

いずれにせよ、今回の「BS4Kからの民放の撤退」という話題は観測報道ではありますが、民放各局がビジネスモデルとして、放送という設備投資に耐えられなくなっている可能性を示唆するという意味では、まことに象徴的な事象ではないかと思う次第です。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. 悪徳銀行員 より:

    >ちなみにテレビ局には総務官僚を接待する専門の部隊がいるとの指摘もあります

    金融機関で言うところのMOF担(モフタン)ですねー、懐かしい笑
    テレビ局ならさしずめMIC担(ミクタン?)でしょーか笑

  2. Sky より:

    既に前コラムでのコメントで記した内容ですので重複は避けますが、電波を用いて4K更には8Kといった高解像度の映像伝送を行うには限られた帯域で高データレート化する、忠実度低下を知覚しにくい情報圧縮化などの技法を駆使する必要があり、送信側だけでなく受信機側も高度な情報処理が必要になったり、受信信号強度もかなり必要になること、放送側は勿論受信側の記録装置や編集装置がこれまた難易度が高いなど、技術的にも経済的にも難易度が高い。にも関わらず、それだけの高忠実度映像を必要とするコンテンツが商業的に成立するだけのニーズがあるか疑問です。
    当該分野開発研究者としては挑戦しがいのあるテーマですが、所謂「死の谷」を越えて広く普及させることは元々無理がありました。
    これは随分と前からNHK放送技術研究所の年度発表をみるたびに感じていた事です。NHKの暴走といっても過言ではないでしょう。
    NHK自身、無線を利用する受信機に課金するビジネスモデルから徐々にインターネット配信或いはインターネットを介したサブスク契約に軸足を移す方向性を見せています。
    高校時代から毎年NHK技研の発表を眺めている立場としては、現時点は「栄枯盛衰」の「枯衰」のフェーズに来たな、と感じます。
    諸行無常。Everything must change. Nothing stays the same. All things must pass. です。

    1. はにわファクトリー より:

      ある日空に文字が浮かび上がっていた
      「fin」
      あるいは
        終
      制作・著作
      ━━━━━
      観客は作品の余韻を味わいながらエンドロールをじっくり見守るのでした …

    2. 元雑用係 より:

      >技術的にも経済的にも難易度が高い。

      同一の広い空間を共有するがために、狭い限られた帯域幅の電磁波に高密度の映像情報を乗っけなければならず、その技術難度が高いということなのですよね?
      各家庭向けに個別の専用空間を設けて、広い帯域幅の電磁波を存分に届けられるインフラができてしまった今となっては、それを追及する意味は薄くなった、ということなのだろうと思います。
      光ファイバー網とも言いますが。(笑)

      日本のテレビ会社はネットの配信サービスとコンテンツで勝負できますかね。
      TVerは調子がいいとは言うものの、他の電子化コンテンツのご多分に漏れず売上規模は小さい模様で、縮小均衡は避けられないようにも思います。

      1. Sky より:

        はい。そのとおりです。
        周波数利用効率という指標で効率を測ります。単位はbps/Hzです。この効率を上げるべく色々頑張るわけです。
        しかし周波数利用効率を上げようとするとC/N比(信号キャリヤとノイズ比)を上げる必要があり、利得の高いアンテナ、強い送信電力を用いない場合、サービスエリアの面積小を招くことになるため、現実は厳しいものがあります。
        光ファイバーに代表される伝送線路は同一空間に複数伝送路を形成することが可能なので、伝送線路インフラを利用可能な現在に於いては、(ラスト1マイルを含む)無線でなければ成立しない用途以外は伝送線路を用いるのが合理的選択と言えるでしょう。
        しかし伝送線路とて帯域幅が無尽蔵ではないのは明らかであり、個人的には4Kや8Kの様な超リッチ映像配信はインフラのムダ遣い、否定的気分でいます。程々にしとけって思います。

      2. Sky より:

        加えて、経済的にはNHKが旗を振っても受信機メーカー各社が変化に応じるだけの経営資源を投入できなくなったのが決定的でしょう。ユーザーが受け入れる事ができるコンテンツの提供がおぼつかないだけでなく、そもそもとして、NHKと共にTV業界を盛り上げていたTVセットメーカーは既に無い。パナソニックもTV事業は「課題事業」と位置づけています。
        これが現在のTV事業環境です。

      3. 元雑用係 より:

        >しかし伝送線路とて帯域幅が無尽蔵ではないのは明らかであり、個人的には4Kや8Kの様な超リッチ映像配信はインフラのムダ遣い、否定的気分でいます。

        お気持ちはとてもよくわかるつもりなのですが、とはいえ8K H265の60fpsで100Mbpsもあれば十分なのですよね。
        光加入の10Gbpsも開始され、デコーダーもスマホのARMチップに内蔵されているという世界線・・・ほっといても高画質化は進むと思います。
        今後は「テレビ放送」「テレビ受像機」ではない別の世界が引っ張っていくのではないでしょうか。

        ただまあ、映像の高解像度を求める分野と、そこまで必要ない分野もありますので、画一的な放送ではないので、結果的に目的に合ったいろんな解像度が混在する世界になっていくのだとも思います。

      4. Sky より:

        そうですね。
        H265で8Kですと1時間で50GB位かなぁと思います。
        ウチの場合、2Gbpsの契約で回線スピード計測上は概ね〜0.8Gbps位。実際のファイルDLは最速でも精々その半分出るかどうか。
        まぁ半分として、50/0.4*8で1000秒。その間、最大32ch共用しているであろう光ファイバー回線を利用するわけですので、やっぱり「近所迷惑」かなぁ?と気になってしまうのです。
        実質0.4Gbpsだとしてもベストエフォート2Gppsの回線の帯域幅の1/5を1000秒間1人で使ってしまうことになる気がするので。
        更に自身のHDDに対しても大飯喰らいと感じますしその点でも程々でいいんでないかいと思ったりします。

      5. 元雑用係 より:

        もともと業界動向のお話でしたので、長期視点も含めておりました。
        張り巡らされたファイバー土管にはまだまだ詰め込む余地がありますし、その帯域が増えるのが先か再生端末の性能が上がるのが先かどうかわかりませんが、時間の経過で8K映像程度に必要な帯域はそのうち大した問題にならなくなるのではと、そんな意図で申し上げました。
        現状の環境で8Kだらけになれば影響はあるのでしょうが。

      6. Sky より:

        マクロ動向ですね。失礼いたしました。
        マクロとして指摘したいのは、伝送線路で消費される電力が年々拡大している事です。
        これは、伝送路の延べ全体長が長い程、そして1秒当たりのON/OFF切り替えが多い程増大します。
        CMOSロジック回路のクロック周波数を上げると消費電力が増えるのを想像していただければ良いでしょう。CMOSロジックの場合は主に配線やゲート容量といった寄生キャパシタ負荷、そして貫通電流に起因する損失現象ですが、伝送線路に於いても損失の問題は重要です。
        一定空間における伝送容量は複数の伝送線路を用いることで電波を利用する場合よりも大きくすることは可能です。
        しかし、電力損失、コレがいづれ伝送線路インフラ配備の律則要因になるでしょう。
        データセンターが莫大な電力を消費するのも、元を辿れば、CMOSロジックの電力損失要因と伝送線路の電力損失要因、ついでに電源系の高電圧小電流から低電圧大電流に変換する際の電力損失要因に帰着すると考えて良いでしょう。

      7. 三門建介 より:

        遅くなってすみません。

        テレビ自体の4Kや8K対応の費用の高さがネックなんだと思います。

        今の4Kテレビは中華メーカー以外ですと40型以上で8万から10万取られます。8Kの機能が付くともっと高いです。

        それでいて、4Kの放送はほとんどなしですから年金生活者には高級品なんですよね。購入意欲が出ないのと違いますか。

        ネット上ですと4Kが数年前から当たり前とのことですが、PCですと4K画像を再生するには、デスクトップの本体に画像処理ボードを追加しないと再生できない場合がありそうです。

        今のPCはCPUの中にグラフィック機能が搭載されていますが4K対応ではないものも多いですね。i3やi5では動作しない場合もありますね。ノートPCでは、少々難しいと言えそうです。

        実際ネットに接続されている機器で4Kや8Kがダイレクトに再生できているものがどのくらいあるんですかね?

        ひかりの有線接続が一番早い転送速度と思えますが、それでもSky様の計算で見て再生速度に転送速度が追い付いていないようですね。スマホはダウンコンバートして再生してそうですね。

        インターネットは昔から、少し早くなると民間が負荷が高くなるようなサービスを平気で出してくるんですよね。
        自分としてももっと低解像で十分と思いますけどね。
        ストリーミングで表示できるデバイスがなければ無用の長物ですからね。

      8. 元雑用係 より:

        通信畑育ちの私から見ると、放送の伝送技術が経済的事情も併せた上でありながらも「技術的限界」に到達していたとのご見解がとても真新しく、いろいろと想像を膨らませたところから返信をさせていただきました。
        私は技術畑ではなく、技術者とお見受けするお二方の技術的知見には遠く及ばないものと認識しております。
        ただ、私が申し上げているのは「そうあるべき」ではなく「そうなる」である点は強調しておきたいと思います。

        私も通信を離れて随分時間が経過していて最新動向を知るわけではなかったものですから、光ファイバーの限界を少し調べてみました。
        現在主流のSM(シングルモード)ファイバでは100Tbpsが限界だそうですね。これはラストワンマイルの話ではないですが、通信の総トラフィックは30%/年で増加しており、日本の場合は既存設備のままでは2030年頃には限界がくるのだそうです。
        その解決は、マルチコア・マルチモードファイバに詰め込む方向での研究開発だそうです。今年の4月の実証レベルの新記録では、19コアファイバで1Pbps(ペタ)、1800kmの伝送成功だそうですね。
        https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/2009791.html

        恐らく、通信事業者もメーカーも30%/年増のペースを守っていくつもりなのでしょう。
        こういう言い方をすると「苦労を考えろ」と言われてしまうかもしれませんが、これまでがそうであったように、結局は技術が後追いしてくるものと考えます。
        また三門建介さんがおっしゃる通り、インフラが整えばそれを前提とした新たなサービスが勝手に生まれます(経験則)。8K等の高画質映像に絞ってみれば、通信量全体への比率は次第に低下していくのではないかと思います。
        もちろんこの私自身の主張には技術的裏付けはありませんけどね。

        再生デバイスは、私も詳しくウォッチしているわけではありませんが、現状で発売済みのiphoneやandroidスマホでも、8k H265のエンコードとデコードが可能なチップが搭載されているそうです。PC用のCPUでは一つ前の世代のRyzen7000シリーズのgpu搭載モデルで8K H265のデコーダを搭載しています。
        既存のPCではメモリなどの能力不足もあるかと思いますが、DRAMの集積度向上の鈍化などは見られないので、これも時間の経過で十分な能力を持ったエントリークラスのPCが普通に出てくると思います。

        時間の経過を前提とすればいつかは問題をクリアしていると思われ、クリティカルなネックがそこにあるとは、私には感じられないのです。

      9. はにわファクトリー より:

        発言を保留しておりました。
        ダークファーバーってのがあります。未使用光ファイバーは実はたくさんあって、それは発見発掘して有効利用するものです。現実に存在しているのに所有権利用権があいまいになっていることもあります。線路の両端に置く通信装置の小型化高性能化は今後も続きますので、光ファイバー通信の将来性は未来を見通すとき仮定して大丈夫です。
        当方の 3年前の取り組みは Xilinx UltraScale 4コア ARM64 と10G の組み合わせでした。出来合い PCIe カードを挿しただけですが、本当に 9.8Gbps の測定結果が出て、正直のけぞりました。

        1. 元雑用係 より:

          >本当に 9.8Gbps の測定結果が出て、正直のけぞりました。
          個人的には10G環境は高価でまだまだ手が出ませんねー。

          2030年限界説はNTTのR&D広報からの引用ですが、おそらくはそのダークファイバも含めた既存のSMファイバ全てを踏まえた上での予測ということかと思います。(かなりの安全率は乗っていると思いますが)
          ただ、それでもラストワンマイル以外のファイバーのMMへの引き直しはそれほどのコスト要因は問題ではないでしょうから、ファイバーの更新まで踏まえた2030年以降の継続展望だとは思います。
          仮に2030年の目処が立っていないなら、既に何らかの政治的な働きかけをしているはずですが、あまりその形跡は見られないので、まあ大丈夫なんだろうとは思っています。

          >線路の両端に置く通信装置の小型化高性能化は今後も続きますので、
          2,3年で倍増ペースだったとしても、ラストワンマイルは両端の装置の更新で当分大丈夫だろうなーと言う気がします。

        2. はにわファクトリー より:

          仕事なので支給品、自分の懐は痛んでいません。
          4レーン PCIe の 10G カード、当方担当分の作業が一段落ついたあと Amazon で安価だったので¥8,818- で買いました。10G スイッチが高くて買えなくて。今はチャンスが来るまで寝かしてあります。

          たとえばアジアの架空電線ってこんなものです。
          バンコクの頭上グルグル物語
          https://tripping.jp/asean/thailand/44988

          記事は 2016 年に ADSL 回線を引いたときに実見した事実をもとに書かれていますが、今では光ファイバー化しちゃってて、バンガロール街頭で見た哀れな未使用光ケーブルなんてのは、端点が処理されずささら箒のようにむき出しになって土埃の地面に垂れていました。どうなっているんですかね、あのケーブル、今頃は。

      10. Sky より:

        皆様
        ブログ主さまのテーマから脱線してしまい恐縮なのですが、「タバコ部屋ネタ」にお付き合いいただきありがとうございます。
        本職の職場ではヨタ話する環境が絶えて久しい為、有難さを実感する次第です。
        消費電力は色々なアプリケーションに共通する律則案件であり、伝送線路であっても逃れることはできないものです。
        久しぶりにアクセスしたのですが例えば「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響」という報告書が参考になります。偶然かもしれませんが2030年以降は厳しい予想です。
        https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2020-pp-04.pdf

        1. 元雑用係 より:

          資料紹介、ありがとうございます。
          電力問題では無線アクセス網が最大のネックなんですね。

          「原発○基分が必要になる!(だから研究開発にお金が必要!)」
          問題の当事者達が官民挙げて騒ぐのはわかりますし必要なことなのだろうとも思います。
          電力問題は光通信において伝送距離や速度向上での超えられない壁的問題ではないと理解していますが、日本の場合は特に電力網への負荷の観点で無視できない問題とも思います。

          NTTのIOWNもいつ頃どこまでできるのか、たまに横目で気にしています。

  3. 都市和尚 より:

    いつも楽しみに拝読しております。

    私は長年ラグビーというマイナースポーツのファンです。普段はネット配信のJ SPORTS で見ていてテレビでは扱われないコンテンツなのですが、過去にワールドカップのイベントの際に地上波がしゃしゃり出て来て、放送権を取ってしまうことがありました。で、その地上波の中継なのですが、ルールもろくに知らないアナウンサーと慣れない頓珍漢な解説者の会話がひどいもので、聞くに絶えなくて仕方なく音を消して見ていました。
    WBCのネットフリックス独占は、意外と歓迎している人が多いのかもしれないと思っています。

  4. 匿名 より:

    最近のBSは再放送ばかりです(NHKも)。BSは放送開始時の番組表も通販ばかりで、総務省も呆れ返ったそうですが。BSは衛星の寿命と一緒に終わりですかね。

  5. 丸の内会計士 より:

    方向性としては、個人版LLMがインターフェイスになり、読むべきサイトや動画がレコメンドされる状態になりそうなので、それぞれ忙しくなるので、テレビは、家庭での賑やかしの機能のみになるかもしれません。部屋のなかがシーンと静まりかえるよりは、テレビでもつけておくかという感じでしょう。

    1. 丸の内会計士 より:

      AIで最適化されすぎて、読むべき記事ばかりで忙しくなります。皆さんが。読むべき記事を探す行為が消失します。例えば、会計監査でも頭を使わない作業が業務の大半なのですが、この頭を使わない作業、すなわち楽できる業務が消失して、いろいろ判断を求められる業務ばかりになります。これからのAI時代。

    2. はにわファクトリー より:

      動画を自分の代わりに視てくれて、要約を図解してくれるオンラインサービスが生まれています。こうなってくると、書籍、新聞、TV を代読・身代わり視聴し続けてくれて、時間ができたら、要約情報をまず読み、決定的瞬間をわが目で確かめるという『オンラインサービス(これ重要)』にネット利用者がお金を払うようになるでしょう。
       「使ってもらえる仕掛けで売り上げを達成する」
      新聞 TV などの「出版・放送系脳」には理解できない経済理論です。
      遠からず代読要約ネット事業者から出版業がおカネを受け取るようになると予測します。無料の展示台たる書店の本棚を当てにするのではなくて。

  6. 迷王星 より:

    そもそも大画面で余程の高解像度のディスプレイを使っていなければ、2Kつまり従来のハイビジョンと4Kの違いなんて、「こっちは2K、あっちは4K、違いが分かる?」といった形で注意深く同じ番組の2K版と4K版とを見比べさせない限り気づかない人が大半だと私自身に照らして推測します。

    もし私の経験(意識して両者の違いに気づくために比較することで初めて両者の違いが分かるようになる)が多くのTV視聴者にも当てはまるならば、2Kにない4K固有の価値は多くの視聴者にとっては分かっていないということになります。(そんな比較テストを自分自身の意志でわざわざ試みようとする人は極めて少数でしょうから)

    つまり、TVの放送が白黒からカラーになったような、対応する受像機さえ持っていれば誰でも新技術が旧技術に無かった素晴らしい価値を生み出したということは、少なくともTV放送に関しては2Kから4Kへの進歩では生じないということです。

    絵画や貴重な古文書など様々な文化財の現状、あるいは特別な価値のある生態系の現状など自然界の現状、といった事実を可能な限り精確に映像で記録し後世に残すというプロの仕事の手段としては、記録映像の記録密度が2Kから4Kさらには8Kへと向上することは大いに価値があるでしょう。

    ですが、ドラマやニュースなどを大衆という素人集団の娯楽の手段としては、2Kを4Kに向上させても有難い、嬉しいと思ってくれる可能性は乏しい、つまり極く一部の画像解像度にオタク的な関心を持つ少数のマニア以外には殆ど誰も価値を認めないことのために莫大な資金を投入して4K用の設備投資をするのは単なる徒労であり無駄ということになります。

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