自公「参院でも過半数割れ」なら…政治はどうなるのか

今夏の参院選で自民党が議席を減らすのはほぼ間違いないとみられるなかで、岸田文雄・前首相が参院選で与党過半数割れなら「政権交代もあり得る」などとして危機感を示したそうです。ただ、さすがに自民党がただちに第1党の地位を喪失するとは考え辛く、参院選で自公が過半数割れしても石破政権が継続する可能性はそれなりにありそうです。そうなると、ガソリン暫定税率廃止のように野党の意見が通りやすくなる反面、維新の「高校税金化」や立憲民主の「年金流用法」のようなおかしな法律が成立しやすくなることにも注意が必要でしょう。

参院選が始まると…?

参議院議員通常選挙の告示日が7月3日、投開票日が20日で確定しました。

あと1週間もしないうちに選挙期間が始まってしまいます。

この点、インターネット上の選挙活動は(一定の制約はありますが)基本的に自由であるとされており、極端な話、当ウェブサイトが特定政党・候補者を応援したり、落選させようとしたりすることも可能であるはずです。

ただ、著者自身、選挙は公正に実施されるべきであるとする立場をとっており、また、当ウェブサイトは平素より、公然と特定政党への投票を呼び掛けることは控えたいと主張しているため、今回の選挙においても、選挙期間中については、特定政党に直接的に言及するようなコンテンツの掲載はできるだけ控えたいと思います。

ただし、その反面、当ウェブサイトが読者の皆様に対し、特定政党への投票を呼び掛けるものとならない範囲においては、選挙期間中であっても通常と同様の評論を行っていきたいと考えており(※これは、昨年衆院選期間中も同様でした)、読者の皆様方が選挙権を行使する際の参考となれれば幸いと存じます。

誰に投票すれば良いかは皆様が考えてください

こうしたなか、当ウェブサイトにおいては、これまで、読者の皆様に対し「選挙に行ってください」、「必ず有効投票をしてください」、などとお願い申し上げてきました。これについては一貫しているつもりですし、これからもそう呼び掛ける予定です。

そして、著者自身は「すべての選挙で投票している」とは申し上げておきますが、それと同時にどこの政党、どの候補者を支持しているか・投票したか、などについて申し上げたことはないつもりですし、(現在のところは)これからもそれを申し上げる予定はありません。

それを報告すると、それだけで間接的に、当ウェブサイトが特定の政党・候補者への投票を勧奨することにもつながりかねないからです。今のところは、当ウェブサイトは読者の皆様に対し、特定の政党や候補者への投票を呼び掛けるつもりはないのです。

誰に投票すれば良いかについては、個々の有権者の皆様が自身で考えてください。

岸田前首相のちょっと気になる発言

ただし、客観的事実として世論調査や投票結果の概要を紹介したり、選挙情勢として「過去の状況に照らしてXX党が得票を減らしたら▲▲党の得票が増える可能性が高い」などと述べたりすることはあります。

個人的な好き嫌いとは別に、「現在の状況だとこの政党が躍進する可能性が高い」、などと分析することは、ウェブ評論の範囲内であるといえるでしょう。

そのうえで本稿で取り上げたいのがこんな話題です。

参院過半数割れで政権交代も 自民・岸田氏

―――2025/06/25 21:11付 Yahoo!ニュースより【時事通信配信】

時事通信によると岸田文雄・前首相は25日の講演で、与党が過半数割れした場合は「政権交代も起こり得る」、などと述べたのだそうです。

参院は一般に政権選択選挙ではありませんので、参院で自公が過半数割れしても政権交代は生じ得ない可能性が高いというのが一般的な解釈と思われますが(※この点については後述します)、ただし、自民党が議席を減らせば、さまざまな法案がストップする可能性が高いことも事実でしょう。

自民党はどこまで負けるのか

現実問題「自民ズッコケ」なら立民躍進の可能性濃厚か』でも指摘しましたが、現在の状況だと、自民党が参院選で議席を減らすことは確実ですが、昨年の衆院選や先週の都議選並みの25%程度の減少に留まれば、自公両党は参院で過半数を辛うじて維持できる可能性があります。

ただし、都議選では「都民ファーストの会」という国政に存在しないファクターが存在していることに注意が必要です。

同会は、国政でかつての「自民党のライト支持層」だった人たちから多くの支持を集めている、というフシもありますし、逆にいえば、もともと都議会で自民を支持していた人たちは、自民支持者の中でも「かなりのコア層」であった可能性があるのです。

その「かなりのコア層」が25%程度離れたのだとしたら、今夏の参院選では自民党は25%以上のさらに大きな大敗を喫する可能性が出てくるのです。

たとえば東京都では定数が6議席(※ただし、今回は当選者7人で7位当選者の任期は半分の3年となります)ですが、従来であれば自民党は候補を2人立て、2人とも当選させる、ということを続けてきました。

しかし、今回の参院選については自民党は2人とも6位以内で当選させるのが難しいかもしれません。1人は6位以内で当選しても、もう1人は7位に滑り込んで任期3年となるかもしれませんし、場合によってはその「もう1人」が7位にすら入れずに落選するかもしれません。

もしも全国の複数区で似たような状況だとしたら、複数区での当選者数は8~12人程度か、場合によってはそれ以下、という状況になるでしょう。

また、前回と比べて票数が25%減に留まれば、比例代表では11~14人の当選者を出すことができますが、それ以上に票数が減り、比例で1000万票前後に留まれば、比例の当選者は9~10人程度になってしまいます。

自民党30議席割れもあり得るのか?

一方で著者自身としては、全国に32ある一人区では自民党はそれなりの強さを誇っているものと考えており、これらの候補者が平均して25%程度の得票減に留まれば、一人区では半数以上を自民候補者が制することになります。

しかし、先ほどの「都民ファースト理論」だと、自民党が想定以上に有権者に嫌われていて、得票数が25%減にとどまらなかった場合は、一人区でも自民党が雪崩を打って惨敗する可能性が出てきます(この場合、現実問題として「漁夫の利」を得るのは立憲民主党です)。

このように考えていくと、以前から提示してきた「自民党は今夏の参院選で35~41議席は確保するだろう」とする見通しを下方修正しなければならない、という可能性も出てきました。現在のところ、次のような議席数を予想しています。

  • 比例代表…9~12人
  • 中選挙区…8~12人
  • 小選挙区…12~17人
  • 当選者数…29~41人

もしこの最低レンジである29人、つまり「30人割れ」となったら、おそらくは自民党結党以来の最低水準ですし、もちろん、公明党がどんなに頑張っても「参院選後過半数ライン」である50議席には遠く届きません。

参議院側でも自公は過半数を割れることになります。

すると、何が起こるか―――。

ガソリン減税は実現するかもしれないが…

仮に自公が過半数を割り込んだとしても、また、仮に立憲民主党が「漁夫の利」を得て多少、議席を躍進させたとしても、自民党が第1党で野党がひとつにまとまらないという状況は変わりませんので、(石破茂首相が責任を取って辞任するとでも言い出さない限り)引き続き自民党・石破政権は継続するでしょう。

しかし、野党はテーマによっては団結します。

真っ先に考えられるのは、『週末審議ガソリン法廃案で参院選へ…有権者の選択は?』でも触れたガソリン減税ですが、これについては今年の通常国会で野党が議員立法として提出すれば、自民党の同意なしに法律として成立します。

ただし、最大政党は引き続き自民党ですので、テーマによっては各会派と組んだりしながら、騙し騙しさまざまな法案を通していくこととなるため、野党の意見が通りやすくなることは間違いありません。

余談ですが、自民党が「高校税負担化」で日本維新の会と、「年金流用法案」で立憲民主党と組んだように、たいていの場合、自民党が野党と組むことによって国会を通るのは、国のためにならない法案ばかりです。

何度か選挙をやるしかない

いずれにせよ、自民党が敗北するのが「良い」、「悪い」という話ではなく、現実にそういう状況になった場合には、そこからどう展望を描くかが重要です。普段から当ウェブサイトで申し上げている通り、国政というものは、1回や2回の選挙でいきなり良くなるものではないからです。

  • 個々の有権者は、たとえば▼外交・安全保障、▼憲法改正、▼減税、▼年金制度廃止―――など、自身が重視する各項目について、たとえばそれぞれを10点満点で評価したうえで、「最もマシ」な政党や候補者を選ぶ
  • 日本の有権者のすべてがそのような行動を取れば、日本は間違いなく、有権者が望むような国となる。今回の選挙で有権者の総意に最も近い政党Aが躍進し、最も遠い政党Zが壊滅的に敗北したとすれば、その結果、政党Zは次回の国政選挙に候補を立てられずに消滅するかもしれない
  • 次の国政選挙までに、今回躍進した政党Aの考え方を部分的に真似したBという政党が出現し、Aに加えてこのBが衆院選でそこそこ躍進する一方、有権者の総意からかけ離れたYという政党が壊滅的に敗北するかもしれない

…。

そのことを、改めて強調しておきたいと思う次第です。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. Sky より:

    安倍政権であった2010年代、2020年代半ばに自由民主党が与党である事は、半ば当たり前の事として予見していましたが、まさか保守政党であると思っていた自由民主党がここ迄劣化するとは思ってもみませんでした。
    政権交代してもいないのに。ここまで政治が劣化するとは。
    私が危惧するのは、今の自由民主党に巣食う腫瘍を除去する為に、選挙で負けて自由民主党議員数が減ってしまうと、その後、「まとも」な執行部に戻った時に、少ない兵力(議員数)しかない事。
    国会運営は固まりの構成人数、即ち数が決め手です。
    まともな執行部が十分な兵力を得て雑事に惑わされる事なく仕事できるようになるまでリカバリーするには、どれだけの大型選挙を経ないといけないのか?
    そもそもリカバリー可能なのか?
    どんな負け方なら次に繋がる可能性があるのか?
    それまでの期間、南海トラフ地震、台湾危機など日本を危機に陥れる国難が発生しないでいられるのか?
    宏池会、岸田一派、迎合した200人弱の自民党議員。
    連中のしでかしは終生忘れられないと思います。

  2. 安倍 より:

    何度か選挙をやるしかない
    もどかしいですけどねー
    都議選では9議席の国民民主より多くの票を獲得した発足半年の政党、個人的に注目してるのはワンイシュー「教育への投資」の「再生の道」です
    小学校の幹部教員らが児童を盗撮し画像共有などセンセーショナルな事件を見ずとも、
    教員の質を上げるための環境整備は少子化と同じく喫緊の政治家の仕事
    当選・票田ばかり意識し高齢者にバラまく「政治屋」には出来ない仕事
    結党時の本人の会見でも「政治屋の一掃」をかかげ、青臭いと自覚しながらも正論で戦おうとする姿勢や、
    人格攻撃を避けながらもおかしなことはロジカルに攻めきる論破力、
    時々見せるウィットに富んだユーモアや弱さなど、
    ぜひ見てご判断してほしいです
    安倍晋三氏、青山繁晴氏に次いで、吉村洋文氏と同じく信頼できる政治家です

  3. 匿名 より:

    参議院、自公で過半数割れると衆参で少数与党。
    野党が共産党やれいわを入れて政権をとるとは思えない。そうなると、法案ごとに組む相手を変える、または何も決められない事態になる。

  4. 立ち寄り人 より:

    毎日の更新お疲れ様です。最近の政治的な行動は行き当たりばったりで反省や学習の影も無い様に見える。個人や省益にばかりで国益を優先する教育が断絶した様だ

  5. 在日韓国人 より:

    良心的なリベラル勢力が、正しい方向に日本を導くでしょ。
    そうすれば、自民党も岩屋さんを始めとした有能な人材を中心にまとまり、改善していくんじゃないですか。
    期待してます。

  6. DEEPBLUE より:

    何を他人事のように言ってるんでしょうね前総理。他人事のような現総理も含めて癌を切除するには、いっそ自民党が割れた方がいいと思います。
    増税親中韓の岸破党と経済優先西側外交の自民党で。

  7. のぶくん より:

    自民党が惨敗した後、石破首相がさすがに辞任すると思います 多分
    そのあと誰が総理になるかですね
    もう一度、岸田さんが出てくるならまだ何度も選挙していかないとだめですね
    そのうちに自民党は割れてしまうかも
    青山繁晴さんとかが次の総裁選に出けるようになれば面白いですがそこまで自民党が負けるかですね
    高市さんとかが玉木さんと手を結ぶのも期待したいですが
    自民党内の勢力争いで決まりそうですね

  8. 匿名 より:

    候補者は政策なんか訴えない。
    候補者名の連呼とどうでもいいワンフレーズ、たとえば「誰もが安心して暮らせる世の中を実現します」国民民主の成功はこのワンフレーズに「手取りを増やす」をいれたこと。

  9. 匿名 より:

    ガソリン減税、私は車持ってないのでどうでもいいけど、値段下げればガソリンの使用増えるとおもうけど、いつも騒いでるCO2のことは言わないんだね。

  10. deinei より:

    自民党は広範囲に支持層がいるので万が一にも踏みとどまるかも知れませんが
    連立を組む公明党の退潮は都議選で示された通りです。
    現行の与党枠組みで過半数割れは予想しておく必要がありそうです。
    一有権者としては石破政権が倒れた後に岸田元首相ないし岸田派有力議員を後継総裁に
    引きずりだして有権者が引導を渡すまで行かないと自民党は正常化しないと覚悟しています。
    具体的には減税すると小売店の税率修正が煩雑だ、とか減税でインフレがますます進んで
    手が付けられなくなるといった国民を愚弄した諸発言の責任を取らせるということです。
    道程は長そうでうんざりしますが。

  11. んん より:

    有権者総数から見ればわずかな数にすぎぬ組織票に
    あぐらをかいてでかい面をしてのさばってる連中
    姑息にも投票率下げるべく連休中日だとさ
    投票率さえ上がれば組織票の壁を崩せる
    それを証明したのが都議選だ
    無力な一票とあきらめずに投票に行きましょう!

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