国民と立民の支持率が逆転=共同通信…経済政策影響か

結局のところ、人々の声に愚直に声を傾けること以外に、政党が生き延びていく手段はありません。こうしたなかで、日経新聞の滝田洋一編集委員が日曜日、興味深い内容をXに投稿しました。共同通信の調査でも、政党支持率で国民民主党が立憲民主党を上回ったのです。しかも、立憲民主党は「総選挙直後のバブルが崩壊」した、というのが滝田氏の指摘です。端的で的を射た指摘と言わざるを得ません。

日経の滝田氏の興味深い指摘

日経新聞の滝田洋一編集委員が日曜日の夜、こんな内容をポストしていました。

これは、共同通信が14、15両日に実施した世論調査に関する日経新聞の記事をもとに滝田氏がポストしたものです(ただし、共同通信さんと日経新聞さんには大変申し訳ないのですが、記事本文は引用しません。ご興味がある方は直接読んでください)。

国民民主は地道な政策努力が支持獲得

ここで注目すべきは滝田氏の3つの指摘です。

まず、滝田氏によれば、10月に31.8%だった自民党に対する政党支持率は、11月30.5%、12月29.1%と、毎月、ジリジリと減っているというのです。もちろん、比較第1党ではあり続けているわけですが、徐々にこれが減り、直近では30%を割り込んでしまったのです。

続いて第2党で最大野党でもあるはずの立憲民主党は、選挙があった10月こそ20.3%と、自民党の約3分の2に迫っていたのですが、11月に15.3%、そして12月は11.3%にまで急落しています。自民党の3分の1強です。

そして、現在「台風の目」のようになっている国民民主党は、10月に9.8%、11月に9.0%と、それぞれ10%を割り込んでいたのですが、12月になって12.6%と、支持率で立憲民主党と逆転してしまいました。

ちなみに滝田氏は引用していませんが、衆院で第3政党である日本維新の会は10月5.3%、11月4.4%、12月5.0%と、支持率「だけ」でみれば、すでに4番手ないし5番手です(月によってはれいわ新選組に抜かれて5番手に落ちることもあります)。

これについてはもちろん、「そもそもメディアが実施した世論調査結果を信じて良いのか」、という問題はあるかもしれません(とくにいくつかのメディアは最近、不適切報道などさまざまな不祥事を起こしています)。したがって、メディアの調査で出て来た結果を「絶対的事実」とみなすには慎重でありたいと個人的には思っています。

ただ、この点については留保はつくものの、じつは政党支持率で立憲民主党と国民民主党が逆転しているという事例は、最近、他メディアでもしばしば出ています。

こうした状況を踏まえるならば、滝田氏の「自民は漸減傾向が止まらず」、「立民は総選挙直後のバブルが崩壊」、「国民民主は地道な政策努力が支持獲得」というそれぞれの指摘、端的ですが、まったく的を射たものと言わざるを得ません。

立憲民主党のダメダメな経済政策

というよりも、著者自身にいわせれば、なぜ立憲民主党が10月の時点で20%を超える支持を獲得したのか理解に苦しむところです。

「2%から0%超」…立憲民主のトンデモ物価安定目標』でも指摘しましたが、立憲民主党の選挙時の公約、少なくとも経済政策に関しては、その実効性もさることながら、たとえば「0%超インフレ」という事実上のデフレ目標を筆頭に、まさに「トンデモ論」そのものだからです。

立憲民主党の選挙公約【財務金融・税制】
  • 格差を是正する税制改革による財源確保や、行政需要の変化に応じた予算配分、適切な執行、成長力の強化による税収増など、歳出・歳入両面の改革を行い、中長期的に財政の健全化を目指します。
  • 国会の下に独立財政機関を設置して、主要政策の費用対効果や財政の見通しを客観的・中立的に試算・公表するとともに、その試算に基づき「中期財政フレーム」(3カ年度にわたる予算編成の基本的な方針)を策定することを政府に義務付けることで、放漫財政を改めます。
  • 日銀の物価安定目標を「2%」から「0%超」に変更するとともに、政府・日銀の共同目標として「、実質賃金の上昇」を掲げます。
  • 日銀が保有するETFは、簿価で政府に移管した上で、その分配金収入と売却益を、少子化対策等の財源に充当します。
  • 所得税については「分厚い中間層」を復活させるため、勤労意欲の減退や人材の海外流出等の懸念に十分配慮した上で、累進性を強化します。
  • 消費税の逆進性対策については、軽減税率制度に代えて、中低所得者が負担する消費税の一部を税額控除し、控除しきれない分は給付する「給付付き税額控除」(消費税還付制度)の導入により行います。

(【出所】立憲民主党『2024政策パンフレット(報道・研究資料用)』P12)

こうやって改めて立憲民主党の政策を眺めてみると、なかなかに強烈です。

ゼロ%デフレ政策もそうですが、「分厚い中間層を復活させる」ために「所得税の累進性を強化します」、は、なかなかに印象的です。試しに「減税」という語を探してみたのですが、まことに残念ながら、減税っぽい表現を見つけることができませんでした。

立憲民主党が、なぜ頑なに減税を拒むのか。

なんだかよくわかりません。

自民党がジリジリ支持を落としているという意味

ただ、政党支持率で立憲民主党が他党に追い抜かれるのは、じつはさほど珍しいことではありません。

たとえば、岸田政権時代には、各種調査で日本維新の会が立憲民主党を上回っていたこともありましたし、「このまま総選挙に突入したら、維新が現有勢力をかなり伸ばし、立憲民主党と逆転することもあり得るかもしれない」という勢いもあったのです。

ただ、そのときは2位、3位で熾烈な争いをしているなかで、自民党は比較1党の地位が安泰だったわけですが、今回は滝田氏が指摘する通り、自民党がジリジリと支持率を落としているのは気になるところです。

週末の『SNSの意義は「非公開だった議論を可視化したこと」』などでも少し述べましたが、やはりSNSなどネット環境の発達に加え、国民民主党という「政策が支持された政党」が議席を伸ばしたことで、日本の政治に大きな地殻変動が生じていることは間違いありません。

この点、いちおう誤解を恐れずに申し上げるならば、著者自身は国民民主党の支持者ではありませんし、読者の皆さまにも「同党を支持してほしい」、「同党に投票してほしい」と呼び掛けるつもりもありません(※というか、当ウェブサイトではこれまでのところ、特定政党への投票呼びかけをしたつもりはありません)。

同党の掲げる経済政策のうち、「年収の壁引上げ」や「消費税率の時限的な引下げ」が経済対策としては有効だ、と考えているだけであって、それはあくまでも結果論に過ぎません。

あるいは正直に申し上げて、著者自身は国民民主党が「年収の壁引上げ」や「消費税率引下げ」を達成する能力があるかどうかについては、期待半分、懐疑半分、といったところであり、その意味では国民民主党のことを100%信頼しているわけでもないのです。

結果論として見て、自民党が抵抗勢力扱いされてしまう可能性が…!!

ただ、結果論だけで述べるとすれば、国民民主党が「手取りを増やす」を合言葉に議席を増やしたことは間違いなく、そして、現在の自公両党の行動は、理由をつけてこの「手取りを増やす」を妨害しているように見えてしまっているのです。

有権者の目からすれば、このままだと自公両党は「手取りを増やす」の抵抗勢力と認識されてしまうのが関の山ではないでしょうか。

とくに支持率がジリジリ下がっているというのは、正直、大変危険な兆候にも見えます。

安倍政権が長続きした理由を巡っては諸説ありますが、著者自身は「アベノミクス」という経済政策が(中途半端ながらも)一定の成果を挙げたことが最も大きいと考えており、そして国民民主党が主張している「手取りを増やす」が、アベノミクスの柱でもある財政政策にも通じるところがあることは間違いありません。

だからこそ、現在の自民党支持率の惨状は、アベノミクスを現在の自民党自身が否定するかのような行動をとっていることと平仄が合っているように見えてならないわけですし、自民党が「抵抗勢力」認定されることは、来夏の参院選での惨敗を示唆するものでもあるのです。

このあたり、自民党も国民民主党が作り出した「手取りを増やす」の波に乗り、「本当の抵抗勢力は財務省なんですよ」、などと責任転嫁するくらいの狡猾さがあっても良いのではないでしょうか。

そもそも「手取りを増やす」は言い出したのが国民民主党である、というだけのことであって、べつに国民民主党の専売特許ではありません。自民党だってアベノミクスの原点に立ち返れば、あらゆる税制を見直し、負担と受益のベストミックスをゼロベースで検証するくらいのことはやるべきなのです。

野党でありながら経済政策がどうしようもない立憲民主党は論外として(というか選挙後に最初に言い出したことのひとつが「紙の保険証を守る」だったのには驚きます)、このままだと自民党もまた、経済政策がダメな政党と有権者に認定されてしまいかねません。

世論は誰にもコントロールできなくなる

もちろん、国政の重要課題は、「年収の壁」だけではありません。

どうやら日本の隣国では2016年12月以来、約8年ぶりに現職の大統領が弾劾訴追されたようですし(※自分たちで選んだ大統領を罷免させることのどこが民主主義国なのか理解に苦しみます)、中国、ロシア、北朝鮮など無法国家の動きも気になります。

その一方で相変わらず電力事情が逼迫するなか、原発再稼働・新増設議論の活性化や加速も必要ですし、人手不足問題、社会保障制度改革など、議論すべき論点は山ほどあるのです。

ただ、有権者がオールドメディアに代わってSNSなどのネットメディアを手にするなかで、国民民主党は国民に対し、「税の取られ過ぎ」という論点に気付かせるという意味で、一種のパンドラの箱を開いてしまいました(『「税の取られ過ぎ」に気付いた国民がSNSを手にした』等参照)。

若年層を中心とする有権者の国民民主党に対する期待感は否が応でも高まりますし、もし国民民主党がこれらの問題への対処を誤った場合であっても、今回の国民民主党というモデルが出来上がった以上、同じような公約を掲げて躍進する政党は、国民民主党以外にも出て来る(かもしれない)のです。

著者自身も、まさかここまで急速に、財務省やオールドメディアの問題がSNSを通じて拡散するとは思ってもみなかったわけですが(世の中に財務省の問題点を唱え続けた甲斐があったというものです)、恐らく世論は今後、官僚にもオールドメディアにも自民党にも国民民主党にもコントロールできなくなります。

結局のところ、人々の声に愚直に声を傾けること以外に、政党が生き延びていく手段はないと思うのですが、いかがでしょうか?

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 白紙 より:

    自民党の小野寺五典政調会長が、北海道で党の会合で、「年収103万円の壁」の引き上げをに関して学生アルバイトに対する課税を引き合いにしていろいろ述べたようですが、自民党も減税に対して明らかに「抵抗勢力」ですよ。
    取って配る方式が、財務省をバックとした議員利権の温床としてしみついている限り、おこぼれを預かる業界団体とその家族は別として、他の政党よりましとしてやむを得ず自民党に投票してきた給与所得者や自営業者の票がボロボロとこぼれていくでしょう。
    隣国をはじめ、世界の政権の安定が危惧される中、防衛論議、改憲論議がおろそかとなったワンイシュー選挙となるのではないかと暗澹たる気持ちが晴れません。

  2. taku より:

     私は自民党支持者ですが、「このままでは来夏の参院選挙が危うい」との新宿会計士さんのご主張に賛同致します。
     国民の減税への渇望は大きく、これに目を向けなければ、大敗も十分ありえます。確かに財源の問題はありますが、「木を見て森を見ず」では、官僚と何も変わらず、政治家としての資質が疑われるでしょう。
     自民党には、ぜひ率先して、現役世代・子育て世代にターゲットを絞った減税案を、考えて欲しい。
     国民民主党案は、昭和の残滓である家庭モデルを対象とした「配偶者控除の拡大」に実質的になってしまう点が不満なのですが、既存マスコミからは全く指摘がない。まあ金額と実施時期の着地議論が先に立って、それどころじゃないのでしょうが。

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