夕刊フジの休刊が象徴する新聞業界の苦境…夕刊消滅か
事前の報道通り、産経新聞社が発行する『夕刊フジ』が来年1月末をもって休刊するそうです。また、同紙の公式サイト『zakzak』も更新を終了するとのことです。個人的に『zakzak』には一度取り上げていただいたこともあり、非常に残念です。ただ、新聞業界が現在、かなりの部数減に見舞われていることも事実であり、このままでいけば、夕刊は下手をしたらあと数年で、朝刊も10数年のうちに、順次、姿を消していく可能性が濃厚です。
新聞の合計部数は近年、毎年300万部以上減り続けている
「新聞の部数は減り続けている」。
改めて指摘しておくと、新聞は現在、猛烈な勢いで部数を減らし続けています。
当ウェブサイトにていつも引用する一般社団法人日本新聞協会の直近のデータによれば、新聞の合計部数(※ただし、「セット部数1部」を「朝刊1部+夕刊1部」に分解した場合)は3305万部で、ピーク時の7271万部(1996年)と比べて半分以下に減ってしまっています。
しかも、これをグラフに示してみると、放物線を描くかのごとく、近年になるほど部数の落ち込みが激しくなっていることがわかります。図表1は、1999年以降、3年刻みで新聞の合計部数の増減を示したものです。
図表1 新聞の合計部数の推移
(【出所】一般社団法人日本新聞協会データ【1999年以前に関しては『日本新聞年鑑2024年』、2000年以降に関しては『新聞の発行部数と世帯数の推移』】をもとに作成。なお、「合計部数」は朝夕刊セット部数を1部ではなく2部とカウントすることで求めている)
コロナ禍が含まれている2017年-20年までの期間と、それに続く2020年-23年の期間、連続して900万部以上、部数が減少していることが確認できます。直近数年で見ると年による変動もありますが、単純平均すれば、毎年平均して300万部以上落ち込んでいる計算です。
読者の新聞離れ
また、読者の側も、新聞を読まなくなりつつあることが示されています。
総務省の『情報通信白書』にここ数年、毎年のように掲載されている調査によると、新聞の購読時間は減少する一方です(図表2)。
図表2 平日の新聞の利用時間
年代 | 2013年 | 2023年 | 増減 |
10代 | 0.6分 | 0.0分 | ▲0.6分(▲100.00%) |
20代 | 1.4分 | 0.5分 | ▲0.9分(▲64.29%) |
30代 | 5.8分 | 0.5分 | ▲5.3分(▲91.38%) |
40代 | 8.6分 | 2.7分 | ▲5.9分(▲68.60%) |
50代 | 18.6分 | 7.6分 | ▲11.0分(▲59.14%) |
60代 | 28.0分 | 15.9分 | ▲12.1分(▲43.21%) |
全年代平均 | 11.8分 | 5.2分 | ▲6.6分(▲55.93%) |
(【出所】総務省『情報通信白書』データをもとに作成)
2013年と2023年を比較した平日の新聞購読時間は、全年代平均値で11.8分から5.2分へとほぼ半減し、とりわけ若年層で見ると、40代以下の層は1日に5分も新聞を読んでいないことがわかります(10代はゼロ分でした)。
また、高齢層でも、たとえば2013年時点で18.6分だった50代の新聞購読時間は7.6分へと半減し、60代ですら、28分から16分へと約4割強減っています。「新聞は高齢層が読むもの」でもあるのですが、その高齢層ですらも、新聞を見放しつつあるのです。
夕刊部数の減少速度は急
こうした流れで、特に注意したいのは、夕刊の減少速度の速さです。
夕刊部数(日本新聞協会データでいうところの「セット部数+夕刊単独部数」)は、2000年には2001万部でしたが、これが2022年には645万部に、翌・23年には491万部に、それぞれ激減してしまいました。たった1年で、夕刊は約4分の1の部数が失われた計算です。
このペースで減少が続けば、2023年から起算して、あと4年(つまり2027年)までに、夕刊というものがこの世の中から消滅することになります。
「そんな、ばかな」。
「たった数年で、夕刊がなくなってしまうなんて、あり得ない」。
そうおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、産業が持続するためには、ある程度の規模が必要であり、とりわけ業界全体で部数が減っていけば、その地域において配達網を維持することができなくなるのです。これが、『夕刊は「櫛の歯が欠けるように」消滅に向かっている?』などで指摘した「櫛の歯」理論です。
現実問題、夕刊の廃止が相次いでおり、たとえば主要ブロック紙のひとつである北海道新聞は昨年9月末をもって夕刊の発行を取り止めていますし、同じく主要ブロック紙のひとつに数えられる東京新聞も、8月末を持って東京23区内を除く夕刊の配達を終了しています。
また、主要紙に関しても、たとえば朝日新聞が昨年4月末をもって東海3県で、今年9月末をもって静岡県や山口県、福岡県で夕刊の発行を取り止めていますし、毎日新聞も昨年3月末をもって、やはり東海3県で夕刊の事実上の廃止に踏み切っています。
夕刊フジの続報
こうしたなか、以前から当ウェブサイトでもときどき指摘してきたとおり、一部報道では産経新聞社が発行する『夕刊フジ』が年内いっぱいで休刊する、とする噂が流れていました。
これについてはついに産経新聞社から正式な発表がありました。
夕刊フジ休刊のお知らせ
―――2024/10/01 13:30付 zakzakより
産経系『zakzak』によると、夕刊フジについては来年1月31日発行をもって電子版を含めて休刊することとし、また、同紙の公式サイト『zakzak』も1月31日をもって更新を休止するのだそうです。
実際には来年1月末まで発行が継続される、という点が事前の一部報道(「年内いっぱい」など)とは異なりますが、休刊することに関しては報道どおりでした。また、紙媒体のみならず電子版まで休刊してしまうというのは、個人的には意外でした。
かつて当ウェブサイトも『zakzak』に取り上げていただいたことがあるため、何とも残念です。
韓国を黙らせる処方箋 「お人よし」日本が突き放す、経済の視点から3つの制裁案が効果的 「新宿会計士」が提言
―――2021/03/08 20:00付 zakzakより
櫛の歯理論
ただ、この夕刊フジの休刊が何をもたらすかについては、慎重に考えるべきです。
一説によると、夕刊フジはほかの主要夕刊紙である東京スポーツと日刊ゲンダイ(※新聞協会へ加入していないため上記「夕刊部数」に含まれていない、との報道もあります)と配送を共通化していたため、もし夕刊フジが休刊すれば、配送コストは東スポと日刊ゲンダイの2社で負担しなければならなくなります。
そうなると、両紙も発行コストが今以上に上昇してしまう、ということです。
ただでさえ業界を挙げて部数が減少基調にあるなか、それに耐えられるものなのか。
もしかすると、ごく近い将来、新聞業界はさらなる合理化を余儀なくされるかもしれません。
たとえば首都圏で読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日経新聞、東京新聞、産経新聞の6紙と関連するスポーツ紙、諸紙、さらには東スポと日刊ゲンダイの夕刊紙などについては印刷工場を完全に集約し、その印刷工場から配送を共通化しなければならないほどに部数が減るかもしれない、ということです。
さらには配達員不足問題も深刻化するでしょう。新聞を配れる人がいなくなれば、物理的に朝晩2回、新聞を各家庭・事業所に送り届けるということができなくなります。まずは夕刊から、続いて朝刊で、新聞発行が困難になるでしょう(それとも郵便扱いにして、郵送に切り替えるつもりでしょうか?)。
いずれにせよ、インターネットで流せる情報量が圧倒的に増えているなかで、「昨日の情報を紙に印刷して物理的に送り届ける」というビジネスモデルは、とうの昔に破綻しています。いまや、昔から新聞を読み続けている層が惰性で新聞を読み続けてくれているおかげで、辛うじて、新聞業界が保たれているようなものでしょう。
逆に、新聞業界の皆さんが紙媒体の新聞に拘泥する理由が良くわからないのですが、いずれにせよ、現実はシビアです。
このままでいけば、まずは早ければ数年後に夕刊が、これに続いて10数年中には朝刊が、順次、この世から消滅していくのではないかと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
毎度、ばかばかしいお話を。
日本新聞業界のマリーアントワネット:「新聞が宅配できないのなら、読者が新聞をとりにくればいい」
後世の教科書にのるかな。
今日初めて新宿さんのところに来て、初めて日本の新聞業界が長期低落していることを読む人にとっては、とても分かりやすいまとめですね。
こういうのは田舎の(新聞の購読をやめない)婆さんたちにリンクを紹介しやすいから、助かります。
とりま傾向を観察していて面白そうなのは、
「リストラ解雇するのか?」
たいていの新聞雑誌は左翼系なので、経営者よりは労働者の側に立って記事を書いてきた歴史がありますが、自分達が食えなくなってきた時にどうするのか?
労働者の雇用と賃金を死守して名誉の倒産を選ぶのか?
過去は知らんふりして普通にバンバン解雇するのか?
それに新聞記者なんてつぶしが効くのか?
デモの日当だけな収入で家族を養えるのか?
他人事ながら心配ですよねえ。
「派遣切り」が問題になっていた頃、英字紙編集の派遣社員を切った大手全国紙があったような….
正社員でも、最後は社主の御意向次第のように思います。
「もう駄目だ
驕慢のツケ
進退迫られる新聞記者が思い知る文章を買ってもらえるビジネスの意味」
印刷・輸送のコストカットのために紙の新聞の発行を止めるのは今までもありましたが、web版まで止めるということは、記事作成の(記者を抱える)コストも賄えなくなってきているという事でしょうかね。
こちらで経緯を追ってくださるのでまだ意識の内ですが、そうでなければ本当に全く気付かないままに「え?新聞って今もう無いの?」なんてなりそうです。
公衆電話の方が生き残りそうです。(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/universalservice/02kiban03_04000791.html
2016年あたりからの減少に加速がついている。
この加速度は何が原因なのだろう。
このペースだと2026年は2300万部くらいになりそうだ。
地方紙よりも全国紙の方が減少スピードが速いという記事を読んだことがある。
そうだとすると、2026年あたりは産経、毎日は廃刊になっているかもしれない。
インターネットの普及と購買層の高齢化、新聞に関しては全てこれでしょう。
地方紙には掲載されている地域の話題、様々なイベントやスポーツなら小中学生の大会結果とか、読み手に需要のある情報が掲載されてるものも多いです。
かつ、独自取材ですから当然中央紙には掲載されていない、単純にニュースバリューが高いんですよね。
いずれ地域の記事オンリーの構成にして値段を下げて、となり
地方に記事を売ってる時事通信などはより衰退に拍車が、という流れなのかなと思ってます。
日刊ゲンダイは講談社の子会社である故に新聞協会へ加入出来ないと聞いたことがあります。
扱いとしては「新聞」ではなく「雑誌」扱いになるそうです。
極左イデオロギー全開の新聞擬(日刊雑誌)にもレッドカードを突き付けられる日もそう遠くないようですね。