なぜ石油価格が下がると再エネ賦課金の額は増えるのか
再エネ賦課金制度について調べていくと、いろいろ不可解な点に出くわします。とりわけこの賦課金は年々上昇の一途を辿り、2024年5月以降は毎月400kWhを使用する家庭の場合、年間16,752円もの負担を余儀なくされることになります。そもそも石油価格などが下落すれば、この「再エネ賦課金」は上昇するという、大変に仕組みを取っています。石油価格が下がっても再エネ賦課金が上がるため、結果的に電気代は下がらないのです。
目次
私たち国民が負担している再エネ賦課金は年々上昇
再生可能エネルギー賦課金の単価が年々上昇しているという問題に関しては、『再エネ賦課金のせいで5月から全国的に電気代値上げへ』を含め、当ウェブサイトでは以前からしばしば取り上げている論点のひとつです。
繰り返しになりますが、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は民主党政権時代の2012年7月1日に始まったもので、電力会社に対し、一定期間・固定価格で「再生可能エネルギー」で発電された電力を買い取ることを義務付けるものです。
ただ、それを買い取るおカネは天から降ってくるわけではありません。
私たち消費者が「再生可能エネルギー発電促進賦課金」というかたちで、その費用を負担しているのです。
先日から取り上げている通り、その賦課金は年々上昇しています(図表1)。
図表1 再エネ賦課金の推移
(【出所】経産省、環境省ウェブサイト、各電力会社等の情報をもとに作成。横軸の数値は「年度」を意味し、「12」は「2012年8月~13年4月」、それ以外は各年5月から翌年4月までを意味する。たとえば「24」ならば「2024年度」、すなわち「2024年5月~25年4月」を意味する。また、「標準家庭の年間負担」とは毎月400kWhを使用する家庭を想定した毎月の負担額を12倍した数値を意味する)
毎月400kWh消費家庭の場合は年間16,752円も負担!
すなわち、制度が始まった2012年度(※初年度のみ、2012年8月~13年3月の8ヵ月間)は、買取単価は1kWhあたり0.22円で、これは毎月400kWhを消費する家庭の場合、毎月88円、年間でも1,056円程度にとどまっていました。
しかし、この単価は年々上昇し、とくに2015年度には1.58円と、一気に前年比2倍以上に増えていることが確認できます。また、その後も単価は上がり続け、2016年度には2円台に、2021年度には3円台に乗せています。
当然、家計の負担も増えます。
毎月400kWhを使用する家庭の場合、2012年に1,056円だった年間の再エネ賦課金は、2015年度で10,800円、2021年度だと16,128円、そして2024年度には16,752円となる予定です。
太陽光発電の発電量の激増とも関係
この不自然なまでの再エネ賦課金負担の増加要因のひとつは、もちろん、世の中で太陽光発電を中心とする再エネ関連の発電施設が増えていることによるものでしょう。
図表2は、資源エネルギー庁データをもとに、再エネの発電量と賦課金を同一のグラフに示したものです(※ただし、発電量に関するデータは2022年分までしかありません)。
図表2 再エネ賦課金と発電量
(【出所】賦課金単価は図表1と同じ。発電量は資源エネルギー庁『電源構成(発電量)』。ただし「太陽光以外の再エネ」は風力、地熱、バイオマスを集計している。なお、発電量データは2022年分まで)
これで見ると、太陽光の発電量がとくに右肩上がりで増えるなか、それと比例するかのごとく、再エネ賦課金単価も上昇していることがわかります。念のため、「太陽光以外」の再エネを消去してみると、その傾向はよりくっきりするでしょう(図表3)。
図表3 再エネ賦課金と発電量(太陽光のみ)
(【出所】図表2に同じ。なお、発電量データは2022年分まで)
石油価格が上がると賦課金は下がるという謎のロジック
ではなぜ、この再エネ賦課金が発電量と比例的に上がっていくのでしょうか。
わかりやすくいえば、再エネ賦課金の決定プロセスに大きな問題があるからです。
再エネ賦課金は基本的に、電力会社が発電事業者(太陽光パネルを設置して発電している人たちなど)から買い取る費用(「①買取費用」)を消費者に転嫁する仕組みですが、現実にはこの「②買取費用」から、②「回避可能費用等」というものを引く必要があります。
というのも、太陽光などの電力を買い取れば、電力会社としてはその分、火力発電所などを稼働させなくて済むからです(つまりこの「②回避可能費用等」とは、わかりやすくいえば、「火力発電所などを稼働させなかったことで浮いた費用」などのことだと考えて良いでしょう)。
そのうえで、この「①買取費用-②回避可能費用等」を年間の「③販売電力量」で割った値が、kWhあたりの賦課金、というわけです。
kWhあたり賦課金の計算式(概略)
(①その年度の予想買取費用-②その年度の予想回避可能費用等)÷③その年度の予想販売電力量
そして、2023年度(つまり今年度)の賦課金が1.4円/kWhに抑えられている理由は、この「回避可能費用」が非常に高かったからです。
図表4は、再エネ賦課金と①買取費用、②うち回避可能原価、の一覧をグラフ化したものです。
図表4 再エネ賦課金と①買取費用、②回避可能原価
(【出所】再エネ賦課金は図表1と同じ、①買取費用、②回避可能費用等については経産省ウェブサイトのほか、過去データについては報道等を参考に作成)
これについては経産省が過去データを削除してしまっているためか、時間的制約もあり、現時点において、2017年以前のデータについて調べきることはできませんでしたが、それでも2023年度に賦課金単価が大きく落ち込んでいる点については、「②回避可能費用等」の額が大きく減っているためだとわかります。
想像するに、これは2023年度において、石油価格等の高騰を見込んで、「②回避可能費用等」の額が大きく減少したためでしょう。
つまり、化石燃料などの価格が上昇すれば、この「②回避可能費用等」が上昇し、賦課金が下がるのですが、逆に石油価格の下落が見込まれるなどした場合は、この「②回避可能費用等」が下がり、結果的に賦課金が上がってしまう、というわけです。
そろそろ太陽光発電にストップを!
よくぞこんな欠陥だらけの仕組みを作ったものです。
太陽光発電が増えれば増えるほど賦課金の額は上昇し、しかもその太陽光発電は電力の安定供給に役立たないばかりか、むしろ妨げになるうえに、環境破壊に加担し、中国の事業者などを潤す結果となっている(『再エネ推進とASG構想が「中国の意向」だとしたら?』等参照)わけです。
もちろん、「地球環境のためには喜んでおカネを出したい」と思う人も、この世の中にはいらっしゃるのかもしれません。
しかし、この再エネ賦課金制度は、年間2万円近い非常に高額な負担を余儀なくさせられているわりには、①電力の安定供給も妨げられ、②山林などの自然環境が破壊されるなど、意外と環境に優しくなく、そしてなにより③日本のエネルギー政策が歪められている、というわけです。
正直、現在は内閣府のタスクフォースで「中国企業の透かしが入った資料」に焦点が当たっているフシもありますが(『タスクフォース関連資料に中国企業透かし…中立性は?』等参照)、むしろ本当の意味で注目すべきは「再エネ推進と原発産業停滞で本当に得をするのは誰なのか」、という視点ではないでしょうか。
そして、すでに九州など、一部の地域では太陽光発電で生み出された電力が「余っている」という現象も生じ始めています。『【総論】電力系統の維持に適さない太陽光発電の問題点』などでも指摘したとおり、余った電力は、当然、捨てられます。
なぜ電力を「捨てて」まで、太陽光に拘るのでしょうか。
なぜ、石油価格が下がっても再エネ賦課金が上がるため電気代は下がらないという仕組みを放置するのでしょうか。
いずれにせよ、日本政府はそろそろ「太陽光抑制」にエネルギー政策の舵を切らないと、取り返しのつかないことになってしまいそうだと思われるのですが、いかがでしょうか。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
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日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
再生エネルギー賦課金は、太陽光発電だけでなく風力発電、地熱発電等も含んでいるのですがエネルギー庁では内容をすべて公表していない。
昨年、日本風力開発と秋本真利衆院議員が贈賄罪で在宅起訴されている。
電力会社のホームぺージに燃料調整費について調べたら
平均燃料価格は、原油・LNG・石炭の貿易統計価格(貿易統計にて公表される円建ての輸入価格)をもとに算定される燃料価格と説明していますがこれもおかしい。
その理由とは、電力は総電源量の違いによって変わるのに、一律になっている。これをエネルギー庁に問い合わせたら、「各電力会社に一存している」などと回答してきた。
原子力発電に舵を取ってきているが、すべてエネルギー庁が指図しています。
民主党政権と孫正義のせい、それ以上でも以下でもなく。当時はまだヨーロッパはさほどSDGs利権に汚くなかったですからねCとKだけで
>2023年度に賦課金単価が大きく落ち込んでいる点については、「②回避可能費用等」の額が大きく減っているためだとわかります。
大きく増えているの間違いでしょう。
非効率で、人為的にコントロールできず、環境にやさしくないインフラを無理やり拡張するとか、意味がわかりません。原子力発電や火力発電で高い技術力を誇っている日本が、再エネを拡大させなければならない理由が見当たらない。
電気代がムダに高いと、国民生活が圧迫され、産業競争力にも悪影響を及ぼすのは明らかです。技術的には論理が破綻しているのに、一部の勢力が国益そっちのけで集金スキームを拡大しようとしている。
本当に、百害あって一利あるかどうか怪しいシステムですね。
だからこそこのシステムで儲けている側、もしくは日本が損をする事が嬉しい勢力は
死に物狂いでこのシステムを守ろうとするでしょう。
早くなんとかなって欲しいけど、闇は深いなあ……
鹿児島メガソーラー施設が爆発炎上
お気の毒に巻き込まれた消防の方々にはお見舞い申し上げ、早く回復されることを、お祈り申し上げます。
天は見ているゾ …(ㆆωㆆ)ジー
メリットだけでデメリットを報じなかったが実際に運用したらデメリットの大きさに気づいたEVと同じ道をたどると思います。
EVは方針転換でき、それほどの影響力はありませんが発電はそうはいきませんこのままでは発電設備(太陽光パネル、蓄電池)を中国からローンで買い(電気代、再エネ還付金)、ベースロードとなりえる原発技術も廃れ中国から原発を買い、維持管理費も中国に貢事態にもなりかねません。
ウラガネガ~ってやってる場合ではないですよ、え、それも国会空転のための某国の差し金?