訪日外客は満遍なく増え「2月としては」過去最多記録

2月としては過去最大――。何の話かといえば、日本政府観光金融局(JNTO)が19日に更新した『訪日外客統計』で、2024年2月に日本を訪れた外国人が過去最大の2,788,000人【※速報値】を記録した、というものです。しかも、特定国のみならず、満遍なく、さまざまな国からの訪日客が増えているという傾向が認められるのです。

訪日外国人、「2月としては」過去最多

日本政府観光局(JNTO)が19日に更新した『訪日外客統計』によると、2024年2月に日本を訪れた外国人は2,788,000人【※速報値】で、統計が存在する2003年以降で見ると、2月としては過去最大を記録しました。

これまでに「2月としての過去最大」だったのは2019年2月の2,604,322人でしたが、あっさりとこれを抜き去った格好です。参考までに、訪日外国人合計を2017年以降の月次グラフ(※コロナ禍の2020~22年のものを除く)で示しておくと、図表1のとおりです。

図表1 日本を訪問した外国人合計(2017年以降、コロナ期を除く)

(【出所】JNTOデータをもとに作成。以下同じ)

韓国、台湾、中国、香港で7割超

では、日本を訪れた外国人のなかで、最も多かったのはどの国の出身者だったのでしょうか。

図表2は、2024年2月における訪日外国人を国別に集計したものです。

図表2 訪日外国人(2024年2月)
人数割合
1位:韓国818,50029.36%
2位:台湾502,20018.01%
3位:中国459,40016.48%
4位:香港205,9007.39%
5位:米国148,7005.33%
6位:タイ101,4003.64%
7位:豪州66,5002.39%
8位:フィリピン65,2002.34%
9位:マレーシア60,2002.16%
10位:ベトナム60,1002.16%
その他299,90010.76%
総数2,788,000100.00%

これによるとトップは韓国で818,500人であり、訪日外国人全体の約3割を占めていて、これに台湾502,200人(18.01%)、中国459,400人(16.48%)、香港205,900人(7.39%)が続きます。地理的に近いこれら4ヵ国・地域だけで、訪日外国人全体の71.23%を占めている計算です。

5位には日本から地理的に離れた米国が入っていますが、それでも人数は148,700人で訪日外国人全体の5.33%相当であり、このことからも、現状の訪日外国人の出身国が近隣4ヵ国・地域からの入国者に偏っているということは間違いありません。

コロナ禍前と比べ中国人が大きく減ったが…

次に、コロナ禍直前、今からちょうど5年前の2019年2月と比べてみると、ランクに変動が生じていることがわかります(図表3)。

図表3 訪日外国人(2024年2月vs2019年1月)
2024年2月2019年1月増減
1位:韓国818,500779,383+39,117
2位:台湾502,200387,498+114,702
3位:中国459,400754,421▲295,021
4位:香港205,900154,292+51,608
5位:米国148,700103,191+45,509
6位:タイ101,40092,649+8,751
7位:豪州66,50081,063▲14,563
8位:フィリピン65,20035,987+29,213
9位:マレーシア60,20031,399+28,801
10位:ベトナム60,10035,375+24,725
その他299,900332,742▲32,842
総数2,788,0002,689,339+98,661

これによると、中国からの入国者は754,421人から459,400人へと295,021人も減っているのですが、こうした中国人入国者の落ち込みを、中国以外の国からの入国者が増えたことでカバーしていることがよくわかるでしょう。

要するに、観光分野における「脱中国」が、急速に進行している、というわけです。

韓国と台湾はいずれも過去最多水準

次に、上位5ヵ国・地域(韓国、台湾、中国、香港、米国)に加え、豪州、カナダの各国について、図表1と同様の入国者数の月次推移を確認しておきましょう。まずは、日本を訪問した韓国人です(図表4-1)。

図表4-1 日本を訪問した韓国人

例年の傾向として、訪日韓国人は年末年始に増え、夏から秋にかけて減るという傾向が見られるのですが、今年に関しては「2月としては過去最多」であることがわかります。

なお、2019年に関しては、8月以降、つるべ落としのように韓国人入国者が落ち込んでいることが確認できますが、これは日本政府が韓国に対する輸出管理の適正化措置を実施したことに対する「ノージャパン運動」の影響と考えられます。

続いて台湾についても確認してみましょう(図表4-2)。

図表4-2 日本を訪問した台湾人

訪日台湾人については、2024年はいきなり上昇で始まっているのが印象的です。台湾人の場合は通年で平均的に日本を訪れるという傾向が認められるのですが、今年は日本旅行のブームが生じているのかと思うほどに、入国者数が伸びていることがわかります。

中国は減ったとはいえ回復傾向:香港も過去最多

では、3番目の中国はどうでしょうか?(図表4-3

図表4-3 日本を訪問した中国人

中国人の訪日者数は、昨年(2023年)は低調で、コロナ前と比べて戻りは鈍かったのですが、2024年についてもコロナ前のピークと比べ多いとはいえないにせよ、2月単月に関しては、2017年頃の水準に戻っていることが確認できます。

中国人訪日者数は例年、年明け直後が少なく、そこから徐々に増え、7月頃にピークを迎えているという傾向があることがわかりますが、もしもこの「戻り」傾向が続けば、2019年並みとはいえないにせよ、中国人観光客は再び日本に戻ってくる可能性はあるでしょう。

訪日外国人全体が増えているなかで中国人観光客が増えれば、2024年を通じた訪日外国人数は、それこそ過去最大を記録する可能性すらある、とする強気の予測が出て来るのは、こうした傾向によるものかもしれません。

一方、4位の香港についても、「2月としての過去最大」を更新していることがわかります(図表4-4)。

図表4-4 日本を訪問した香港人

香港人の訪日者数は例年、7月頃に最初のピークを、12月頃にもう一度のピークを迎えるという特徴があります。クリスマスに長い休暇があるという英国由来の文化的な特徴があるためなのでしょうか。

その一方で2月といえば例年、訪日香港人がさほど多くない時期ですが、今年に関しては過去最多水準ですので、この傾向が続けば、やはり今年は訪日香港人が過去最多を更新する可能性もあります。

米国、カナダ、豪州は強く伸びる

そして、興味深いのが米国人の訪日動向です(図表4-5)。

図表4-5 日本を訪問した米国人

訪日米国人は例年、2月が最も少ない月のひとつであるはずなのですが、今年に関しては1月よりも訪日者数が増えており、例年の約1.5倍程度の米国人が日本を訪れていることがわかります。

じつは、訪日米国人はすでに昨年、つまり2023年の時点で、コロナ禍前の水準を大きく上回っていたのですが、これはコロナ禍で往来が寸断していたことに対する「リベンジ消費」という一過性の傾向なのか、それとも米国で訪日ブームが生じているのかの判断は見極めが難しいところです。

しかし、今年2月の数値だけを見る限りは、訪日米国人が強く伸びているという傾向があることは、同も間違いなさそうです。

同様に、同じ北米つながりで、カナダ人の訪日動向についてもチェックしてみましょう(図表4-6)。

図表4-6 日本を訪問したカナダ人

カナダ人に関しても、やはり米国と似たような傾向が認められます。

2023年を通じた訪日者数は一部の月を除いて過去最多水準ですし、こうした傾向は、今年に入ってからも続いています。カナダ人訪日者数は3~4月頃と10月頃にピークを迎えるという傾向があるようですが、すでに2月の段階で例年の水準を大きく上回っている状況です。

同じ英語圏で、日本と「クアッド」を構成している豪州の場合も、似たような傾向にあります(図表4-7)。

図表4-7 日本を訪問した豪州人

豪州人の訪日客数は、例年、12月と1月にピークを迎え(スキー需要などでしょうか?)、2月から3月にかけて激減するるという傾向があり、今年も1月と比べれば大きく減少しているのですが、それでもやはり、2月としての訪日者数は過去最多水準であることは間違いなさそうです。

満遍なく増えているが…

こうした数値で見ると、特定の国に限らず、総じて訪日外国人が増えているという傾向が認められ、いわば特定国のみならず、満遍なく、さまざまな国からの訪日客が増えているという傾向が認められるのです。

これには円安などの影響もあるのかもしれませんし、それ以外の要因もあるのかもしれません。あくまでも著者自身の想像ベースですが、香港、台湾、米国あたりは、日本旅行の「リピーター」も増えて来ているのではないでしょうか。

この点、日本人でも特定の外国(たとえばタイや香港など)に「嵌ってしまう」、という人はいますが、もしかすると、近年は外国人の間でも、日本に「嵌ってしまう」人が増えている可能性は十分にあります。

また、多くの外国人が日本に観光客としてやってきて、日本を体験し、日本を好きになって帰っていくことは、日本にとっても大きな国益であり、このこと自体は歓迎すべき話でしょう。

もっとも、普段からの繰り返しで恐縮ですが、当ウェブサイトとしては、日本は「観光立国」――、すなわち「観光で生きていく国」になることは難しいでしょうし、また、それを目指すべきでもありませんし、日本は観光によらずとも、金融業や工業などを中心に、十分に産業があるからです。

この点、労働力(働き手)は有限ですし、生産年齢人口がピークアウトした現在、日本人の働き手は貴重です。国が音頭を取って観光業を振興すれば、働き手が観光業に流れてしまうという可能性もありますが、やはり個人的には、若い日本人には金融、半導体、原子力、最先端工業などの分野に進んでほしい気もします。

いずれにせよ、政府が音頭を取らずとも、日本の魅力が世界に伝わり、結果として観光客が自然に増えていく、といったパターンが、日本にとっては本来理想的なものではないか、などと思う次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. クロワッサン より:

    バブル崩壊が見えてきている中国や韓国からの訪日客が結構居るのは、

    弾けたら行けなくなるから行ける時に行っとく、

    って事なのかもですね。

    1. クロワッサン より:

      >〜やはり個人的には、若い日本人には金融、半導体、原子力、最先端工業などの分野に進んでほしい気もします。

      あまりに強くなり過ぎると白人、特に米国がルールを変えて競争に勝とうとするので、米国がルールを変えない、変えれない程度に、真綿で首を絞めるようにいきたいところですね。

  2. 簿記3級 より:

    コロナ禍で鉄道会社はオンライン会議やテレワークの普及、出張と通勤減少で厳しい経営環境でしたがここにきて訪日客の増加で業績も回復しているみたいですね。
    地方は訪問国別の客別に満足してもらい消費を促すコンテンツを揃える必要があるのに対して鉄道会社は運ぶだけで料金を貰えるので観光業界の川上的産業といえるかもしれません。(鉄道→ホテル→飲食→土産物屋のような感じ)
    昨今、電車で二人がけのイスを一人で占領する人をよく見かけるような気がし観光の波動性を感じます。

  3. ばいおてろ より:

    麻疹・トコジラミ拡大!
    内モンゴルの火葬場はパンク状態:各地では依然新型コロナ「感染拡大中」死者以前の数倍!

  4. CRUSH より:

    アホなこと書くならソースを付けて下さいまし。

    中尊寺展に行ってきましたが、上野恩賜公園も企画展示も外人さんだらけでした。
    桜は品種によっては咲き始めていてますが、午後からにわか雨で冷えてきたから、観光客たちにはアンラッキー。

    上野あたりは古い銭湯がたくさん残っているから、勇気ある観光客さんには日本のユニークな文化風習として試してもらいたいですね。

  5. エイブ神像 より:

    京都に住んでますけど邪魔でしかないです
    恩恵受けてるのは観光業だけでしょ

  6. どみそ より:

    ことしは うるう年なので 2月の統計は若干修正が必要です。
    でも、各地の混雑具合を見ると 訪日観光客は勢いよく増えています。
    地域住民の生活に支障の出ない程度の観光客数が 望ましいです。人数の追求だけだと 観光地、施設、交通の混雑を招くだけで 質の低下をひきおこしかねません。

  7. 匿名隊員 より:

    外国人観光客が溢れるような場所にはあまり観光に行きたくないですね…。
    外国人観光客も普通に大人しく観光して帰国してくれるのでしたらまあ構いませんが、そのままワレワレハナンミンダなどとぬかして日本人の金でぬくぬくだらだら居着く連中が居るのはどうにかしていただきたい。というかはじめにその辺りをきっちりしてからの外国人観光客誘致でしょうよ。
    岸田になってから首相官邸にご意見を送ることが増えましたが、ちゃんと意見集約してくれているのでしょうかね。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告