大谷選手の奥様の「オファー合戦」を始めるテレビ業界
専門性と人倫が欠如する日本のマスコミ業界
「視聴率のために、奥様のインタビューを何が何でも実現せよ」――。『マネー現代』の報道によると、テレビ業界で現在、ドジャースの大谷翔平選手の奥様をテレビに出演させるための「オファー合戦」が「プレイボール」したばかりなのだそうです。そんな合戦、プレイボールする必要などあるのでしょうか。一部では芸能記者が野球選手の取材をしているケースもあるようですが、本件に限らず、どうもマスメディア関係者には人倫や専門性の欠如が目立つのです。
目次
大谷選手へ:「奥様を大切に、どうか末永くお幸せに」
米大リーグ・LAドジャースの大谷翔平選手が結婚したとする話題については、以前の『大谷選手が「結婚」語らない原因はマスコミ自身では?』でも取り上げました。
といっても、当ウェブサイトは正直、「芸能評論サイト」でも「スポーツ評論サイト」でもありませんので、著名人の方がどなたとご結婚になろうが、あまり関心はありません。
大谷選手が当ウェブサイトをご覧になられているかはわかりませんが、当ウェブサイトから大谷選手へのメッセージがあるとしたら、唯一、「奥様を大切に、どうか末永くお幸せに」、です。
ただ、先日より指摘している通り、マスメディア関係者の間には、大谷選手に対し一種の「苛立ち」を感じている者が多いようです。
その理由は、大谷選手が自身の結婚相手の顔写真等を公開していないからです。
メディアは大谷選手と信頼関係を築けているのか
どうして大谷選手が奥様を公の場に連れてこないのか――。
これについては、大谷選手自身がその理由を明らかにしたわけではありませんし、私たちは超能力者ではありませんから、大谷選手の内心を直接知ることはできません。
ただ、これまでのメディアの大谷選手に対する関わり方を見ていくと、大谷選手が日本の多くのメディアに対し、かなりの不信感を覚えている可能性が高いことについては、指摘しておく必要があります。
先日も紹介したとおり、メディアの大谷選手とのかかわり方に関しては、2021年11月15日に行われた大谷選手に対する記者会見の模様から垣間見ることができます。
会見の内容自体に関してはすでに当ウェブサイトで取り上げていますので、内容については「日本のメディアのレベルの低さが目立つ会見だった」という点を除いて、敢えて繰り返しません(というか、繰り返し説明する価値もありません)。
目に付いた読者コメントだけ紹介しておきましょう(原文ママ)。
- メディアの衰退を象徴するような記者会見だった。/一体何がしたいのかさっぱりわからない。/大谷のクリティカルな解答だけが救いだった。
- マスコミの方々プロならもう少し「なるほどと思える質問をして欲しい。」どうでも良い質問が多すぎる。
- 「○○に対してメッセージをお願いします」的なやつもうやめて
- この会見を見て大谷翔平は改めて同じ日本人として誇らしいと思ったし、日本のマスコミは改めて同じ日本人として恥ずかしいし情けないと思った。/誇らしさと恥ずかしさ、情けなさが同居する奇妙な記者会見だった
- 司会者ぐらい真面な人を手配して下さい、報道関係者の駄目っぷりが目立つ会見でした/大谷さんに失礼です。
独占インタビューに成功しているメディアもある
それはともかくとして、大谷選手を巡っては、野球での大活躍ぶりに加えて「ルックスの良さ」もあってか、日本のテレビ局、女性週刊誌、スポーツ紙などは、隙あらば大谷選手の話題を取り上げようとしているフシがあります。
大谷選手のこの会見後には、「NHKが大谷選手に紅白歌合戦への出演を依頼した」との週刊誌報道もありました(実際、大谷選手自身は2016年の紅白でゲスト審査員を務めています)が、結局は大谷選手の紅白出場は実現していないようです。
(※なお、本件については「NHK自身が『公共』放送を騙る組織でありながら、歌番組という、限りなく「商業的な番組」を制作して放送しているという時点で、明らかに公共性の要件から逸脱しているのではないか」、といったツッコミもあるのですが、この点については本稿ではとりあえず脇に置きます。)
ただ、大谷選手が「何が何でもメディアには絶対に出ない」という主義を貫いているのかといえば、そういうわけではありません。事実、スポーツ総合誌『ナンバー』のウェブ版に3月2日付で、こんな「独占インタビュー」が配信されています。
《独占インタビュー》大谷翔平、結婚を語る…大谷さん、何と呼ばれているんですか?「さん付けですね。僕は(彼女の)名前を呼び捨てにしています」
―――2024/03/02 11:02付 Number Webより
当ウェブサイトではリンク先記事そのものを引用することはしませんが、記事を読むと、インタビュアーの大谷選手からうまく話を引き出す能力の高さが伺えます。
こうした事例で見るに、恐らく大谷選手は、ちゃんと信頼関係を作っているメディアの取材には応じているのでしょうし、逆にNHKを含めた日本の多くのメディアは、大谷選手との信頼関係の構築に失敗している、ということではないかと思います。
これまでのさまざまな情報を総合すると、おそらく大谷選手の最大の関心事は「野球で良い成績を残すこと」であり、奥様とのなれそめ、奥様の個人情報(外見、職業など)について根掘り葉掘り報じられること自体、「野球で良い成績を残すこと」の妨げになると大谷選手は考えているのではないでしょうか。
想像するに、大谷選手がこのタイミングで自身の結婚を発表したのも、移籍でチームに馴染んでいくことも含め、リーグ開幕に向けて野球に集中していく状況を作らなければならず、自身の結婚話自体がその妨げになっては困る、という判断もあったのではないでしょうか。
マネー現代「オファー合戦が過熱中」
ただ、こうしたなかでさらに困惑する話題があるとしたら、これかもしれません。
「大谷の妻をテレビに出せたら金一封を出す」キー局でテレビマンによる「オファー合戦」が過熱中
―――2024.03.12付 マネー現代より
講談社『マネー現代』が12日に報じた記事によれば、大谷選手が先月29日に結婚を発表して以来、テレビ各局の大谷選手への「オファー合戦」が過熱しているのだそうです。
「各局が打診しているのは、もちろん、妻のインタビューだ。大谷は練習風景ですら数字が取れる稀有な存在だけに、その妻をテレビに初出演させたとなれば、視聴率は計り知れない」。
では、いったいどうやってそれを実現させようとしているのでしょうか。
「テレビ局編成担当」はこれについて、かつてフジテレビのディレクターが大谷選手のご両親に気に入られ、2022年末の年末特番に本人の出演が決まったという経緯があることを踏まえ、「各局のスポーツ担当者は、あらゆるツテをたどって両親に打診しようとしている」、と説明します。
「それだけでなく、大谷の高校時代や中学時代、さらには小学校の同級生にまで当たり、何とか本人とコンタクトを取れないかを探っています」。
「なんとしてでも大谷妻の出演にこぎつけるべく、驚きの手法に出る局まで現れた。『大谷妻を出せたら金一封を出す』と、局員に伝達したキー局まであるというのだ」。
ご両親を含めた家族や学生時代の交友関係まで嗅ぎまわり、挙句の果てには「金一封」で従業員の尻を叩く――。
新聞記者は「夜討ち朝駆けが当たり前」?
これが事実なら、なんとも呆れる話です。
そもそも「大谷選手との信頼関係を構築する」という正攻法的な発想は見当たりませんし、人間関係をしらみつぶしにあたり、なんとか大谷選手にたどり着こうとする姿勢は、「相手に対して敬意を払う」という「人間としての最低限の接し方」ですらありません。
この『マネー現代』の記事を読んでいて、ふと思い出すのが、少し前の『「夜討ち朝駆けで優秀な記者が育った」という思い違い』でも紹介した、双葉社が運営する『ピンズバNEWS』というウェブサイトが配信した、とある元新聞記者の発言に関するエピソードです。
これによると70代の元新聞記者という方が、こう述べたというのです。
「僕らの時代は新聞記者と言えば取材先への夜討ち朝駆けは当たり前。労働時間もへったくれもありませんでした。そういう労働環境で、会社の経費を使って取材をすることで、記者としての足腰や人脈を鍛えていました」。
まるで、「取材先への夜討ち朝駆け(という非常識な行為)をする者は優秀な記者だ」、とでも言いたいのでしょうか。
「夜討ち朝駆け」とは、取材先に真夜中、早朝に突撃するということであり、やり方によっては反社会的行為そのものです。なぜなら、「突撃される側」にとっては、(とくに私たち一般人の多くにとっては)平穏な生活を乱されるからです。
もちろん、政治家や高級官僚などのように、業界によっては、「夜討ち朝駆け」に慣れている人たちもいるかもしれませんが、しかし、「夜討ち朝駆けは当たり前」などとする感覚は、少なくとも私たち一般人にはありません。常識的な家庭だと、夕飯後にはゆっくりくつろぎ、平日の朝は通勤通学などの準備であわただしいからです。
やはり、マスメディア業界という、「記者クラブ」制度や「電波利権・新聞利権」などの特権に守られた特異な世界に身を置いていると、さまざまなところで社会常識から逸脱していくのかもしれません。
一般人は大谷選手の奥様のことをそこまで知りたがっているのか?
ちなみに先ほどの『マネー現代』の記事には、「キー局局員」による、こんな証言もあります。
「そのキー局内ではスポーツ担当以外もオファー合戦に参戦。バラエティのスタッフなどは、野球OBや俳優など、大谷が興味を持ちそうな対談相手のリサーチに躍起になっています」。
そんなことをしなくても、大谷選手との信頼関係をちゃんと築いていれば、「大谷選手が興味を持ちそうな対談相手」など持ち出すまでもなく、インタビューに応じてくれそうなものですが…。
そのうえで、『マネー現代』の記事は、こう締めくくられています。
「オファー合戦は”プレイボール”したばかりだ」。
うまいことを言ったつもりなのかもしれませんが、そんな低レベルな「合戦」、プレイボールしていただかなくても良いのではないかとも思ってしまいます。
それ以上にこれらの記事を眺めていてふと抱くのが、「果たして一般人は、大谷選手の奥様のことを知りたいと思っているのか」、という疑問です。
いや、もちろん、「僕は大谷サンのことは何でも知りたいです」、「大谷サンの奥さんのことも知りたいです」、という人もいるかもしれませんが、大谷選手のことに関心を持つ人のすべてが、大谷選手の配偶者のことに関心を持つものなのでしょうか?
何となく、ですが、現在のマスメディア各社は、「とにかく絵になる情報を手に入れる」ことに躍起になっているのではないかと思えてなりません。
専門性と人倫の欠如
こうしたなかで思い出すのは、メディア産業関係者の専門性の欠如、そして人倫の欠如です。
もちろん、マスコミ・マスメディア業界の「中の人たち」のすべてがそうだと思いたくはありません。しかし、普段からメディア報道を眺めていると、そもそも論じるべきテーマの専門知識も素養も足りない人を起用しているというケースは、枚挙にいとまがありません。
たとえば経済を論じるのに、フリーのジャーナリストであったり、紀行家であったり、投資家であったり、酷いケースだと哲学者などであったりするのですが、不思議なことに、経済・産業・金融の専門家の姿をあまり目にしないのです。
その結果出てくるのが「悪い円安」論であったり、「悪い株高」論であったり、はたまた「国の借金」論であったりするわけですから、正直、始末に負えません。
あるいは、太陽光発電や原子力発電について記述する際に、電力の専門家ではなく、やはり環境活動家であったり、野党政治家であったり、といった人たちを登場させ、「原発反対」ありきで記事を書いているという事例も大変多いのが実情でしょう。
さらに許せないのは、2021年12月ごろには、とある著名な女優が亡くなった際、そのご両親(ふたりとも著名な芸能人)に対し、マスコミ記者らが「今のお気持ちは?」などという言葉を掛けたという事件です(『メディア記者、傷ついたご両親に「いまのお気持ちは」』等参照)。
まさに、人間の所業とは思えません。
そういえば、冒頭の方でも紹介した、大谷選手に対する記者会見では、大谷選手に質問をしている記者の中に、芸能レポーターもどきもいました。野球に関する記事で、野球の専門家ではなく、芸能レポーターもどきが登場するというのは、なかなかに強烈です。
マスコミ業界の中ではごく自然な発想なのかもしれませんが…。
いずれにせよ、とりあえず大谷選手には「プレイボールしたばかりのメディアのオファー合戦」とは距離を置き、野球に集中して良い成績を残していただきたいと願うばかりです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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テレビ局は、大谷選手の奥様に出演オファーを出しているのでしょうか。それとも、視聴率の素にオファーを出しているのでしょうか。もし今、大谷選手の奥様以上に視聴率が望める素が出てきたら、そちらに移るのではないでしょうか。もし、大谷選手の奥様が出演しても視聴率がとれなかったら、テレビ局内部で責任問題にならないのでしょうか。
>「オファー合戦は”プレイボール”したばかりだ」。
”プレイボール”ということは、なんか、「オファー合戦」にルールがあるような印象操作してる。人倫に悖るようなことが繰り広げられるのに。
>恐らく大谷選手は、ちゃんと信頼関係を作っているメディアの取材には応じている
「ストライク(独占取材)」の機会を得られたスポーツ総合誌。
「ずっとライク(親身)」なアプローチあってのものですね。
毎度、ばかばかしいお話を。
テレビ局:「どうして大谷選手は、スポーツ総合誌の独占取材は受けてくれたのに、うちの独占取材は受けてくれないのだ」
ありそうだな。
カズさま
>「ずっとライク(親身)」なアプローチあってのものですね。
問題は、それをテレビ局が理解しているか、ですね。
例えば、ヒカキンのユーチューブチャンネルに出演したら最高に面白い。何を意味してるかわかるだろう。次いでに、出演を記事にするの禁止。
大谷サンとの信頼関係があると思われるNumberが文藝春秋の雑誌だというのはモヤるところではありますが。
あんな左側にどっぷりな企業でもNumberだけはまともなのかもですが。
ワシも、ヘンに思う。
かの、日本マスゴミ【ゴミっぷり増すコミ】の、
今年夏にあるだろ〜『フランス・パリオリパラ』の喜色満面かつ、妙な持ち上げ方な取り扱いと、
今から4〜5年前の『東京OP2020』に対する、ディスり放送とヘイト放送等の、
この扱い方の差は、何なのだ?!
ただのパパラッチだね。
日本のマスコミは食べ物にたかる蠅ですね。しかもとてもしつこくて五月蠅い蠅ですね。
コンプライアンスもガバナンスもディスクロージャーもあったものではありません。これでは反社会的勢力と言われても仕方ないでしょうね。
もうまともな人はいなくなってしまったのでしょうか?
「まとも」な人は恐らく既にフリーの立場で独自にやっているかと思われます。
もし中に残っていて感性がまともだったとしても無力で何もできていないのなら、
「傍観者か共犯者のどちらか」と考えざるを得ないですしね。
一応、何人か「今のメディアはダメだ、このままでは遠からず滅びる」と
現実を見た記事を書く人も居るには居る様ですが、上層部や権力者は
完全に無反応ですし……バタバタ倒産し始める時代までは何も変わらないでしょう。