消費減税公約化は「そのときの経済情勢で判断」=立民

税制という国民生活にも直結する論点において、国民民主党の立場は明快です。同党は消費税の5%への減税などを提唱しているからです(その実現可能性は別として)。これに対し、同じ民主党・民進党の流れをくむ野党である立憲民主党を巡り、消費税の減税に関連して泉健太代表が28日、それを公約に織り込むかどうかは「その時点の経済情勢で判断する」と述べたそうです。

安倍総理の失政

もう当ウェブサイトでは何度も表明してたとおり、政治家というものを評価するときには、多面的な視点が必要です。これは、一般に「名宰相」とされる故・安倍晋三総理大臣にしてもそうですし、岸田文雄・現首相にしてもそうです。

たとえば安倍総理は連続2822日、通算3188日という史上最長の政権を率い、とくに「アベノミクス」を引っ提げて再登板して以降は、金融緩和に積極的な黒田東彦氏を日銀総裁に据え、在任期間中に延べ80回・176ヵ国・地域を訪問するなどし、外交を立て直すという功績をあげました。

安倍総理が遺した『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』は現在の日本外交の指針となっており、日米豪印クアッド会合もその貴重な遺産です(もっとも、クアッドサミットの定例化については安倍総理ではなく、菅義偉総理大臣の時代に実現しています)。

しかし、その安倍政権にしたって、財政政策に関しては及第点とは言い難いでしょう。何といっても消費税と地方消費税の税率を大幅に引き上げたこと、民主党政権時代に廃止された年少扶養控除を復活させなかったことなどは、非常に悔やまれる話です。

とりわけ、2019年10月の2回目の税率引き上げの直後、2020年にコロナ禍が発生したわけですが、「コロナのためにいったん税率を5%に戻す」、という判断がなぜできなかったのか――。

おそらくアベノミクスの「第二の矢」の発動を妨害したのは、副総理兼財相として入閣していた麻生太郎総理あたりではないかとも思われるため、経済失政の全責任を安倍総理に負わせるのは酷ですが、いずれにせよ、残念というほかありません。

岸田首相にも評価すべきポイントはある

こうした議論は他の政治家にも成り立ちます。

たとえば菅義偉総理はたった384日の在任期間で多大な功績をあげた人物ですが(『菅義偉総理大臣の事績集:「日本を変えた384日間」』参照)、その菅政権にしたって、再生可能エネルギー推進を重視するあまりでしょうか、原発の再稼働などの方針を打ち出すことはありませんでした。

原発再稼働、新増設方針は、岸田・現首相が打ち出したものです。

ちなみに岸田首相は無節操な対韓外交、財務省に対しこびへつらうような姿勢、とりわけ「岩盤支持層」の意見を無視したLGBT法の強引な推進などに多くの人々が反発を示していることは、おそらく間違いない点です。

実際、岸田首相がうちだした、たった4万円というレベルの時限減税は、金額にしても方法にしても、中途半端で不十分というほかありません。しかし、「安保3文書」の制改定、経済安保法制の推進など、外交安全保障分野においては、むしろ安倍、菅両総理の時代よりも進展したという言い方もできます。

このように考えていくと、どの政権にもそれなりの功績と失点があるものです。

よって、私たちがある政権、政治家、政党などを評価するときには、必ず多面的かつ総合的に評価する癖をつけたいものです。

(※もっとも、著者自身は岸田首相を「多面的かつ総合的に」評価した結果、トータルでは少なくとも安倍総理の足元にも及ばないと考えているのですが、この点についてはまた機会があればどこかでじっくり論じたいと思います。)

国民民主党の減税公約は一貫している

さて、こうした「総合的な側面から評価することが望ましい」というのは、与党だけでなく、野党にも成り立つ話です。

ある政党の主張を正しく評価するには、その政党がどんなメッセージを出しているのかを聞き取ることも重要なのですが、これがなかなか大変です。なかには、その場しのぎで、やるつもりもない政権公約を出すような政党もある一方、一貫して減税を唱えている政党もあるからです。

たとえば国民民主党はガソリン税に関し、個性的な動きをしているなどで注目を集めていますが(『少数政党なのに政策を盛り込ませる国民民主党の動き方』等参照)、こうした動き自体は評価に値します。「政局よりも政策本位」だからです。

ただ、その国民民主党にしたって、所属している国会議員・地方議員のすべてが高潔だ、という話でもありません。たとえば『無免運転県議「どんな指摘も受け止める」→リプ欄閉鎖』などでも触れたとおり、今年の夏は同党所属の静岡県議が無免許運転で話題となったりしています。

このため、私たちが有権者として、選挙権を行使する際には、候補者である政治家ないし政党に対してはその主張内容に加え、普段からの行動なども踏まえたうえで、多面的に評価すべきなのです。

当ウェブサイトとして国民民主党を「推している」わけではありませんが、少なくとも国民民主党は消費税の税率を5%に戻せ、などと主張していること(同党ウェブサイト『【経済対策】「国民民主党「国民に直接届く」緊急経済対策」を発表』等参照)は、事実として指摘しておいて良いでしょう。

立憲民主党は現時点で消費減税の公約盛り込みを見送り

さて、減税つながりでもうひとつ考えておきたいのが、立憲民主党の消費税に対する考え方です

国民民主党の消費税に対するスタンスは明確ですが、その一方で、同じ旧民主党・民進党系の流れをくむ立憲民主党はどうなのでしょうか。

これについては時事通信が28日、こんな記事を配信しました。

立民、消費税減税を協議 公約原案への見送りで異論

―――2023年11月28日20時24分付 時事通信より

時事通信によると、立憲民主党は28日、国会内で税制調査会の会合を開いたのだそうです。

ただ、会合を開いたのは良いのですが、何か具体的に決定されたのかについては、記事を読んでもよくわかりません。

記事によると同党では次期衆院選の公約原案に消費税減税が現時点で盛り込まれておらず、これに同党内で反発の声があるなか、「消費税は立民の源流である旧民主党が政権を失う原因の一つで、執行部は慎重に議論を進める方針」、などとしています。

泉氏「経済情勢で判断」

では、党首自身はいったいどう考えているのでしょうか。

同じく28日付の日経電子版の記事によれば、同党の泉健太代表は28日、都内で講演し、次期衆院選で消費税減税を党の政策に掲げるかどうかは「そのときの経済情勢で判断する」と述べたのだそうです。

立民・泉代表、消費税減税の主張「選挙時の情勢で判断」

―――2023年11月28日 18:30付 日本経済新聞電子版より

いちおう、泉氏の肩を持つわけではありませんが、日経新聞のこの記事タイトルにはかなりの悪意があります。

この見出しだと、泉氏が「消費税の減税は選挙時の情勢で(選挙目当てで)判断する」と述べたかに見えてしまいますが、泉氏の発言は「そのときの経済情勢で判断する」、であり、これだと読み手が受ける印象がずいぶんと異なってしまいます。

いずれにせよ、立憲民主党がそのような方針であるということ自体は同党の判断であり、私たち「外野」がどうのこうの文句を言うべき論点ではありません。

ただ、税制という、国民生活にとっても死活的に重要な論点に関する公約を、「織り込むか織り込まないかはそのときの経済情勢次第」というのも、なんだかよくわかりません。

ちなみに減税の必要性については、単なる経済対策・子育て支援というだけの話ではなく、いわゆる「ブラケット・クリープ対策」――、つまりインフレ等に伴い適用される累進課税の税率を修正しなければならない、という論点――からも説明されるものです。

ちなみに先ほどの時事通信の記事によれば、泉氏は「需給ギャップが解消し、これまでと同じように消費税5%にしようと言える局面ではない」、とも述べたそうですが、このくだりについては正直、意味がよくわかりません。泉氏の発言の問題なのか、それともその発言を報じているメディアの問題なのかはよくわかりませんが…。

いずれにせよ立憲民主党が税制という重要な論点に対する立場を曖昧にしていることだけは間違いなさそうですので、あとはこれを受けて、私たち一般国民が次回衆院選で賢明に行動する手掛かりとするのが正しいのではないか、などと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. sqsq より:

    消費税は福祉目的だったと記憶しているが、減税するとその分はどこから持ってくるのか。
    国の予算は全体で赤字で、赤字国債を発行しているのだから結局のところ減税分は国債発行で補うことになる。

    1. 名前 より:

      あなたは財務真理教徒ですか?それとも洗脳されてますか?勉強した方がいいよ。

      1. sqsq より:

        足りない分はどこからもってくるのか教えていただけるとありがたいですが。

    2. さより より:

      sqsqさま

      これは、現在の経済規模ではその通りなので、同じ土俵で議論していても解決策が出て来ることはありません。
      考えられる解決策は、経済規模拡大。
      池田勇人の所得倍増計画のように、GDP倍増計画を高らかに打ち出すしかないでしょうね。
      そうすれば、企業利益・個人所得も増えるので、法人税は増えるし、個人所得が増えるので、消費税を課税したままでもやっていけるし、消費税率は5%位でも良いかもしれないです。

      どうして、どこの政党も、GDP倍増します、と言わないのか?
      そうすれば、付加価値の高い仕事をすることに注意が行くし、工場の国内回帰を促進する方へ方針が立てられるはず。

      1. sqsq より:

        レーガンが大統領になった時に同じようなことを言ってましたね。
        「減税すれば経済が活発になって税収が増える」

        1. さより より:

          そういう面はありますね。
          要は、市中にお金を回して消費を拡大して、その間、国債発行などで社会福祉も充実させて、と。目的目標を明確にして、お金を集中的に投入する事が肝です。それを、小出しに五月雨式にチョロチョロと出していても、何の効果も生まれません。4万円減税なんて、お金を捨てるようなものです。愚策の最たるものです。何の効果もありません。
          何故、ニューディール政策のことを研究しないのでしょうか?

    3. はるちゃん より:

      企業経営も国家運営も基本的には同じだと思います。
      経営不振だからと言って、必要な投資を絞ってしまえばジリ貧路線です。
      経営不振の時こそ果敢な投資が必要です。
      私は、財政均衡論は誤りだと思っています。
      財政はもっと戦略的に運用されなければいけません。
      収入に支出を合わせる政策はまさに公務員的発想です。
      これでは国の将来はありません。
      財務省に洗脳されている政治家、マスコミ、経営者が多すぎるというのがこの国の将来を暗示しているように思います。
      果たして令和の龍馬は現れるのでしょうか?

  2. 雪だんご より:

    いつもの泉代表って感じですね。
    彼はとにかく「何もしたくない」「何も言いたくない」と言う印象が強い。

    個人的には彼はさっさと代表を辞めたがっているフシがあると思うのですが、
    立憲民主党にはもう他に人材が居ないのか「泉降ろし」が発生する気配はないですね。

    1. KY より:

       ブレまくり体質は民主党時代から引き継いでいる悪性遺伝子なので、立憲の言動に右往左往する事程無駄な精神の疲労は無いでしょう。

  3. 元雑用係 より:

    条件付きで消費税減税を掲げればいいだけなんですけどね。公約に入れないってことは条件揃ったって減税しないことの表明でしかないような。

    ポピュリスト集団としては後先考えず消費税減税を掲げそうなもんですが、そうはさせない勢力が党内にいるんでしょうか。
    財務省とのお約束なんか口が軽い議員には危なくてできないでしょうが、過去官僚出身のベテラン議員とかどうなんでしょうね。しらんけど。

  4. 世相マンボウ_ より:

    まあ、公約とはいっても
    立憲民主党のものについては(笑)、
    もともと期待も効果も実現も関心持たれず
    なんかごにょごにょ言ってるなあ程度のものでしょう。

    立憲民主党さん政策もポリシーも実行力もない
    と多くから言われてしまっていますが
    立憲民主党さんの名誉のために申し上げると、
    実は広く国民に公表してないだけで、
    あっというまに叩き出された民主党政権以来の
    韓流とウッシッシの二匹目のドジョウを狙う
    党の確たる方向性と強い実現意志は今もあるのですが
    ただ表看板には書いてないのです。
    しかしそれは コアな支持者である
    専従でおまんまさんと韓流さんには
    しっかり理解浸透しており、
    一方で、
    それと利害相反する耳障りの良いだけの
    辻褄の合わないマニュフェストやそんなものが
    国民の無党派層獲得と鬱憤層煽り立てのために、、
    表看板には掲げられていると感じます。

  5. カズ より:

    >「そのときの経済情勢で判断する」

    本当は、「自民党の出方を見てから決める」ではないのでしょうか?
    自分達では何も決められないのです。アンチ自民が党是だから・・。

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