「取って配る」くらいなら控除額自体を引き上げるべき
「取って配る」。これは官僚機構の利権の基本です。岸田文雄首相が25日、首相官邸で「経済対策についての会見」を行い、「年収の壁」支援などを打ち出したのですが、「取って配る」の構造は変わっていません。もし本気で壁を「撤廃」するならば、「補助金」ではなく、給与所得控除や基礎控除、配偶者控除、さらには社会保険加入要件を見直すのが筋でしょう。
岸田首相の会見
岸田文雄首相が25日、「経済対策についての会見」を行いました。
その全文が、首相官邸ウェブサイトにアップロードされています。
経済対策についての会見
―――2023/09/25付 首相官邸HPより
岸田首相の話した内容は、おおむね次の通りです。
- 26日の閣議で取りまとめを指示する予定の経済対策には、①物価高に苦しむ国民に対して成長の成果を適切に還元すること、②コストカット型経済から30年ぶりに歴史的転換を図ること、の2つの大きな目的がある。この2つを着実に実行できるよう、次の5つの柱を重視していく
- 足元の急激な物価高から国民生活を守るための対策
- 地方、中堅・中小企業を含めた持続的な賃上げ、所得向上と地方の成長の実現
- 成長力の強化・高度化に資する国内投資の促進
- 人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革の起動と推進
- 国土強靱化、防災・減災など、国民の安心・安全の確保
- これらを取りまとめたのち、速やかに補正予算の編成に入りたい
- 具体的には、「年収の壁」支援としてまずは「106万円の壁」を乗り越えるための社保適用促進手当を創設するほか、賃上げを行った事業主に対し労働者1人あたり最大50万円の助成金を創設する
…。
アベノミクスを否定?
岸田首相の会見内容は、相変わらずとっ散らかっていてわかり辛いのですが、今回の経済対策を要約したら、上記の通りです。
良いことも言っているのですが、残念ながら賛同できない部分もあります。たとえば、「コストカット型経済からの30年ぶりの転換」とありますが、それをやろうとしたのがアベノミクスなのであり、それもこの10年間の金融緩和である程度は成果が出ているわけです。
たとえば失業率水準は低下し、有効求人倍率も恒常的に1倍を超えていますが、岸田首相の発言はこうした事実を否定するかのものであり、個人的にはカチンと来ます。
年収の壁とは?
ただ、それ以上に重要な点があるとしたら、「年収の壁」の議論でしょう。
岸田首相が話す通り、ある人の所得が年間103万円を超えると、所得税法上で大きな問題が出てきます。
たとえば夫婦共働きで、夫または妻の所得額が1000万円以下、その配偶者の所得額が103万円以下であれば、所得が多い方には配偶者控除(最大38万円)を受けることができますし、所得が少ない方には所得税と住民税が課せられません。
しかし、ここでその配偶者の所得が103万円を超えてしまうと、配偶者控除を受けることもできなくなるだけでなく、その配偶者自身にも所得税や住民税がかかってきてしまいます。つまり、ダブルパンチ、というわけですね(ほかにも「配偶者特別控除」の問題もありますが、これについては本稿では割愛します)。
その次の壁が「106万円」(従業員数101人以上の企業で社会保険料が発生)、さらにその次が「130万円」(その配偶者が夫または妻の社会保険上の扶養からも外れ、社会保険料を支払う義務が生じる)、です。
「取って配る」からややこしくなる
岸田首相の方針は、これらの壁をどうにかしようとするものですが、端的にいえば、ナンセンス極まりないものです。もし「年収の壁」を取り払うというのならば、基礎控除と給与所得控除を増額(つまり減税)するのが手っ取り早いからですし、社会保険に関してもその「壁」自体を引き上げれば済む話だからです。
正直、国の補助金制度は、税金や社会保険料を「取ってから配る」式のものが大変に多いのが実情です。国税を管轄する財務省は所得控除を絶対に変えたくないのでしょうし、社保を管轄する厚労省、住民税や地方交付税などを管轄する総務省なども同じようなマインドなのでしょう。
総務省自身がふるさと納税を敵視しているフシがあるという点については『菅総理の置き土産「ふるさと納税」総務省が敵視の理由』などでも取り上げましたが、役所は自分たちをすっ飛ばすような効率的な仕組み作りに、全力で抵抗するものなのでしょう。
いずれにせよ、財務省や厚労省、総務省などにとっては、いったん自分たちが「取って」、それを「どう配るか」を采配するところに「利権」が生じるのです。しかし、もし本気で経済対策を考えるなら、岸田首相が今すぐやらねばならないのは「減税」ではないでしょうか。
岸田首相の発言などを眺めていると、この「年収の壁」を所与のものとして、補助金を得られる細かい条件が設定され、事業者はこれについて役所のわかり辛いガイダンスとにらめっこしながら補助金の申請をしなければならないわけです。
企業を運営していたり、個人事業を営んでいたりする人なら経験があるかもしれませんが、制度が複雑になると、現場の人は、本当にウンザリすることでしょう。
岸田首相、なぜか「絶対に」減税を言い出さないフシがありますが、とりあえずは「来年以降」がどうなるのか、注目してみたいと思う次第です(※もし任期が続いていれば、ですが)。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
10月1日から酒税の一部が増税になるんですよね。
岸田政権は増税していないという主張もありますが、こっそりしっかり増税します。
他にも同じようなことをしているかもと疑心暗鬼になります。
検索したら「現在注目されている2023年10月の酒税変更は、2017年の酒税法改正に基づき実施されます」との説明があります。
改正自体は岸田政権よりも前に決められたことなので、現政権が増税したとの認識は不適切だと思います。
激しく同意した上で、一言。
采配する利権については、残念ながらその立場になったことがないので得られる利権構造にどのような旨味があるのか想像の域を出ません。
もう一つ想像できることは、税、社会保障費の負担への希薄化が大きな狙いのように思います。
個人事業主や確定申告者以外の納付構造では、いくら負担しているかすら理解していないサラリーマンが多すぎます。企業経由にすることで「そんなものか~、今年は年調戻り少ないな~」程度の認識です。企業側も総務経理の部署が当たり前に存在し、せっせと納付の為の経費を担っています。
納付される側として、取りっぱぐれも少なく、負担意識も希薄化させ、本当に便利な構造ですね。
財務省をぶっ壊す。とか言う政党がいたら投票するのにな!
とって配るからこそ
財務省が威張れる
天下り先の確保というのもあります。
トリガー条項も同じ
暫定税率を廃止→すぐに復活
なお悪いことに特定財源から一般財源に組み換え
言い訳にトリガー条項制定
自動車ユーザーをバカにし過ぎ
参考
https://www.moneypost.jp/1059547
組織は肥大する。
これを地で行ってるのがNHKと公務員ですね。
仕事を作り出すのが上手い:無駄とはいいませんが民間なら最初に削減を考えます。
ブレーキを掛けるのは監視役の議員様と国民の筈。
ですが議員様は役人に手玉に取られ国民は投票にいかず愚痴だけを言っている。
本当に棄権したら罰金制度を設けるしかないかなあとこの頃思って居ます。
「取って配る」は税収が上がっても官庁の仕事も増えるので経費が増えて各省庁の使えるお金が増えますよね。仕事を増やすことで公務員を増やすんですかね?
税率を上げる等で税金を上げるためには、経費の削減の目標も出してもらいたいですね。
仕事が増えたから、経費が増えたでは赤字経営一直線ですからね。
インボイス制度の為に来年の税収は増えますよね。輸出企業の収益が伸びますからこちらでも税収が増えますね。ただ、インボイス制度の為に零細企業やフリーランスの可処分所得が一割減りますので、消費は冷え込むでしょうね。
源泉徴収の弊害は、一般の国民の税金や社会保障費がいくら払っているか気にしなくなることですが、実は国家公務員もわかっていないのではないですか?
企業の収益が増えて、従業員の給与が増えて、税収が上がるのが本来の姿なんですけどね。
収入が上がらずに、税金と社会保障費が上がれば景気は下がると思いますよ。
岸田首相はアベノミクスを亡き者にしようとしているようです。
>インボイス制度の為に零細企業やフリーランスの可処分所得が一割減りますので、消費は冷え込むでしょうね。
理屈の上ではマクロでは変わらないと思いますよ。
吸い上げられた税収は消え失せる訳ではなくて、政府が支出に回すから。
むしろ細々と貯金してた人達から消費税を吸い上げることで、余裕がなくなって限界消費性向が上がるかも。(笑)
冗談はさておき、新宿さんとこみたいにテクニカルな話をできる場では、無理筋の情緒的な分析はROMの人たちに向けて、あんまり響かないような気がします。
渡部昇一が書いていた。日本には減税を喜ばない人たちがいる。なぜか?もともと税金払ってないから。
もし、岸田文雄が本欄と本欄のコメントを読んだら、本稿以外の記事やコメントを読んだらどう思うだろうか。選挙目線でしか見れない人種だから、「おお!評判わりいぃな。」「なんかバカな国民をだますネタはないか?」とはなしているかもしれない。一時的に減税して支持をえたとしても、選挙が終われば信用はできない。野党がだらしなさ過ぎる。維新の会と国民民主党が、頑張っちゃいるが身体検査が甘い上に玉木の過去の献金問題は不問にはできない。個人的には菅義偉氏を期待したいが派閥力学でわからない。わかるのは、岸田ではだめだということだ。
取って配ることで収支がバランスすればまだ良いのですが、実際にはその過程でシステムを維持する公務員の人件費に溶けるので最初から取らないのが正解ですね。
かなくなに減税せず、その代わりに税収が増えた分だけ政府支出を増やしたがる岸田は、胡散臭いですね。
教科書的には、乗数理論で
「最初の1回分だけ経済効果が大きい」
とは、いえます。
でもそんなもん複利計算したら全体から見てゴミみたいなもんだし、そもそも市場を経ずに
「官僚が支出先を決める」
だけでもアウトですわ。
そもそも、手抜き大好きリスク大嫌いな役人が、自分達の仕事を増やされて喜んでるのが、怪しい。
例えば
「穴を掘って、また埋める」
という仕事があったとして、普通に考えたら
「僕でない誰かにやらせてくれ」
となるはず。
減税すれば済むのに、課税して配布するなんてのは、要するにそういう仕事です。
「はいはいはいっ、僕がやります!」
とか喜んで張り切ってるのは、
「どの穴から埋めるのか」
「どの手段で埋めるのか」
を官僚が差配できるから(利権)でしょう。
そのくらいなら、減税して市場に任せて、みんな1時間でも早く帰宅すればいいのにさ。