技能実習・特定技能…滞在資格の見直しの必要はないか

本稿は、ちょっとしたデータ整理です。当ウェブサイトでは現在、ちょっとした目的で入国ビザと長期滞在の関係を調べているのですが、日本に長期滞在する外国人(昨年末で3,075,213人)のうち、ビザ免除対象国でない国・地域出身者が2,264,414人いることが判明しました。内訳は永住者が3割、留学が1割、「技術・人文知識・国際業務」が1割で、他にも「技能実習1号ロ」、「特定技能1号」などの在留資格も目につきます。

JNTOデータで見るヒトの流れ

先日の『日本にとって「重要な相手国」は?「数字で」読む外交』では、日本と特定の外国との経済的関係性を議論するための「基礎資料」として、「ヒト、モノ、カネの流れ」に関するデータをいくつか紹介しました。

これらのなかで、とくに「外国から日本へのヒトの流れ」を読む際に参考になるのが、日本政府観光局(JNTO)が公表している『訪日外客統計』と、出入国在留管理庁が作成・公表している『在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表』です。

JNTOのデータは毎月の訪日外国人を、出入国在留管理庁のデータは現時点において日本に在留している外国人を、それぞれ国籍別に把握するのに役立ちます。

このうちJNTOの方のデータで、2023年1月から7月までの入国者数を一覧にしておくと、図表1のとおり、日本を訪れた外国人の総数は13,032,855人で、このうち3位の米国、9位の豪州を除くと、上位10ヵ国はいずれも東アジア・東南アジア諸国で占められていることがわかります(図表1)。

図表1 訪日外国人(2023年1月~7月累計)
人数割合
1位:韓国3,755,28728.81%
2位:台湾2,192,94216.83%
3位:米国1,171,0028.98%
4位:香港1,126,1378.64%
5位:中国907,9956.97%
6位:タイ547,3484.20%
7位:ベトナム345,7252.65%
8位:フィリピン328,8152.52%
9位:豪州310,3612.38%
10位:シンガポール278,0352.13%
その他2,069,20815.88%
総数13,032,855100.00%

(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)

ビザ免除国以外の出身者も多い

ちなみにこれ以降は11位:インドネシア、12位:カナダ、13位:マレーシア、14位:英国、15位:フランス、16位:ドイツ…、などとなっており、やはり日本への入国者の上位を占めている国は、アジアや欧州諸国が中心であることがわかります。

やはり日本への入国のし易さは、物理的な距離の近さ(韓国、台湾、香港、中国など)、ひとり当たりGDPの高さ(米国、カナダ、豪州、英国、フランス、ドイツなど)という2つの軸でだいたい説明がつきそうに思えますが、それだけではありません。

やはり、入国に際してビザが必要かどうか、という側面も重要でしょう。

外務省のウェブサイトを眺めてみると、2023年4月2日時点において、日本は世界の69ヵ国・地域に対してビザ免除措置を実施しています。

ビザ免除国・地域(短期滞在)

―――2023/04/02付 外務省HPより

訪日者上位10ヵ国のうち、7ヵ国に関しては、このビザ免除措置の適用対象国です。

ところが、中国、ベトナム、フィリピンの3ヵ国に関しては、日本政府はビザ免除措置を講じていません。

これはいったいどういうことなのか――。

長期滞在者はどうなっているのか

こうしたなかで、これまで当ウェブサイトではJNTOデータについてはしばしば取り上げてきたのですが、ふと気になって、「現在の日本にはどの国の人が何人滞在しているのか」について調べてみると、また少し違った姿が見えてきます。

ここで使用するのが出入国在留管理庁と外務省のデータです。図表2は、2022年12月末時点における在日外国人の国籍別内訳と、先ほどの外務省のウェブサイトにあった「ビザ免除国」の一覧を組み合わせたものです。

図表2 在日外国人の総数と主要な内訳(2022年12月時点)
国籍在留者数ビザ免除
総数3,075,213
1位:中国761,563×
2位:ベトナム489,312×
3位:韓国411,312
4位:フィリピン298,740×
5位:ブラジル209,430×
6位:ネパール139,393×
7位:インドネシア98,865
8位:米国60,804
9位:台湾57,294
10位:タイ56,701
11位:ミャンマー56,239×
12位:ペルー48,914×
13位:インド43,886×
14位:スリランカ37,251×
15位:朝鮮25,358×
16位:バングラデシュ22,723×
17位:パキスタン22,118×
18位:カンボジア19,604×
19位:英国18,959
20位:モンゴル16,580×

(【出所】出入国在留管理庁『在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表』及び外務省『ビザ免除国・地域(短期滞在)』をもとに著者作成)

日本在留者の多くはビザ免除措置の対象外の国出身

これによると、ビザ免除措置の対象外の国が、上位10位のうちの5ヵ国に及んでいます。上位20位まで拡大すれば14ヵ国がビザ免除措置の対象外です。

このうち15位の「朝鮮」については多くの場合、北朝鮮国籍者であると考えられますが、それ以外のビザ免除非対象国について、在留資格はいったい何なのでしょうか。

これについて集計したものが、図表3です。

図表3 ビザ免除対象国以外の出身者の長期滞在状況
滞在資格人数構成割合
総数2,264,414100.00%
1位:永住者678,35129.96%
2位:留学248,86710.99%
3位:技術・人文知識・国際業務241,71710.67%
4位:家族滞在199,0518.79%
5位:定住者187,1848.27%
6位:技能実習1号ロ128,2415.66%
7位:特定技能1号111,5954.93%
8位:日本人の配偶者等87,8003.88%
9位:技能実習2号ロ73,6883.25%
10位:特定活動69,4723.07%

(【出所】出入国在留管理庁『在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表』及び外務省『ビザ免除国・地域(短期滞在)』をもとに著者作成)

本来の有識者会議はこういうケースに必要なのでは?

ビザ免除対象国以外出身者で日本に在留している人を数えると、2022年12月末時点で2,264,414人いることがわかりますが、このうちの約3割に相当する678,351人が永住者です。

しかし、それ以外は留学(248,867人)、「技術・人文知識・国際業務」(241,717人)、技能実習1号ロ(128,241人)、特定技能1号(111,595人)――、などとなっています。

また、一部ではなにかと「悪名」が高い「特別永住者」については、たとえば韓国人が260,605人を占めていますが、韓国は現在「ビザ免除対象国」でもあるため、結果的に「特別永住者」資格は、図表3の集計からは除かれています(ちなみにこの「特別永住者」も年々減少中です)。

東日本技研株式会社によると、「技能実習1号ロ」とは、「外国人が日本で技能実習を受ける上で一番最初に取得する在留資格」とされ、「営利を目的としない団体(商工会など)が『管理団体』として技能実習生を受け入れ、その傘下の企業などの実習実施機関で実習を実施する『団体監理型』」だそうです。

また、法務省によると、「特定技能1号」は、「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」とありますが、事実上は介護、ビルクリーニング、建設などの労働者と考えておいて良いでしょう。

結局のところ、日本の「失われた30年」の正体とは、この技能実習や特定技能などに代表される、事実上の「安く使い倒せる単純労働力」を重宝してきたことによる、経済・社会の疲弊だったのではないか、といった気がしてなりません。

ただ、日本社会がようやく「脱デフレ」を意識し始めたなかでもありますが、こうした技能実習などのビザが、事実上の「単純労働を目的とした就労ビザ」ではないのか、といった検証も必要でしょう。

先日の『「行政の無駄:有識者会議は多すぎ」=浜田聡参院議員』では、浜田聡・参議院議員の調査による有識者会議の数について話題として取り上げましたが、本来の有識者会議は、こうした技能実習などの制度の可否を巡って、法務官僚が介入しない部分で人選を行い、実施すべきなのかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    留学ビザも、本来は就労不可の在留資格なのに、日本では 「資格外活動許可」 という、矛盾した名前の許可を与えて、アルバイトを認めてますね。

    貧しい発展途上国からやって来た留学生の多くは、日本語学校在籍中にアルバイトで貯めたお金で、Fランク大学や専門学校に進学しています。

  2. たろうちゃん より:

    留学生とは名ばかりで、学校にはいかず入学金と授業料をせしめている専門学校や大学が多すぎるのだ。俺の妻は昔フィリピンパブで働いていたが在留資格のない偽装結婚者が多くいたものだ。働くためにカネを払って結婚をする。在留資格ないしは永住権を取得してから離婚するのだ。警察や入官にも内通者はいる。店の飲み食いを集るかわりに取り締まり日を教えるのだ。その日に限ってビザのない従業員は休むのだ。俺の妻は永住権を持っているのにかかわらず警察署で4時間も不当聴取をされた。おれは訴訟も辞さずで猛抗議した事がある。肉屋の仕入れで東京卸売り市場に行くと日本人が嫌う作業に従事している外国人が沢山いた。重労働なのに薄給なのだ。議員は現場を知らなさすぎる。中韓なんて反日してるくせに数が多いのだ。もちろん真面目な人もいる。最近はベトナムからの不当就労が多く偽装結婚も絶えない。俺なんかも妻と一緒になる前は身内からにも偽装を疑われた。犯罪も多い。きちんとしたシステム構築をのぞみたい。

    1. 墺を見倣え より:

      > 留学生とは名ばかりで、…

      留学を口実に日本に入国し、学校を卒業したら、特亜工作員の会社に就職して日本に居座り、数年経ったら、「配偶者も子供も出来たので帰国できません!」と主張する様に、最初から計画している留学生が多いのでは?

      無論、その種のFラン大学や専門学校等は、特亜工作員の会社とグルです。

      日本は留学を口実にすれば、移民なんて底の抜けたバケツ状態。

      1. たろうちゃん より:

        何年か前に、似たようなことがあった。両親が不法滞在で、その子どもが日本生まれで日本語しか話せない。ある時両親が入官につかまった。強制退去である。しかし、市民団体が登場し日本で暮らす人権を!とあいなった。かなりもめたんだが両親帰国、子供は施設保護となったはず。市民団体ってなんなんだ?日本人なんだろうけど、、、

  3. ムッシュ林 より:

    特定技能ははっきり言ってしまえば移民ですよね。ドイツも最初は短期労働者としてトルコ人を受け入れたわけですが、数年住んだら実際は帰らなくなる人が続出して数十年経ったらトルコ人だらけ、結局は移民となって今があるわけです。数年働いたら帰ってねという建前通りにはなりません。
    本論からは離れますが、有識者会議というのは、私の経験上、役所が専門的知見を有する専門家・第三者に意見を聞いた上で決めましたと言うために存在していて、要する責任を有識者会議におわせるとともに判断の正当性を高めるためのものです。結論ありきなので、有識者の選定はもちろん行政に都合が悪い意見を言わない人(御用学者)の中から選ばれるのです。
    この御用学者は、左翼学者など極端な人は排除されるので意外と現実的でまともなことを言う人ばかりな印象ですが、たまには行政の介入のない人選でのガチンコの議論というのも見てみたい気もします。

  4. はるちゃん より:

    技能実習制度の本来の目的は安い労働力を受け入れる事です。
    このような脱法行為に等しい制度罷り通れば、法治国家であるべき日本国民の遵法精神を著しく損なうものではないでしょうか?
    この制度も既に利権化しているようですが、自民党は低賃金労働力に依存している業界に対し毅然とした態度を示すべきです。
    立憲民主党の支持基盤である連合の見解も聞いてみたいですね。
    みんな臭いものに蓋という感じでしょうか?

  5. 匿名 より:

    情報提供のみ。

    共同通信(本日)
    『外国人材受け入れ、86%が必要 自治体「消滅しかねない」危機感』
    https://news.yahoo.co.jp/pickup/6475675

    1. 農家の三男坊 より:

      >『外国人材受け入れ、86%が必要 自治体「消滅しかねない」危機感』

      当該自治体は切迫しており必死でしょうが、
      何故消滅危機に陥っているかが分かっていない様で、

      共同通信のポジショントーク、外国人から搾取しようとする勢力、日本国に寄生しようとする勢力に利用されているだけに見えます。

  6. 匿名 より:

    記事とは関係ありませんがご報告です。
    先ほどこのページを開いたとたん、AvastのAntivirusソフトが反応しました。
    ウイルス関連のリンクを排除したようです。

    1. KY より:

       >AvastのAntivirusソフト

       何でも手当たり次第に反応するので厄介です。

    2. 攻撃型原潜 より:

      ウィルスではありませんが、このページを開くと「福島の汚染水」と称したフェイク画像の広告が大量に表示されます。今も「福島上空の不可解な現象ー超自然的な火災が福島の住民の間でパニックを引き起こします」とか。かなり悪質です。

      1. 新宿会計士 より:

        読者の皆さま

        広告は当ウェブサイト側にて選択しているわけではなく、基本的に追跡型広告等の場合は当ウェブサイトではなく、配信者の側で勝手に配信されることもあります。悪質な場合は広告の四隅のどこかにある「X」マークなどをクリックして報告してくださると幸いです(当ウェブサイトに限った話ではありませんが)。

        1. 攻撃型原潜 より:

          すみません。誤解を与えるような説明不足のコメントをしてしまいました。

    1. 農家の三男坊 より:

      国民・厚生年金保険の脱退一時金と高齢外国人の生活保護増加の懸念問題
      のURLを張り付けたところで誤って送信してしまいました。失礼しました。

      外国人労働者問題の穴を塞ごうとしない自民党の亡国ぶりには呆れます。

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