麻生総理が「抑止力行使」の可能性言及=台湾海峡防衛
麻生太郎総理が訪問先の台湾で「台湾防衛のための防衛力行使」に言及しました。ずいぶんと踏み込んだ発言です。ただ、麻生総理の発言でもっと重要なものがあるとすれば、それは台湾を改めて「基本的価値を共有する極めて重要なパートナー・友人」と呼んだことです。ここで思い出すのは、麻生総理自身がいわゆる「自由と繁栄の弧」を提唱した人物であり、それが安倍総理の「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に引き継がれたという経緯でしょう。
台湾防衛に言及した麻生総理
安倍晋三、菅義偉両総理のもとで副総理兼財相を務め、現在は自民党副総裁を務めている麻生太郎総理が8日、訪問先の台湾で講演し、「いざとなったら」台湾防衛に防衛力を使うと言及したそうです。
麻生氏「いざとなったら台湾防衛に防衛力使う」
―――2023/8/8 12:38付 産経ニュースより
といっても、リンク先の産経ニュースの記事は非常に短いのですが、もう少し詳しい報道がないのかと調べてみると、台湾メディア『中央通訊』(日本語版)にもおそらく同じ話題が掲載されていました。
自民・麻生副総裁「抑止力を機能させる覚悟」必要性を訴え 台北で講演/台湾
―――2023/08/08 12:47付 中央通訊日本語版より
こちらの記述によると、麻生総理はまず、台湾が日本にとって「基本的価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、友人」だと指摘。日米台を始めとした「有志国の強い抑止力」の必要性を訴え、「今こそ日本や台湾、米国などの有志国には戦う覚悟が求められている」と述べたそうです。
台湾と「基本的価値共有」
この「基本的価値を共有」、「緊密な経済関係と人的往来を有する」、などのくだりでピンときた方も多いかもしれませんが、これは安倍政権、菅政権時代を通じ、外務省『外交青書』に盛り込まれるようになった、台湾に関する表現です。
ちなみに外交青書上、「基本的価値の共有」という表現は、かつてはたとえば韓国などに対しても用いられていたものですが、安倍政権時代に、韓国に対してこうした表現は使われなくなっています。
要するに、現在の日本にとって台湾は、(正式には「国」とは認めてはいないにせよ)日本にとって最上位の相手である、ということではないでしょうか。
いずれにせよ、麻生総理のこの発言、ずいぶんと踏み込んだものですが、それだけではありません。
中央通訊によると麻生総理はこの「抑止力」について、①能力、②いざとなれば使う意思と国民的合意、③それを相手に知らせておくこと――の3つがそろって初めて成立するとしたうえで、「台湾と密接な隣人関係にある日本が率先して、中国を含めた国際社会に発信し続けることが重要」、などと言及したそうです。
麻生総理が韓国を訪問した際に「半島有事で日本が防衛する」と述べたという記憶はありませんが、台湾に対してはここまでハッキリと言及したというのは、興味深いところです。間接的に、「韓国よりも台湾の方が重要だ」、とする意思表明に見えなくもないからです。
自由と繁栄の弧構想
こうしたなか、麻生総理で思い出すのは、「自由と繁栄の弧」構想でしょう。
第一次安倍政権下で当時は外相だった麻生総理は、『自由と繁栄の弧をつくる』などとする講演会を実施し、「経済的繁栄と民主主義を通じて、平和と幸福を」、と呼びかけました。
「自由と繁栄の弧」をつくる
―――2006/11/30付 外務省HPより
この麻生総理の「自由と繁栄の弧」構想はもちろん、その後の安倍総理の「セキュリティ・ダイヤモンド」構想、そして「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」にもつながっているのです。
安倍総理が2012年に再登板して以降、副総理兼財相として入閣した麻生総理が結果として消費税等の増税や緊縮財政などを通じ、アベノミクスの「第二の矢」を妨害し続けていたことについては、正直、本当に残念でなりません。
ただ、財政面では非常に「残念な人」だった麻生総理は、それと同時に日本の外交を大きく変えるきっかけを作った人物のひとりでもあります。
そのことは、正当に評価すべきでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
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中国と戦うなら、アメリカ国防総省のシュミレーションによれば、自衛隊員の大半は壊滅し戦車や駆逐艦、軍用機の大半は消失しアメリカ合衆国も膨大な被害を受けるとレポートが挙がっている。アメリカはともかく、我が国はスパイ法をはじめとした9条問題や核保有の是非、ただ言葉で戦場の一線で働くことがないご老体に言って欲しくはない。議員ならまず、国内法の整備からしたかいかがか。血を流すのは自衛隊員であり、一般人なのだ。ただ、台湾とは友好関係との理由だけでなく、台湾海峡のシーレーンの重要性も周知させてもらいたい。
「アメリカ国防総省のシュミレーション」情報の出所はどこでしょうか?
シュミレーション結果は一つではなくいっぱいありそうですが。
ネットでくぐればだでてくるのかな。今年になってネットにあがっていた論評だからみてみたらどうか。戦慄の内容なので記憶にのこっている。
この発言を、今台湾でするということは、どんな意味があるのか?
失言でなければ、政治家の発言は、何を、だけでなく、いつ、どこで、も勘案した方が良いかもしれないです。拙い勘案ですが、いつ、については、最近の外相の辞任と、どこで、については、来年の総統選と。何か、すこし、押しの一手を進めたかな、という感じですか?
さより様
何となく、誰かに行かされて言わされている感じがします。
台湾は日本にとって最大の友好国で守るべき国だと思いますが、今のタイミングで敢えてこのような発言をすることは、戦争を敢えて煽っているようでマイナスに感じますね。
台湾の観光業にとっても迷惑でしょう。
台湾をどうするかは台湾人が決めることであり、日本はどうのこうの言う立場ではありません。過半数の台湾人が現状維持を願っている事実を忘れてはならないでしょう。
ここのところ民進党の支持は下がっており、地方選挙レベルでは国民党が勝っている現状は台湾人のバランス感覚が健在であることを示していると思います、ウクライナのように代理戦争をさせられるのではないかという危惧感も強いようです。
日本人が考えることは、そもそも、本当に日本人は中国と戦う覚悟はあるのか、戦うなら勝つために何をすべきなのかをシミュレーションすることであり、台湾人に何かを働きかけることでは無いと思います。
麻生さんの大変勇ましい発言を歓迎したいと思う気持ちはありますが、法的な問題と自衛隊の能力の問題があると思います。
台湾は日本の同盟国ではありませんし、また、日本は台湾を国として認めていません。中国の一地方という扱いです。
また、日本の自衛隊は、日本の防衛に特化した装備になっている筈で、台湾防衛に参加するには、艦艇や航空機などを遠方で展開することになりますが、戦力のほうは中国に対抗できるのでしょうか?
加えて、ミサイルや弾薬は必要最小限しか無いようで、継戦能力に疑問がありそうです。
準備は出来ているのでしょうか?
口も、戦争の道具ですよ。
勿論、その背後には、それなりの力を持っていることが必要ですが。
戦争とは、「武力」の量と質だけで、戦うものではありませんよ。
そして、「武力」の半分は、「意思」です。
絶対に戦うぞ、「お前の野望は絶対に受け入れない」という「断固たる意思」を相手に骨の髄まで感じさせることです。
スポーツなどは、「勝つという意思」が半分を占めています。
ですから、テクニックだけでスポーツ観戦をする方は、半分しか見ていないので勿体ないですよ。
プーチン大統領は、ウクライナに侵攻すればすぐに降参すると思っていたのでしょうけど、予期しないウクライナの徹底抗戦により自らを窮地に追い込んでしまいました。
ただ、ウクライナの徹底抗戦を支えているのはウクライナ人の意思に加えて西側諸国からの武器や情報提供、ロシアに対する経済制裁などの支援があって成り立っています。
中国は日本が参戦した場合のシミュレーションは当然行っている筈で、何らかの作戦は立てていると思います。
気力と根性で台湾進攻を防げればそれに越したことはありませんが。
>>気力と根性
だけとは言っておりません。
正しく正論というかまともな論理に基づいたご意見だと思います。
そもそも麻生さんの訪台・発言は、鳩山さんの訪韓・慰安婦像への膝まづき謝罪とはわけがちがう。現職の閣僚なのですから。麻生さんは西園寺公望きどりのスタンスを楽しんでいるようですが、確かな知識や見識もなさそうで、何事も床屋談義程度の不確かなことを軽率にしゃべるアレな人と見受けます。まだ林さんなんかのほうが慎重さがある分だけマシです。岸田さんは止められなかったのか?大きな災いがおこらなければいいと願うばかりです。ところで、まあ、いつまでたっても憲法改正もスパイ防止法の議論にすらもつけない、つまりは何ら国家としての姿勢も意思も示せない国が、なぜか台湾のことになると台湾有事は日本の有事だなどと、アメリカの尻馬にのって危険な飛躍的感情にほだされ冷静な考えができない。まったく何から何までアメリカに追従し従順。日本人は開国から今に至るアメリカとのつきあいの歴史をもう一度学び直すべきです。日本は中華人民共和国を認めて台湾を切った経緯を、どう考えているのか。ここにおいては中国の言い分に分があるように思えてなりません。だいたい台湾はもはや日本人の国ではなく、中国人の国です。親日だからなどと、表面的なことばかりもてはやして、なにか根底から認識を誤っているような。
台湾有事を想定したCSISレポートによれば、日本はアメリカの要請に応じて日本の米軍基地を中国攻撃のために米軍が使用することを許可せざるを得ない、従って中国軍は日本国内の米軍基地を攻撃し、結果日本はアメリカ台湾とともに中国と戦うことになる。
また初期において米日台連合軍側は有利に戦闘を展開、但しアメリカは中国との全面戦争を防ぐために中国本土を爆撃しない、短期決着が重要、こういった内容だったと記憶しています。
このレポートが示唆することは、アメリカは中国と全面的に戦う気はない、あくまで台湾という局地戦において台湾主体の戦争を日本とアメリカが援護するというもののように思います。
最も重要な事は、日本人が本土が攻撃されることを許容、本気で覚悟を決めているのかどうかだと思います、で、私として覚悟があるのか否かと問われると、正直今の段階ではあるとは言えません。
なおこのシミュレーションにおいては、ロシアや北朝鮮の動向は配慮されていません。
台湾有事への日本の対応は対艦攻撃などもするでしょうが、基地提供や兵站などの米軍の後方支援が重要な要素だと思います。米軍も日本の支援無しには戦えないですし。
日本単独で中国と事を構えることは想定されていないようです。と言うかおっしゃる通り無理だと思います。
CSISや最近では日本国際問題研究所から公表されている台湾有事シミュレーションなどを見ると、何が想定されているのかわかると思います。
ペロシ訪台時に日本のEEZにミサイルが撃ち込まれましたが、台湾と与那国の距離は100km少々。台湾有事は望むと望まざるとに関わらず日本の有事に直結する可能性が高いです。
麻生氏が台湾侵攻に関与することを表明することは、中国に対する抑止効果を高める一方で、米軍の来援が無い場合に日本が傍観や消極的防戦の選択をできなくするわけではないと思います。
麻生氏の発言は、言うだけメリットがあるばかりでデメリットはほとんどないと思います。
おそらくですが米国、日本共に中国による台湾侵略行為は当面はなくなり、攻略 目標はロシアに変更されたと判断しているからではないでしょうか。 プーチンの判断、その後の戦況、そう遠くない時期に内部崩壊すると判断していると思われます、草刈り場と化す広大な領土、国力がピークのいま決断(ほぼ勝ち目のない台湾島か火事場泥棒か)するでしょう。
中国が台湾に侵攻するということは上陸するということだと思う。
ミサイルの撃ちあい、ドローンの飛ばし合い、戦闘機、爆撃機、その後、船で兵士を上陸させることになるが潜水艦の対策できているのか。
上陸前に艦船を沈められたらメンツ丸つぶれ。
確かに、実戦経験が無いのが一番の心配らしいですから。
抑止力の誇示
「潜水艦から発射されるスタンドオフミサイルで、北京や上海が火の海になるのかも?」ってのが抑止効果が高そうに思います。
身も蓋もないことを言えば、「憲法が禁じてるのは侵略行為」であって、反撃(単なる破壊行為?)はそれに非ずと解釈すれば・・。
敵基地(策源地)反撃能力という予防措置も含めて。
米国政府が度々「日米安保条約は尖閣諸島にも適用される」と述べている事を連想します。
米軍がホントに日本を守る為に戦うのか疑っている人のコラムはちょこちょこ目にしますが、日中が軍事衝突をした時に米国が中立の立場で居る事など不可能でしょうし、結果としてきちんと戦う事になるんだろうなぁと。
孫子の兵法かと思います。
外交は駆け引きなので、強気の発言も時に必要です。尤も、強気の発言には裏どりが必要です。憲法改正、国防予算と軍備の拡大。要衝である沖縄の安定化(中国の工作の排除。執拗な反基地活動の排除。常軌を逸している知事とニ紙の排除)。アメリカとの協調。NATOを巻き込む外交戦略。岸田首相は何一つやってない。
中国どころか台湾人も笑ってる。
中国の覇権主義は周辺国の侵攻を実施している
「南シナ海問題」として中国ベトナムフィルピンで実際に問題が起きている
日本への侵攻前には相手を疲弊させる準備段階がある
台湾が侵略されてしまうと日本への石油シーレーンが中国に抑えられてしまう
海路全て迂回させられて、燃料輸送費が更に莫大にかかることになる
今でさえ燃料費が高騰していると日本中で問題になっているのに
これ以上上がる事は日本の経済が持たない
本件の台湾への侵攻を日本として防ぐ意味は、
日本自身の生活と安全保障のためにそうせざるを得ないのだと考えるべきだと思う