「欧州は切符なしで地下鉄に乗れる」…事実誤認では?

著者自身は若いころ、ずいぶんと海外旅行をしてきた人間でもありますが、やはり海外で興味深いのは、「日本との違い」でしょう。ただ、都市内の鉄道(たとえば地下鉄)に関していえば、チケットを買って改札に通す、という意味では、日本とあまり変わらないように思えます。こうしたなかで、とあるニューズサイトに、「欧州では切符なしでも電車に乗れてしまう」、などとする記事が掲載されていましたが、これは事実誤認ではないでしょうか。

海外旅行の楽しみ

著者自身、若い人は積極的に海外旅行をすべきだと思っている人間のひとりです。

これにはもちろん、「自分自身がそうだったから」、という面もあるかもしれません。実際、学生時代、あるいは社会人になって以降も独身の間は、格安航空券を買い求めては、長期休暇のたびに、海外に出かけたものです。

出かける先もさまざまです。

やはり欧州や米国が多かったものの、台湾、香港、シンガポールなどの近場にも赴きましたし、ときには南米やオーストラリア、ニュージーランドなど南半球にも足を延ばしました。韓国にも、学生時代に1回だけですが、訪れたことがあります(なお、社会人になってからは「乗り継ぎ」で訪問したことがあります)。

また、「すぐ近くにまで行ったけれども入国したことはない」という国がいくつかあります。

たとえば北朝鮮に関しては、学生時代に訪問した韓国で展望台から「覗いた」ことがありますし、ロシアは北海道の某所や欧州の某所から「眺めた」ことがありますが、どちらも入国したことはありません。中国も同様に、マカオを訪問したときに、境界線付近にまで近づいたことはありますが、結局は入国せずじまいでした。

おそらくこの中露朝に関しては、体制が変わらない限り、入国することはないのではないか、などと個人的に思っている次第です。

日本の常識、その国の非常識

さて、それはともかくとして、さまざまな国を訪れて気付くのは、「日本の常識はその国の非常識」、という事例が多々ある、という事実です。

たとえば、海外のいくつかの国だと、トイレのあとで紙を水洗便所に流すことができません。本当に詰まってしまうのです。著者が海外によく出かけていた時期だと、一部の国では「トイレに紙を流さないでください」と、日本語で注記がなされていたりしたものです。

下水道設備が貧弱であるからなのか、紙質が悪いからなのかはわかりませんが、気のせいか、海外だと紙質があまり良くないという指摘もありました。だからこそ、著者自身もその対策として、日本製の上質なトイレットペーパーを海外旅行に持参するようにしていたものです。

ほかにも、慣れてくると、海外に行くときにはさまざまなものを日本から持参するようになりました。たとえば、海外には温水便座洗浄がない国が多いため、携帯ウォシュレットなどは重宝しましたし、ほかにも海外ではほぼ手に入らない、日本製のペットボトルの緑茶などもおすすめです。

【参考】これは便利!「携帯ウォシュレット」

(【出所】アマゾンアフィリエイトリンク)

ただ、何でもかんでも日本から持参するというのにも限界があります。

やはり、現地では現地なりに物資を調達して楽しむしかありません。

レンタカーの旅もおもしろい!

その意味で、著者自身が好きだったのは、外国を訪れた際、観光地だけでなく、田舎町や現地のスーパーマーケットなどを巡ることでした。その国の観光地ではない地域での街並み、地元のスーパーで売られている食品、生活雑貨などを見れば、なんとなく、その国の生活水準や生活習慣などが見えてくるからです。

この点、団体ツアーで観光する人であれば、旅行ガイドさんがいて団体バスで名所に連れて行ってもらえることが多いのですが、旅に慣れてきたら、なんといっても個人旅行がおすすめです。交通マナーが良い国であれば、レンタカーを借りてしまうのも手でしょう。

じっさい、著者自身の過去の旅では、空港に到着したら、その日とその翌日は、空港近くの大都市で2泊することにしていました。

到着した当日はたいていの場合、フライトで疲れていて、ホテルで足を延ばしてゆったりと寝たいからであり、翌日はその大都市を1日観光する時間を確保するためです。それ以降はレンタカーを借りて、あちこち好きなところに出かけるというのが、個人的な常道パターンでした。

とくに欧州の場合はハイウェイ沿いにホテルが設置されていることも多く、運転に疲れたら途中のドライブインで投宿し、食事し、ワインを飲んでそのまま寝るのは最高に気持ちが良いものです(しかも観光地と比べ物価も各段に安かった記憶があります)。

※なお、実際にレンタカーの旅をなさる場合は、現地の法規制に従い、くれぐれも安全運転でお願いしたいと思います。

大都市の地下鉄事情

さて、こうした経験もさることながら、やはり大都市部に滞在するときは、その街の交通手段(トラムや地下鉄、バスなど)に乗るのも楽しいものです。日本とは料金のシステムがまったく異なることも多く、慣れない仕組みに四苦八苦しながらも、乗り物に乗り、車窓の景色を楽しむのも乙なものです。

ただ、あくまでも個人的な経験で恐縮ですが、日本のような「切符を自動改札機に通して乗車する」という仕組みは、長距離列車ではあまり採用されていないのかもしれませんが、地下鉄などの都市内交通ではよく見かけます。

たとえばニューヨークの場合、地下鉄に乗る際には券売機などで購入したチケットを改札機のカードリーダーでスワイプし、GOサインが緑に点灯したら、自分自身でレバーを押して入場する、という仕組みです。慣れないとなかなか不便ですし、スーツケースなどを抱えている場合、改札によっては通行し辛いでしょう。

(※なお、ニューヨークの場合はチケットが必要なのは入場するときだけであり、出場するときはそのままレバーを押せば通行できるそうです。)

ただ、都市によっては、日本の大都市と似たような仕組みが採用されていることもあります。たとえば、ロンドンや香港の場合は、入場時と出場時に、いずれも切符やチケットが必要ですが、それと同時に、日本のSUICAなどの交通系電子マネーと似たような交通カードも広く利用されています。

たとえばロンドンの場合だと「オイスターカード」というカードが販売されているほか、地下鉄ではApple Payなどのタッチ決済も使用することができますし、香港の場合も「オクトパスカード」という交通カードが広く用いられていて、コンビニなどでも使用可能であり、小銭が不要で大変便利です。

そういえば日本の場合も、SUICAなどの交通系電子マネーにはさまざまな規格がありますが、近年、それらの規格は利用が共通化されつつあり、たとえば東京在住者がSUICAを1枚持っていれば、京阪神都市圏の多くの鉄道や沖縄のゆいレールなどに乗車することができてしまいます。

これって、「事実誤認」では…?

ただ、こうしたなかで、ちょっと気になったのが、こんな記事です。

改札はないが、無賃乗車発覚なら高額の罰金という欧州の鉄道。日本と欧州、文化の違いによる責任の取り方の違いとは?

―――2023/07/27 17:02付 Yahoo!ニュースより【ダイヤモンド・ザイより】

記事を配信したのは『ダイヤモンド・ザイ』で、記事タイトルには「欧州の鉄道」は「無賃乗車発覚なら高額の罰金」、などとあります。また、記事本文では、「ドイツ、スイス、チェコなどには駅に改札がありません」、「駅員すらいない駅もたくさんあります」、などとしており、こう述べます。

切符なしでも電車に乗れてしまいます。タダ乗りを防ぐため、長距離電車には車掌がいて、切符をチェックしにきます。しかし、電車の乗客全員がすべての駅でチェックされるわけでもありません」。

このあたり、事実誤認の可能性があります。

もちろん、世界では改札のない鉄道システムというものも存在します。

日本の新幹線の場合は切符がなければそもそもホームにたどり着けませんが、世界では長距離列車などを中心に、チケットがなくても乗れてしまうというケースはあります(ただし、この場合も車内で検札が行われることが一般的ですが…)。

また、近郊地下鉄に関しても、改札が存在しないという事例があります。ドイツがその典型例でしょう。

このドイツの地下鉄に関し、記事では、次のように指摘されています。

地下鉄、路面電車などだと、いわゆる車掌はいなくて、切符の確認だけする人が不定期に切符を確認しているようです。有効な切符を持っていないまま乗っていることがバレたら、1回目は高額な罰金で済みますが、2回目は刑事責任までも追及されるようです」。

記事を少し補足しておくと、ドイツの場合は近郊鉄道(Sバーン)、地下鉄(Uバーン)、路面電車、バスなどの公共交通システムが都市内で混在しており、多くの都市の場合、単一の切符で共通して乗車できるようです。

欧州では改札が存在する地下鉄も多々ある

これについて著者の方は、このシステムについて「改札がいらず、駅員も大きく減らせるので、コスト削減になる」、などと指摘しているのですが、これはじつはドイツの事情であり、これを記事タイトルで「欧州の」、と書いてしまうのは、若干ミスリーディングでしょう。

とくに、地下鉄に限定していえば、多くの都市では改札が存在するからです。

たとえば先ほども指摘したとおり、ロンドンの場合、地下鉄に乗る際には改札機に切符(またはオイスターカード)を通す必要がありますし、出場する際にも同様です。

また、「EUから離脱した英国は欧州じゃない」、「だからそれは『英国の』事情であって『欧州の』事情ではない」、などとなどとおっしゃるのであれば、ほかにもいくつかの事例を挙げておきましょう。

たとえば、フランスの首都・パリだと、地下鉄やRERに乗る際に、やはり改札に切符を通す必要がありますし、イタリアの首都・ローマ、ギリシャの首都・アテネ、ポルトガルの首都・リスボンなども同様です。ドイツの事例だけをもとに、「(改札のある)日本の事例が特殊だ」、と述べるには、少し無理があるように思えてなりません。

キセル乗車を知らないのですか?

さて、記事では著者の方の「感想」として、こんなことが書かれています。

日本人はルールを守る人たちが多い印象ですので、逆に日本は改札なしでいい気もします」。

…。

はたして、そうでしょうか?

ほんの数十年前まで、日本の鉄道は不正乗車が横行していました。その典型的なテクニックは、通勤・通学定期券を使ったもので、たとえば乗車する駅で初乗り運賃だけの切符を買い、自分が降りる駅では定期券で出場する、というものです。

しかも、東京や大阪などの大都市圏の鉄道は相互乗り入れを行っており、異なる鉄道会社を通じて長距離を乗り通すこともできるため、数百円から、下手したら千円前後もの運賃を「浮かす」こともできていたのです。いわば、乗車区間の最初と最後だけしかカネを払っていない、というわけです。

ちなみに手元と先っぽだけ金属が使用されている喫煙具の「キセル」にちなんで、こうした不正乗車を一般に「キセル乗車」と呼びます。

たしかに日本の切符・運賃精算システムは複雑で高度なものですが、それが出来上がったのにはちゃんとした理由があるわけですから、「日本人はルールを守るという印象があるから改札なしでも良い」、は、ちょっと暴論過ぎるのではないでしょうか。

これも、大手メディアだからといって、掲載されている記事が信頼できるとは限らない、という事例といえるかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. nanoshi より:

    一昨日見た日本のニュースですが、JR九州で無人駅を増やしたところ、初乗り運賃だけ支払うキセル乗車疑いの切符が9割に達したため自動券売機を停止する処置をとったそうです。

    「300枚売れるのに30枚しか回収されない」170円の乗車券 JR九州が券売機での販売を中止
    https://news.yahoo.co.jp/articles/02ede27473b5c3e1ebce2b4427689c54754d1f53

    キセル乗車率はこうやって計算できるんですねー。見つからないと思っていてもね。

  2. さより より:

    ダイヤモンド・ザイに書いてある記事の内容は、30年も40年も前から聞いていた内容です。改札は無いが車内で検札員が回って来た時に切符を持っていなかっら、割増になるとか。
    何故、こんな記事を今頃?と思って最後まで読んで行くと自己責任の方へ話が移って行き、老後の為に若い時からこまめに利殖・投資をしなさい、というオチになつており、筆者は株式アナリストという種明かしになっています。
    若い時から利殖・投資に勤しむのは良いことだと思いますから、それを勧める・啓発するのは良い事だと思います。
    ただ、それが切符と車内検札の関係から、自己責任の話に移り、自己責任から、老後に備えた利殖投資へ移り、そして、比較的に安全と言われる利殖的な投資商品を示唆するという、4段跳び位の話の展開になっています。
    久しぶりに、「牽強付会」という言葉を思い出しました。
    利殖商品の啓蒙をするのに、ドイツの鉄道の切符事情から話を説き起こす、これくらいの深謀遠慮の頭の中身が無いと、利殖や投資が出来ないようだという事に思い当たり、何か逆に利殖や投資は難しい?と尻込みするのも、心配の深謀遠慮が働き過ぎる故でしょうか?

    1. 匿名 より:

      執筆してみたら、書く事が無くなってしまって。
      なんとか必死に穴埋めした 学生の論文みたいで微笑ましい

  3. 匿名 より:

    公共交通機関を利用できることに、一種のステータスがあるようです。公共交通機関を利用する人は不正をそもそもしない、という社会的前提があります。20年ほど前のドイツの町で、ときどき交通機関の取り調べ職員が乗ってきて、摘発していましたが、大抵は摘発者0でした。それでも捕まっていたのが、外国人(日本人を含む)でした。摘発後は警察署に連行されていました。犯罪扱いです。現地で高額な罰金を払うだけでなく、現地の人の抱く日本のイメージを悪くすることに加担することになります。今は時代が変わっており、そんなことをする日本人はいないと思いますが。

    1. さより より:

      鉄道に乗るにも、人生を賭けなきゃならないなんて?
      凄い発想の国があるもんだ、という感想しか出て来ません。
      鉄道会社が改札システムへの投資をケチリたいから、刑事事件をカタにして余計な犯罪者を作り出して、警察の仕事を増やすなんて!
      少なくとも、この国の事情に疎い外国人観光客には、穏便に対処するのが理性というものでは?

  4. 匿名 より:

    まもなく開業する宇都宮LRTが 「信用乗車方式」 になるとアナウンスされてますけど、大丈夫なんでしょうか?

    信用乗車は日本でも根付くか : THINK MOBILITY
    http://mobility.blog.jp/archives/86370922.html

    >欧米のLRTでは一般的になっている方式で、乗務員が運賃の収受を行うのではなく、利用者が自主的に車内の端末にICカードなどをタッチし、決済を行うというものです。
    >宇都宮ライトレールに使われる車両は全長30m近くと、日本の路面電車車両では最大級です。3両編成で扉は片側4か所あります。しかし乗務員はひとりだけです。

    1. さより より:

      大概の人は払うんじゃないですか?
      ピッとやれば良いだけですから。
      或いは、ピッじゃなくて、
      「ありがとさん!」とか、変わった音が出るようにして、乗って来た人が通過する時に、タッチしなければ、周りの人が気がつくようにするとか、遊び心を加えれば面白いのではないでしょうか?
      ドイツみたいに直ぐ警察にじゃなくて。
      遊び心のある防犯システムを開発するベンチャー企業が出てくるかもしれませをね。これから、無人販売が増えて行くようであれば。

    2. 星のおーじ より:

      都会みたいに悪い奴が大勢居る土地とは違います。大丈夫です。

  5. HN忘れた より:

    アメリカだったか、レンタカー借りるときに車の傷やへこみの確認をしないのにどうなってるんだろうと思った。

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