X

「少数野党」に投票することが決して無意味でない理由

あなたがもし、「少数野党」を支持していたとします。選挙でそのような政党に貴重な1票を投じたとしても、その政党はしょせん「少数野党」なので、「その政党が掲げる政策が実現することはあり得ない」、「したがって、選挙では棄権する」。もしあなたがそんなことを考えているのだとしたら、そうした考え方は、即刻改めてください。政界は一寸先が闇です。与党が過半数割れを発生させるなどした場合、あなたが少数野党に投じた票は、結果的に無駄にならないどころか、わが国の政治を変えていく原動力となるかもしれません。

解散総選挙はありや、なしや

近々、解散総選挙が行われるのかどうか。

これについては正直、よくわかりません。

やや乱暴な言い方をすると、解散総選挙というものは基本的に首相の専権事項であり、ときの首相が「解散する」と決めたら解散、だからです。逆に、外から見て「あぁ、今なら解散する絶好のタイミングなのに…」、などと思っていたとしても、首相がその気にならなければ、解散はなされません。

内閣支持率は内閣発足直後に最高値となるものの、その後低下する傾向があるためでしょうか、一般に内閣は解散するほど強くなり、改造するほど弱くなる、などといわれています。その典型例が、第2次内閣発足以降、2014年と17年の2回、解散総選挙を実施した、故・安倍晋三総理大臣でしょう。

その安倍総理は連続在任日数としては2012年12月26日から2020年9月16日までの2822日間、第1次内閣時代の2006年9月26日から07年9月26日までの366日間を含めるとじつに3188日間、内閣総理大臣を務めました。これはもちろん、連続、通算ともに史上最長です。

しかし、安倍総理が持病の潰瘍性大腸炎の再悪化にともない辞職し、後任を務めた菅義偉総理大臣の場合は、最も内閣支持率が高かったはずの政権発足直後のタイミングで解散総選挙を行わず、結果的に384日で退陣してしまいました(『菅義偉総理大臣の事績集:「日本を変えた384日間」』等参照)。

たかが384日、されど384日。この384日には、日本の歴史を変えるほどのインパクトをもたらしました。今月4日で辞任(内閣総辞職)した菅義偉総理大臣の個人ブログサイトが更新されていたのですが、菅内閣の1年間の「功績」が24個ほど列挙されており、これが圧巻というほかありません。そんな有能な宰相を辞めさせた私たち日本国民に、反省点はないのでしょうか。東京オリパラを強行したスガは辞めろ!今年7~8月頃がピークでしたでしょうか、世間では、菅義偉内閣に対する批判が殺到し、各メディアの調査による内閣支持率も、昨年9...
菅義偉総理大臣の事績集:「日本を変えた384日間」 - 新宿会計士の政治経済評論

後講釈かもしれませんが、菅総理が就任直後に解散総選挙を決断していれば、もしかしたら菅内閣は現在でも続いていたかもしれませんし、岸田文雄氏は首相になれなかったかもしれません。

岸田首相と解散総選挙

解散の絶好のタイミング?タイミングを逃した?

こうしたなかで、その岸田・現首相にとって、解散に向けて最も良いタイミングはいつなのでしょうか。

こればかりは、正直、現代を生きる私たちにはよくわかりません。政界では「一寸先は闇」と指摘されている通り、本当に何が起こるかわからないからです。

【G7】中露のわかりやすい反応』などでも指摘したとおり、今年5月に開催されたG7広島サミットは、公正に見て、「大成功だった」と結論付けて良いでしょう。岸田首相が主催するサミットでウクライナのウォロディミル・ゼレンシキー大統領が来日し、G7としての一致団結したメッセージの発信にも成功したからです。

G7広島サミットにおける中露両国の反応が、大変わかりやすいものです。中国外交部は日本に対し「厳重に抗議した」のだそうですが、一方でロシア外務省も「G7の活動は世界の問題を悪化させる主因となっている」などと舌鋒鋭く批判したのだとか。これに加え、ロシア当局は中露両国が安全保障上の協議を緊急で実施するとも発表したようです。中国がG7を舌鋒鋭く批判G7広島サミット、が成功だったのか失敗だったのか。これについて考えるうえで、大変にわかりやすい記事を発見してしましました。外交部发言人就七国集团广岛峰会炒...
【G7】中露のわかりやすい反応 - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、それと同時にそのサミットの直後に雑誌に報じられた、岸田首相の長男の秘書官(6月1日辞職)を巡る「忘年会騒動」のためでしょうか、主要メディアの内閣支持率が伸び悩んだらしく、これにより、一部の政治評論家は「サミット解散を仕掛けようとしたら長男が妨害した」などと評しているようです。

この点については、たしかにその通りでしょう。

仮に岸田首相率いる自民党が、サミットの大成功を印象付け、そのまま解散総選挙になだれ込んで、現時点の勢力を維持する(あわよくば勢力拡大を狙う)算段だったとしても、「長男忘年会事件(?)」の余波を受け、こうした目論見が狂ってしまった可能性があるからです。

岸田首相が自身の限界を認識しているなら、なおさら早期解散が吉

それに、岸田政権には原発再稼働・新増設方針の決定、安保3文書の制改定などの大きな功績もある反面、財務省の言いなりになって増税路線を突っ走り、外務省の言いなりになって対韓宥和路線を突っ走るなど、岩盤保守層を敵に回すかの行動も多いという危なっかしさもあります。

正直、安倍総理ほどのプリンシプル(政治家として大切にすべき行動規範)もインテリジェンス(知能)もない岸田首相(失礼!)だからこそ、ボロが出ないうちにさっさと解散した方が、自民党としては議席の減少を最低で留めることができるのに、という気がしないでもありません。

このあたり、『岸田首相「長男更迭」の本当の狙いは「解散総選挙」?』などでも指摘したとおり、問題の「忘年会」で、赤じゅうたんに寝そべるなどの「問題行動」を起こしたのは岸田首相の長男ではなく、甥(つまり岸田首相長男のイトコ)であるため、長男はそのとばっちりを受けた格好だという言い方もできなくはありません。

岸田首相は自身の長男である翔太郎氏を首相秘書官から事実上、更迭するようです。決定打となったのは、『文春オンライン』で先週報じられた、首相公邸で昨年末、親戚を招いて開催した「やりたい放題の忘年会」だったのだそうですが、それだけではありません。身内可愛さの首相が「このタイミングで」長男を更迭したのは、やはりまた「別の理由」があったからと見るべきではないでしょうか。長男秘書官氏、事実上の更迭なんとも「お粗末」です。岸田文雄首相が昨年10月、自身の長男・翔太郎氏を首相秘書官に起用したものの、結局、翔太...
岸田首相「長男更迭」の本当の狙いは「解散総選挙」? - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、この「長男レッド・カーペット事件」は、せっかく広島サミットの大成功を印象付けたはずの岸田首相にとって、足元を掬われるものとなったことは間違いありません。

もっとも、インテリジェンスもプリンシプルも持たない岸田文雄首相が現在でも政権を崩壊させず、それどころか、主要メディアの調査でも、ある程度の政権支持率を維持しているのは、岸田首相という人物が何かを「持っている」証拠でもあるのかもしれません。

数字とロジックを重視する当ウェブサイトでは、あまりオカルト的なことを言いたくはありませんが、「運の良さ/悪さ」は、政治家としての基本的な能力を構成しているのかもしれないと思うのです。

岸田首相の場合、安倍、菅両総理という卓越した政治家の直後に首相に就任したという事情もあり、とくに外交分野においては、前任者らの敷いた路線に乗っかるだけで、ある程度は成功が約束されているという幸運な立場にいたといえるのです。

自民党は立憲民主党という「敵失」でもっているような政党

これに加えて、非常に大きな幸運をもたらしてくれているのが、「最大野党が立憲民主党である」という状況です。

このあたり、最大野党といえば、本来ならば「機会があれば第1党の座を獲得し、政権を奪取する」という立場にあるはずの政党ですし、この最大野党が国会で、政府・与党をたじろがせるほどに鋭い質問を投げかけることなどを通じ、国政に緊張がもたらされるはずなのです。

しかし、肝心の立憲民主党といえば、つい最近も「小西問題」を発生させるなど、おもにインターネット空間を中心に、一般国民から大いに呆れられている政党でもあります。

小西問題とは?

立憲民主党の小西洋之・参議院議員が発生させたさまざまな問題のことであり、とりわけ次のようなもので構成されている

とくに「謝罪ツイート印刷事件」に関しては、日本維新の会の馬場伸幸代表の激怒を招き、馬場代表は「立憲民主党との政策共闘を凍結する」と表明しました(『「小西問題」は立憲民主党「組織マネジメント」の失敗』等参照)。その凍結は現在も継続しています。

日本維新の会の馬場伸幸代表は20日の会見でも改めて、立憲民主党との「政策協議」の凍結を継続すると述べたようです。「小西文書」問題、「サル・蛮族」暴言問題、小西氏の一般人や報道機関などに対する恫喝問題…。これらはつまるところ、立憲民主党という「組織」としてのマネジメントの失敗例です。というのも、同党は小西氏に対する処分も遅く、内容も不十分だったからです。小西文書問題は高市氏説明で「勝負あり」「小西問題」といえば、いまや立憲民主党そのものを象徴する事案のようなものです。この問題については、当ウェブサ...
「小西問題」は立憲民主党「組織マネジメント」の失敗 - 新宿会計士の政治経済評論

また、細かいところでいえば、例の「脱糞民主党」(『立憲民主党「脱糞疑惑」続報が参院選後に出てきた理由』等参照)を巡り、公党である立憲民主党が一般人を訴えたとされる問題も、多くの国民を呆れ返らせているようです。

参院選後に意外な話題が出てきました。例の「脱糞疑惑」に続報が出てきたのです。週刊ポストの報道によれば、今年5月に愛知県内の高級焼肉店で発生した(と報じられた)「立憲民主党関係者脱糞疑惑」では、愛知選挙区で当選を果たしたばかりの斎藤嘉隆参議院議員が同席していたというのです。「もりかけ・さくら」で「疑われた側が説明責任を果たさねばならない」とする姿勢を堅持してきた立憲民主党こそ、本件で徹底的に説明責任を果たさなければなりません。2022/07/25 16:00追記敬称が抜けていましたので修正しております。また、...
立憲民主党「脱糞疑惑」続報が参院選後に出てきた理由 - 新宿会計士の政治経済評論

さらには「うな丼」問題(『自分に甘いメディアと野党:次は「うな丼大臣」問題視』等参照)、つまり立憲民主党の宮口治子・参議院議員が「うな丼大臣」などと呼び、即刻更迭を要求したという「事件」も、立憲民主党(と一部の大手メディア)のレベルがいかに低いかという証拠そのものです。

今度は「うな丼」、だそうです。谷公一・国家公安委員長が25日、自民党議員のパーティで、岸田文雄首相が和歌山の選挙応援会場を訪れた際に爆発物が投げ込まれた事件を巡り、「うな丼をしっかり食べた」と発言したことをメディアが「失言として批判を浴びそうだ」と報じたほか、26日の参院本会議では立憲民主党の宮口治子議員が「うな丼大臣は即刻更迭を」と要求したそうです。「自分に甘く他人に厳しい」。日本のマスコミと特定野党には、そんな共通点がありそうです。今度は「うな丼」今度は「うな丼」、だそうです。共同通信が配信...
自分に甘いメディアと野党:次は「うな丼大臣」問題視 - 新宿会計士の政治経済評論

つまり、現在の自民党は、立憲民主党の「敵失」によって持っているようなものでもある、というわけです。

与野党の低レベルさは日本国民にとっての不幸

ちなみに立憲民主党は、4月に行われた5つの国会議員補選において、ただの1議席も獲得できませんでした。

自民党が4議席制するも、うち3議席で「薄氷の勝利」』などでも取り上げたとおり、「数字」で見ると、立憲民主党の公認候補、あるいは立憲民主党系の候補は、5つのうち3つの選挙区(衆院千葉5区・山口2区、参院大分)において、自民党候補者に僅差で敗北しています。

自民党は5つの国会議員補選で4議席を獲得しました。見た目は「自民党の圧勝」です。ですが、各選挙区の得票率などを詳細に確認していくと、本当の意味で「自民党の圧勝」と言って良いかは微妙です。というのも、4つのうち3つの選挙区では薄氷の勝利だったからです。また、獲得議席がゼロだった立憲民主党には、やはり「小西問題」の逆風が吹いている一方、日本維新の会や国民民主党が現実的な選択肢として浮上しつつあるのかもしれません。議席だけで見たら自民党の圧勝ふたを開けてみれば、獲得議席のみでいえば、「自民党の圧勝...
自民党が4議席制するも、うち3議席で「薄氷の勝利」 - 新宿会計士の政治経済評論

これも「小西問題」がなければ、下手をすると5区中3区で勝利していた可能性があります。

逆にいえば、「岸田自民」にとって、現在の立憲民主党は、最大の応援団、というわけです。

もちろん、安倍総理亡きあと、与野党揃ってレベルが低いという現在の状況は、ほかならぬ私たち日本国民自身にとっての不幸であり、大変由々しき問題でもあるのです。

有権者は、選挙の本質を理解せよ

もっとも、こうしたなか、当ウェブサイトでは普段から、こう申し上げています。

選挙というものは、そもそも、『よりどりみどり』の素晴らしい候補者のなかから最も素晴らしい候補者を選ぶ手続ではない。ゴミのような候補者のなかから最もマシな候補者を選ぶ手続だ」。

これは、少なくとも当ウェブサイトをいつもご愛読いただいている皆様には、是非とも認識していただきたい命題のひとつです。

僕の住んでいる地域だと、僕が支持しているA党が候補者を立てておらず、事実上、B党とC党の候補者を選ばなければならない。僕はB党、C党のどちらも支持していないから、選挙に投票する気になれない。だから僕はいつも白票を投じる」。

私が支持している政党は、どうせ少数政党だから、票を入れたところで意味がない。たとえその政党が良いことを主張していたとしても、国会は『数の力』の論理で動く。私が票を入れ、その政党の候補者が国会議員になったとしても、しょせんは少数政党。どうせ政策は実現しないから棄権する」。

世の中には、こんなことを堂々と述べる人がいます。このような人には、正直、偉そうに政治について語っていただきたくありません。有権者こそ、選挙の本質を理解しなければならないのです。

世の中はゆっくりとしか変わらない

これについては当ウェブサイトでときどき紹介する、「①寂れた食堂街理論」、「②鉄道工事理論」、「③池の水理論」、という3つの例え話を是非とも思い出していただきたいと思います。

このうち「①寂れた食堂街理論」とは、選挙で政権与党を選ぶことを、「寂れた食堂街で最もマシな食堂に入ること」に例えるものです。人々が「高くてマズい食堂」を選び続ける理由は、その食堂のライバル店が、メニューに他店の悪口しか書いていないからだ、というロジックです。

これなど、選挙に投票しなければならない理由として、非常に重要なものです。たとえその食堂が「高くてマズい」のだとしても、そこの店を選び続けない限り、メニューに悪口しか書いていない店が生き残り続けることになってしまうからです。

また、「②鉄道工事理論」とは、たとえば首都圏や近畿圏といった大都市圏において、日々、大量に旅客を輸送している通勤路線を、可能な限り停止させずに、少しずつ、路線改良事業(複々線化、連続立体化など)を進めていく、という考え方です。

シムシティのようなゲームだと、プレイヤーが現に動いている路線をブルドーザー・アイコンかなにかで破壊し、高規格な路線を一気に完成させるということができますが、現実社会はゲームではありませんし、「りせっとぼたん」も存在しません。

日々、大量の人員を輸送している路線を高規格化するためには、結局、周到に計画し、地域住民・自治体・鉄道事業者・各官庁などのさまざまな利害関係者の意見を集約し、ちょっとずつプロジェクトを進めるしかありません。半世紀近くの時間を費やして路線の一部複々線化・立体化に成功した小田急がその典型例でしょう。

さらに「③池の水理論」は、濁った池をバケツリレーで少しずつ浄化していくようなものです。

池のサイズ、バケツの大きさ、バケツリレーが行われる頻度は国によってさまざまですが、日本の場合には大きく2つの池があって、池の面積は片方が465㎡で最低4年に1回以上、もう片方は248㎡で3年ごとに半分ずつ、それぞれ水の入れ替えが行われます。

ただ、池から水を抜き、その池に新しい水を入れるか、抜いた水を戻すかは、その担当地域の住民の判断ですので、ほかのエリア(たとえば東京1区)の住民から見て、「あのエリアの水はさっさと捨てて新しい水に替えたら良いのに」、などともどかしく思うこともあります。

いずれにせよ、日本のような成熟した民主主義国家においては、国を作り替えるための手続は非常に面倒くさいのです。というか、民主主義自体、大変に面倒くさいものなのです。

強権的手法によらずとも日本は良くなる

「大日本帝国憲法復活」「天皇独裁」を叫ぶとあるブログ

これについて、少しだけ余談です。

山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士がむかし、とある理由で一時期読んでいたブログなどは、このあたりの事情をまったく理解していない代物でした。というのも、そのブログ(※現在は閉鎖・削除済み)、読んでいると「日本は民主主義を止めて天皇陛下の御親裁(独裁)に戻すべきだ」、などと主張していたからです。

(※はて?日本の憲政史上、「天皇独裁」という歴史があったとも思えませんが…?)

この方の主張は、「民主主義などもどかしい」、「マスゴミ(※)などすべて権力で閉鎖すべきだ」、「天皇独裁制で日本を浄化すべきだ」、といったもので、「安倍晋三(総理)は今すぐ日本国憲法の無効を宣言し、大日本帝国憲法憲法復活を宣言すべきだ」とも主張していたのです。

(※ちなみに「マスゴミ」とは、新聞・テレビなどのマスコミを蔑む用語です。)

正直、「山手線の駅名を冠した自称会計士」あたりと比べ、このブログ主が主張するアプローチがあまりにも違い過ぎるというのも興味深い点ではあります。

ただ、この人物は大日本帝国憲法が「天皇独裁の憲法だ」と勘違いしていたようですが、残念ながら、それは違います。大日本帝国憲法の時代、すでに貴族院と衆議院の二院制が導入されていて、短い期間ではありますが、「憲政の常道」と呼ばれる、現代の政党政治に近いものがすでに行われていたこともあります。

25歳以上の男子全員が選挙権を与えられるという、いわゆる「男子普通選挙」が導入されたのは、戦前の1925年のことであり、これは英国に遅れることわずか7年です。

もちろん、大日本帝国憲法下においては、まだ女性参政権は実現していませんでしたが、これは日本「だけ」が特別に遅れていたわけではありません。日本からすれば「先進国」という印象が強いスイスにしたって、女性参政権が実現したのは1971年のことです。

なにより、現行の日本国憲法を変えなければならないという点はそのとおりですが、それは「日本国憲法の無効宣言と大日本帝国憲法の復活」などといった野蛮な方法で実現すべきものではありません。ちゃんと憲法第第96条という条文が設けられているのですから、これに従い、粛々と変えれば良いだけの話です。

日本国憲法第96条第1項

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

べつに弾圧によらなくても、世の中は良い方向に変わることもある

この人物、「マス『ゴミ』こそが憲法第96条第1項の手続を国会がとることを邪魔してきた」などと語気を荒げていたのですが、このあたりは理解できないではありません。たしかにマスコミのなかには、旧態依然とした、カビの生えた「ケンポーキュージョー教」を掲げ、社是として改憲を棒対してきたような社もあったからです。

ただ、『新聞業界の未来も選挙動向も「数字と理論」で予測可能』などでも指摘したとおり、新聞業界の終焉は、もう視野に入りました。紙媒体の主要な新聞は、最速であと10年以内、遅くとも15年以内に、姿を消すからです。

面白い時代になったものです。その気になれば、だれでも気軽に、かつ、深く、社会情勢について議論することができ、それを世に問うことができるようになったからです。そして、「この時代、新聞の需要は高まっている」といった現実を無視した分析や、「次の選挙では自民党は大敗を喫すべきである」といった結論ありきの考察は、有害であっても役に立つことは絶対にありません。「数字と理論に基づく分析」の有用性を、新聞業界と国内政治の2つを例にとって、改めて確認してみましょう。アンドロメダ銀河がもうすぐ衝突!天文学に興味...
新聞業界の未来も選挙動向も「数字と理論」で予測可能 - 新宿会計士の政治経済評論

この方のいうマス「ゴミ」は、べつに国家権力が「弾圧」などしなくても、経済原理に敗れ、勝手に消滅していくのです。日本国憲法だって同じで、民主主義の原理に従い、いずれ改正される日が来ます。早ければ次の総選挙で、その日が到来するかもしれません。

だからこそ、「怪しい自称会計士」は、「自由・民主主義に対する希望を失うな」と説き続けている、というわけです。逆に、その方のブログでこの「怪しい自称会計士」が「民主主義を過信している愚か者だ」と批判されたのは、ひとつの勲章のようなものなのかもしれません。

国民民主党が維新との連携を模索

さて、余談はこのくらいにして、これが朗報なのかどうかはさておき、ちょっとした話題を取り上げておきたいと思います。

国民、維新に政策面で秋波 連合働き掛けも、立民とは距離

―――2023/06/05 20:33付 Yahoo!ニュースより【※時事通信配信】

時事通信によると、国民民主党が「法案対応などが最も近い」日本維新の会に対し、「秋波を送っている」、というのです。これはいったいどういうことでしょうか。

記事によると国民民主党は、自党が掲げる政策の実現を図るために、統一地方選で躍進し、勢いづいている日本維新の会との連携を模索する一方、安全保障政策などで隔たりのある立憲民主党とは「距離を取っている」というのです。

これについては、おそらくは時事通信の指摘どおりでしょう。

実際、国民民主党の玉木雄一郎代表は、普段から自身のツイッター上で、国民民主党が政策面において、立憲民主党と隔たりを持っているということをうかがわせていますし、日本維新の会(や自民党)とも是々非々での連携を模索していることを、赤裸々にツイートしているからです。

ちなみに時事通信によると玉木氏は5日夜、連合の芳野友子会長も出席した都内で開かれた同党のパーティで、「永田町では衆院解散・総選挙がいつ行われるかの話題で持ちきりだ」、「抜かりなく準備を進めていきたい」などと述べたそうです。

存在感放つ国民民主党

ただし、時事通信は国民民主党を「支援する連合には(日本)維新(の会)との選挙協力への根強い抵抗がある」とも指摘しており、両党の連携が一筋縄ではいかない事情も示しているのですが、このあたりは正直「是々非々」ではないでしょうか。

政治家のなかでも、とくに国会議員の本職は、私たち国民の代表者として行動することであり、とりわけ重要な行動が「法律を作ること」です。なかには与党が通そうとしている法律に野党が一致団結して反対すべき局面もあるでしょうし、是々非々で与党と協力し、自党の主張を法律に織り込ませるという戦略もアリでしょう。

ちなみに前回、すなわち2021年の総選挙でいえば、国民民主党は11議席を獲得しました。小選挙区で6議席、比例代表で5議席です。

その国民民主党は、小選挙区で21人の候補を立てたわけですので、「21人中6人」というのは、勝率でいえば約29%であり、戦績としては悪くありません。同党が野党かつ少数政党であるのに加え、もともと小選挙区は小規模政党に対し、大変不利な選挙制度だからです。

ちなみに国民民主党の小選挙区全体での得票率は2.17%、議席占有率は2.08%でしたが、このことは、国民民主党には小選挙区での選挙に非常に強い議員が複数名在籍していることを示唆します。

国民民主党は「少数野党」なのですが、それと同時に、国会においては間違いなく存在感を放っているのです。

もし国民が自民から2万票奪ったら…!?

また、先般より話題に出している、「政党Aの候補者から政党Bの候補者にX票流れた場合、選挙結果はどう変わるか」というシミュレーションを実施してみると、これまた興味深い事実が判明します。

2021年10月の総選挙結果をもとにシミュレーションを実施すると、自民党は「X」が10,000票だった場合に2議席を失い(維新、国民が1議席ずつ獲得)、20,000票だった場合は6議席を失う(維新が1議席、国民が5議席獲得)、という結果となるからです。

小選挙区で自民党から国民民主党に10,000票が流れた場合
  • 自259→257(▲2議席)
  • 立*96→*96(±0議席)
  • 維*41→*42(+1議席)
  • 国*11→*12(+1議席)
小選挙区で自民党から国民民主党に20,000票が流れた場合
  • 自259→253(▲6議席)
  • 立*96→*96(±0議席)
  • 維*41→*42(+1議席)
  • 国*11→*16(+5議席)

国民民主党が小選挙区で自民党から2万票を奪うのはなかなかに大変ですが、もしこれが実現していたならば、国民民主党の獲得議席は小選挙区・比例代表あわせて16議席に「大躍進」できます(※ただし、比例代表での重複立候補の結果が影響を受ける可能性がある、という点については、考慮していません)。

いずれにせよ、国民民主党(や日本維新の会)が信頼に値する政党なのかどうかはわかりませんが、国民にとって、選択肢が増えること自体は悪いことではありません。

そして、国民民主党のように議席数が少なかったとしても、仮に次回総選挙で自民党が議席を減らし、公明党との関係もギクシャクし始めるような展開となったときに、国民民主党にとっては自民党との閣外協力ないし連立という方法で、自党が主張する政策を部分的に実現していける可能性が出てきます。

棄権するなど愚の骨頂

その意味では、もしあなたが国民民主党の主張に共感しているのだとして、あなたがお住まいの小選挙区で国民民主党の候補者が出馬しているのならば、そのような候補者に、あなたは貴重な1票を投じてみても良いのではないでしょうか。

ちなみに同じことは、国民民主党以外のすべての政党、あるいは極端な話、無所属の候補者についても言えます。だから選挙では絶対に白票を投じないでいただきたいですし、ましてや棄権するなど愚の骨頂です。

本当に6月末に解散、7月に総選挙があるのかどうか、著者自身は最近、若干懐疑的ではあるものの、「政界では一寸先は闇」です。いきなりの解散総選挙はあり得る話ですし、それにより試されるのは衆議院議員やその候補者たちだけでなく、じつは私たち日本国民もそうなのだ、と申し上げておきたいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (20)

  • おはようございます。
    ご参考までに、自民の所属派閥一覧です。私見ですが、まず二階派と岸田派を除き、あとは是々非々、安倍派でもマツカワ氏除くとか、シェーシェーモテギが気に食わなくとも小野田氏がいるから、とか。
    https://data-cafe.com/election/faction.htm

  • まだもや軽薄文体新聞記事見出しの幻覚を見てしまった気がします。

    「岸田政権にお取替えサイン灯る」

    試しにググる画像検索してみますと、このサインが出たら有効期限切れ即交換と決まっているそうです。
    ・「おとりかえください」... 白元アース ミセスロイド
    ・「お取替え」...金鳥 ゴンゴン
    ・「おわり」...エステー 化学ムシューダ

  • 感覚的になのですが、維新は勢いがあるけど危なっかしい感じがします。

    国民民主は地味だけど手堅さを感じます。

    私はギャンブルを好まないので、維新よりは国民民主が良いですね。

    正直なところ、岸田文雄には落選して「ただのひと」になって欲しいものです。

  • 兎に角、キシダの安倍元首相暗殺後のダッチロールが跳んでもなく酷い‼️元々、宏池会特有の軽武装平和主義者で全方位土下座外交ですから、然しアメリカに面従腹背し、中国の臣下として実の有る反論出来ず、完全に財務省の言いなり、又批判が怖くてメディアにオモネル、此から導きだせれるのは日本破壊です。アメリカ様に従属してウクライナ支援ロシア敵対視して、また韓国に全面降伏して、日本は独立国では無くなりました‼️キシダには芯が無く、このまま長期政権ななれば日本経済も吹き飛びます‼️キシダを辞任させるには選挙で負けて自民党を下野させる。もう自民党には投票しない。中国韓国と距離置いてアメリカにも主張し利用する位の政党に票を入れる‼️また自民党に入れても日本は変われない‼️

  • 今日の少数野党が、明日は与党になるかもしれない。(もちろん、少数政党だからよいという訳でなく、解党しているかもしれない)
    ということでしょうか。
    蛇足ですが、ある特定の問題に専念することを宣言すれば、国民の大多数の意見になることもあり得るのではないでしょうか。(もちろん、国民の少数意見かもしれないし、他の問題と矛盾するかもしれませんが)

  •  「そうは言っても自民党に入れなければ」感があったのですが、こんなシミュレーション提示されちゃったらいよいよ国民民主に入れちゃいそうです。

     あー……大げさかもしれませんが、「自分が入れていた○○党をやめて✕✕党に入れるかどうか」を考える際にこのシミュレーションをあてはめると何議席が動く計算になるか、を事前に知ることができる場合、気に食わなかったら逆張りということでしかない二大政党制なんかに頼るよりはるかに政権の流動性ができるのではないでしょうか。
     当シリーズで既に例示されたように、「自民支持だが自民議席は十分で立民の議席を消し飛ばしたい」といった場合に、他の第三党へ入れたほうが効果的に攻撃できるな、といった使い方すらありえますし。ここまでくると民主主義の原則を軽視したゲーム化で、あまり感心しませんが。それを言ったら政局なんて既にそんなようなものですし。

     スゴイもん開発しちゃったんじゃないのコレ?政界では使われていたりするのかしら。

  • そもそも民主主義そのものが「高くてマズい食堂」なのであり、ライバル店である店のオヤジがやたら暴力的な強権体制よりはマシと考える人が多いから成り立っている食堂だと思います。
    だから何だってことはありませんが、注文した品がなかなか出てこない(あるいは勝手にキャンセルされてしまう)民主食堂より、あっという間に出てくる強権食堂のほうが羨ましいと感じることはあります。でも時々強烈な食あたりを起こすので、不味くて高くても民主食堂でランチすることにしています。

  • 岸田氏は政治家としての資質、特に政権運営、外交に極めて劣っていると思います。G7が終わった今が解散総選挙の絶好期と思いますが、子息絡みのスキャンダルでフイになった。でも周りはなんと言っても、そんな小ネタなら、やるべきだったでしょう。

    これから自由民主党、首相支持が上がる目は有りません。対して立憲民主党は更に退勢です。その潮目が読めないのが岸田氏らしいところ。ボロボロになって後任が困るようにするつもりでしょうか?国民民主党に20,000票行っても、5議席増えて、維新が1票増えるだけなら、やはり国民民主党や日本維新の会の支持層はまだ、少な過ぎなんですね。

  • まー選挙権持っとるヒトはカナリの率で被選挙権も持っとるワケですし、気に入らん候補しか居らんのなら自分で立つなり誰か立てるなりナンナトヤリヨウオマスワナ
    屁理屈捏ねて参政権放棄してからにそれを政治のせいにして自己弁護モドキ…マッチポンプでんな
    代議制民主政治で代議士代議員の質は民衆の質の反映ですわ

  • >大日本帝国憲法

     帝国憲法には「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」という条文があり、政治が軍をコントロールできなかった原因となっています。怖ろしいことです。
     また、この条文により独立空軍を持つことができず、大戦末期の本土防空戦を
    効率よく戦えなかったとも言われています。

    >スイスにしたって、女性参政権が実現したのは1971年のこと

     その71年に日本では「婦人参政25周年」を記念する切手が発行されていますね。どれだけ遅れてるんだよスイス。

    • やまいぬ 様

      大日本帝国軍は皇軍でもありましたから、政治で以󠄀ってコントロールする事が出来なかったのです。
      これは、日本古来からの流れであり、「錦の御旗」がある様に、天皇が絶対的な存在であり続けたからだと思います。

    • >帝国憲法には「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」という条文があり、政治が軍をコントロールできなかった原因となっています

      当時の法制度上、政府が軍を統制できなかったのはある意味仕方がなかったと言えるかもですが、「統帥権干犯」という殺し文句が独り歩きしたことで、逆に軍の政治介入を招く結果になったのが残念ですね。
      軍の内、軍令を担当する統帥部は政府の統制が及ばない帷幄機関だったわけですが、軍政を担当する陸海相は内閣の構成員として本来政府の側に立つことが求められていたはずでした。
      その陸海相も政府を介さず帷幄上奏を行うなど、結局組織としての軍のために働くようになり、いわゆる軍部大臣現役武官制という事情から、その人事が軍の政治介入の道具となってしまったのが何とも。

      >この条文により独立空軍を持つことができず
      これは違うような気が・・・
      憲法に「空軍」の規定がないために、その創設が出来なかったわけではないのでは?

      陸軍の情報参謀に堀栄三という方がおられまして、その情報分析と予測の正確さから「マッカーサー参謀」と渾名されたぐらいだったわけですが、その父堀丈夫は飛行学校長を経て航空本部長を経験されるなど陸軍航空に通じた方で、現役を退いたあともその経歴から陸軍の航空関係者の出入りがあったそうです。
      堀栄三によると、昭和15年に山下泰文航空総監を団長にした視察団をドイツに派遣するなど陸軍内で統合空軍創設の機運が高まり、海軍側にも働きかけが行われていたそうなんですが、昭和17年に計画が頓挫した際、訪問客からそれを知らされた堀丈夫が「やっぱり山本が癌だったか?陸海はどうして対立を続けなくてはならないのだ」と不満を漏らしたそうです。
      このことについて堀栄三は、「山本」とは山本五十六連合艦隊司令長官のことを指し、その反対によって計画が頓挫したのではないかと見ています。

      もう一つ、話が空軍からは逸れますが、昭和20年に入ると陸海軍の統合案が陸軍側から出され、国防省を設置し国防軍を創設する前に手始めとして大本営内に最高幕僚長を置くのはどうかとの海軍側に申し入れがあったそうです。
      海軍次官であった井上成美はこれに反対するわけですが、その理由は「参謀本部と軍令部を合体させて最高幕僚府のようなものを置けば、総幕僚長の地位に就くのは必ず陸軍の軍人である」というもので、軍の意思を陸軍に委ねるのを避けたいとの考えがありました。
      まあ陸主海従を嫌ったというよりは、陸軍による国家乗っ取りを危惧したもので、井上の陸軍観がよく表れているエピソードだと思います。

      つまり何が言いたいのかというと、独立空軍の創設とはいっても、その実態は陸軍航空隊と海軍航空隊の統合ですから、当然ですが陸海の主導権争いが絡んできます。
      足枷になったのは憲法の規定というより、陸海軍の仲の悪さではないかと思うわけです。

      • とおる 様

         細かい経緯は知りませんが、この話は半分当たり半分外れではないでしょうか?

        仰る様に独立空軍を持てなかったのは直接には憲法の問題ではなく陸海軍の仲の悪さが原因でしょうが、それを助長したのは大日本帝国憲法と言う気がします。

        100年後の現在の軍種を考えれば、陸軍から空軍を独立させることはあっても海軍から航空隊を分離するのは準軍事的にあり得ないと思います。まあ、陸攻隊の移管はあり得たでしょうが。

         軍種を分けるのは専門性を高めるためですが、それらの間で主導権争いが発生するのは世の倣いです。それらを統べる術が天皇しかなく、その天皇を支える側近が”だらしない”と戦前の様になるという事だと思います。

        ”だらしない”の意味は、”君臨すれども統治せず”と大日本帝国憲法の間の齟齬に気づかず、それを埋めるのが己の役割という事に気づかないという意味です。

        要は、大日本帝国憲法が想定していた国家体制と実際の国家体制(又は運用)の齟齬が問題であり、それを放置していたことが問題。

        其れを鑑みると、解釈改憲でごまかし続ける今の政治も進歩が無いと思います。

        米国が世界の警察官であればこその日本国憲法ですが、その米国が世界の警察官から降りた今、前提の崩れたまま日本国憲法を放置するのは小さな方向は違えど”国家の進むべき道と体制の齟齬という意味で同じ道を歩いている気がします。

        とりわけ、改憲に十分な議席を得ながら”反対の為の反対”党を説き伏せることのできない自民党は日本国民の負託にこたえて居ない気がします。

        その意味でも岸田さんは早く換えるべきではないかと思います。
         

        • >それを助長したのは大日本帝国憲法と言う気がします
          陸海軍の仲の悪さの原因は、その成立にあたっての「薩摩の海軍、長州の陸軍」という藩閥の構図だったり、それが薄れた後も存在した陸主海従という構図だったり、一言でこれが原因と限定できるものでもないでしょうけど、少なくとも「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」という憲法の規定が陸海軍の仲の悪さを助長し、独立空軍創設の足枷になったとはちょっと思えない・・・

          自分としては、その仲の悪さは海軍の陸軍に対する対抗意識に起因するところが大きかったのではないかと思っています。
          とはいえ、陸軍の政治化が目に余るものがあったのに対し、海軍は政治への介入はよろしくないとの風潮もあって比較的自制的だったりと、上でコメントしたように「軍の政治介入」に問題があったと考える自分としては、ここは陸海に不一致があってよかったと言える点であり、一概に陸海の不一致が悪いこととも限らないわけですが。

          >陸軍から空軍を独立させることはあっても海軍から航空隊を分離するのは準軍事的にあり得ないと思います
          やまいぬさんが仰っている頃の事情、つまり大戦末期の本土防空のための独立空軍の創設では、ある意味陸軍航空隊と海軍航空隊の統合のハードルは低くなっている状態ではないでしょうか。
          残念ながら、この頃は海軍ももう空母の運用もままならない戦況でしたから・・・

          >その天皇を支える側近が”だらしない”と戦前の様になるという事
          おっしゃる通り、輔弼者・輔翼者の資質によるところが大きかったという点も、大日本帝国憲法の運用の難しさの一つでしょうね。
          ただ輔弼者・輔翼者のみの責に帰すべき問題でもないのかもしれません。

          戦前昭和天皇が協調外交を志向されていたのは有名ですが、たとえ輔弼者がその御意向を汲み政策に落とし込もうにも、それを不服とする者たちが、「『君側の奸』が陛下をたぶらかしている」と口撃・攻撃するといったことがありました。(例えば、五・一五事件などですね)
          戦後昭和天皇が木下道雄侍従次長に語ったとされる御言葉にこのようなものがあるといいます。
          「国民性に落ち着きのないことが、戦争防止の困難であった一つの原因であった」
          日本国民もまた政治的な資質を問われていた、ということになるのでしょうね。

1 2