韓国の国内ではすでに「心理的には」G8入りが確定したのでしょうか。これに関連し、時事通信の報道によると、韓国の尹徳敏(いん・とくびん)駐日大使は24日、都内でG7に正式メンバーとして参加することに意欲を示し、そのための「最大のハードルは日本だ」、などと述べたそうです。いったい何を勘違いなさっているのでしょうか。ロシアで手痛い失敗をした経験も踏まえると、そもそも基本的価値を共有しない国をG7に参加させるべきではありません。
G7広島サミットの歴史的意義
G7広島サミットの声明文や成果は多岐にわたりますが、これを本当に大雑把に要約すると、「G7は自由、民主主義、法の支配、人権といった価値を守るとともに、ロシアによるウクライナ侵攻を含めた国際法違反を許さない」というものです。
G7諸国は、日本以外にはイタリア、カナダ、フランス、米国、英国、ドイツの6ヵ国に加え、欧州連合(EU)が参加していますが、それだけではありません。
今回のG7は、歴史的な意義がありました。
まず、ゲスト国として、日米とともに「クアッド」を構成している豪州とインド(※G20議長国)に加え、ベトナム、ASEAN議長国であるインドネシア、アフリカ連合(AU)議長国であるコモロ、南米の大国・ブラジル、太平洋諸島フォーラム議長国であるクック諸島などが招待されました。
そして、「サプライズ」で登場したのが、ロシアから現在進行形で侵略を受けている当事国・ウクライナの国家元首であるウォロディミル・ゼレンシキー大統領です。
このサミットの位置づけは、結果的に、ウクライナに対してG7や招待国が力強いメッセージを発信するというものとなり、ひいてはロシアだけでなく、ロシアとともに国際法秩序を軽視する中国に対しても、大変強力な牽制が加えられたと考えて良いでしょう。
中国が日本に抗議したことが、G7が大成功だった証拠
実際、G7コミュニケでは、台湾海峡問題や中国の人権侵害問題を巡って中国を名指しで牽制しただけでなく、ウクライナ戦争を終結させるための努力を中国に対しても要求したからです(『ウクライナ戦争終結努力を「中国に対し」要求したG7』等参照)。
軍事侵略防ぐのは「世界市民の連帯」ではないことだけは間違いない日本で開催されたG7が、過去にここまで大成功を収めたことがあったでしょうか。ハイライトはやはりウクライナのウォロディミル・ゼレンシキー大統領のG7参加ですが、それだけではありません。インドのナレンドラ・モディ首相が日本に贈ったマハトマ・ガンジーの胸像の話題、サミットのメイン会場である宇品島やエクスカーションの厳島神社などの「メッセージ性」なども強烈です。ただ、こうしたなかで個人的に目についたのが、北海道新聞のとある読者の声です。い... ウクライナ戦争終結努力を「中国に対し」要求したG7 - 新宿会計士の政治経済評論 |
これが中国にとってどう受け止められたかについては、中国外交部が日本に対し、このG7のコミュニケを巡って強く抗議した(『【G7】中露のわかりやすい反応』等参照)ことがすべてを物語っていると考えて良いでしょう。要するに、中国としてはかなりお困りのご様子、というわけです。
G7広島サミットにおける中露両国の反応が、大変わかりやすいものです。中国外交部は日本に対し「厳重に抗議した」のだそうですが、一方でロシア外務省も「G7の活動は世界の問題を悪化させる主因となっている」などと舌鋒鋭く批判したのだとか。これに加え、ロシア当局は中露両国が安全保障上の協議を緊急で実施するとも発表したようです。中国がG7を舌鋒鋭く批判G7広島サミット、が成功だったのか失敗だったのか。これについて考えるうえで、大変にわかりやすい記事を発見してしましました。外交部发言人就七国集团广岛峰会炒... 【G7】中露のわかりやすい反応 - 新宿会計士の政治経済評論 |
いわば、中国が日本に抗議したこと自体が、G7が大成功だった証拠なのです。
韓国の微妙な位置づけ
こうしたなかで、今回のG7でゲスト国として招かれた国が、もう1ヵ国ありました。
それが、韓国です。
韓国が今回のG7に招かれた理由は、おそらくは中露に加え、北朝鮮という無法国家と対峙するという意味において、「日韓」「日米韓」連携を確認するという点にあったのでしょう。
ただ、韓国の位置づけは、非常に微妙です。
これに関して韓国観察者の鈴置高史氏は、現在の米韓関係が「二流の同盟」に格下げされたとの見方を示していますが(『鈴置氏「米韓は二流の同盟、日韓関係も極めて不安定」』等参照)、こうした見方に基づけば、日韓・日米韓に専ら期待される役割は「対北朝鮮牽制」であり、「対中牽制」の役割はありません。
「たとえ北朝鮮が韓国を併呑しても、影響は朝鮮半島どまり」本日以降開催されるG7広島サミットに合わせ、ウォロディミル・ゼレンシキー大統領が広島を訪問するとの報道が出てきました。「関係者の話」としてブルームバーグが報じたものですが、これが事実なら、ロシアに対してだけでなく、中国や韓国などに対しても、非常に重要な効果がありそうです。それでなくても注目点があ多数ある今回のG7、関連する情報を注視する価値はありそうです。岸田首相にとっての外交成果昨日開幕したG7広島サミットを巡っては、さまざまな話題が... 鈴置氏「米韓は二流の同盟、日韓関係も極めて不安定」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
すなわち、現在の韓国は米国からは「すぐに裏切る(かもしれない)国」とみなされていて、少なくとも米国は韓国に対し、あまり多くを期待していない、というわけです。
実際、今回のG7では、いちおう、日韓・日米韓首脳会談などが開催されましたが、このうち「日米韓」に関しては、外務省は公式の「会談」とは位置付けておらず、あくまでも「日米韓首脳間の(写真撮影を含む短時間の)意見交換」、という扱いで、しかも中国問題は話題にも出ませんでした。
それよりもむしろ重視されたのは、50分間の時間を費やして開催された日米豪印4ヵ国のクアッド首脳会談でしょう。この会合では中国を名指しこそしなかったものの、東シナ海、南シナ海を含めたインド太平洋における「一方的な現状変更」に「強く反対する」ことで一致しています。
こうした事実からも、対中牽制という役割は、少なくとも「日米韓」ではなく「日米豪印」に移ったと見るのが正確な理解でしょう。
すなわち、現在のG20に関しては、G7諸国に加え、ここに豪州が米英とともに「AUKUS」を、インドと豪州が日米とともに「クアッド(QUAD)」を構成しており、これとは別に日米韓という連携の枠組みがある一方、インドはロシア、ブラジル、南アフリカ、中国と「BRICS」を構成しています。
これに、欧州連合(EU)加盟国(仏独伊)、北米NAFA(米国・カナダ・メキシコ)などの多重的な枠組みが存在し、(定義はよくわかりませんが)いわゆる「グローバルサウス」と呼ばれる諸国もG20に加わっています(図表)。
図表 G20とグループ分け
(【出所】当ウェブサイト。商業目的でない限り、転載自由で、その際の当ウェブサイトの事前承諾等は一切不要)
正直、この「日米韓」は、現在のG7、クアッド、AUKUSなど、「数ある枠組み」のひとつに過ぎず、ましてやG7に「拡大」という議論はありません。G7自体、過去にロシアを加えて「G8」に拡大し、盛大に失敗した過去がありますので、やはり基本的価値を共有する国同士での協議体という性格を大切にするのでしょう。
「心理的にはG8」の韓国
もっとも、その韓国では、いつの間にか「G8」が既定路線と化しているフシがあります。
『「韓国は心理的にG8」「日本で米国謝罪論」=韓国紙』でも取り上げましたが、韓国国内では「心理的に韓国はG8だ」とする発言も出てきているようです。
「韓国は心理的にはG8」。「日本では『原爆加害国・米国』のバイデン大統領が謝罪をすべきだという声も出てきた」。信じられないことに、これらはどちらも韓国を代表する保守系紙とされる中央日報に掲載されたものです。そもそも事実認識自体、なかなかついていくことが難しいのですが、それだけではありません。これらに伴い展開される主張も、なかなかに強敵です。「大韓民国は心理的にG8国家に仲間入りした」ウェブ評論を続けていると、たいていのことにはあまり驚かなくなるものです。ただ、さすがに久しぶりに驚愕する記事に... 「韓国は心理的にG8」「日本で米国謝罪論」=韓国紙 - 新宿会計士の政治経済評論 |
その根拠のひとつが、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に22日付で掲載された、こんな記事でしょう。
「韓国、心理的にG8国家に仲間入り」尹大統領に力を入れる韓国与党
―――2023.05.22 11:03付 中央日報日本語版より
これによると、韓国の与党「国民の力」の報道担当者は21日、尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領が日本を訪問して日韓・米韓首脳会談などを相次いで行ったことに関して、「大韓民国は心理的にG8国家に仲間入りを果たした」と述べたのだそうです。
この「心理的に」、という表現、もしかしたら流行するかもしれません。
「韓国は心理的に先進国だ」。
「韓国は心理的に軍事強国だ」。
「韓国は心理的にハード・カレンシー国だ」。
いくらでも応用が利きます。
もし韓国が現実にG8入りを目指すなら、その前提として、まずは西側諸国としての義務を果たしていただく必要があります。
そのためには最低でも、「他国を騙しウソをつくことに何のためらいもない」(『「韓国は詐欺大国:他人騙しウソをつく文化」=韓国紙』等参照)という文化を、きれいに捨て去っていただく必要があります。そもそもG7は基本的価値を大切にする国の協議体だからです。
今度は「詐欺大国・大韓民国」です。何とも刺激的ですが、これはべつに日本国内の「嫌韓」的なメディアなどに掲載されたものではありません。韓国メディア『朝鮮日報』に掲載された記事のタイトルです。朝鮮日報によると韓国における犯罪件数のトップは「詐欺」だそうであり、しかもその原因が「他人をだまし、うそをつくことを大したことだとは思わない文化」にあると指摘する人も多いのだとか。特定民族を過度に貶めることは控えてほしいおもにインターネット上で、特定民族のことを過度に貶める意見を見かけることがあります。いわ... 「韓国は詐欺大国:他人騙しウソをつく文化」=韓国紙 - 新宿会計士の政治経済評論 |
とくに韓国は、前任の文在寅(ぶん・ざいいん)政権が交代して以降も2018年12月に発生させた火器管制レーダー照射事件をいまだに認めようともしていませんし、日本に謝罪も行っていません((『レーダー照射事件でウソをつき続けることを選んだ韓国』等参照)。
尹錫悦政権でも「三不の誓い」維持する韓国は信頼に値しない!自称元徴用工問題に限定すれば、韓国は岸田「宏池会」政権をまんまと騙すことに成功したのかもしれません。しかし、日韓諸懸案があまりにも多すぎるためでしょうか、ここに来てボロが出始めました。韓国の李鐘燮(り・しょうしょう)国防部長官は事実上、「三不の誓い」を守ることを宣言してしまったのです。つまり、韓国が中国側から米国側に戻ったというのは見せかけに過ぎません。そして、やはり韓国はFCレーダー照射事件を改めて否定したうえで、「日本が低空威嚇飛... レーダー照射事件でウソをつき続けることを選んだ韓国 - 新宿会計士の政治経済評論 |
その韓国がG7入りとは、シャレにしてはなかなかに強烈です。
駐日大使は「最大のハードルは日本だ」
ただ、もっと怖いのは、どうやら韓国がこの「G8」をシャレのつもりで述べているのではなさそうだ、という点でしょう。
というのも、時事通信が24日、こんな記事を配信していたからです。
韓国大使、「G8」入りに意欲 日本の支持を期待
―――2023/05/24 16:38付 Yahoo!ニュースより【時事通信配信】
時事通信によると、尹徳敏(いん・とくびん)駐日韓国大使は24日、都内で講演し、「ぜひG8に参加したい」と発言。「最大のハードルは日本だ」とも語り、「日本が応援してくれれば(韓国がG7に正式メンバーとして参加することは)容易ではないか」、などと述べたのだとか。
いったい何を勘違いなさっているのでしょうか。
ちょっとG7でゲスト国に招かれただけで、簡単にG7入りできるというものではありませんし、ましてや今回の会合でも見られたように、G7はときとして、中国、ロシアといった専制国家に対し、厳しい姿勢を示さなければならないこともあります。
韓国は、日本に対してはウソをつき約束を破るという国ですが、中国に対しては厳しいことを主張できない国でもあります。そんな韓国がG7に正式メンバーとして参加すれば、G7はあっという間に形骸化してしまうでしょう。
というより、すでにG20という枠組みがあるわけですし、それより小さな「日米韓3ヵ国連携」という枠組みもあるのですから、「心理的」にはそれで十分ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
View Comments (34)
愈々、始まりましたね。
ちょっと甘い顔見せると、これですよ。
日本政府もいい加減にしないと。
こういう輩に近づいちゃダメだって、国民が言っているのに。
心理的‥‥瑕疵物件の誤りでは! 「G8‥G8‥」と呟く霊が出るという‥‥
そもそも、G7は政治的・経済的にも自由で開かれた国家の集まりであり、通貨は「ハードカレンシー」です。
韓国のように「国民情緒法」で司法の基盤が安定せず、さらに「ソフトカレンシー」のような国は、G7各国とは全く異質でしょう。
>駐日大使は「最大のハードルは日本だ」
>「日本が応援してくれれば(韓国がG7に正式メンバーとして参加することは)容易ではないか」
最大のハードルは「万事に”他者のサポートによる解決”を求める」自身の性根の有様ですね。
秩序に寄り添えぬ(特別扱いを求める)者に、秩序を司る役目など許されるはずもありません。
・・・・・
彼らが真に欲してるのは、格付けではなくて”格好つけ”なんですよね。
性根にパンツ(理性=欲を御すること)を穿いてから出直してください。
力による現状変更を否定する広島G7の会合にもかかわらず、
竹島をかすめ取った国がG8に入るというのは、冗談にしては笑えませんね。
むしろ、北方四島を火事場泥棒した旧ソ連(現ロシア)や
尖閣諸島にちょっかいをかける中国と
同じ立場なのを理解していないのでしょうか?
「G8入りを日本が妨害した」と難癖をつけるための前振りにしか聞こえませんです。迂闊に会話などして言質(言ってもいないことを含む)をとられないよう気をつけましょう(^_^;
一言で言うと妬みでしょう。
彼らはおまゆうと言い返すはずが、それこそが妬みの本質なんですが。
最大のハードルは日本なのかどうか、他のG6に聞いてみればいいではありませんか。ねぇ?
わが身を振り返ることもなく、他人が持っているものを何でも欲しがり、かつ臆面もなく「くれ!!くれ!!」と騒ぐ国民性は何とかならないものでしょうかね。。
『世界の片隅で「くれ!!」を叫ぶ』
他国、それも仲が良い訳でもないし「敵性国だ」と罵る日本に、「テコの応用」をハッキリと期待する。「日本が援護してくれたらG7に入ることなど、すぐ出来るのにー」と韓国大使は言いたいようです。
ゲストで呼ばれてもな〜んの存在感もナシ。クアッドやらNATO、同アジア版、AUKUSがあるのに、アンタが呼ばれたのは対北運用のみよ(爆笑)。動乱が起きた時の、第一線戦闘圏だ。防御すべき台湾とは違うわ(笑)。
毎度、ばかばかしいお話しを。
韓国:「韓国を名誉G7の国として、義務は負わないようにしてくれ」
これって、笑い話ですよね。