台湾人と香港人の「人気の渡航先」は日本が韓国に圧勝
日韓の観光データの比較から浮かび上がるのは、とくに台湾人と香港人が韓国よりも圧倒的に日本を好んでいるという仮説です。韓国観光公社が30日に公表した2月の訪韓旅客数は50万人弱で、たしかにコロナ禍で落ち込んだインバウンド需要は回復傾向にあるのですが、その回復速度で見ると日本よりも圧倒的に遅く、とうてい「観光需要が戻った」といえるような状況ではないことが判明します。
目次
2月の韓国訪問者数は約50万人、うち20%が日本人
韓国観光公社が30日、訪韓旅客数データを公表しました(詳細データは韓国観光公社・データサイトからダウンロード可能)。
これによると、2023年2月における韓国訪問者数は47万9248人で、1月の43万4429人と比べて増加。内訳は、日本からの入国者が94,393人で全体の約20%近くを占め、続いて台湾(47,970人)、米国(46,204人)、中国(45,884人)などとなっています(図表1)。
図表1 韓国入国者数(2023年2月)
出身国 | 人数 | 構成比 |
1位:日本 | 94,393 | 19.70% |
2位:台湾 | 47,970 | 10.01% |
3位:アメリカ | 46,204 | 9.64% |
4位:中国 | 45,884 | 9.57% |
5位:ベトナム | 28,828 | 6.02% |
6位:タイ | 28,142 | 5.87% |
7位:マレーシア | 16,486 | 3.44% |
8位:香港 | 16,237 | 3.39% |
9位:フィリピン | 14,368 | 3.00% |
10位:インドネシア | 14,156 | 2.95% |
その他 | 126,580 | 26.41% |
合計 | 479,248 | 100.00% |
(【出所】韓国観光公社データをもとに著者作成)
日本を訪れた外国人の40%弱が韓国人だった
韓国に入国した外国人のトップが日本人だったというのは、ある意味では象徴的です。先日の『訪日外国人数は一見順調に回復しているが…特定国偏重』でも取り上げたとおり、2月に日本を訪れた外国人のうち、最も多かったのが韓国人で、入国者全体の38.54%にも達したからです。
2023年2月における入国者数を再掲しておきましょう(図表2)。
図表2 訪日外国人(2023年2月)
国 | 人数 | 割合 |
1位:韓国 | 568,600 | 38.54% |
2位:台湾 | 248,500 | 16.84% |
3位:香港 | 119,400 | 8.09% |
4位:米国 | 86,900 | 5.89% |
5位:タイ | 73,300 | 4.97% |
6位:ベトナム | 55,800 | 3.78% |
7位:豪州 | 37,700 | 2.56% |
8位:中国 | 36,200 | 2.45% |
9位:フィリピン | 33,900 | 2.30% |
10位:マレーシア | 32,000 | 2.17% |
その他 | 183,000 | 12.40% |
総数 | 1,475,300 | 100.00% |
(【出所】韓国観光公社データをもとに著者作成)
つまり、日韓揃って「観光需要が回復し」、「お互いの国からの入国者数が入国外国人のトップを占めている」、という状態なのです。「コロナ後に徐々に人的往来が回復するなかで、お互いの入国者数が観光需要の回復を牽引している」というのは、「日韓友好の新時代の象徴」としては、非常にわかりやすいものでもあります。
とりわけ今月、韓国から尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領がやってきて岸田文雄首相と首脳会談を行ったタイミングでもあるため、「日韓の最大の懸案である徴用工問題も解決し、これからは日韓の相互往来も復活していくに違いない」、といったストーリーは、日韓のメディアが好みそうです。
人数では圧倒的に「日本>韓国」
ただし、データをよく眺めてみると、ものごとはそこまで単純ではありません。
そもそも論として、図表1と図表2を見比べていただきたいのですが、人数の絶対値がまったく異なります。
まず、日本に入国した韓国人、韓国に入国した日本人が、日韓それぞれの入国外国人のなかで最大を占めていることは間違いないのですが、日本を訪れた韓国人は568,600人(A)に達しているのに対し、韓国を訪れた日本人は94,393人(B)に過ぎません。
- 日本を訪れた韓国人:568,600人…(A)
- 韓国を訪れた日本人:94,393人…(B)
(A)は(B)のだいたい6倍であり、このことは、「2023年2月において、日本を訪れた韓国人が韓国を訪れた日本人の6倍に達していた」ことを意味します。両国の人口比を考慮に入れると、人口あたりで見た「日本を訪れた韓国人」は、「韓国を訪れたに日本人」の、ざっと15倍(!)という計算です。
ちなみに月次データをグラフ化しておくと、韓国を訪れる外国人のなかで、日本人が占める割合は、かつては50%を超えたこともあったのですが、最近だと訪韓外国人に占める日本人の割合はかつてと比べて低く、コロナ直前でもせいぜい20%前後に過ぎませんでした。
これに対し、訪韓外国人の多数を占めていたのが中国人で、コロナ直前期で入国者全体の30~40%に達していました。ということは、韓国の観光産業にとっての「最も大切なお得意様」は、日本人ではなく、中国人なのです。
コロナ後の回復では日本が圧勝
ちなみに韓国入国者数はコロナ前と比べて非常に低迷しています。グラフ化すると一目瞭然でしょう(図表3)。
図表3 訪韓旅客数
(【出所】韓国観光公社データをもとに著者作成)
韓国への入国者数は、コロナ前だとだいたい毎月100万人を大きく超えており、多い時には160万人を突破することもありましたが、入国者の多くを占めていた中国人旅客の回復がまだ本格化していないこともあってか、現在の入国者数はせいぜい40~50万人程度です。
ちなみに「中国人入国者に依存していた」という意味では、事情は日本も同じようなものですが、ポストコロナの回復は韓国と比べてかなり力強いといえます(図表4)。
図表4 訪日外国人
(【出所】日本政府観光局データをもとに著者作成)
訪日外国人はコロナ直前で毎月250~300万人ほどであり、日本政府が昨年10月に外国人観光客の受入を再開して以来、入国者数は順調に増え、現在では150万人ほどに回復しています。図表3と図表4をじっくり眺めてみても、インバウンド需要が日韓で大きく異なっていることがよくわかるでしょう。
近年、日本を訪問する中国人は激増したが…
こうしたなか、本稿でもうひとつ注目しておきたいのが、インバウンド需要の日韓比較です。
日韓両国を訪れた外国人は、日本人、韓国人を除けば、基本的には中国人、米国人、台湾人、香港人などに加え、アジア各国などが多いという特徴がありますが、ここではとりあえず、中国、米国、台湾、香港の4ヵ国・地域について、それぞれの国から日韓に毎年どれだけの人が渡航したかを集計してみました。
また、あわせてグラフの右軸で、「日本を訪問した人数(A)」を「韓国を訪問した人数(B)」で割った倍率についても併記してみることにします(※なお、以下の図表5~8では、2023年の数値は2ヵ月分しか集計されていませんのでご注意ください)。
まずは、中国人です(図表5)。
図表5 中国人
(【出所】日本政府観光局・韓国観光公社データをもとに著者作成。以下同じ)
中国人に関しては、意外なことに、2016年までは韓国を訪れた人数の方が、日本を訪れた人数を上回っていることが多かったようです。しかし、2017年、つまり中国で「限韓令」が出てきた年以降、両者が逆転し、コロナ直前の2019年まで両者の倍率は1.6~2.0倍程度だったのです。
米国に関してはさほどの違いなし
ただ、中国の場合は「政治的要因」によっても影響を受けていると考えられますが、こうした要因がない米国、台湾、香港の場合はどうでしょうか。
まず、米国に関しては東日本大震災のあった2011年、コロナ禍最中の2020年~22年を除くと、いずれも訪韓米国人を訪日米国人が上回っていますが、興味深いことに、両者の倍率は「圧倒的な違いがある」とはまではいえません(図表6)。
図表6 米国人
もちろん、2012年以降、訪日米国人が堅調に増えるなどの傾向は認められるのですが、それでもコロナ直前の2019年においても、訪日米国人は訪韓米国人の2倍を超えていません。日韓の人口比が約2.5倍であることなどを考えるなら、むしろ日本は米国人にとってあまり人気がない渡航先なのか、という気もします。
台湾・香港人は韓国よりも日本を訪問する人が圧倒的に多い
ところが、これが台湾人や香港人になると、日本の圧勝です。まずは台湾について眺めてみましょう(図表7)。
図表7 台湾人
倍率(A÷B)は、コロナ禍時代の2021年などを除き、どんなに少なくとも2倍、多いときには7倍を超えることもありました。
台湾人はよっぽど日本が好きなのか、それとも単純に台湾から見て沖縄県が近いという事情でもあるのかについては、データだけではよくわかりませんが、とにかく訪日台湾人は訪韓台湾人を人数で大きく上回り続けているのです。
こうした状況は、香港人についても同じことが言えます(図表8)。
図表8 香港人
コロナ直前までの時期で、訪日香港人は訪韓香港人の3倍から4倍に達しており、また、コロナ禍最中の2021年を除いて1倍を下回ることがありませんでした。
インバウンドの回復では日本が韓国に圧勝
なお、訪問外国人総数についても比較しておきましょう(図表9)。
図表9 外国人総数
2023年において、日本と比べたときの韓国のインバウンド需要の回復の低調さが目立ちますし、少なくともインバウンドという意味では、日本は韓国に対し全体的に勝っていますが、それと同時に、「差はこんなもの」でもあります。
このあたり、仕事で日本全国津々浦々を訪れたことがある著者自身の感想だけで申し上げるならば、本来、日本には良質な観光資源が山ほど眠っているため、インバウンドに関しては、韓国に対してはもっと圧倒的な、たとえば10倍~20倍程度の差がついていなければおかしいのではないか、という気がします。
日本には美味しい和食がある伝統的な温泉施設もあれば、東京や大阪などの最先端の大都会、京都を筆頭とする伝統的な都市もあり、冬場はスキーリゾートもあれば夏場は美しいビーチもあり、さらには欧米、シンガポールあたりの富裕層の子弟を林間学校で預かるという潜在需要もありそうです。
もちろん、以前の『外国人観光客、人数に加え「1人当り消費額」を目標に』でも指摘したとおり、当ウェブサイトとしては「人数ありき」のインバウンド観光目標の設定にはあまり賛同していないのですが、それでも韓国との比較では、少なくとも台湾人や香港人は韓国よりも日本が大好きだという仮説は成り立ちそうです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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>このあたり、仕事で日本全国津々浦々を訪れたことがある著者自身の感想だけで申し上げるならば、本来、日本には良質な観光資源が山ほど眠っているため、インバウンドに関しては、韓国に対してはもっと圧倒的な、たとえば10倍~20倍程度の差がついていなければおかしいのではないか、という気がします。
其処で差が出てくるとしたら、リピーター率とリピート回数ではないかと考えます。
>日韓の人口比が約2.5倍であることなどを考えるなら、
>むしろ日本は米国人にとってあまり人気がない渡航先
>なのか、という気もします。
韓国政府の訪韓旅客数って、仁川国際空港の国際線航路から国際線航路への乗り換え客の為の「トランジットツアー客」として水増ししていませんでしたかね?
https://shinjukuacc.com/20190402-01/#i-6
韓国政府の統計なんてどの程度信用して良いのか分からないです。
韓国観光公社の数値発表なんて、まったく信用できないですね。でも、コレしか出所が無いので、何故こうなったかを考えました。
訪韓客が479,000人。
訪日客が1,475,000人。
およそ3倍の差が最早つきました。
で、お互いの国に出かけたのが568,000人対94,300人。まあ、そんなものかなと思います。街でも朝鮮語ばかり聞こえるという訳では無いですから。
しかし、米国からの客数はホントに合っているのでしょうか?韓国へ46,000人、日本へ86,900人、、。思うに、韓国へ向かった米国人とは、韓国系朝鮮系米国人も多く含まれているのではないですか。ちょうど旧正月のあたりだし、コロナ禍も落ち着いたから、爆増したと考えます。また日本にはベスト10に豪州から37,700人が来られてます。対して韓国には欧米人は米国以外無し。オカシイですよねー(爆笑)。
https://www.populationpyramid.net/ja/大韓民国/2050/
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これを見たらいかにこれから韓国が沈没してオワコンになるかわかります
高齢大国と言われてる日本やドイツと比較してみてください
そんな表現は韓国には生易しく、まさに地獄です
地理音痴の多いアメリカ人にとって 極東の国は中国と日本なのです。韓国は日本の一部あるいは 日本とおなじような国との誤認識。
日本への来訪者が増えると 韓国に比べ 航空チケット、ホテル予約がとりにくく また高額になる。
すると 同じような国と思って 予約が取れやすく安い韓国を 誤認でアメリカ人は選んでしまう場合も多いんですよ。リピートのお客さん たくさんあると いいですね。