案外、誰もがジャーナリストになれる時代が到来したのかもしれません。当ウェブサイトで好んでいる「公開情報をベースに議論を組み立てる」という手法は「OSINT」とも呼ばれるそうですが、ネット時代が到来したことで、このOSINTの手法は私たち国民にとってすぐ隣に存在するのです。
OSINTとウェブ評論
よくこんなサイトが続いたものだ
当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』は2016年7月以降、「読んでくださった方々の知的好奇心を刺激すること」を目的に、誰にでも確認ができる客観的な事実関係や統計数値、法規制などをベースに、可能な限り論理的にものごとを考察しようとするコンセプトで、これまで運営してきました。
おかげさまで、当ウェブサイトは2018年末に毎月100万ページビュー(PV)を達成し、最盛期には400万PVを記録したほか、現在のところもコンスタントに100~200万PVを維持しています。読者の皆さまには、本当に感謝申し上げるほかありません。
ただ、著者自身、山手線の駅名を冠したいかにも怪しげな自称会計士が運営するウェブサイトがこんなに長続きするとは、当初はまったく考えていませんでした。
よくこんなサイトが続いたものだと驚きます。ウェブサイト名称の怪しさもさることながら、著者自身はべつに大手メディア出身者でもなく、ジャーナリストでもなく、有名人の知り合いがいるわけでもなく(※企業経営者などの知り合いはいますが)、さらにはテレビに出演している有名人でもないからです。
それどころか、これまで当ウェブサイトについて大手メディア(新聞、テレビ、ラジオなど)で宣伝したことはありません(※月刊正論、月刊WiLL、月刊Hanadaに寄稿したことならばありますが…)。
OSINTとは?
これもなんだか非常に不思議な気がします。
じっさい、当ウェブサイトに掲載している記事を読んでいただければわかりますが、当ウェブサイトの議論の手法は基本的に、「客観的に誰にでも確認できる情報」「公開されている情報」をもとに、著者なりのロジックを組み立てて考察するというスタイルです(※そうでない場合もありますが…)。
つまり、当ウェブサイトの議論手法は、その気になれば「誰でもできる」、という特徴があるのです。
ところで、著者自身は最近知ったのですが、「誰にでも入手できる情報だけを収集・分析し、一定の結論を出す」という手法のことを、「OSINT」と呼ぶこともあるそうです。OSINTとは英語の “Open-Source INTelligence” の略です(わが国では「オシント」などと発音されることもあるようです)。
NECソリューションイノベータ株式会社の『OSINT (Open Source Intelligence)』という解説記事によれば、こんな趣旨の内容が記述されています。
- OSINTは一般に公開されている情報源からアクセス可能なデータを収集、分析、決定する諜報活動の一種であり、米国国防総省によって「特定の情報要件に対処する目的で、一般に入手可能な情報を収集し、利用し、適切な対象者に適時に普及させた情報」と定義されている
- OSINTは「合法的に入手できる資料」を「調べて突き合わせる」手法であり、具体的には、対象国の方針を割り出すために、対象国の新聞社交欄、ニュースの断片、人事の異動発令、発表報道などを丹念に集積し、分析するなどの手法である
当ウェブサイトで2016年以降続けてきた議論のスタイルが「OSINT」に該当しているのかどうかは、よくわかりません。著者自身も、さすがに「新聞に丹念に目を通す」、「官庁の人事異動を追いかける」、といった手法までは行っていないからです。
ブーメラン立憲民主党
客観的事実と主観的意見を分けることからスタートしましょう
ただ、それでも「表に出て来る情報」、つまり「その気になれば誰もが確認できる情報」から議論を始めるという点だけに注目すれば、当ウェブサイトの議論の方法は、結果的にはこの「OSINT」とよく似ているのかもしれません。
というのも、当ウェブサイトでは情報を整理する際、可能な限り、「客観的事実」と「主観的意見」を明確に峻別しようと心掛けているからです。これなど、著者自身が重視している「ウェブ評論の流儀」のようなものといえます。
その具体例として、いわゆる「小西文書」、すなわち「安倍晋三政権時代に官邸が放送法の解釈変更を指示した」かのようにも読み取れる、総務省の一連の文書の問題が挙げられるかもしれません。
詳しい事実関係については『総務省「精査」に小西氏が反発もネット民の反応は冷静』でもまとめたとおりであり、事件のあらましについては同記事などをご参照いただきたいのですが、この事件も結局のところ、客観的事実と主観的意見に峻別したら、さほど難しい問題ではないことはすぐにわかります。
例の「小西文書」を巡り、総務省は金曜日、内容を精査した結果を公表しました。まだ精査が完了しているわけではありませんが、文書を構成する48ファイル中、作成者不明のファイルが26ファイルあるなど、大変不透明な代物です。これに対し小西氏は強く反発しているようですが、「精査したら激怒する」というのも不思議な反応です。ただ、それ以上に興味深いのは、ツイッターなどを通じて垣間見える、一般国民の極めて冷静な反応です。総務省文書と小西氏の反応総務省が精査結果を公表小西洋之・参議院議員が2日公表した、「安倍政権下... 総務省「精査」に小西氏が反発もネット民の反応は冷静 - 新宿会計士の政治経済評論 |
すなわち、立憲民主党の小西洋之・参議院議員やその支持者らの主張を、あえて当ウェブサイトなりに要約すると、「小西氏が3月2日に公表した文書は、安倍政権時代に政治からメディアに対し圧力がかけられていたことを示す証拠であり、一大スキャンダルだ」、といったところでしょうか。
小西氏の理屈はいろいろおかしい
しかし、ここでも注意が必要です。
あくまでも私たち一般国民が確認可能な「客観的事実」とは、「小西氏が『総務省から入手した』とされる文書を公表した」、「総務省は後日、小西氏が公表した文書を『行政文書』と認め、同じ内容の文書を公表した」、「総務省は10日、内容を精査した結果の一部を公表した」、というものです。
しかし、この文書がただちに「安倍官邸がメディアに政治的圧力をかけていた証拠」にはなりません。小西氏が公表した資料はたしかに総務省が作成した行政文書ではあったのですが、その内容の正確性や信憑性については立証されたとは言い難いのが実情だからです。
さらには、百歩譲ってその内容が「捏造」ではなく「正しいもの」だったとしたとして、正直、それが具体的にいかなる問題をもたらすものなのか、という論点もあります。
『高市氏が怪文書を捏造と批判:本質は業界の放送法違反』でも指摘しましたが、そもそも「椿事件」から「メディア禍」、「民主党政権禍」に至るまで、放送業界が放送内容の政治的公平性を定めた放送法第4条第1項を、まったく守っていないという問題があるからです。
高市早苗・経済安保担当相は3日、立憲民主党の小西洋之参議院議員が公表した「放送法の解釈を巡り官邸が総務省に圧力をかけた」ことを示すとされる文書の記載内容を「捏造」だと述べ、もしそれが捏造出なかった場合には閣僚・議員を辞職すると応じたことが話題になっています。ただ、怪文書そのものの信憑性もさることながら、ことの本質は放送業界が放送法をさらさら守っていないことにある、という点については、改めて指摘しておく必要があります。放送法第4条第1項と放送不祥事椿事件とBPOの発足放送法第4条第1項という条... 高市氏が怪文書を捏造と批判:本質は業界の放送法違反 - 新宿会計士の政治経済評論 |
高市早苗氏自身、該当する文書のうち、自身と故・安倍晋三総理大臣との通話内容に関する記述については「捏造」であると断言しており、また、小西氏の「捏造でなければ大臣、議員を辞職するのか」との発言を肯定しているという意味で、個人的にはやや軽率だったとは考えています。
しかし、万が一、それらが捏造でなかったところで、「安倍総理や高市氏らが放送業界に不当な圧力を加えていた」という結論は、かなり短絡的ですし、小西氏の理屈はいろいろおかしいのです。
立憲民主党ブーメランが今回も無事炸裂!
ちなみに政治家からメディアに対する圧力という意味では、『「壁新聞で報道圧力」立民・安住氏がNHKにも介入か』でも触れた、立憲民主党の安住淳・国対委員長を巡る一部報道をどう見るか、という問題があります。
例の「総務省文書」を巡り、「安倍官邸による報道介入だ」などと舌鋒鋭く批判している人物のひとりが、安住淳・立憲民主党国対委員長です。ただ、安住氏自身、2年前に「壁新聞問題」を起こした張本人でもありますし、一部のメディアはNHK出身の安住氏がNHKに対し、報道圧力を加えていたという疑惑を報じています。安定のブーメランです。ちなみに普段の立憲民主党の行動に照らすなら、その報道が「事実ではない」と立証する責任は、立憲民主党にあります。『小西氏「高市氏は万死に値する」』などでも触れている、例の「総務省... 「壁新聞で報道圧力」立民・安住氏がNHKにも介入か - 新宿会計士の政治経済評論 |
まさに、強烈なブーメランそのものですね。
もちろんこれに対しては、「安住氏がNHKに圧力をかけていたというのは一部のメディアの報道に過ぎず、確定事実ではない」、「したがってこうした一部メディアの報道をベースに安住氏や立憲民主党を批判すべきではない」、といった批判が生じるかもしれません。
しかし、そう批判する人に思い出しておいていただきたいのですが、「もりかけ」「さくら」「統一教会」(MKST)などの一連のスキャンダル追及事案において、立憲民主党は一貫して、「無実であることを証明する責任は、疑われた側にある」と主張し続けてきました。
したがって、こうした「立憲民主党メソッド」を敷衍(ふえん)するならば、「むしろ安住氏がNHKに対し圧力をかけていた側だ」、などとする今回の報道が「事実ではない」と証明する責任は、立憲民主党の側にあります。そうでなければ普段からの同党関係者の言動とは矛盾するからです。
故人の悪口を述べるのは好きではないが…「龍事件」
さらにいえば、立憲民主党、あるいはその前進政党である民主党などは、メディアに対しなかば公然と圧力を加えることが常態化しているというのは、おそらくは事実でしょう。ここではその典型例として、旧民主党時代の松本龍・復興相の事例を指摘しておきましょう。
『共産県議が知事に多選批判→知事「志位氏に伝えたい」』でも少しだけ触れましたが、宮城県の村井嘉浩知事が東日本大震災から数ヵ月後、当時の菅直人内閣下における松本龍・東日本大震災復興担当大臣から罵倒されたシーンを覚えていらっしゃる方は多いと思います。
当時のことをご存じではない方は、J-CASTニュースの次の記事などもご参照ください。
「書いたら、その社は終わりだから」 松本復興相「脅し」に屈しなかった地元テレビ
―――2011年07月04日20時00分付 J-CASTニュースより
ただ、著者自身は当時の松本氏と村井知事のやり取りを、インターネットを使っていち早く視聴していた人間のひとりですので、その詳細については、12年近く経ったいまでもハッキリと覚えています。
松本氏は復興相に就任後、7月3日に初めて岩手、宮城両県を訪れたのですが、宮城県庁では自身が応接室に入ったときに村井知事がまだ入室していなかったことに腹を立て、次のように言い放ったのです。
「お客さんが来るときは、自分が入ってからお客さんを呼べ。いいか、長幼の序が分かっている自衛隊なら、そんなことやるぞ!」
これに対して村井知事は「はい」と答えたのですが、さらに強烈なのが、その続きです。このとき、松本大臣は村井氏を罵倒した直後、居合わせた記者団に対し、「いまのはオフレコです」、「書いたら、もうその社は終わりだから」と脅しました。
しかし、地元の東北放送はこの脅しを無視し、松本氏の発言をテレビで放映。そのシーンが全国でも話題となり、発言からわずか2日後に大臣辞任に追い込まれています。
これなど、著者自身、「民主党(※当時)は自分たちが舌鋒鋭く追及するときにはやたらと偉そうであるわりに、自分たちが追及される立場になると、極端に弱いものだな」、と、妙に感心した記憶があります。
ちなみに余談ですが、この発言のインパクトが強烈過ぎたためか、松本氏はその後、2012年12月の衆院選では小選挙区で落選し、比例復活もかなわず、そのまま政界を引退。2018年7月21日には肺癌のため他界しています。
情報の検証に強いネット
情報のタテヨコ検証
さて、故人のことを悪しざまに述べるべきではないと思うので、「龍事件」に関するこれ以上の言及は控えておきますが、それにしてもインターネット時代は非常に便利になったものです。私たち一般人であっても、情報の「タテ検証」と「ヨコ検証」が簡単にできるようになったのですから。
ちなみに、ここでいう情報の「タテ検証」とは情報を時系列に並べることであり、「ヨコ検証」とは複数のメディアなどの情報を並べることです。
インターネット時代の特徴は、この情報の「タテヨコ検証」に強みがあります。
たとえば、先ほどの松本龍氏の事例では、今から約12年前、2011年7月4日付のJ-CASTニュースの記事をお示ししましたが、これにより読者の皆さまはリンクをクリックするだけで(スマホだとタップするだけで)、12年前の記事に容易にたどり着くことができます。
しかし、もしもインターネットがこの世に存在していなければ、あなたが今から約12年前の「松本龍事件」について調べようと思ったときには、なかなかに困難です。
いちばん一般的な方法としては、図書館にでも出かけ、過去の新聞の縮刷版を片っ端から調べていく、といった手法が考えられますが、宮城県の情報も、もしかしたら全国紙にはさほど詳しく取り上げられていない、という可能性だってあるでしょう。
それが、現代社会だと自宅や職場に「居ながらにして」、過去の情報を調べることができるのです。
また、情報の「「ヨコ検証」も容易です。
なぜフリーダムハウスのレポートを無視するのですか?
この「ヨコ検証」は、「ある話題について、複数のメディアがどう報じたか」、という検証手法のことを意味しますが、これも興味深いことに、インターネットで簡単に調べることができます。
ここでつい最近、重要な事例がひとつあるとしたら、それは米国に本拠を置く「フリーダムハウス」の「世界の自由度レポート」で、日本が100点満点中96点を獲得して11位となり、G20ではカナダに続き2位となった、というものが挙げられるでしょう。
これについては当ウェブサイトではすでに『なぜか日本のメディアが頑なに報じない「自由な日本」』でも取り上げたとおりですが、非常に興味深い話題ですので、まだの人は是非ともご一読を願います。
2023年におけるフリーダムハウスの自由度調査が公表されました。日本は100点満点中96点という高い点数を獲得し、世界11位と上位にランクインしています。これはG7諸国、G20諸国と比べても、カナダに次いで2番目に高い地位であり、それだけ日本社会が自由で透明である証拠でもあります。ただ、ここで不可思議な点があるとしたら、大手メディアがこのフリーダムハウスの自由度をほとんど報じている形跡がないことです。フリーダムハウスvsRSFフリーダムハウスの調査結果先週の『日本の「自由度」かなり上位に=フリーダムハウ... なぜか日本のメディアが頑なに報じない「自由な日本」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
このフリーダムハウスのレポート、客観性が極めて高く、内容自体も詳細に記述されているのですが、興味深い点は、それだけではありません。
驚くことに、昨日の夜時点までで、このレポートを詳しく報じた日本語版のメディアがほとんど見当たらないのです。いちおう検索語を変え、たとえば「フリーダムハウス 日本の自由度」などで検索してみると、検索結果の上位に表示されているのは、某山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士のサイトだったりします。
評点項目は「政治的権利」に関するものが10項目、「市民の自由」に関するものが15項目、あわせて25項目あり、各項目4点満点で合計100点満点とされ、各国のレポートを読むと、なぜその評点となっているのかが根拠付きでわかる、というものです。
こうした極めて客観性の高いレポートで、「日本は世界でも11番目に自由な社会だ」、「G20各国で比べてもカナダに次いで2番目に自由な社会だ」、と示されているにも関わらず、なぜ新聞、テレビといったオールドメディアは、このレポートの存在自体を無視するのでしょうか。
謎と言わざるを得ません。
なぜRSFばかり取り上げるのですか?
そして、もっと不可解な事象があるとすれば、日本のオールドメディアは「国境なき記者団(reporters sans frontières, RSF)」が毎年公表している「報道の自由度ランキング」(classement mondial de la liberté de la presse)の話題を、好んで取り上げることにあります。
実際、昨年(2022年版)のRSFレポートに関して調べてみると、複数のメディアがこれを積極的に取り上げていたことに加え、酷いケースになると、RSFランキングで日本が71位に沈んだことを受け、「日本では報道の自由に弾圧が加えられていることが明らかになった」、などという記事すらもヒットするのです。
これは、明らかにおかしな話でしょう。オールドメディアが透明性・客観的の高いフリーダムハウスのレポートを報道せず、恣意的でアンフェアなRSFのレポートばかりに着目するからです。
そもそもRSFのランキングでは、アンケート調査に応じた記者、ジャーナリストらの主観的な評点をもとに評価が行われているようなのですが、その際の評価基準、評点項目などについては、基本的には非公開とされているようです。
(なお、RSFランキングについては “Méthodologie détaillée du Classement mondial de la liberté de la presse 2022” などのページで、全体的な評価基準についてはいちおう記載されているのですが、個別国のデータについてはやはり非開示です。)
記者クラブ制度に対する批判をできるだけ報じないメディア
もっとも、フリーダムハウス、RSFの双方のレポートで共通で指摘されている日本社会の問題点というものもあります。それが、「記者クラブ制度」です。とくにRSFのレポートでは、「外国人記者やフリーランスの記者を排除する差別的な仕組み」とかなり強く批判されています。
フリーダムハウス(2022年版)
“Under the traditional kisha kurabu (press club) system, institutions such as government ministries and corporate organizations have restricted the release of news to journalists and media outlets with membership in their clubs. While the club system has been criticized for privileging the major dailies and other established outlets that belong to it and potentially encouraging self-censorship, in recent years online media and weekly newsmagazines have challenged the daily papers’ dominance of political news with more aggressive reporting.”
RSF(2022年版)
“Le système des clubs de presse (kisha clubs), qui n’autorise que les médias établis à accéder aux conférences de presse et aux hauts responsables, pousse les reporters à l’autocensure et représente une discrimination flagrante à l’encontre des journalistes indépendants ou étrangers.”
これらの記述を、オールドメディアが大々的に報じているのを見た記憶はありません。じつにご都合主義です。
爆速化する国民世論
手紙リレーは「非現実的」
非常に残念なことに、わが国のオールドメディアや特定野党議員らは、こうした「客観的事実」から「主観的意見」につながる推論のプロセスをすっ飛ばし、「疑われた側がみずからの無実を証明せよ」、などとメチャクチャなことを言い出す傾向があります。
また、オールドメディア業界は「日本の報道の自由度が低い」、「自民党政権には問題がある」、といったロジックを大変に好むのですが、そのわりに、自分たちが記者クラブを通じ報道の自由度を引き下げる原因を作っている、という事実には、頑なに言及しないのです。
しかし、インターネットの出現で、こうした構造にはでっかい風穴があきつつあります。
先ほどの「タテヨコ検証」の論点に加え、私たち一般国民がインターネットを通じ、不特定多数の人々と気軽に意見交換し、議論を深めることができるようになったのです。
ここで是非とも強調しておきたいのが、昨年末の『ツイッターで「手紙リレー」による新聞社批判が爆速化』でも触れた、「手紙リレー」という話題です。
著者自身が今から数十年前に体験した、「新聞記事を切り抜いてコピーし、ワープロで作成した意見とともに封書で友人に送る」。「受け取った人はその内容を読み、共感したらそれをさらにほかの人にも転送する」。手間もカネも時間もかかる方法であり、こんな方法で自分の想いを社会に問いかけることなどできません。ところが、現代社会だと手間もカネも時間もかけず、PCないしスマホの操作で、とっても簡単に、瞬間的にこれを行うことができます。社会の急速なIT化早いもので、あと19時間後に、今年が終わります。私たち現代人の多... ツイッターで「手紙リレー」による新聞社批判が爆速化 - 新宿会計士の政治経済評論 |
少し古い話題ですので簡単に振り返っておくと、インターネットが出現する以前だと、私たち一般国民が新聞、テレビなどのオールドメディアと無関係に意見を共有し、形成する手段は極めて限られていました。
ここで紹介しておきたいのが、著者自身の大学生時代の経験です。
A君という、政治的には強い信念を持つ風変わりな友人がいたのですが、このA君はしばしば、新聞の切り抜きのコピーを同封したワープロ打ちの手紙を送り付けて来ることでも有名でした。
A君の手紙は、新聞の紙面コピーに、彼なりに気付いた点を目立つようにマーカーで強調したうえで、「別紙の新聞記事のこの記述はおかしい」などと主張するもので、「俺の考えに賛同してくれたら、この手紙をコピーしてお前の知り合い10人に転送してくれ」、などと結んでいる、というものです。
ちなみに「知り合い10人に転送してくれ」と書かれていても、それに応じることはありませんでした。自分の知り合いに送るためには封書に宛名を書かねばなりませんし、コピーを取るのも手間暇かかりますし、さらには紙をコピーして郵送するためのコストが、あまりにも高額だからです。
切手代(当時は62円)や封筒代、コピー代(1枚10円)などを考えると、1通転送するのに100円が必要であり、それを10人に転送しようものなら、それだけで1000円が必要です。これは当時の学食の2.5食分に相当します。
A君のオピニオンが素晴らしいものなのかどうかという論点もさることながら、もしA君の主張に深く賛同したとしても、「それを10人に転送する」というのは、通常の貧乏学生にとっては、極めてハードルが高い行動でもありました。
しかも、もしA君の行動に賛同してくれるという奇特な人が複数名存在したとしても、その人たちがA君の手紙をコピーして他人に送り付け、その他人がさらにその手紙を読むまでに、さらに日数が必要です。情報としての鮮度が落ちればニューズ・バリューも加速的に消えていきます。
結果的に、一般人のちょっとしたつぶやきが全国の人々の意見を形成する、ということは、限りなく非現実的なできごとだったのです。
ネットで手紙リレーが爆速化&低コスト化
それが現在ではどうでしょう。
山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士がメディア(この場合は『smartFLASH』)の記事リンクとともに、その内容にツッコミを入れるツイートを発信したところ、これが1000回以上表示され、100件を超える「いいね」が付され、複数件のコメントまで寄せられています。
ここでこの「怪しげな自称会計士」がとった行動は、記事を読んだうえで自分の感想を書き込んでツイートボタンを押しただけのことであり、時間は下手をすると1分もかかっていませんし、情報通信量も大したものではないため、通信コストも限りなくゼロに近いものです。
また、この「怪しげな自称会計士」は現時点でフォロワーが4500人に過ぎませんが、これが数万人、数十万人というインフルエンサーになってくると、多くの場合、ツイートの表示回数は数千回、数万回、数十万回にも達し、ちょっとしたメディア並みの影響力が生じてきます。
このように考えていくと、やはり「社会的影響力」という意味では、オールドメディアは支配力を失い始めているのでしょう。
すでに新聞の時代は終わりました。計算上、紙媒体の新聞は、遅くともあと13.98年で消滅する可能性が、極めて高いからです(『新聞朝刊の寿命は13.98年?』参照)。
また、テレビ(とくに地上波)が現時点においてもある程度の社会的影響力を持っていることは事実ですが、一般ユーザーのメディア利用時間でも、スポンサーから見た重要性でも、すでにその力関係には、完全に逆転が生じています(『ネット広告費が史上初の3兆円台:マスコミ退勢は続く』等参照)。
今年も株式会社電通から『日本の広告費』というレポートが公表されました。これによるとネット広告費は史上初めて3兆円の大台に乗る反面、マスコミ4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告費は約2.4兆円にとどまりました。ネット広告費は昨年、マスコミ4媒体広告費を史上初めて抜いたのですが、今年はさらにその差が拡大し、いまやマスコミ4媒体の市場規模はネットの80%程度になってしまった計算です。日本の広告費世の中にはさまざまなウェブサイトがありますが、当ウェブサイトがひとつこだわっているテーマがあるとすれば、... ネット広告費が史上初の3兆円台:マスコミ退勢は続く - 新宿会計士の政治経済評論 |
もちろん、インターネット空間ではデマや非常識行動なども拡散しやすいという点には注意は必要です(『バカッターは10年周期?外食迷惑行為に毅然と対応を』等参照)。
非常識な行動・反社会的な行動を行い、それをツイッターなどのSNSにアップロードするという者は、10年周期で出てくるものなのかもしれません。回転ずしチェーン店で不衛生な行為を撮影し、それを投稿した者が話題になっているようです。今から10年前の「バカッター行為」を思い出してしまいます。ただ、問題は単なる回転ずし業界への風評被害にとどまりません。社会全体に対する挑戦でもあるのです。社会のインターネット化のメリット当ウェブサイトではしばしば、「社会のインターネット化」を議論しています。インターネット化が... バカッターは10年周期?外食迷惑行為に毅然と対応を - 新宿会計士の政治経済評論 |
しかし、自動車が普及したら交通事故が増えたのと同様、ニュー・テクノロジーが出現したときには、社会的に大きな混乱が生じることは避けられません。むしろ重要なことは、「こうした混乱を避けるためにネットを禁止する」のではなく、「ネットが存在する社会に慣れ、ネット・リテラシーを磨くこと」でしょう。
そのうえで、OSINTの手法は、私たち一般国民が「皆ジャーナリスト」になることを手伝ってくれます。
ツイッターも結局のところ、「一般人がOSINTの手法を用いてジャーナリストになっている」ようなものであり、多くの人々から信頼されるOSINTサイトが増えてくれば、新聞やテレビがなくても大丈夫な日本が出現することは間違いありません。
その意味では、著者自身は新聞、テレビの偏向・捏造報道に対し、あまり深く心配をしておらず、それどころか極めて楽観的だったりするのです。
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OSINTの発展はオールドメディアにとっては地獄そのものでしょうね。
冗談でもなんでもなく、彼らの食い扶持(生存圏)が脅かされているのですから。
逆に言えば、それだけオールドメディアに対する不満と不信が高まったと言う事。
この先現れる「ニューメディア」ははたして要求されるレベルを満たせるのか?
それとも満たせずに「メディア」がなくなってしまい、社会の分断化が進んで
誰もが自分の居心地のいいコミュニティから出て来なくなるのでしょうか?
この答えが分かる頃には私はかなりの老齢になっているでしょうが、
なるべく健康に長生きして結末を見届けたい物です。
安倍さんも「放送法?あんなのほっとけば?ネットあるんだし」と言ってたそうで。
https://www.youtube.com/watch?v=huZTnUyG1Zc
7分ぐらいから
ちょっと驚きです。「怪しげな自称会計士」さんは現時点でフォロワーが4500人ですか?もっともっと多いと思ってました。PVが今より爆発的に多かった時は、読者側の「物珍しさ」もあったのでしょうか?そう言えばコメント主に、昔よく投稿されてた方の名前を見なくなりました。また「反論」「討論」も減ってますね。確かに今のサイトのスタイルでは、自分の投稿に何か書かれても、探すのが大変です。「匿名」さんも多いですし(笑)。
この「怪しげな自称会計士」さんは2016年スタート、もう8年目。長いですネ。OSINTもそうだけど、ここの新しい訪問者が増えればフォロワーが数万人、数十万人になってくると、ツイートは数千回、数万回に軽くなるでしょう。
しかし、立憲民主党の小西氏はブーメラン炸裂だな。こんな無様な行動を、どうしてマスコミは正しく報道しないのか。
>こんな無様な行動を、どうしてマスコミは正しく報道しないのか。
事実の如何にかかわらず、「見せ場を捏造(つく)る」のが彼らの仕事。
立憲の所業は、「マスコミ自身の悪行」にほかならないのですものね。
カズ様
「見せ場を捏造(つく)るのが彼らの仕事」=
という意味では、共産党、立憲民主党らの野党議員と、マスコミ、そしてテレビ芸人、社会評論家らは同じグループですね。とにかくやる事言う事が下衆い。考えが捻くれているし、浅い。ま、芸人・俳優などは大衆に受けてナンボですが、虚栄と見栄の世界で生きてるという意味では、私はなかなかオススメ出来ない稼業だと思います。彼らの多くも笑いを込めながら体制批判する。大半のジャーナリスト、共産党、立憲民主党と同じです。
めがねのおやじ様
彼らは後始末をしない(無責任な)論者たちですね・・。
*返信ありがとうございます。
諸事情によりnhk料金をいまだ払っている弱い一般人です。実は時代劇が好きなので、時代考証に難があってもエンターテイメントとして見続けてまいりましたが、(悪い意味で)さすがnhk。ついにやらかしてくれました。家康の最初の側室が一子をもうけたのち、女性との同性愛を理由に職を辞しました。(お城が北京城であってもよいが)プロパガンダはやめてくれという怒りのメール意見をnhkに出しました(nhk+に入っていると簡単にメール出せます)。昔、あの普及の名作「宮本武蔵」を原作としながら、背の高い活発な女優さんお通が、いくつになっても大声で威嚇的にしゃべる歌舞伎役者武蔵と江戸で同棲したのを見た時と同じ、脚本家とnhkに対する怒りがよみがえってきました。あちら側のエライさんはまだ権力にしがみついているようですね。
失礼しました。
払うのやめよう
おっしゃる通りですが、同居者である妻と娘によう言いません。独立した息子がテレビを持っていないことをもってご容赦いただければ幸いです。
そのうち家康がコオロギをおいしそうに食べるでしょうw
OSINT 活動は新聞報道やテレビ報道をコケにする楽しい娯楽という側面もあります。コンピュータの操ることがことのほか楽しいひとたち、例えば当方のような、にはたまらない魅力でしょうね。
毎度、ばかばかしいお話しを。
オールドメディア&立憲:「OSINT免許を作って、これを持っている人だけがOSINTを出来ることにしよう」
○○官庁:「是非、管轄は我が省に」
この話は、2023年3月13日時点では、笑い話である。
すみません。追加です。
そのうち、オールドメディアの入社試験にOSINTの問題が出たりして。そうなえばOSINTの専門学校で出来るかもしれません。
「士郎また会ったな」
「うぬ、海原雄山」
すみません。素朴な質問なのですが、
旧民主党時代の龍事件というのは、(地元テレビ局を例外として)大臣の脅しに屈して、オールドメディアが報道の自由を放棄した、ということでしょうか。
蛇足ですが、この地元テレビ局は、特別天然記念物に指定したほうがよいのかもしれません。
先鞭は該当局かもしれませんが、全国ネットでもきっちり流れていたように記憶しています。かばいきれんでしょうねあんなの。大手メディアはしばしば、こりゃあかん無理やでとなると急に裏切ります。
ネットでも松本ドラゴンとか言われて嗤われていましたね。
オールドメディアに従事している人達も、おそらくこのサイトを見ていると思います。彼らは自分達の状況をどう捉えているのでしょうか。主観と捏造と批判されて何を思うのでしょうか。そんな世評に反発するだけなのか、思い当たる節があって改めるのか、分かっているけど何もしないのか。
新聞は本当に14年後に無くなってしまうかもしれませんね。
新聞は、まあ、喫茶店では気が向けば読みます。読み甲斐のある評論もありますし、全くあちら側の人たちの考えをお聞きするのも一興ではあります。
時間が有り余るような境遇になって購読やめました。新聞で知る News はすでに全部知ってますものね。「新聞」ではなくて「旧聞」ですね。
朝日旧聞、産経旧聞、聖教旧聞、東京旧聞 .... こんな言い換えごっこもやってみると面白いです。
そーいえば裏地視ル浦路看ロビッチぷーさんはOSINTのネタ集め係だったそうですが…
ジャーナリストというのは"ジャーナル-ist"だと思っていましたが、どうやら"邪-analyst"の方が多いようで....
journalというと小売店の精算所にあるレジスターのジャーナルプリンタ…お客様に渡すレシートと並行して、誰が打とうと誤り含めて打ったとおりの内容を印字して巻き取るやつ…を思い浮かべます。
所謂ジャーナリストの仕事に情報の取捨選択が含まれることを否定はしませんが、「このお客は気にくわないから金額を変えてやれ」とか「この係員は仲良しだから打ち間違いを印字しないでおこう」とかやっているのでは、と邪推してしまいます。