「日本海」呼称で首尾一貫しない韓国、北朝鮮とも齟齬

「日本海ではなく東海だ」。これは国際社会における韓国の長年の主張ですが、そのように主張するわりに、韓国が「黄海」を「西海」に、「東シナ海」を「南海」に変更するよう、国際社会に働きかけている、という事実はありません。こうした首尾一貫性のなさには呆れるばかりですが、それだけではありません。北朝鮮もドイツメディアに対し、「日本海」呼称の変更を要求したそうです。それも、「朝鮮東海」への変更を、です。

米国が韓国に配慮しなくなった

日本海と呼ばれる海域を巡って、韓国が一方的に「東海」と呼んだうえで、日本や米国など世界中に向けてその呼称を用いるように強要している問題が、いわゆる日本海呼称問題です。

これを巡ってはつい先日の『韓国、米軍に「日本海」表記修正を要求=日米韓訓練で』でも取り上げたとおり、今月22日に実施された日米韓3ヵ国のミサイル防衛合同海上訓練を巡り、米軍インド太平洋司令部が「日本海で実施された」と発表した、という「事件」がありました。

韓国メディアはこれについて、「韓国軍が米国側に『日本海という表記を変更してほしい』と要請した」、などと報じていますが、米インド太平洋司令部のウェブサイトを確認しても、現時点においても明確に “Sea of Japan” 、つまり「日本海」と記載されたままです。

このあたり、米国の変化をなんとなく感じ取れるのではないでしょうか。

米国は日韓両国にとっての同盟国であり、当然、長年、日韓両国との間で軍事協力を続けてきました。当然、日韓間の「仲が悪い」(あるいは「韓国が日本を嫌っている」)ことは知っているでしょうし、韓国が「日本海」の呼称を用いることを執拗に要求していることも知っているはずです。

したがって、以前の米国であれば、日韓の対立を煽るような行動は避けたはずですし、一部の韓国メディアの報道によれば、「日本海」ではなく、「韓国と日本の間の水域」だの、「朝鮮半島東の水域」だのといった表現も使ったこともあるのだそうです。

米国にとっては「日本>韓国」

いずれにせよ、米国があえて「日本海」の呼称を使い始めたという点については、やはり地道ながらもそれなりに重要な変化であることは間違いありません。

米国にとっても、日本と韓国を比べてどちらの方が重要なパートナーであるかについては、いまや歴然としており、少なくともジョー・バイデン政権が発足して以降、日韓関係を「改善せよ」とする圧力を菅義偉総理大臣やその後継者である岸田文雄・現首相に対して加えたという事実は確認できません。

いちおう口先では「日韓・日米韓の連携が大事だ」と言いながらも、現実問題としては、米国がこの「日米韓」をどう位置付けているかについては、なんとなく想像がつくところです。

韓国の首尾一貫性のなさ

もっとも、「日本海」ではなく「東海」である、などとする韓国側の主張についても、なんだか怪しいものがあります。

たとえば折に触れ日本と対立することが多い中国やロシアでさえ、この海域を「日本海」と呼んでいることが知られています(海上保安庁ウェブサイト『日本海呼称について』等参照)。

とくに海上保安庁によると、中国でいう「東海(とうかい、トンハイ)」とは日本などでいうところの「東シナ海」を意味するのだそうです。したがって、中国が「日本海」の呼称を用いるのは、どちらかといえば実務的な必要性に応じたものといえるかもしれません。

さらには、海上保安庁も指摘する通り、バルト海を巡って、ドイツやスウェーデンでは「東海」を意味する「オストゼー」、「ウステルヒョーン」が用いられるなど、「『東海』という呼称は、多くの海域で用いられている呼称」ですので、こうした複数の海域に用いられている呼称を国際的に用いるのは不適切でしょう。

ちなみに面白いことに、韓国では朝鮮半島を取り巻く海を、自国を中心にしてその方角に応じて「西海」(黄海)、「南海」(東シナ海)、「東海」(日本海)と呼んでいるそうですが、「これらの呼称のうち、改称を主張しているのは日本海に関してだけ」なのだとか。

これで中国に対しても「黄海を西海に改称せよ」、「東シナ海を南海に改称せよ」と要求しているのならばまだ筋が通っているのですが、「日本海」に対してのみ、呼称変更を要求しているという時点で、韓国の行動には首尾一貫性がまったくありません。

そもそも南北で呼称が一致していない

ただ、韓国の首尾一貫性のなさは、それだけではありません。

韓国メディア『中央日報』(日本語版)には27日、こんな記事が掲載されていたのです。

駐独北朝鮮大使館、日本海表記の独メディアに訂正を要求

―――2023.02.27 11:09付 中央日報日本語版より

中央日報によると駐独北朝鮮大使館が「東海を日本海と表記したドイツメディア各社に対し訂正を要求していた」として、その一例として独ビルト紙が現地時間25日、北朝鮮の外交官から抗議を受けたと報じたという事例を紹介しています。

ただ、中央日報の記事では、「日本海」の呼称を何に変更するように要求したかを、記事タイトルで出していません。最も重要な要素であるにもかかわらず、です。

ちなみに中央日報は「ビルトが報じた内容」として、北朝鮮側が「日本海(Sea of Japan)」を「韓国東海(Korean East Sea)」に変更するように要求した、と述べているのですが、通常、 “Korean East Sea” は「朝鮮東海」です。北朝鮮がそう呼んでいるからです。

このあたり、韓国も北朝鮮も、海域名称から「日本」という単語を削除させることを望んでいるらしいということはよくわかるのですが、そもそもの両国の呼称が一致していないという点も興味深いところです。一致しているのは南北揃って主張している内容が支離滅裂であるという点だけです。

この点、世界広しといえども日本海を「朝鮮東海」と呼称しているのは北朝鮮くらいなものですが、敢えて指摘するならば、単なる「東海」よりも「朝鮮東海」の方が、まだ国際的にはマシでしょう(北朝鮮の肩を持つつもりはありませんが)。

いずれにせよ、「日本海呼称」問題も韓国による言いがかりという意味では氷山の一角ですが、その内情を調べてみると、じつにお寒い限りである、という点については、私たち日本人がもう少し知っておいても良い論点のひとつなのかもしれません。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. naga より:

    彼の国は日本に嫌がらせをしないと死ぬ病に侵されており、嫌がらせをしないではいられません。
    日本はその病が周囲に与える影響を受けないようにしないといけません。

  2. 匿名 より:

    なっ、こんなんだから相手にしちゃダメなんだよ。
    ムシムシ、無視が一番です。
    教えない、助けない、関わらない、のヒカン三原則を守り通そう。

  3. 名古屋の住人 より:

    文中にもありますが、中国語では下記の通りです。

    東海 : 東シナ海
    南海 : 南シナ海

    どちらも国際社会といざこざを起こしている海域であり、宗主国様はK国の主張など全く歯牙にもかけていないことでしょう。
    K国の方は宗主国様の怒りが怖くて、ただぶつぶつ言っているだけでしょうね。

    ちなみに黄海は黄海で、発音(読み方)が異なるのみです。

  4. 匿名 より:

    韓国の最終目標は、日本海を韓国海にすることだと思います。
    ただ一気に日本海→韓国海に変えるのはハードルが高いので、いったん東海に変えてから最終的に韓国海に変えようとしているのでしょう。東海→韓国海へのハードルは低いはずですから。

  5. 雪だんご より:

    「もう黙って殴られてくれる優しい日本は居なくなった」
    「何をやっても日本はもう譲歩してくれなくなった」

    これが韓国の世論の一般認識になる日が来た時、あのストレス社会はどんな弊害を
    こうむるのか是非観察してみたい物です。いわゆる失敗国家の様に延々と
    内戦を繰り返し、国家として機能しなくなるとちょっと迷惑ですが……

  6. 伊江太 より:

    時として常軌を逸しているとしか見えない隣国人の執念。日本海呼称問題なんかは、まさにその最たる例でしょうね。世界の国々が「日本海」と呼んだところで、別にその全域に日本の排他的権利が及ぶことを承認しているわけじゃない。ごり押しで「日本海(東海)」の表記を国際機関に認めさせるのに成功したところで、それで自らの権利を主張できる水域が、一平方メートルたりとも増えるわけじゃない。

    多分そんな現世利益的な話じゃないんでしょうね。もともと日本海なんて呼称は、日本にはなかった。漁師にしたって、廻船業者にしたって、能登沖だの、佐渡沖だの、それぞれの海域の地理的特性を意識した名称で呼び習わしていたはずです。「日本海」がこの国の地図。海図に掲載され始めたのは、欧米列強の活動が極東に及び、国防の緊急性が意識され始めた頃から。当時はすでに世界の海運国、海軍国は、この海域の名称を「Sea of Japan」等々と表記していたのです。だから日本海と転記したに過ぎない。その所有権を確保しようとする意図など毛頭なく、外からの脅威に備えるべき海域と意識されていたはずです。

    しかし、欧米列強はこの海に、同じく鎖国政策を採っていた朝鮮ではなく、日本の名を冠した。見るべきは日本であって、朝鮮などほとんど眼中になかった。だからこその命名。歴史などにとんと無知な大衆じゃなく、隣国でもある程度ものが分かっている人間がにとって、一番気になのは、多分その部分でしょう。歴史的事実の検証を以て、現実を覆せるはずがないことは百も承知。遣れば遣るほど惨めな気分に陥るのも分かっている。とすれば、歴史的事実など無かったことにする、お得意のウリナラ歴史ファンタジー。

    と考えれば、彼らの異様な執着心も分からんではないのですが、これ、遣れば遣るほど、理解不能の異様な民族とのレッテルを、自らの手で世界中に貼りまくっていることに。誰か気付かないもんなんでしょうかね(笑)。

    1. 匿名 より:

      ロシアの人は「これは日本列島が太平洋から切り取ってる海域だから日本海でいいだろ」と言ってたんで、同じ考え方を適用すると黄海の方を朝鮮海って呼ぶべきだってことになりそうですけど。ロシア人からしてみれば半島の左右で更に切り分けるなんてどうでも良かったんでしょうね。日本的には自国中心的にその先に朝鮮があるってことで朝鮮海とも呼んでたみたいですけど、日帝残滓である朝鮮(韓国)海でいいんだろうか?と思っちゃいますね。

  7. どみそ より:

    アメリカ、アメリカ軍が ”「東海」なる ローカルネームでは 混乱を招くため 共同作戦、救難活動は できない” と 宣言しちゃえばいいのに。
    アメリカから見放された韓国は どこまで空威張りができることか。

  8. がみ より:

    日本じゃなくても外国で地球儀や図書館の書籍にシール張るのは犯罪です。

  9. 匿名 より:

    「南海」(東シナ海、日本海)、「東海」(日本海、東シナ海)ですね。日本海・東シナ海と南海・東海とじゃ区切りが違うんで。

  10. より:

    役所の窓口で、子供の名前でもめてるバカ夫婦ですね。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告