政府は中露だけでなく財務省の偽情報対策も講じるべき

松野博一官房長官は25日午前の記者会見で、ロシアや中国が仕掛ける情報戦に対応するため、「情報の集約・分析、対外発信の強化、政府外の機関との連携強化などのための新たな体制」を政府内に整備する方針を明らかにしたそうです。ただ、悪質な偽情報を拡散しようとしているのは、なにも「ロシアと中国」に限った話ではありません。むしろ「国の借金論」という悪質なウソをつき、日本経済の破壊活動にいそしむ勢力の駆除が必要ではないでしょうか?

国の借金論という悪質なウソ

最近でこそ、「国の借金」論という、財務省が長年仕掛けてきたウソがバレ始めました。

この「国の借金」論とは、わかりやすくいえば、「今の日本には国の借金が1200兆円以上もある!」、「国民1人あたりで換算すれば約1000万円だ!」、「だから日本の財政は危機的な状況だ!」、「日本は財政再建をしなければならない!」といった主張です。

これについては拙著『数字でみる「強い」日本経済』(ビジネス社)などでも繰り返し説明したとおり、そもそもの事実認識自体に大きな誤りがありますが、そのもっとも大きな点は、「複式簿記と単式簿記の違いを理解しなければならない」というものです。

負債側だけで議論しても意味はない

これについて考えるうえで重要なポイントはいくつかあるのですが、そのひとつは、「資産」と「負債」の概念です。誰かの債務を議論する際には、負債の絶対額だけで議論をしてもあまり意味がありません。借金を負っていたとしても、資産を売って返すことができることがあるからです。

住宅を購入するときに借りる住宅ローンを例に考えてみましょう。ここで住宅ローンは「負債」ですが、住宅は「資産」であり、その人が負っている住宅ローンの絶対額だけで、何か問題があるという話にはなりません。

たとえば年収が500万円の現在30歳の人が3000万円の借金を背負っていたとしても、それが期間30年・年利1%・毎月元利均等弁済型の住宅ローンであれば、一般にその人は、それだけで「多重債務者」とみなされることはありません。

この条件だと、年間のローンの返済負担(元利払い額)は120万円弱であり、年収の500万円に比べて十分に低い水準です。また、この人が居住している住宅には住宅ローンの貸主(金融機関など)の第一抵当権が設定され、いざとなれば住宅を売ってローンを返すということもできます。

また、ローンの債務者が不幸にして疾病のために働けなくなった場合や亡くなった場合は、たいていの場合は住宅ローンに伴う団体信用生命保険により残債が免除されますし、火災などで住宅の価値が滅失した場合も、保険の条件によってはきちんとカバーされます。

こうした状況から、たとえば政治経済評論家の方が「年収500万円の人が3000万円の住宅ローンを負っているのは問題だ」などと主張したとしても、正直、社会常識を含め、「もうちょっと勉強したらどうです?」とツッコミを受けたとしても仕方がないかもしれません。

そもそも政府には不要な資産が多すぎる

それなのに、「国の借金は問題だ」などと主張する人がまかり通っているのは、理解に苦しむ点です。

もし政府が「借金」を返さなければならないのだとしたら、まずは昨年末時点で1.2兆ドル(1ドル=130円換算で約156兆円)に達する外貨準備、2022年9月末時点で124兆円にも達する財政融資資金の貸出金、政府が保有する58兆円規模の持分などを現金化すべきでしょう。

実際、これら3項目だけで「国の借金」とやらは340兆円圧縮できますが、それだけではありません。

たとえばNHKや民放に、極めて安い値段で使わせている電波使用料を引き上げるためにも、電波オークションを直ちに実施すべきでしょうし、国民の9割が「受信料は高い」と指摘しているNHKに対しても、業務を縮小したうえで1兆円を超える金融資産などを国庫返納させるべきでしょう。

つまり、「埋蔵金」を本気で探そうとすれば、いくらでも見つかるのであり、それをしないで資産側を無視し、無才側だけで「国の借金」を議論する姿勢自体、財務省の「邪悪な意図」の存在を明確に示唆しています。

結局のところ、財務省は「税率の最大化」、「新税の創設」だけを目的とした、一種の反日モンスター組織と化しているのです。やはり、政治の力で強制的に止める必要があるでしょう。

もっとも、『財政破綻論は「破綻論者」のロジックこそ破綻している』あたりでも指摘したとおり、そもそも論として国家は債務を全額弁済する必要などありません。個人と異なり、国家は永続するからです。

つまり、そもそも論として、国家財政を企業や個人の借金と同一視している時点で、「財政破綻論」のロジック自体が破綻しているのであって、「国の借金を返すために増税しなければならない」だの、「緊縮財政が必要」だのといった主張自体、理論性も何もありません。

そして、ネットの普及のおかげで、私たち一般人であっても、「国の借金論」の間違いに気づくという事例が増えてきました。もちろん、ネット上では財務省の関係者によるものと思しき「国の借金」プロパガンダを見かけることも多いのですが、それ以上に、一般個人がそうした主張の誤りに騙されなくなっているのです。

松野長官「政府全体で偽情報に対応」

こうしたなかで、どうも評価に苦しむ記事を発見しました。

官房長官「政府全体で偽情報対応」 戦略的コミュニケーション室新設へ

―――2023/1/25 13:25付 産経ニュースより

産経によると、松野博一官房長官は25日午前の記者会見で、「情報の集約・分析、対外発信の強化、政府外の機関との連携強化などのための新たな体制を」政府内に整備する方針を明らかにしたのだそうです。

その目的は、偽情報の拡散など、ロシアや中国が仕掛ける情報戦に対応するため、などとしているのですが、さて、これをどう見るべきでしょうか。

正直なところ、外国勢力による偽情報の流布・拡散という意味では、「ロシアや中国」への対応もたしかに重要ではあるのですが、それよりもっと重要な、「日本政府内に巣くうシロアリ」からの偽情報への対応ではないでしょうか?

ちなみに財務省は「国の借金論」という極めて悪質な偽情報を拡散していることは間違いないのですが、偽情報を発信しているのは財務省だけではありません。日韓関係を巡って、韓国が主張する自称元徴用工問題などに対して毅然と反論せず、それどころか韓国に譲歩しようとしている外務省なども、その典型例でしょう。

(※なお、官僚組織をシロアリにたとえてしまったことについては、お詫び申し上げます。シロアリの皆さん、大変申し訳ありませんでした。)

産経によると、政府は来年4月をめどに、内閣官房に「戦略コミュニケーション室(仮称)」を新設する方向で検討を進めているのだそうです。「はたしてそれまでの間、岸田文雄首相が在任しているか」、という問題点については、この際脇に置くとしましょう。

松野長官は「偽情報の拡散は、普遍的価値に対する脅威であるのみならず、安全保障上も悪影響をもたらし得るものだ」と述べたそうですが、これはまったくその通りです。

そして、こうした偽情報を拡散しようとしている者たちが、ロシアや中国に限られるものではないという点については、どれだけ強調してもし過ぎではないと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. んん より:

    田吾作が消費税を安定財源と呼んでましたが
    そりゃ違うだろ
    消費税が上がれば生活に必要な物だけを買うようになり
    余分な出費は避ける
    蓄財傾向が高まり、生活にゆとりと豊さを与える企業はダメージを受ける
    内需市場が萎めば株価が下がり
    あらら、積み立てニーサは大損こいちまう
    田吾作は騙されちゃってるのか、国民生活に無知なのか
    はたまた確信犯なのか

  2. 宇宙戦士バルディオス より:

    「財政健全化」「子孫にツケを残さない」は、さながら現代における統帥権の独立です。国会はおろか、内閣ですら表立って逆らえなくなっている。
     このままでは、昔陸軍、今財務省です。官僚組織の暴走で、国の運命が狂わされる。

  3. 古いほうの愛読者 より:

    財務省が偽情報を拡散している,というより,法学部卒の人達は経済の勉強をあまりしていないので,財政の理論が理解できてないだけだと思います。優秀な人が財務省に行かなくなりましたし。

  4. 匿名 より:

    どうも幾つかの論点が含まれているように思います。

    ①まず、日本国債によって、財政破綻をするか?
    財政破綻をするかという点を、デフォルトするかという点に置きなおせば、デフォルトはしないでしょう。ただし、『デフォルトはしない』というのと『債券市場に混乱が生じない』というのは別だとも思います。これは、国債をだれが保有しているのかにつきます。なぜならば、債券市場に大きな混乱が生じるとすれば、債券価格の急激な低下、最も考えられる可能性は外国金融機関が債券を投げ売りする場合だと考えられるためです。(とはいえ、日本金融機関が買い入れれば短期的に混乱は収まります。ただし、現在の日本金融機関にどれだけの体力があるか…)(もちろん、物価の安定と金融システムの安定が日銀マンデートなので、混乱状態でも債券市場の安定性を死守するのが日銀の仕事と言ってしまえば、何とも言えないのですが…)

    ②誰が国債を保有しているのか?
    昔は日本企業(金融機関)が多くを占めていました。しかし、現在では、外国が徐々に多くなりつつあります。つまり、投げ売りをされた場合のインパクトは徐々に大きくなりつつあります。
    https://www.nikkei.com/article/DGXLASGC17H19_T21C15A2NN1000/

    ③なぜ財務省は財政破綻論を言っているのか。
    分かりやすいからだと思います。
    まず、歳出と歳入の収支があっていないのは事実としてあって、そのうえで、いずれ収支を合わせるということを第1に考えた際に、経済を知らない国民に訴求しやすいのは『財政破綻論』に違いありません。ここで『BSが…』とか『デフォルトが…』と言っても、誰も興味を持ちませんし、仕方ないですから。

    ④『官房長官「政府全体で偽情報対応」 戦略的コミュニケーション室新設へ』について
    国防もあるでしょうが、一つには新総裁に向けて日銀の2パーセント目標もあると思います。金融政策については、特にコミュニケーションがなければ『予言の自己実現(2%目標をみんなが信じることで2%へ収斂する。)』ことが起きませんから。やはり複雑怪奇化した金融政策で、2%!!と叫んでも、国民側からは『??』しか起きません。

  5. KN より:

    >政府全体で偽情報などに効果的に対応することを目指していく

    つまり、行政が偽情報を発信することは想定していないということ?
    例のファクトチェックセンター(自称)にがんっばってほしいところですね。

  6. 呆け老人 より:

    >政府は中露だけでなく財務省の偽情報対策も講じるべき

     そりゃ無理な相談でしょう!!!元々政府には財務省が偽情報を出していることを理解できず、言いなりになっている始末でしょう。特に岸田総理のように経済については全くの素人では、財務省に言われても偽情報だと理解できないでしょう。さりとて経済の専門家を補佐官に登用しても説明されたことが理解できないのかも知れず、救いようが無いですね。

     安倍元総理や菅元総理のように経済の専門家が付いていれば財務省の主張は殆ど全部偽情報と言うことを教われ、その内容も理解できていたようなので、財務省に騙されることはなかったようですが。

     馬鹿は死ななきゃ直らな~~~い。
     現代を予想しての教訓かどうか知りませんが、廣沢虎三師匠がよく言われていました。名言ですな。

  7. 財務省は昔から国の赤字ばかり言い立てています。
    それが本当ならとっくに日本経済は破綻しているでしょう。
    国の負債だけしか言わない財務省、それなら国の資産はどうなっている?
    元財務相官僚の高橋洋一さんなどがさんざん言っていますので、最近は少し国民も目が覚めてきたようです。国は莫大な資産を持っています。さまざまな既得権や意味不明の預貯金、いわゆる埋蔵金を全て処分する事から国の立て直しを進めるべきです。岸田首相はバカですから理論もデータも頭にありません。
    マクロ経済理論が世界の趨勢ですが、それに反対するのは財務省です。政治家でさえ手を出せない財務省を、いったん解体か分割して巨大な権力構造を見直すのが政治家の役割だと思います。
    こんな非常時に野党は一体何をしているのでしょうか。

  8. 匿名 より:

    もう日本はとっくに財務官僚を頭とする官僚帝国になっている気がします。
    政治家も知事も官僚あがりばかりですしね。
    NHKも財務省の天下りが会長になるようですから、ぜったいに改革なんかしないでしょう。
    もちろん官僚帝国を支えるのは税金です。際限なく搾り取られます。
    税金を上げたら少子化はもっと加速するでしょう。若者の皆さんは将来に見切りをつけて
    いるから子供なんか作らない。子供が不幸になるのが目に見えているから。
    そのうち、日本の社会インフラを回すのはほとんど中国人になるでしょう。
    日本人は駆逐され、中国人に入れ替わります。
    防衛予算の強化?防衛力なんかいりませんよ。fade ourselves ですから。

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