アルゼンチンがブラジルと共通通貨創設に向け協議開始

当ウェブサイトではなにかとおなじみの「あの国」が、共通通貨を創設するという構想が出てきたようです。共同通信によると、アルゼンチンがブラジルと共通通貨の創設などの協議に入るようです。対外債務を何度もデフォルトさせておきながら「共通通貨」というのも、なかなかに面黒い話です。ちなみに両国ともにG20参加国ですが、G20という組織自体もじつに怪しいところです。

ちょっとした「ネタ」でしょうか。

共同通信によると、南米のブラジルとアルゼンチンが共通通貨の創設を巡って協議する方針を明らかにしたのだそうです。

南米2国が共通通貨協議へ ブラジルとアルゼンチン

―――2023/1/23 14:52付 産経ニュースより【共同通信配信】

共同通信によると、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領とアルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は23日までにアルゼンチンのメディア『ペルフィル』に寄稿し、「経済の統合強化」として、「金融や貿易に使える南米の共通通貨の創設」について「議論を進めることを決めた」のだそうです。

なんだか、よくわかりません。

共通通貨といえばユーロが有名ですが、ユーロといえば、正直、経済統合の典型的な失敗事例でもあります。財政統合がなされていないなかで通貨だけを統合してしまうと、「国債のデフォルト」が現実的な脅威に浮上するからです。

普段から当ウェブサイトで指摘する通り、国債がデフォルトするには3つの要件を同時に満たす必要があります。①国内投資家、②海外投資家がいずれも自国の国債を買ってくれず、これに加えて③中央銀行も国債を引き受けてくれない、という状況が生じなければなりません。これが、「国債デフォルトの3要件」です。

国債デフォルトの3要件
  • ①国内投資家が国債を引き受けてくれないこと
  • ②海外投資家が国債を引き受けてくれないこと
  • ③中央銀行が国債を引き受けてくれないこと

(【出所】著者作成)

日本の場合、日本国債は全額円建てで発行されているため、外貨建てででも国債を発行しない限り、「3要件」がすべて充足されることは、絶対にありません。

しかし、ユーロ圏の場合は、その国の中央政府が国債を引き受けるという「最後のバックストップ」が機能しません。ユーロ圏各国の中央銀行(たとえばギリシャ中央銀行)は、通貨・ユーロを発行する権限を持っていないからです。

それに、アルゼンチンといえば、外貨建ての国債を発行し、何度かデフォルトを発生させている国でもあります。

有名どころでいえば2001年12月に円建てのものを含めた外貨建ての対外債務の支払い猶予を宣言した事件があります。

このときには同国政府が債務再編を実施したものの、この債務再編に同意しない債券保有者がアルゼンチン政府を相手取って米国で裁判を起こし、アルゼンチン政府が敗訴。2014年7月には再度デフォルトに陥っています。

こうしたアルゼンチン政府の行動自体、世界の金融専門家からは懐疑の目で見られており、基本的に同国が今後、大々的に外貨建の債券を発行するのは難しいでしょう。

そのアルゼンチンは今月、中国との人民元建ての通貨スワップを発動すると発表しましたが(『アルゼンチンが新たな「人民元建てのスワップ」を発動』等参照)、まさに「貧すれば鈍す」の典型例でしょう。

共同通信によると、ブラジル、アルゼンチンの両国大統領は共通通貨の創設とともに、両国がパラグアイ、ウルグアイの4ヵ国で作る南部共同市場(メルコスル)の強化も訴えたのだそうですが、正直、対外債務を簡単にデフォルトさせるような国との共通通貨というのも、なかなかに大変な話です。

ちなみにアルゼンチンはブラジルとともにG20構成国ですが、ゴールドマン・サックスが作り出した「BRICs」なる用語に代表される4ヵ国(中国、ロシア、インド、ブラジル)には含まれていません(どうでも良い話ですが、末尾の「S」には南アフリカが含まれるとの説もあります)。

いずれにせよ、対外債務ひとつまともに払えない国がG20を構成しているというのも、なかなかに興味深い話と言わざるを得ないのです。

読者コメント一覧

  1. 農民 より:

     アルゼンチンを加えて「BRICAs(ブリカス)」を創設し、イギリスに面倒見てもらうとか。

  2. 古いのうほ愛読者 より:

    アルゼンチンとブラジルが共通通貨,という話は,実現可能性を含めて,ちっと私の理解の範囲を超えていてコメントできまん。うまくいく気がしないので。
    後半の「国債のデフォルト」の定義ですが,アルゼンチンの場合は,過去に複数回「返済不能」になっていますので,①②③の定義とは異なる範疇で考えたほうがいいと思います。元本が返ってこない可能性の高いジャンク債ゆえに高利回りなので,そういうジャンク債を商売にする投資家が,それなりに買ってくれます。

  3. 引きこもり中年 より:

    完全なる妄想ですが、アルゼンチンとブラジルが組んで、輸出農産物本位制の共通通貨を発行した場合、この通貨は(食料危機が懸念される)国との間で、通用するのではないでしょうか。

  4. sqsq より:

    ブラジルにとって何のメリットがあるんだろう?

    1. 隊長 より:

      ブラジルとアルゼンチンに共通するのは、農産物と鉱物資源の輸出国であることです。
      資源取引はドル建ですから、両国には、ドルによる米国の通貨覇権のなか、先物取引を道具に使い、自国の資源を安く買い叩かれているという不満があるように思います。
      そこで、自国の資源を販売するにあたり、新通貨の利用を強制することで、利益を得ようとする狙いがあるものと考えます。
      ただ米国が指をくわえて黙っているとも思えません。何がしか仕掛けてくると思います。

  5. 世相マンボウ* より:

    ブラジルもアルゼンチンも
    ゆかりが深く日本との関係も良好なので
    ちょっと心配してしまいます。

    G20の中の同じ脆弱通貨国グループでも
    思い上がりの塊で他国に金銭タカル
    どっかの近くの半島さんとかには
    いささかも心配はしてあげませんが。(笑)

  6. 福岡在住者 より:

    ブラジル!デフォルトする気、満々ですね(笑) それやったら国民は、一時的に大問題なるのですが・・・。 アルゼンチンとかは町中では米ドル流通と聞きましたが(正確な情報ではありません)。

    持ち上げられて、サッカーWカップやらオリンピックをやったツケがジワジワやってきていますね。 ガンバレ!ブラジル。 「金つぎ込んだのに、ここはイマイチなんだよな!」てのが、世界的大金持ちの本音と思います。

    ガンバレ!ブラジルですね。 

  7. カズ より:

    名前を揃えただけじゃダメなんです。財布の中身も併せないとですね。
    共に身も心も捧げれば、愛の真心。依存をしたいだけなら、恋の下心。

    得てして期待の大きさと被害者意識の大きさは比例するものなのかと。

  8. レッドバロン より:

    アルゼンチンといえば、アニメにもなった「母を訪ねて三千里」で主人公マルコの母の出稼ぎ先がアルゼンチンなんですよね。
    母を訪ねて三千里の時代、19世紀末から20世紀
    初頭は富裕国、先進国でデフォルトの常習犯なイメージとは無縁なのに、どうしてこうなった?

    日本もそうならなきゃいいんですが。

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