ゼレンスキー大統領の電撃的な訪米は、ウクライナの戦局を大きく変えるのでしょうか。報道等によれば、ゼレンスキー氏は鉄道と米政府専用機を乗り継いで、現地時間21日正午にワシントンに到着したそうです。そのうえでゼレンスキー氏はホワイトハウスでジョー・バイデン大統領と会談し、夜には米議会で上下両院合同演説に臨みました。そのゼレンスキー氏の演説を直接聴いてみると、やはり大変に上手だと思わざるを得ません。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は現地時間の21日、電撃的に米国を訪問しました。
ブルームバーグの次の記事によると、ゼレンスキー氏の訪米は、さまざまな意味で異例だったようです。
ゼレンスキー氏、厳戒の陸路と空路で訪米-侵攻後初の外国訪問
―――2022年12月22日 9:41 JST付 Bloombergより
ロシアによる戦闘が続くウクライナの上空を避けるため、ゼレンスキー氏はまず鉄道でポーランド入りし、国境の街・プシェミシルに到達。
そこから近郊の空港に移動し、米政府専用機でワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地に現地時間正午ごろに到着したのだとか。
また、米国に到達したのちの行動については、ワシントンポストが動画サイト『YouTube』にアップロードしている次の動画が参考になります(ただし、動画は4時間38分55秒と大変に長いものです)。
これによると、ゼレンスキー氏はホワイトハウスでジョー・バイデン米大統領と会談し、その後はバイデン大統領との共同記者会見に臨み、さらにはキャピトル・ヒル(米議会)に場を移し、ナンシー・ペロシ米下院議長との共同記者会見後、上下両院合同演説に臨む、というスケジュールで動いたようです。
ちなみにロシアによるウクライナ侵攻の開始以来、ゼレンスキー大統領が国を離れるのは初めてだそうですが、やはりワシントンで膝を突き合わせてバイデン大統領と会談したことは「意義深いこと」だったようです。
そのゼレンスキー氏は「トレードマーク」となった例のカーキ色のセーターを着用し、議会演説でも「電気がないなかでも我々はクリスマスを祝う」などとしたうえで、米国の財政支援にも言及し、次のような趣旨の内容を述べました(動画の4:06:48~)。
「財政支援は重要だ。私はあなた方に対し、これまでの財政支援に感謝の意を述べたい。ただ、あなた方がわが国に支援しているカネは慈善事業ではない。世界の安全保障と民主主義に対する最も責任ある投資だ」。
いわば、ゼレンスキー氏はウクライナが「独立のために戦い続けている」などとしたうえで、米国のさらなる財政支援が必要だと述べた格好ですが、演説の最後に両院議長(ペロシ下院議長、カマラ・ハリス副大統領=上院議長)がゼレンスキー大統領から受け取ったウクライナの国旗を掲げる一幕も見られました。
締めの言葉は、こんな具合です。
“May God bless the United States of America, merry Christmas, and a happy VICTORIUS new year”.
もちろん、今回のゼレンスキー氏の訪米で米議会がウクライナに対するさらなる財政支援で合意するのかどうかはよくわかりませんし、このタイミングでの訪米が、米国による財政支援の拡大とウクライナの軍事的勝利につながるのかについては、見極めが必要です。
ただ、著者自身の印象で申し上げれば、ゼレンスキー氏は演説が大変に上手だと思います。
たどたどしいながらもわかりやすい英語を使い、「ウクライナは負けない」、「これは民主主義を守るための戦いだ」、といった具合に、米国をはじめとする西側諸国を味方につける発言の数々。最大の支援国である米国の議会人、さらに米国市民の心には、深く刺さったのではないでしょうか。
いずれにせよ、ウクライナの人々にとって平穏な日々が1日も早く訪れるよう祈りたいと思う次第です。
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議会演説はすばらしかったです。Youtube がライブ中継が始まったと告げて来たので気が付きました。苛烈な戦闘が続くバクムト最前線から託されたという国旗を議長に手渡したあと言葉を継ぎ足して「Just one thing if I can」と演説を結ぶくだりを当方は少なくとも5回は繰り返して視聴しましたが、「でかした」「よく言った」とそのたび喝采を上げたものでした。
ゼレンスキー大統領が搭乗しているとされる SAM910 便の航跡はずっと見てました。着陸時刻が迫ってきて唐突に追加支援額の報道がアメリカから出ました。額は最後まで決まってなかったのだろうと当方は判断しています。
ゼレンスキー大統領の身の軽さ、
頭の良さ、回転の早さ、柔軟性、
何より
覚悟を決めた整端な顔つき、
海外ドラマの主役のようなオーラ、
人は土壇場で
本性があらわになると言われますが、
この人は
近代史に残る人物になりますね
間違いなく。
確か前歴はコメディアンだったはず。
立派な将器ではないですか。
ロシアの侵略当初に
日本の偏向マスコミや佐藤優たちは
ロシアの意を汲んでしきりと
「コメディアン」を強調してました。
ただ彼は、
キエフ国立大学で法学学位を取得しており
その点で、薄汚れたKGBスパイ出身の
思い上がりがウラメニデールプーチンなどとは
そもそもが違うのです(笑)
コメディアンとして人気を博して、さらにビジネスマンとして成功して大統領になったのでは。
話術があって経営センスもあると。
世の中にどう見せるかを十分に心得ている。
褒め言葉として言うのですが、なまなかない「食えない人物」と思います。
「財政支援は重要だ。私はあなた方に対し、これまでの財政支援に感謝の意を述べたい。ただ、あなた方がわが国に支援しているカネは慈善事業ではない。世界の安全保障と民主主義に対する最も責任ある投資だ」
さすがゼレンスキー大統領、上手いこと言いますね。
アメリカの支援に最大限の感謝の意を示しつつも、アメリカに対し、「これはアメリカにとって他人事ではないんですよ、アメリカとしての主体的関与をこれからもお願いしますね」と、しっかり主張していますね。
支援する者と支援される者という関係ではなく、共有する価値を力を合わせて守り抜く対等な関係であるというふうに、米宇の関係についてしっかりクギを刺しているところも、ゼレンスキー大統領の胆力を感じます。
自分が以前、仕事で仕えたことがあるとっても偉い人が、「安全対策はコストじゃない、投資なんだよ」と語っていたことがあって、上手いこと言うなぁとずっと覚えてたんですけど、今回、ゼレンスキー大統領が「アメリカの税制支援は投資なんだ」と語るのを目にして、「ここでも投資と言ってる人がいる」と気になって、この発言を何度か読み返してみた次第です。
もちろん、安全対策とウクライナ支援は全く別物ではあるんですけど、敢えて共通点を見出すとすれば、どちらも、やむを得ずとか仕方なくというスタンスで行うものではなく、むしろ、前向きな意識を持って主体的に行う必要があるものであり、また、行う価値があるものなのだ、というところでしょうか。
ウクライナに幸あれと切に願います。
こういう指導者を見ていると、どこぞの国のそれなりに影響力がある所謂著名人とか言われている人たちが、ロシアの侵略当初に、とっとと降伏して国民の生命を守れとか言っていたことが、いかに幼稚で愚かなことか、それこそ、どこぞの人みたいに日本人として恥ずかしいと思いましたね。
アンジェイ・ドゥダ ポーランド大統領に注目したいと考えます。
ロシアを成功裏に退けたあと、破壊された国土と町の復興を助け安全保障の礎を作るのは隣の大国ポーランドであることは間違いありません。ウクライナ議場での熱血演説はすばらしかったです。
私は英語が苦手なので、字幕入りのものを探して見て見ました。
ゼレンスキー大統領は、やはり「眼」だなと思いました。
英語は流暢ではないですし原稿を指で追っていましたが、確実に言葉を綴ることが大事な場面であると思っていたからなのでしょうか。
時に原稿から目を離し聴衆に向ける真剣な眼差しで、むしろそれらが真摯さの表れとして見えました。
誰にでもできることではないですね。