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韓国紙に掲載された「インド太平洋」構想がどこか奇妙

「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」は、故・安倍晋三総理が私たち日本人に残してくれた、大きな遺産のひとつです。このFOIPがあるからこそ、日本外交は「近隣国重視型」から「価値重視型」にかじを切ることができたからです。こうしたなか、韓国メディアに昨日、「韓国にもインド太平洋戦略が必要だ」、などと主張する記事が掲載されましたが、やはり内容はどこか奇妙なのです。

日韓関係ではない韓国論

日韓諸懸案と二重の不法行為

韓国といえば、私たち日本人にとっては「厄介な隣国」、「歴史問題をしつこく持ち出してくる相手国」、といった文脈で語られることが多い国です。

この点、『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』を含め、当ウェブサイトではこれまで何度も繰り返し論じてきたとおり、日韓諸懸案の正体は「韓国の日本に対する二重の不法行為」と定義づけることができるでしょう。

世間では少し勘違いしている人が多いようですが、日韓諸懸案とは韓国の日本に対する「二重の不法行為」の問題です。解決する全責任は、韓国側にあります。そして、日本が議論しなければならないことは、「どうやって韓国に譲歩して折り合いをつけるか」、ではありません。「約束を守らない韓国を、どうやって罰するか」、です。本稿では「総論」として、これまでに当ウェブサイトで触れてきた「韓国の対日不法行為」の数々を、大ざっぱに振り返っておきます。韓国の対日不法行為、尹錫悦政権発足後に「風化」していないか?2022年5月1...
【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任 - 新宿会計士の政治経済評論

ここで「二重の不法行為」とは、「①韓国がウソ、捏造、歪曲に基づいて日本の名誉と尊厳を貶め」、「②法的に根拠がないこと(たとえば謝罪や賠償など)を要求している」という問題のことです。

日韓諸懸案を巡る韓国の「二重の不法行為」とは:
  • ①韓国側が主張する「被害」の多くは韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
  • ②韓国側が日本に対して要求している謝罪や賠償の多くは法的根拠がないか、何らかの国際法違反・条約違反・合意違反などを伴っている

(【出所】著者作成)

特殊なのは「日韓関係」ではなく「韓国」

ちなみに韓国観察者である鈴置高史氏も、日韓関係については「日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ」と繰り返し力説してきました。たとえば鈴置氏が今年6月に刊行した『韓国民主政治の自壊』(新潮新書)の165ページ目には、こんな記述があります

韓国を相手にしなくなったのは日本だけではない。米国も北朝鮮も、そして中国からもまともに扱われなくなった。自らの力を過信した傲慢な外交で、孤立の一途をたどったのだ。日韓関係が悪化したのも『日韓関係の特殊性』からではない。『韓国の特殊性』が原因なのだ」。

この記述、何度でも読み返しておきたいものです。というのも、日韓関係がうまくいかない理由を「日韓関係が特殊だからだ」としたうえで、「日本がほんの少し、韓国に対して誠意を示すことが必要だ」、などと主張する人は、(自称「保守」論客を含めて)枚挙にいとまがないからです。

当たり前の話ですが、国際法を守ることは国家としての基本であり、相手国に対し「国際法から逸脱すること」を前提とした譲歩を要求すること自体、国際社会の常識から著しく背く行為であり、現代主権国家としてはありえない話です。

そして、「国力が上がれば約束を破っても良い」、といった考え方自体、現代国際社会では容認されないどころか、むしろ排除されるべきものでもあります。

それも、かつての世界最貧国レベルの時代ならばともかく、現在の韓国は、いちおうはGDPで世界10位圏入りをうかがうほどに経済発展したわけですし、2021年には英国で開かれたG7サミットで、インド、豪州、南アフリカと並んでゲスト国として招待された実績もあります。

そんな国が、ありもしない与太話をでっちあげ、過去に日本と取り交わした重要な国際条約や国家間合意を堂々と破っていること自体、どうも多くの日本人にとっては理解の範疇を超えていますし、また、知れば知るほどこうした違和感は強くなっていくのです。

韓国を読むときには「中国」「米国」という要素が必須

ただ、日本で「韓国」といえば、どうしても「日韓関係」を連想する人が多いことは間違いないのですが、それと同時に日韓関係の隘路に嵌ってしまうと、情勢を読み誤ってしまうこともまた間違いありません。

こうしたなか、先ほども名前が出てきた鈴置氏の功績のひとつは、ともすれば「日韓関係論」に矮小化されてしまいがちな韓国論に、「中国」「米国」という視点を持ち込んだことにあります。一見すると不可解な韓国の行動の数々も、この2つの視点を持ち込むことで、じつによく整理することができるのです。

そもそも論として、日清戦争からすでに100年以上が経っているにも関わらず、韓国という国は、中国に対してはあまり強いことを主張することができない国であるようです。歴史的に見て朝鮮半島は中国の属国だったという事情でもあるのでしょうか?

ただ、その韓国は、1910年から45年までの「日帝36年の支配」(※厳密には「35年」ですが、ここでは敢えて韓国流に「36年」と称します)が終焉するや否や、38度線南部が米国の軍政下に置かれ、1948年に米国から「大韓民国」として独立しました。

そして、1950年に北朝鮮が韓国に侵攻して朝鮮戦争がはじまると、いったんは「大韓民国」の領域がプサン周辺にまで押しやられ、朝鮮半島が北朝鮮によって赤化統一されそうになったものの、米軍を主体とする国連軍が介入するなどして戦線が押し戻され、結局は38度線付近で膠着した、という経緯があります。

つまり、結果論としてみれば、「大韓民国」は米国によって独立させられ、米国によって北朝鮮(や中国の義勇軍など)から独立を守ってもらったという経緯があるのであり、現在でも在韓米軍は韓国をしっかりと守ってくれています。

それなのに、韓国は米国にとっても重要な同盟国であるはずの日本を「歴史問題」で苛立たせ、日米双方にとっての脅威である北朝鮮、中国などに対しては毅然とした対応を取らない国でもあります。

韓国の「中国恐怖症」

しかも、韓国の中国に対する弱腰(あるいは「中国恐怖症」)は、歴代政権に共通しているものでもあります。

たとえば韓国は文在寅(ぶん・ざいいん)政権時代に、いわゆる「三不の誓い」――▼高高度ミサイル防衛システム(THAAD)を追加配備しない、▼日米韓3ヵ国連携を同盟に発展させない、▼米国のミサイル防衛システムに参加しない――を中国に対して立てていますが、それだけではありません。

文在寅政権とは違って「保守政権だ」との触れ込みで発足した尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権ですら、8月に韓国を訪問したナンシー・ペロシ下院議長に対し、大統領が会談に応じないという無礼を働きました。これを鈴置氏は、「尹錫悦政権が米中等距離外交に舵を切った」ものだと評していますが、まったくそのとおりでしょう。

ナンシー・ペロシ米下院議長の訪韓を巡り、鈴置高史氏の待望の論考が出てきました。尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領はペロシ氏との面談を「謝絶」したのですが、これが米国側の怒りを買う一方、中国からは「よくやった」と褒めそやされているのです。こうした議論を読んで改めて思い出すのは、鈴置氏の6月の新刊著『韓国民主政治の自壊』でも見られた、「自由・民主主義の価値を韓国は日本と共有していない」とする指摘です。「中韓連帯意識」を理解できない日本韓国観察者の鈴置高史氏といえば、今年6月に『韓国民主政治の自壊』...
鈴置論考「尹錫悦政権は米中等距離外交に舵を切った」 - 新宿会計士の政治経済評論

もちろん、どんな国にとっても、同盟関係はお互いにメリットがあるからこそ成立するものです。

実際、米国にとって米韓同盟は中国やロシアを牽制するという点において、地理的にはそれなりのメリットがあることは事実でしょう。たとえば烏山(うさん)空軍基地は、中国の首都・北京から直線距離で1000㎞ほどの距離にあり、非常に便利でもあります。

ただ、米国から見れば、同盟関係にあり、高い駐留コストを負担してやっている相手国である韓国が、米中等距離外交を行っていることは、非常に強い不満を招く要因でもあります。米国に防衛コストを負担させておきながら、米中間であいまいな態度を取り続ける韓国は、俗な言い方をすれば「恩知らず」でもあるからです。

このあたり、いくら韓国が嫌いだったとしても、ただちに米韓同盟を解消することは難しいこともまた事実でしょうし、これに加えて在韓米軍は在日米軍などとセットで機能することが想定されており、日米韓3ヵ国の連携はどうしても必要です。

著者自身は「米韓同盟はいずれ続けられなくなる瞬間が到来する」と考えているのですが、そのような場合には、必然的に日米韓3ヵ国連携も完全に機能しなくなるはずです。

したがって、日本政府としては、日韓関係が破綻するような事態が到来することは可能な限り先送りしつつも、もしそうなってしまったとしても困らないよう、今のうちに日米同盟を軸に、豪州、インド、英国、フランス、カナダ、台湾、ASEAN諸国といった具合に、同盟を重層化しておくことが必要だと考えている次第です。

韓国論客が「インド太平洋」と言い出す

リセットコリア委員が「インド太平洋」に言及

もっとも、「米国を取るか、中国を取るか」を巡っては、韓国国内でもさまざまな議論が交わされていることは事実です。その典型例でしょうか、元駐日大使で「リセットコリア」の委員でもある辛珏秀(しん・かくしゅう)氏が昨日、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、こんな記事を寄稿しています。

【韓半島平和ウォッチ】激動の世界秩序、インド太平洋に韓国の未来ある(1)

―――2022.10.19 10:43付 中央日報日本語版より

【韓半島平和ウォッチ】激動の世界秩序、インド太平洋に韓国の未来ある(2)

―――2022.10.19 10:43付 中央日報日本語版より

記事タイトルでも何となく想像がつくとおり、辛珏秀氏はこの記事の中で、韓国が「独自のインド太平洋戦略」を打ち立てるべきだ、と主張しています。そして、この手の記事にしては珍しく、「インド太平洋」という概念について、やや不正確ながらも、いちおうは「日本が起源だ」という点にも触れているのです。

辛珏秀氏は、記事冒頭でこう述べます。

インド太平洋地域は21世紀の世界経済を率いる要衝地であり、地政学的・地経学的競争の核心舞台だ。<中略>前政権が北朝鮮・中国に重点を置いたことで、インド太平洋地域をめぐる活発な動きから韓国は疎外された。現政権は積極的な姿勢だが、後発走者としてハンディキャップを抱えている」。

この認識は、おおむね正しいものです。

すくなくとも文在寅政権は、故・安倍晋三総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」(a Free and Open Indo-Pacific, FOIP)からは一貫して距離を置き続けたからです。

実際、日本政府の公式見解でも、やはりこのFOIP構想に韓国(や中国、北朝鮮、ロシア)の姿はありません(図表)。

図表 FOIP

(【出所】防衛白書)

ただ、韓国がこのFOIPに加わるという主張なのだとしたら、いちおうは傾聴に値するのでは、と考える人もいるかもしれません。

この点、辛珏秀氏は「韓国には積極的なインド太平洋地域政策が必要」だとして、いくつかの理由を挙げているのですが、そのなかにこんな記述もあります。

我々はこれまで『安米経中』に合わせようと戦略的あいまい性に依存してきた。しかし米中対立の深化で戦略的あいまい性が恩恵を与えるどころか、むしろ双方から敬遠される結果をもたらしてきた」。

このくだりについても、韓国の論者にしては、かなり正確な認識でしょう。

「戦略的あいまい性」は、とくに米国を強く苛立たせてきましたし、おそらくは米国が日本に対して「日韓関係を改善せよ」という強い圧力を加えてきていない理由のひとつも、韓国の米中二股外交を、最近の米国が見透かしている証拠なのかもしれません。

論者がFOIPを正確に理解しているようにも思えない

ただし、今回の論考自体、辛珏秀氏がFOIPについて正確に理解した結果、執筆されたものなのかどうかに関しては、かなり微妙です。というよりも、まるで「仕方なしにインド太平洋戦略を推進せざるを得ない」、とでもいわんがごとき記述が出てくるのです。

たとえば、辛珏秀氏は「インド太平洋戦略は韓国の外交アイデンティティの核心」などと位置付けたうえで、韓国が「インド太平洋戦略」を打ち出すことのメリットを滔々と説きます。そのうえで、韓国がインド太平洋政策を持たないことを、次の通り、むしろ「非正常だ」と述べるのです。

米国・日本・オーストラリア・インド・ASEANなど域内の主体がそれぞれ特性に合うインド太平洋政策を発表し、域外の英国・ドイツ・フランス・オランダ・欧州連合(EU)も参加したが、インド太平洋国家の韓国がインド太平洋政策がないというのは非正常だ」。

このため韓国はネットワーク時代に多様な多国間の枠組みから疎外された。先月、EU議会が台湾海峡決議を採択しながらインド太平洋地域の協力対象に日本・オーストラリアだけを特定したのは、インド太平洋地域における韓国の低い存在感を意味している」。

このあたり、韓国が「FOIP」から事実上、除外されていることは間違いないにせよ、その理由は、たんに文在寅政権がFOIPから距離を置いていただけではありません。安倍総理が提唱したFOIPを、辛珏秀氏自身を含めて、韓国側が正確に理解しているとは言い難いからです。

そもそもこの辛珏秀氏の記事には、「自由で開かれたインド太平洋」という正確な用語が、記事のなかで1箇所しか出てきません。

インド太平洋政策を最初に推進した国は日本だ。安倍晋三元首相は<中略>クアッド(日米豪印)創設などを通じて規範を根拠とする自由で開かれたインド太平洋政策として具体化した」。

このことは、辛珏秀氏がこの「インド太平洋」を、単なる地理的な概念だと認識している可能性を示唆しています。

韓国自身が国際法をないがしろにしているのだが…

問題は、ほかにもあります。

現実にはFOIPは「自由、民主主義、法の支配、人権」などの「基本的価値」を柱とした概念であり、いわば、これらの「基本的・普遍的な価値」を共有する国同士が連携し、圧政を敷く国家、国際秩序に力で挑戦する国家などに対抗していこうとする構想です。

そもそも自称元徴用工判決など、国際法をないがしろにする判決を放置している時点で、韓国がFOIPに加わる資格があるのかはよくわかりませんし、「親日派の財産を没収する」など、事後立法を禁じた近代法の精神に背く法律が施行されている時点で、韓国が「法の支配」を正しく理解しているのかは疑わしいところです。

この点、辛珏秀氏はこの記事の後半で、「自由・平和・民主主義などの価値を重視すべき」などとして、次のように主張しています。

韓国は分断国であり、対外依存度が非常に高く、民主主義中堅国家で自由主義国際秩序の恩恵を受けた国だ。したがってインド太平洋地域で自由・平和・民主主義・市場経済・法治・人権など憲法と国際法の価値を増進する必要がある」。

しかし、そのように述べるのであれば、まずはご自身の国における国際法違反の事実を正確に指摘するのが筋でしょうし、こうした国際穗違反の状態をどうやって解消していくかについての道筋を示すべきではないかと思います。

「包容性」と「弾力性」は中国を引き込む罠なのか?

ただ、辛珏秀氏の主張の、おそらく中核を占めているのは、こんな記述ではないでしょうか。

韓国のインド太平洋政策は包容性・弾力性・持続性・一貫性・連結性を基盤としなければいけない。原則と規範を守る限り誰にでも開放される包容性、複合危機に迅速かつ柔軟に対応する弾力性、安定性と信頼を構築できる持続性、我々が追求する原則と価値に関する言葉と行動の一貫性、多様性を統括的につなぐ連結性が必要だ」。

この「包容性」「弾力性」などの表現が何を示すかはさだかではありませんが、現在の韓国政府の動きを眺めている限りにおいては、とくに「包容性」と「弾力性」は、中国のように国際法をないがしろにする国を受け入れるべきだ、とする考え方にもつながりかねず、大変に危険です。

そもそも著者自身の理解に基づけば、FOIP自体、習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席の「鳴り物入り」の「一帯一路(BRI)」に対抗する構想であり、ルールを無視するという姿勢を改めない中国がFOIPに入ってくること自体、おかしな話でもあるのです。

実際、辛珏秀氏は韓国の「インド太平洋戦略」について、次のようなことを言い出します。

北朝鮮の核の脅威に対応するために韓半島(朝鮮半島)に重点を置くしかなため、我々としてはインド太平洋地域内の軍事力活用に制約がある」。

要するに、FOIPに韓国が入って来るならば、それを「軍事同盟化」することが難しくなる、ということでもあるのでしょう。

いずれにせよ、もともとこのFOIP自体は、基本的価値の重要性を共有することができる国についてはすべて「ウェルカム」、という構想ではあります。しかし、少なくとも現在のように国際法を無視したままで問題を放置しようとする国が、このFOIPに参加する資格があるのかどうかは微妙でしょう。

FOIPが日本外交を変えた!

さて、最後にちょっとした余談です。

こうした記事を読んでいくと、やはりこのFOIP自体が日本に与えたインパクトの大きさに気づかされます。そして、FOIPは安倍総理が果たした役割が最も大きかったことは間違いないにせよ、ほかにもさまざまな人が関わっています。

そもそもFOIPは、もともとは麻生太郎総理が提唱した「自由と繁栄の弧」構想などを下敷きしたもので、これを安倍総理がアレンジし、実際に日本の外交に落とし込んでいく作業は菅義偉総理が担当しました(『近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた』等参照)。

日本時間の土曜日早朝、菅義偉総理は訪問先の米国で史上初の対面での日米豪印首脳会談に臨みました(厳密には、今年3月のテレビ会議を含めれば、首脳会談としては2回目ですが…)。少しインドのトーンが弱いというのは気になるところではありますが、ただ、今後は「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)が日本外交における基軸となることは間違いありません。まさに菅政権の最後の仕上げ、というわけです。クアッドではなくFOIPが重要先日の『日本外交は「クアッド+台湾」>「中露朝韓」の時代へ』では、「最後の最後まで仕...
近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた - 新宿会計士の政治経済評論

その意味では、FOIP自体、100%安倍総理「だけ」の成果、というものではありません。

ただ、麻生、安倍、菅の3総理の「合作」でもあるためでしょうか、この流れは宏池会の岸田文雄・現首相や林芳正・現外相らの政治力だと、もう覆すことはできません。自民党の多数からも、国際社会からも支持されている考え方だからです。

このあたり、とくに林外相を含めた宏池会関係者の考え方を眺めていると、中国と米国を両にらみの、一種の「楕円」のような外交を目指すむきもあり、極めて危なっかしく見えることは間違いありません(「楕円外交」とは日本風の「米中二股外交」のようなものでしょう)。

しかし、安倍総理の国葬儀の直後というタイミングでご自身のご長男を秘書官に任命してしまうほど政治的センスのない無神経な人物が、果たして長期政権を築き上げることができるものなのかどうかについては、いちおうはウォッチしておいてもよい論点かもしれません。

新宿会計士:

View Comments (18)

  • 韓国を受け入れてもらうためには『相手国』に包容性・弾力性を持ってもらい、韓国に合わせてもらわねばならない。それでこそ自由で開かれるという行間でしょうかね?

    • 何となく、日本社会でLGBTを差別するな、外国人を差別するな。(本意は優遇しろ)
      と似た感じですかね。
      不当な扱いは人間としてすべきでないけど、かといって特別扱いもしませんよ、あなたはあなたなりに節度を守ってください。
      というのが普通の人間の心持ちですよね。

  • 岸田首相がオーストラリアへ2国会談のために出発します。会議の場所は日本人には馴染みのない豪州西海岸の都市です。オーストラリア首相はそこで何かプレゼントのようなものを披露するつもりなのでないかと当方は勘ぐってます。たとえばインド政府関係者が偶然にも同時期に訪問するなどの動きがあるのかも知れません。目が離せないと思います。

  • >>韓国のインド太平洋政策は包容性・弾力性・持続性・一貫性・連結性を基盤としなければいけない

    慰安婦を基盤にするぞという話でしょうか。何とイヤらしい。
    実際、米中との間で袋小路に陥った外交の突破口として太平洋に邪な像を立てまくる計画、開かれたアジア慰安婦太平洋政策だと、迷惑な話です。

  • 朝鮮戦争でアメリカ軍が鴨緑江を超えそうになった時に中国が突然参戦した。
    緩衝地帯と考えている場所に仮想敵が入ると過激に反応するのはロシアのウクライナ侵攻も同じかもしれない。中国にとって北朝鮮は韓米同盟との緩衝地帯。韓国主導の統一など絶対に望んでいないだろう。では北朝鮮主導の統一を望んでいるのか。それもないような気がする。
    中国と朝鮮は長い付き合いだ。中国人はあの民族をあまり信用していないのではないか。

  • それも、かつての世界最貧国レベルの時代ならばともかく、現在の韓国は、いちおうはGDPで世界10位圏入りをうかがうほどに経済発展したわけですし、2021年には英国で開かれたG7サミットで、インド、豪州、南アフリカと並んでゲスト国として招待された実績もあります。

    現在のGDP速報値ではもう10位から転落して13位ですね
    今世紀末にはフィリピンにも抜かれることが確実なんで、まさに韓国は衰退国家です

  • 「あのアベが提唱した」が枕詞に付いているとはいえ、韓国メディアで「自由で開かれた」に言及したのは初めて、ですかね。
    しかし、相変わらず頑なですね。「自由で開かれた」の価値観を理解できないのではなくて、そこに対中包囲の意味を見いだしていて意図的に避けているのでしょう。

    >最後に、韓国経済の生存に必須となる自由貿易、航行の自由および経済報復からの自由を強調することだ。

    韓国にとっての自由の意味を矮小化した上に、「経済報復からの自由」ですって。
    こんなもん初めて聞きますわ。悪乗りですよ。

  • 「中国」をキーワードとすれば、分かり易くなるような気もします。
    おそらくですが、辛珏秀氏や多くの韓国人は、意識的にか無意識的にかまではわかりませんが、中国との連衡を主張したいのです。一応、民主主義国家という看板を掲げてますし、軍事同盟国であるアメリカへの「配慮」から、正面切ってそうは主張できないものの、本音としての連衡があるがゆえに、なんだか論旨が不明の文章になっていると考えます。
    そのような文脈で考えると、日米が推進するFOIPは合従そのものです。韓国としては合従に加わりたくなどない、なぜならば、骨身にまで刻まれた対中恐怖心もありますし、その昔の対秦六国合従は結局破綻したという「歴史的教訓」があるからです。
    ただし、当時と決定的に異なっているのは、中国が絶対的な覇権国などでは(今のところ)ないこと、そしてアメリカという「域外」の超大国がインド太平洋に絡んでいることがあります。韓国としても、中国と連衡して一の子分になるのはやぶさかでないでしょうが、中国と一纏めにされて袋叩きになるのは避けたいのでしょう。そんな二律背反が、ますます論旨を不明瞭にしているのだと思います。

    なお、辛珏秀氏がインド太平洋というキーワードを持ち出したのは、過剰な大国意識のなせる業でしょう。確かに、今や韓国は経済規模などから考えても、「辺境のどーでもいー小国」とは言えませんが、アメリカはまだしも、日本やオーストラリアなどがインド太平洋戦略を打ち出しているのに、"大国"である韓国がインド太平洋戦略を持たないのは恥ずかしいと考えているものと思われます。でも、元々韓国人の世界認識では、世界は「朝鮮、中国、日本、アメリカ、その他」でしかなく(*)、インド太平洋という枠組みなど存在しません。読んでる韓国人読者はもとより、書いた人本人すらどこまで認識しているか、怪しいのではないかとさえ思います。価値観どころか、地理的な認識すら危ういように見受けられるので、ますます論旨不明瞭となるのは、ある意味当然とさえ言えるでしょう。

    (*) さすがに、ドイツ、フランス、イギリスといった国々が存在していることは認識して
      いる模様。ロシアですら、漠然としたイメージ程度なんじゃないかな。

    • 龍様

      >インド太平洋というキーワードを持ち出したのは、過剰な大国意識のなせる業でしょう。

      どうなんでしょうね、これ。

      この国(民族)は中原の覇者に服従し、冊封国の地位に安住することがもっとも性に合っていたのが、それ故に情勢を見誤り、蒙古、女真、日本など化外の輩と見なしていた国に蹂躙され、某国の憂き目に遭うという苦い経験を、かつて何度も繰り返しています。

      強大化しつつあると理解した中国の引力に惹かれて、むかしなつかしい衛星規道に戻ろうとしていたところが、またもやFOIP連携という擾乱要因が生じてきた。それも今度は、その強力さがカボチャアタマにだって十分理解できるほどの規模。かつての愚は繰り返すまいということで、ここはわれわれも海洋国家側の一員なんですよというフリだけでもして、保険を掛けとく時期ではあるまいかと、まあ明確に意識しているかどうかはともかく、辺境国家なりの「身の程にあった」処世術を開陳してみせたという類いの文章にも見えるのですが。

      • 基本線としては、伊江太様の仰る通りだと思いますが、それだけだったら何も「インド太平洋」というキーワードを出す必要はないでしょう。これまでだって、堂々と「戦略的曖昧性」を公言していた(*)のですから、韓国の基本姿勢など誰にでも見透かされていまにす。なにしろ、文在寅政権があれほど屈辱的ともいえる対中追従姿勢を見せても、国内からはたいして批判されなかったのですから、相当数の韓国人にそのような姿勢は共有されていると思います。
        その一方で、「実質的G8」だの、「没落する日本に替わってG7に入るべき」だのといった過剰な大国意識だけは国内に瀰漫しているようです。身の丈に合わない「インド太平洋戦略」を主張するのは、属国根性を糊塗するのみならず、あたかも世界戦略を持っているかのようなフリをして、大国意識を満足させているのではないかと疑っています。
        属国根性と大国意識、その矛盾を筆者がどの程度自覚的なのかは分かりませんが、その矛盾が整理されないまま、あるいは意図的に整理しないままに書いた文章なのではないかと考えています。

        (*) そんなもん公言したら意味を失うのではないかと思うのですが。

        • 龍様

          >そんなもん公言したら意味を失うのではないかと思うのですが。

          確かに(笑)。

          「そ、それは言うてはならんことじゃ~」
          ってのが、この国にはどれだけあるんでしょうね。

  • そもそも「韓国が信頼できず役立たずだから」というのがFOIPが作られた理由のひとつだと思います。そこに韓国が入ってくるのは考えられないですね。
    韓国としては、FOIPに近づいておかないと仲間はずれになってまずいんじゃないか、という本能のようなものがあるのでしょうけれど。

  • > 韓国のインド太平洋政策は・・・

    そういうのは外交を通してから言って欲しいものです。ベトナムで戦争すれば人類に対する犯罪を犯し、橋を作れば崩落し、ダムを作れば決壊し、ビルを建てれば崩壊し、船を浮かべれば沈没し、そして謝罪も補償も再発防止も図らない。

    そんな国がよしんば政策を出したとして、誰がその指に止まるというのでしょうか?海外諸国の国名、国旗、言語、地名を公式の場で間違える(知らない)ような外交機関を所有している国です、他国の領事館に無礼を働き、各国にウソ捏造歴史を吹聴に回らせる組織に政府が金を出している国です。他国の領土を占領し漁民を虐殺し漁船を破壊している国です。ある意味、世界で一番恥ずかしい国ではないでしょうかね。

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