韓国紙「円安契機にウォン安が加速し通貨危機再来か」
1ドル=150円という「心理的抵抗線」を超えたら、そこから韓国が通貨危機に陥るかもしれない――。こんな趣旨の懸念が出てきました。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝掲載された記事によると、アジアの「いかり」の役割を果たしている通貨である円や人民元が安くなれば、それをきっかけに1997年のような通貨危機が発生するかもしれない、というのです。
目次
円安:1ドル=150円目前に!
円安が進行しています。
WSJのマーケット欄の情報によれば、円は19日午前10時時点で1ドル=149.20円前後です。国際決済銀行(BIS)のデータによれば、1ドル=149円台を超過したのは、1ドル=149.93円だった1990年8月14日以来、約32年ぶりのことです。
円は年初時点で1ドル=115円前後でしたので、現時点までに30%ほど円安が進んだ計算です。こうした急激な円安の進行を受け、市場参加者の間では、このままのペースで円安が続けば、1ドル=150円台の大台に乗せるのも時間の問題ではないか、といった観測もあるようです。
ではなぜ、ここまで急速に円安が進むのでしょうか。
先日の『円安の本当の意味:たった3ヵ月で30兆円超す利益か』でも取り上げたとおり、ひとつの要因は、中央銀行の金融政策にあります。
米FRBを筆頭とする主要国中銀が軒並み利上げに動くなか、日本だけはいまだにマイナス金利政策を維持しており(図表)、また、イールドカーブ・コントロール政策などについても放棄していません。日銀が金融緩和を続けている限り、円の市場供給量が他通貨と比べて多いという状況は継続します。
図表 主要国政策金利比較
(【出所】BISウェブサイト “Download BIS statistics in a single file”, Policy rates (daily, vertical time axis) データより著者作成)
結局のところ、通貨市場も需給要因で大きく動きますので、市場供給量の多い円の価値が市場供給量の少ない他通貨と比べて値下がりする(=円安になる)のは、当然すぎる話でもあるのでしょう。
円安は日本経済に良い影響をもたらす
これについては結局、「①資本移動の自由」、「②金融政策の独立」、「③為替相場の安定」という3つの目標を同時に達成することは絶対にできないとする「国際収支のトリレンマ」という鉄則に基づき、日本としては③の政策目標を放棄しているのです(※この点は日本以外の主要国もほぼ同じです)。
そして、行き過ぎた円安に対しては、財務省が外為特会で保有する外貨準備を使い、(米国などの了承を得たうえで)カウンターパンチ的にときどき数兆円程度の外貨売り・円買いの為替介入を実施して投機筋を牽制する、といった手法が今後の日本の通貨運営における基本的な対応でしょう。
このあたり、日本だとそもそも経済全体に占める対外債務は決して少なくないのですが、これらの対外債務はメガバンクや一部大手企業のファイナンス子会社などが借り入れているものが中心であり、しかもメガバンクは対外債務を遥かに上回る対外債権を保有しています。
したがって、日本全体として保有している資産の額は負債の額を大きく上回っており、円安が進行した場合には、純資産に莫大な含み益が生じる効果が期待できます。
また、円安が進めば、日本が得意とする「素材、部品、装備」などの産業の輸出競争力が強く伸びることはもちろんのこと、これまで中国など安価な労働力が豊富な海外に奪われていた製造拠点を取り返すこともできますし、国内市場で国産品の競争力が上がる結果、中国などからの輸入も減少する、といった効果も得られます。
残る課題は電力の安定供給、といったところでしょう。
自国通貨安は国によっては経済不安をもたらす
ところが、円安のメリットが生じる要因は、「最終製品の輸入で貿易赤字になっている」という日本の貿易構造に加え、日本円自体が国際的に通用するハード・カレンシーである、という点に求められます。
逆にいえば、こうした条件が満たされていない国の場合、自国通貨安のメリットは日本と比べて薄まるだけでなく、たとえば外国から巨額のおカネを借りている国の場合、通貨安で資本流出が生じるというリスクも高まります。
こうしたなかで、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝、こんな記事が出ているのを発見しました。
代表選手円の墜落…アジア通貨危機再来の恐れ
―――2022.10.19 07:03付 中央日報日本語版より
中央日報は、1ドル=150円目前という円安水準において、その心理的抵抗線を突破すれば「海外資金離脱などが続き円安影響圏に入っている韓国などアジア金融市場が渦に巻き込まれかねないという懸念も出ている」、というのです。
「円安影響圏」という表現に新鮮さを感じる点はとりあえず脇に置くこととして、中央日報の記事は次のように指摘します。
「問題は日本の市場介入が一時的な効果にとどまる可能性が大きい点だ。円安の背景には日本銀行の逆行する通貨政策があるためだ。米国など主要国の中央銀行が緊縮のペダルを踏んでいる状況で日本銀行は通貨緩和政策を固守している」。
この点は、おそらく実態に即した適切な解説です。
米FRBは過去3回のFOMCで連続してFF金利を0.75%ポイントずつ引き上げてきましたが、日銀の黒田東彦総裁は、あくまでも物価目標の達成を目的に、金融緩和政策を継続する考えを明らかにしているからです。
円、人民元の下落がウォン安をさらにあおりかねない
ところが、これに関する中央日報の懸念点は、こんな記述にあります。
「むしろ問題は金融市場だ。円は世界で3番目に取引量が多い通貨だ。他のアジアの通貨にも影響を及ぼす。ウォンは人民元と円とともに動く同調化傾向を見せる。円の急落が『1ドル=1430~1440ウォン』にとどまるウォンの下落をさらにあおりかねないという意味だ」。
この点については、「結果論でみれば」、たしかに円安・人民元安がウォン安とも関係しているという側面があることは否定できません(※ただし、著者自身はこの現象について、中央日報の記述とは違う解釈をしていますが、この点については割愛します)。
こうしたなかで、「円安がアジア金融危機を呼び起こしかねないという懸念」まで出ている、というのが中央日報の主張です。それが、GSAM元会長のジム・オニール氏が先月Bloombergとのインタビューで述べたとされる、こんな趣旨の内容です。
「1ドル=150円など特定の支持線を超えれば1997年のアジア通貨危機のような規模の混乱が訪れるだろう」。
また、みずほ銀行のエコノミストのビシュヌ・バラサン氏による、こんな分析も掲載されています。
「円と人民元は(アジア市場で)大きないかりの役割をするので(両通貨の下悪は)アジア全体の貿易と投資の通貨の流れを不安定にする危険がある。アジアはすでに2008年の世界金融危機水準のストレスに向かっており、次の段階は1997年のアジア金融危機になるかもしれない」。
このあたり、決して杞憂ではありません。1997年のアジア通貨危機では、タイのバーツ不安がインドネシア、韓国などに波及したという経緯がありましたし、1997年や2008年当時と比べ、現代の金融市場の一体化はさらに進んでいるという事情もあるからです。
したがって、市場の心理という側面からすれば、円安を契機に、アジア諸国の通貨が軒並みダウンする、という可能性は否定できないでしょう。
金融市場は「韓国リスク」にも備える必要か
しかも、韓国の場合は、家計債務が膨張し切ったなかで、不動産バブルが崩落の危機にあるという不安要因も抱えていますし、対外債務水準も2008年のグローバル金融危機以来の最大水準にあります。
韓国の家計信用が過去最大:利上げ後も住宅ローン増大
韓国の対外債務は過去最大:外貨準備高との関係は…?
このように考えると、もしもかつてのアジア通貨危機のような状況が生じるとしても、円安はたんなる「きっかけ」に過ぎず、それはその国(たとえば韓国)特有の危機、という側面があると考えておいて良いでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
なんにせよ「オマエのせいだカネよこせ」の前振りに見えてしまうのは、隣国を眺むる際ワタシのメガネがオカシク成っとるんでせうなあ
わたしのメガネにもその景色が映りますw
「時価評価できないのは市場が悪い!」
「ウォン安は投資家がウォンを中国元の代理通貨と見るから!」
「(アメリカの金利政策でなく)日本の金利政策のせいでアジアがとんだとばっちりだ、韓国は被害者だ!」
日本のせい! にするのみならず、アジアガー! も付け加えるとはいやはや次から次へとアクロバティックなへ理屈をw
こういう記事を仕込んでおけば、いざと言うときに財務省が「スワップはアジアの安定に役立つ」と言うための布石になる、思うのは穿ちすぎでしょうか。
日経の記事ならその可能性無きにしも非ずだと思いますが、中央日報の記事なので。
バックストップの構築が脆弱なほどに、”通貨危機の伝播”への懸念は大きくなるのでしょうね。→”円”はアジアの碇。
具体的には、対日通貨スワップもCMIMでの特恵(引出枠>拠出額)も存在しない国のことです。→疎遠は日本の怒り。
なのかと。
中央日報さん、泣き言にしか聞こえませんよ。
日本が独自の金融政策を実施しているのは国益のためで、他国のために日本の国益を損なう金融政策など実施するわけがありません。
政府・日銀の金融緩和は日本経済の景気下支えのためで国益のため。アメリカの金融引き締めは景気過熱によるインフレ抑制のためで国益のため。
中央日報さんの国だってそうでしょ。バブルを放置した挙句、二進も三進も行かなくなったのはあなたの国の責任です。日本はバブルの後始末は他国の助け無しで解決しました。あなたの国もIMFや通貨スワップに頼らず自己責任で危機を乗り越えたらいかがですか。
中央日報さんの記事にコメントすべきでしたね。失礼しました。
黒田総裁の任期はあと半年。
任期ギリギリで金利を上げてやめるような気がする。次の人がやりやすいように。
>残る課題は電力の安定供給、といったところでしょう。
他には、代替品の国内生産能力アップや、円安で出た利益を中級・下級の国民に如何に下賜するか、そして下賜された中級・下級国民に上級国民を尊崇する義務を如何に理解させるか、ですかね。
と言っても、上級国民の懐に金が入って、中級・下級国民にはロクにお金が回らず、容姿に恵まれた女性や少女が売春婦となり、上級国民に買い叩かれる事がより一般化して終わるでしょうけど。
今の日本だと、円安が進んでも日本の女性が『外貨を稼ぐ英雄』になるだけじゃないですかね?
心理的抵抗線150円って誰が決めたんですか(この間まで140円、145円と言ってなかったか?
バナナの叩き売りじゃあるまいし<=今は通じないでしょうね)
1985年プラザ合意以前は1ドル=235円でした。それで日本が沈没しかけていたわけでもなく、日本経済は上り調子でした。むしろ沈みかけていたのは双子の赤字を抱えたアメリカの方です。確かに急激に為替レートが変動すると影響が極端になるので好ましくありませんが、この先も物価はじわじわ上昇し、円安もじわじわ進む基調が続くと思います。
長らく輸出産業に身を置いた者からすれば1ドル=100円前後などという異常な円バブルに30年間苦しまされて、やっと適正レートに戻りつつあると考える方が、将来の展望が開けるというものです。
収入は上がらず生活費が高騰する事態を何とかできれば明るい未来があると、ここは能天気に考える方が、やたら悲観的なことばかり論評するエコノミストより、精神的には役に立つと思いますが。
韓国の金融危機の心配? それは知らんがな。いまや韓国は日本を越えたと豪語しているのだから、日本国ごときが手を差し伸べるのは畏れ多いというもので。
攻撃型原潜#$%&〇X 様
でも、大真面目に(と言うか、大いなる期待をもって)楽…心配しているクニが約1カ国あるようですぞ(笑)。
>円相場、32年ぶりの安値に急落…「通貨危機、総体的崩壊に突き進んでいる」
(中央日報日本語版2022.10.19 12:02)
https://japanese.joins.com/JArticle/296760
32年ぶりと報道が大騒ぎしています。1990年のことですよね。
あのころ変動は大きかった。そのわずか5年後の1995年に1ドル80円台に突入したのはよく覚えてます。そのころ当方はようやく日本国内銀行口座のお金をアメリカの現地 ATM でドル紙幣で下ろせるようになり日々ほくほくして使っていたのですが、現金を引き出すたびに残高表示がどんどん増えていくのでおかしかったです。危機を煽るマッチポンプ話法の報道記者たちにはほんとうんざりですわ。
日本経済を成長路線に戻すには、まず円安から入らないと無理でしょうね。今までの経緯を考えますと。
当面輸入業者には不利になりますが、国際分業の見直しをすることにより、国内回帰が進むと予想されます。
外国の安い労働力の利用も、円安である程度見直しが進むと思います。
日銀の役目は、景気対策や為替対策ではありませんので、黒田さんと次の総裁には現在の路線を継続して頂きたいと切望しています。
最大のリスクは、ポリシーの無さそうな検討士さんが日経新聞など韓国寄りのマスコミの意見に惑わされて、金利を上げてしまう事です。
くれぐれも国運を傾けることが無いよう適切な判断をお願いしたいと思います。
検討士さんの取り巻きさんたちもよろしくお願いします。
資源高騰、原油高騰、食料高騰は全世界共通。その意味で公平な問題。ですから新製法なり新工法を編み出して、効率の悪い古い装置でちんたらやっているかも知れない国内はもちろん世界のライバル企業を振り切る絶好機会と前向きにどうして考えれないのか不思議でしょうがありません。もう駄目だ今度こそ給料ダウンだとは相当に短絡思考と思います。
テレビ局の親分、電通様にイチャモンつけたカドで大目玉。視聴者の反応を見たら「玉川辞めたらもう視ない」。つまりワイドショーをいまだに見ているような岩盤支持層を失いかねない。「アイツにはまだ使い道があります」ってんで電通様に何かしらケジメつけて手打ち。
何せテレビは平日の午前中などという世間が忙しい時間にテレビを見てくれる高齢者層を洗脳するにはまだまだ捨てられないシステムだから。
すべてが問題の本質を無視したヤクザとカモの世界の話。カタギの人からしたら全く理屈が通らない。
すいません、玉川氏の記事に対するコメントでした。