今度は「受信料2倍」だそうです。NHKが12日に公表した放送受信規約変更素案によれば、一定の場合にNHKが受信料を2倍徴収する、とする規定が盛り込まれています。そもそもNHKと総務省がさまざまな矛盾を解決する努力を全く行っていないにも関わらず、いきなり「受信料2倍」といわれると、さすがに多くの人も困惑するのではないでしょうか。この「受信料2倍」はNHK崩壊の始まりなのかどうか、注目したいと思います。
今度は「受信料2倍」!
NHKに対する受信料の支払いなどを定めた放送法第64条の改定が2022年10月に施行されたことに伴い、NHKは12日、放送受信規約の変更素案を公表しました。
問題の素案はNHKのウェブサイトにて公表されています。
意見募集案件
説明資料【PDFファイル】
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ここで注目しておきたいのが「割増金」に関する規約です。
NHKは「解約」と「免除」を虚偽の内容で届け出た場合などに、受信料の割増金を2倍徴収することにするようです。具体的には、NHKが公表している「素案」のスライドの3ページ目にその記載が設けられています(図表)。
図表 割増金制度の概要
(【出所】NHKウェブサイト)
正直、ここまでくると、思わず驚いてしまいます。
当ウェブサイトではかなり以前から、「利権は理不尽なものであり、外から崩すことは難しい」ものの、「利権を持っている者の怠惰や強欲などによって瓦解することもある」と申し上げてきたのですが、まさにNHK自身もその自滅の道を順調に歩んでいます。
NHK問題とスクランブル化
そもそも論ですが、現在のNHKを巡っては、「NHKをまったく見ていない人であっても、テレビを設置したらNHKに対し、事実上、半強制的に受信料を支払わされる」という問題点を抱えています。
このあたり、「全国津々浦々に放送を行きわたらせる必要がある」、「視聴した時間数に応じて受信料を徴収することが技術的に困難」、といった言い訳は、昭和時代であればまだ通用したかもしれません。また、「災害時などの非常事態にNHKが公共放送としての役割を果たす」、といった大義名分もありました。
しかし、地上波もデジタル化した現代においては、「受信料を支払った人に対してのみ放送を受信させる」ということは技術的に可能です。これがいわゆる「スクランブル放送」です。
NHKはこの「スクランブル放送」が実施できない理由について、次のように説明しています。
なぜ、スクランブルを導入しないのか
NHKは、広く視聴者に負担していただく受信料を財源とする公共放送として、特定の利益や視聴率に左右されず、社会生活の基本となる確かな情報や、豊かな文化を育む多様な番組を、いつでも、どこでも、誰にでも分けへだてなく提供する役割を担っています。
緊急災害時には大幅に番組編成を変更し、正確な情報を迅速に提供するほか、教育番組や福祉番組、古典芸能番組など、視聴率だけでは計ることの出来ない番組も数多く放送しています。
スクランブルをかけ、受信料を支払わない方に放送番組を視聴できないようにするという方法は一見合理的に見えますが、NHKが担っている役割と矛盾するため、公共放送としては問題があると考えます。
また、スクランブルを導入した場合、どうしても「よく見られる」番組に偏り、内容が画一化していく懸念があり、結果として、視聴者にとって、番組視聴の選択肢が狭まって、放送法がうたう「健全な民主主義の発達」の上でも問題があると考えます。
(【出所】NHK『よくある質問集』)
なんだか無茶苦茶な言い分です。
そもそもNHK自身が垂れ流している番組コンテンツが「社会生活の基本となる確かな情報」、「豊かな文化をはぐくむ多様な番組」なのかどうかという点もさることながら、すでにテレビからは「重要な社会インフラ」としての役割が失われつつあるという実態を、あまりにも無視しすぎています。
公共放送をNHKが担う資格があるのか
ちなみにNHK問題については、いくつか論点を整理する必要があるというのが著者自身の考え方です。
たとえば、「そもそも公共放送というものが、この社会に必要なのか」という論点については、さまざまな意見があることは事実でしょう。日本が戦争や大災害などに巻き込まれ、インターネット網が完全に寸断され、たしかな情報がテレビ、ラジオしかない、といった事態が生じる可能性はゼロではありません。
しかし、「公共放送は社会に必要だ」という社会的コンセンサスが取れたとして、その公共放送を担うべき組織が現在のNHKで良いのか、というのは、論点としてはまったく別です。
たとえば、NHKが垂れ流している番組には問題が含まれているものも多く(『尾瀬で勝手な「通行止め撮影」を強行したNHKの傲慢』、『BPO、NHKに「重大な放送倫理違反」とする意見書』等参照)、関係者の不祥事も絶えません(『「子会社の不祥事」報じないNHKに公共放送資格なし』等参照)。
というよりも、『「監査論」の立場から眺めるBPOと放送業界の問題点』でも指摘したとおり、NHKに対してはその放送内容の妥当性を事後的に監査し、適切な罰を下せるような組織ないし監督機構が、そもそも存在していません。
先日から「放送倫理・番組向上機構(BPO)」なる組織の問題点について議論しているのですが、これについて、本稿ではもう少し深いところから議論してみたいと思います。これには少しまどろっこしいのですが、敢えて公認会計士業界の内情から「独立第三者による強制力を伴った業務適正化の仕組み」について議論したうえで、こうした仕組みが放送業界や新聞業界、さらには官僚業界などに存在していないことによる問題点を探ってみたいと思います。会計と監査の不思議な関係公認会計士の本業は「XX」である「突然だが、ここで『クイ... 「監査論」の立場から眺めるBPOと放送業界の問題点 - 新宿会計士の政治経済評論 |
おそらく社会全体でNHKの受信料制度に納得していない人は相当に多いものと思いますが(※ごく一部の人はNHKに受信料を払いたくて仕方がないようですが)、NHKが自身のガバナンスを適切に構築していないくせに、割増受信料を取るとなれば、やはり話はかなりおかしくなります。
高すぎる受信料で支えるNHKの貴族生活
この点、NHKがシャカリキになって受信料をかき集めているのかといえば、おそらくはNHK職員の「貴族生活」を支える必要があるからでしょう。NHK本体だけでも1万人以上いる職員は、平均して、民間企業などと比べて異常に高い給与を得ているのです(『現代の貴族・NHK職員の平均人件費は1500万円超』)。
これまた強烈な情報が出てきました。NHKは昨日、2022年3月期決算(財務諸表・連結財務諸表)を公表したのですが、相変わらず巨額の金融資産を保有するとともに、おそらく1万人を超えるであろう職員に対し、昨年に引き続き、1人あたり約1573万円の人件費を計上していることが明らかになりました。NHK職員はまさに「現代の貴族」であり、NHKとは「利権の塊」だと言わざるを得ないのです。金融資産は1.3兆円に!NHKは昨日、2022年3月期決算を公表しました。さっそくですが、NHKの連結財務諸表から判明する、NHKが保... 現代の貴族・NHK職員の平均人件費は1500万円超 - 新宿会計士の政治経済評論 |
また、NHKは強引にかき集めた受信料のうち、使いきれなかった部分を蓄財に回しており、その金額は金融資産だけで、年金資産を含めて連結集団全体で1.2兆円程度にも達しています。
この点、財務省様によると日本は財政危機だそうですので、やたら高給取りなNHK職員を解雇し、余剰資産を国庫に返納させれば、それだけでも「財政再建」(?)とやらに、かなり資するはずです。
いずれにせよ、民間企業でもないくせに民間企業の水準をはるかに超える人件費を計上していて、公的企業でもないくせに法律で存続が保証されているNHKという組織は、現代日本の「利権」の象徴であることは間違いないでしょう。
チューナーレスTVはさらに普及するのか?
もっとも、『想定以上の売れ行き「チューナーレスTV」とTV業界』などでも取り上げたとおり、最近だと「地上波が映らないテレビ」(いわゆるチューナーレステレビ)という代物も、徐々に普及し始めているようです。
朝日新聞社系の『日刊スポーツ』によると、チューナーレステレビが「想定以上の売れ行き」なのだそうです。もちろん、現時点においては大手家電メーカーが参戦しているわけではなく、販売されている台数も限定的ではありますが、ただ、世の中の常として、ニーズがあればそれに対応した製品が出てくるのも当然のことでもあります。そうなると、「そもそも地上波テレビ放送を映す機械がない」という意味で、地上波テレビの視聴者離れが加速する可能性もあるでしょう。地上波テレビの三重苦この点、当ウェブサイトでは約2年半前、コロナ... 想定以上の売れ行き「チューナーレスTV」とTV業界 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ひと昔前だと、「テレビが映らないテレビ」といわれてもピンとこない人も多かったのかもしれませんが、これはNHKの放送を受信することができないため、NHKに受信料を払わなくても良いという特徴があります。
それに民放各局が共同出資したTVerなどを使えば、いちおう、民放の番組を視聴することが可能ですし、なにより昨今だとYouTubeだの、Huluだの、Netflixだの、Amazonプライムといったネット動画配信サービスが充実しています。
極端な話、人々のニーズが高まれば、「チューナー付きテレビ」よりも「チューナーレステレビ」の方が売れるようになるかもしれませんし、そうなった場合はそもそも「チューナー付きテレビ」自体が廃れ、放送法に定める「NHKとの受信契約締結義務が生じる受信設備」そのものが世の中から消えていくことにもつながるかもしれません。
実際、この「受信料2倍」という話題についてはすでにネットで独り歩きし始めていますが、このこと自体、NHKの腐敗ぶりと強欲ぶり、そして放送法という明らかに間違った法律に対する一般国民の怒りの大きさの証拠でしょうし、NHK離れ(あるいは「テレビ離れ」)が着実に広まる契機となるでしょう。
その意味で、この「受信料2倍」は、NHK利権が音を立てて崩れ始める契機となるのかどうか、注目したいと思います。
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支払いに応じなかった人が倍の支払いに応じるって?ハハッ、ナイスジョーク。
「裁判する時ゃ債権額2倍になりまっせ!」
っつうコトですカナ?
誰でも支払える金額にすれば良い。全国から強制的に徴収したいなら。
テレビを廃棄してから数年になります。全く生活に支障はありません。それどころか、偏向報道やうるさいだけのバラエティを見なくなったなので、健全な社会生活を送っています。何で皆、テレビを廃棄しないのでしょうか。そちらの方が不思議でなりません。
同感。
テレビにそれなりの価値があり、かつ廃棄以外に受信契約しない手段があるからです。
リケン リケン 理研のわかめスープ w
こういう時こそ英・仏を見習うべきです
ニュースと天気予報以外はスクランブル。
韓国でも衛星放送視聴できるってさ。
ガス田掘りです。いつも勉強になる記事を有難うございます。
>そもそも論ですが、現在のNHKを巡っては、「NHKをまったく見ていない人であっても、テレビを設置したらNHKに対し、事実上、半強制的に受信料を支払わされる」という問題点を抱えています。
過去に、共用のアンテナ引き込み端子やケーブルTV端子がある集合住宅に対して「テレビ画像を見る環境が整っているのだからインターネット閲覧が可能なPCモニタがあれば視聴可能であり、受診料支払いの義務がある」と難癖をつけてきたNHKの集金人がいました。独居老人を対象(カモ?)に突撃してくるので町内会で問題になった記憶があります。
ここ暫くは見ておりませんが、またこの手の問題が再燃しそうな雰囲気を感じてなりません。
駄文失礼
勝手なる返信及び自分語りをご容赦。
集合住宅で衛星放送アンテナがあるからと一般契約でチューナーもなく見られる環境にないのに衛星放送の受信料支払いを書面で迫られた事があります。
無視してますが。
集金人は建物の見た目だけで判断されてると思います。
率は覚えてないけど、もともと割増金はあったけど、
NHKはこれまで全然それを適用してこなかったはず。
相変わらずNHKと政府(総務省)が一体となり、国民に対する恫喝姿勢に拍車がかかっていますね。
ニュースでも「割増金2倍」「受信料2倍」を全面に押しだして国民の恐怖を煽ることに一役買っていますから、ビビって受信契約を締結する人達が増えるかもしれません。
NHK受信料における2021年度の都道府県別世帯支払率を調べたところ、全国平均で78.9%、最高は秋田県97.9%!、最低は沖縄県49.5%で、ここは毎度おなじみの顔ぶれです。
ちなみに、東京都は67.3%、大阪府は65.2%とのこと。
来年4月施行予定の放送受信規約の素案では、受信契約は受信機(TV等)の設置者とNHKの双方の意思表示の合致の日に成立する(規約第4条)となっておりますので、自ら契約を申し込んでしまう場合以外は、これまでどおり個別訴訟でなければ未契約者に契約を結ばせることはできません。
動画配信サービスなどの普及に伴って公共放送の受信料のあり方が議論されていますが、
英国と仏国などの国が受信料撤廃に向けて動きだしているのに比べてわが国の動きの遅さが目立ちます。この原因が何故なのか疑問を持ちます。
一方には新しい時代に対応できる視点と改革を実行するしなやかな力が備わっており片一方には自己の組織の肥大化だけを目指す自浄作用のない組織。
さすがイギリスやフランスは民主主義の先進国と言われることがあります。
組織には使命がありますが使命を全うされた組織は速やかに縮小、撤退して頂かないことには新陳代謝が進まず社会全体や生活にとっても害悪になりかねません。
ある高名な光の戦士もこう言っておりました
「魚は、頭から腐るというが、歴史的使命を終えた組織は、腐った頭のせいで、終わりがはやくなる。」と、未だにマルクス主義の夢見てる、亡霊のような組織と公共放送を建前に受信料を貪る放送局は十分役割を果たしたのではないでしょうか。
最初に浮かんだ言葉が「強欲」。
徴税権だけでは満足せず、刑罰権も欲するとは呆れます。