李在明氏こそ「親日派」だった?

李在明(り・ざいめい)氏は、じつは親日派だったのかもしれません。今年3月の韓国の大統領選で尹錫悦(いん・しゃくえつ)現大統領に僅差で敗れ、現在は最大野党「ともに民主党」の代表に就任している李在明氏は12日、国会で「過去に対し反省も謝罪もせず、経済的侵奪まで行っている」などとして日本を舌鋒鋭く批判し、日米韓3か国合同訓練についても「反省しなければ」と強調したというのです。

李在明氏が舌鋒鋭く日本を批判

本稿は、ちょっとしたメモです。

李在明(り・ざいめい)氏といえば、今年3月の韓国大統領選で尹錫悦(いん・しゃくえつ)現大統領と競い、僅差で落選した人物です。その李在明氏は現在、最大野党「ともに民主党」の党代表に就任しているのですが、その発言には、なかなかに興味深いものがあります。

韓国メディア『中央日報』(日本語版)を眺めていて、ちょっと驚いたのが、この記事です。

韓国野党代表「日本が事実上経済侵奪までする現実…合同訓練反省しなければ」

―――2022.10.12 12:04付 中央日報日本語版より

記事タイトルでも何となく想像がつきますが、李在明氏は先日の日米韓合同訓練を巡って12日、国会で開かれた最高委員会議で、日本を舌鋒鋭く批判したというのです。

日本は北朝鮮が南侵する5年前、歴史的視点で見ればほぼ同じ時期に数十年間韓国を武力侵攻し武力で支配した国。いまも過去に対し反省したり謝らずに依然として性的奴隷と強制徴用問題に攻勢的な態度取るだけでなく、独島を自分の領土だと主張しながら軍事的挑発だけでなく経済侵奪までしている」。

合同訓練は韓国自身にとっても利益があるはずだが…!?

このあたり、韓国が大好きな「被害者」「加害者」というフレームワークを使うならば、加害者は韓国であり、被害者は日本です。なぜなら、「性的奴隷」も「強制徴用」も、どちらも韓国による根も葉もないウソであり、また、韓国は法的な根拠もなしに、日本に理不尽な要求を突き付けているからです。

ただ、この点を脇に置くとしても、この李在明氏の舌鋒鋭い発言が意味するものは、なかなかに興味深いものです。

そもそも日米韓合同訓練自体、(実質はともかく)建前上は、北朝鮮による核・ミサイル開発などの脅威が高まるなかで、日米韓3ヵ国が結束してこれらの脅威に立ち向かうというものであり、韓国自身にとってもメリットがあるはずのものです。

ところが、この李在明氏の言い草だと、そもそも「現在進行形で」ミサイルを発射している北朝鮮よりも、「過去に『植民地支配』(?)をした日本」の方が韓国にとっては脅威だ、という認識でしょう。そうであるならば、いっそ北朝鮮の軍門に下ってみればよいのではないか、といった気がしないではありません。

また、「日本が軍事的挑発を行っている」というのであれば米国に対して日米同盟の破棄を要求するのが筋でしょうし、「日本が韓国に経済侵奪までしている」というのであれば、韓国の旅行収支を悪化させる日本旅行についても取りやめさせるのが筋ではないでしょうか。

韓国はFOIPに含まれていない

もっとも、李在明氏自身の発言、一周回って現在の日本の立ち位置に近い、という言い方もできるのかもしれません。

というのも、李在明氏は「韓米日合同軍事訓練に対しては真摯な省察と反省がなければならないともう一度申し上げる」と述べたうえで、韓国政府関係者が「自衛隊の助けでも受けるべき」と発言したことに関しても、次のように発言したからです。

信じられない発言。どうして韓米同盟に加えて世界6位の軍事力を持つ国がわずか数十年前に韓国を数十年間武力侵奪した国の助けを受けなければ防衛が難しいから助けを受けたいという話をできるのか」。

…。

ここで思い出すのは、故・安倍晋三総理大臣が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の概念です。これは平たく言えば、「自由、民主主義、法の支配、人権」といった基本的価値を共有する国と深く連携しようとする考え方であり、その「連携すべき相手」に韓国は含まれていないからです(図表)。

図表 FOIP

(【出所】防衛白書)

李在明氏の発言自体、「日本が韓国を『基本的価値を共有する国』に位置付けていない」という実態と、結果的には見事に整合しています。

ルトワック氏の予言とも整合する李在明氏

あるいは、今から10年以上前、米国の政治学者で米戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアアドバイザーでもあるエドワード・ルトワック氏が10年前に執筆した『自滅する中国』のこんな一節ですを思い出してしまいます。

2011年12月14日には『従軍慰安婦』を表現する上品ぶった韓国人少女の像が日本大使館の向かい側で除幕された。<中略>これは韓国に全く脅威をもたらさない国を最も苛立たせるような行為であった。<中略>戦略面で現実逃避に走るのは<中略>、国際政治に携わる実務家たちの力や、同盟国としての影響力を損なうものだ。さらにいえば、これによって実際に脅威をもたらしている国に威嚇されやすくなってしまうのだ」。

(【出所】『自滅する中国』【奥山真司監訳、芙蓉書房出版、2013年7月24日第1刷発行】P234)

今から10年以上前の時点でこれを指摘していたというルトワック氏の慧眼ぶりには驚きますが、この文章の意味するところは、ルトワック氏自身が日本人ではなく米国人であるという点から明らかです。ルトワック氏は、「韓国の反日は米国の国益に反している」と述べているのです。

つまり、韓国が自国にとってまったく害をもたらさない相手国である日本を最大限苛立たせ、挑発するような行動を取っていながら、自国にとって大きな害をもたらしている相手国である中国や北朝鮮に立ち向かおうとしないこと自体、極めて無責任であるとともに、同盟国にとって危害を与える行動だ、という指摘でしょう。

李在明氏の発言は、まさにこのルトワック氏のいう「韓国の無責任な言動」の象徴でもありますが、それと同時に「日本のFOIPシフトを助ける」という意味では、結果的には日本にとっても悪い話ではないのだとしたら、それはそれで皮肉と言えるかもしれません。

あくまでも結果論ですが、「李在明氏は親日派だ」、という言い方もできるからです。

いずれにせよ、個人的には李在明氏が5年以内に大韓民国の次期大統領に就任するようなことになったらどうなるのか、といった点は、興味深いと思う次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 名前 より:

    韓国大統領選で現大統領よりも李在明を本気で応援してたよ。ポピュリズム政治でめちゃくちゃにされるだろうから。李在明は本当に面白い!

  2. マスオ より:

    > 李在明氏こそ「親日派」
    まぁ、間違いないでしょう。
    彼ほど両国の為に役に立つ人はいないと確信してます。
    最近、捜査の手が伸びてて追い込まれているようなので心配してます。
    早くローソクに火を灯して大統領になってくれることを願ってやみません。

  3. 愛知県東部在住 より:

    隣国の政治家や国民がここまで愚かであるというのは、ある意味我が国にとっては一つの僥倖といえるのかもしれません。

    ここまで敵意を露わにできるというのは、それを強く支持する国民が一定数以上いることの何よりも明確な証左でしょうし、それが圧倒的に多数を占めていることは、対日融和的な姿勢を示している現与党の支持率低下を見れば明らかです。

    かつて「韜光養晦 」を唱えた鄧小平のように深謀遠慮に長けた人物が、韓国の政界にいたならば我々ももう少し身構える必要もあるのでしょうが、幸いにして現在の韓国にはそういった恐れ(?)のあるヒトは全くと云っていいほど見当たりません。

    ある意味、彼らは実に分かりやすい種族だといえそうです。あそこまで敵意を露骨に示してくれれば、彼の国に何事が起きようとも、何ら助けることなく安心して放置できますからね。

    とりあえず、今の私たちが最も気をつけなければならないことは、おバカな隣国のことなどではなく、我が国の現政権が見せている些か怪しい動きの方でしょう。

    いずれは解散も視野に入れないといけないのでしょうが、そのタイミングを岸田氏はきちんと見測れるのかどうか、どうも危ういような気がします。今後も要注意でしょうね。

  4. カズ より:

    >李在明氏自身の発言、一周回って現在の日本の立ち位置に近い
    両国間に生じる李-岸の流れ(離岸流)には期するものがありました。

  5. より:

    JBpressの以下の記事によると、李在明氏の背後には90年代に跋扈した主体思想派が構えているようです。主体思想派というのは、要するに「北朝鮮こそが正統性を持った政権であり、韓国は米帝が捏造した傀儡政権に過ぎない」と固く信じている連中です。

    https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72218

    つまり、韓国国会は主体思想派によって握られており、何があろうと北を非難するどころか、強く当たることすらもできないということになります。せめて朝鮮半島問題にくらいは役立つ(かもしれない)だろうと、日米韓の枠組み維持を推進してきた人たちにとっては、いい面の皮というべきなのかもしれません。
    李在明氏が殊更日本を罵倒するのは、「反日」以外に何も売りがない同氏にとって、唯一元気になれるテーマですし、背後の主体思想派にとっても、日米韓という枠組みは目障り以外の何物でもないので、日米韓という枠組みの有効性を削ぐ意味でも、李在明氏の強固な反日姿勢は十分容認できるものであるはずです。むしろ、主体思想派としては、李在明氏がキャンキャン吠えてくれた方が、彼らの真の目的を覆い隠してくれるという意味で、好都合なのかもしれません。李在明氏が市長や知事になり、大統領選でも僅差にまで持ち込んだということは、「反日」を激烈に叫ぶだけで支持してしまう韓国人がけして少なくはないことを示しているからです。彼が「反日」を叫んでいる間に、主体思想派としては、韓国の弱体化と将来的な北による統一に着々と歩みを進めることができるというわけです。

    以上はちょっと「面白く」し過ぎたきらいはありますが、十分あり得る話なのかもしれないと思っています。実は、李在明氏が共に民主党代表に選出されたと聞いた時、あれほど疑惑に塗れた人物を代表にするだなんて、何を考えているのだろうと疑問に思っていたのですが、上記のように考えると、あらためて腑に落ちたのでした。

  6. まんさく より:

    韓国では南北統一が叫ばれることが度々ありますが、韓国国内をみると国内ですら統一どころが分裂がすすんでいます。

    和を持って良しとする日本人には理解不能の価値観ですが、人を踏みつけていないと我慢できない人ばかりと考えれば簡単に理解できます。

  7. 妖怪変化 より:

    朴斗鎮さんの見解にいつも納得させられているものとして、参考までに一つの意見を紹介します。

    韓国のいわゆる民主派と保守派。野党系・支持派と与党系・支持派は拮抗しているとよく言われます。
    3・3で、中間が残りでしょうか。東西地域対立ともいわれています。しかも、民国発足以来の対立であり、併合時代・それ以前からの因縁ともいわれます。
    それらの根拠・出自については触れないとして、いわゆる民主派と保守派の対立としてみると誤ります。むしろ権益・利権対立(旧来・現在)とみるのが近いでしょう。
    だから軍事独裁からろうそく革命による民主化という時代変化も額面通りではありません。
    もちろん、併合時代の近代化や韓国戦争と呼ばれる激変を経て、大きく封建制や頑迷な「儒教」文化から脱皮してきたことは間違いないでしょう。特に若者はそうです。
    それでも、中国在留朝鮮族や在日に対する侮蔑差別は、在米在加の韓人に比して、広く言えばアジア等の後進国出身者にたいして、その態度は過去の経緯を度外視しても説明できません。
    北および中国の工作による韓国のおかしな動向は、日本と比べて容易に動すことができるほど強固であることは置いておくとして、ろうそく革命は民主を実現したのでしょうか?
    民主化が進んだことは事実だとしても、その勘違いを指摘する声はほとんど聞こえてこないというのが実情です。
    日本の「差別や敵視・再侵略」?について大なり小なり反発し、中国の天安門前後からの反日教育と同じで一貫して行われている反日教育は、実は捏造であっても「正義」の歴史を学び反日が大儀であるとすることで自己を肯定し、反日こそは反軍国主義反ファシズムつまり民主化なのだとよくいって自己満足しているものです。疑問に思っている人はどれだけいるでしょう。
    これだけではありません。まだ2世代しかたっていない民主化の揺籃は様々な旧習悪習から自由ではありません。
    権益や利権だらけなのに加えまだ公がありません。(中国も同じ) 公私とは、親族一門・仲間とそれ以外のことです。つまりは私かあるいは敵です。公を権力とみれば韓流華流のドラマもおおよそ納得できます。
    大きなことは言えないにしても、頭の隅においとくだけで一助になります。
    茶化したり揶揄することもありでしょう。韓国内部で公平なことを言えば、危険です。(もちろん近所の大国も同じ)
    それでも、同じ水準にならないでいただきたい。非難される言動はどの国でも許されるものではありません。ある国の真っ当な人たちに不当であれば、自らを貶めることになります。

    出過ぎた意見であれば、ごめんなさい。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

まんさく へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告