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    Categories: 金融

韓国銀行が国民年金と為替スワップで合意=韓国通信社

現在の韓国が通貨危機と金融危機の両方を避けることは難しい

韓国メディアの報道によれば、韓国銀行が国民年金と「為替スワップ」を結ぶのだそうです。13年6ヵ月ぶりに1ドル=1400ウォンの大台を軽々突破するなか、韓国では通貨危機への懸念が日々高まっているようですが、正直、これも「焼け石に水」の感は否めません。ただ、やはり究極的な問題は、韓国の通貨当局がウォンの国際化や金融機関の育成を怠ってきたこと、金融機関の放漫経営を許してきたことのツケが来ている、ということに尽きるのだと思います。

ウォン安と円安の根本的な違い

世界的なドル高のあおり受けた主要通貨安

昨日の『鈴置氏「韓国が通貨危機に陥る可能性が増した」と警告』を含め、当ウェブサイトで最近、頻繁に取り上げるようになった話題のひとつが、隣国・韓国の通貨安、というものです。

「米国人の前では米国とスクラムを組むと言い、中国人の前では中国との協力を約束する」という「二枚舌」を使う国に、米国はいったいどういう「お仕置き」を与えるのか――。これまで血を流してまで韓国を守ってきた米国にとって、韓国の米中二股外交は侮辱そのものです。そんな国に対しては、「通貨を使ってお仕置きをする」だろう、というのが韓国観察者である鈴置高史氏の予想です。ただ、今回の鈴置論考の最も重要な点は、日本も「目を皿のようにして状況を見守らねばならない」、という指摘ではないでしょうか。日本には通貨危機は...
鈴置氏「韓国が通貨危機に陥る可能性が増した」と警告 - 新宿会計士の政治経済評論

繰り返しで恐縮ですが、現在の世界の為替市場で生じている現象は、ドル資金の供給量が減少していくことを見越し、世界各国の主要通貨がドルに対して下落する、というものです。

もちろん、なかには香港ドルや中東湾岸諸国通貨、シンガポールドルのように、米ドルにペッグ(固定)ないし連動しているような通貨の場合や、ロシア・ルーブルや人民元など、資本統制が加えられているような通貨の場合のように、米ドルに対して急落しているとまでは言い切れないケースはあります。

しかし、資本移動の自由が保障されている国の通貨は、たいがい、米ドルに対して下落しているのです。

これは日本円・英ポンド・ユーロ・北欧系通貨といった先進国通貨であろうが、トルコリラ・韓国ウォン・インドルピーといった新興国通貨であろうが、状況は大体似たようなものである、という点については、『BIS統計で確認する世界通貨安:本質は「ドル不足」』でも指摘したとおりです。

国際決済銀行が公表している主要国の米ドルに対する為替相場を確認してみると、新興市場諸国だけでなく、先進国通貨なども下落していることがわかります。ただ、通貨安のインパクトは先進国と新興市場諸国で等価ではありません。日本は友好国(たとえば台湾など)の通貨危機を防ぐため、通貨スワップや為替スワップなどの金融支援手段を積極活用すべきではないでしょうか。ドル高を受け、新興市場諸国を中心に通貨安が続いています。こうしたなか、国際決済銀行(BIS)がほぼ毎週のように公表しているデータのひとつに、主要通貨の...
BIS統計で確認する世界通貨安:本質は「ドル不足」 - 新宿会計士の政治経済評論

米ドルの供給主体である米連邦準備制度理事会(FRB)が金利を引き上げるとともにバランスシートを圧縮すると宣言している以上、ドル資金供給量が今後、急速に引き締められていくことを市場参加者が予見するのは当然のことですし、しばらくこうした為替市場の不安定な地合いは続くはずです。

円安とウォン安の大きな違い

さて、「自国通貨が下落している」という状況は、日本でも韓国でも似たようなものです(※というよりも、年初来の下落率で見ると、むしろ日本円の方が韓国ウォンよりも大きいほどです)。

ただ、韓国で話題になっている「外貨資金流出懸念」、「通貨危機懸念」が、日本では議論にすらなりません。これはいったいなぜでしょうか?

その理由は簡単で、日本の通貨ポジションが大変に強いからです。つまり、①日本円が国際的に通用するハード・カレンシーであり、②日本では大規模金融機関が存在し、③日本が資金を外国に貸し付けている国であること、という事情が大きいのです。

裏を返せば、①韓国ウォンは国際的に通用しないソフト・カレンシーであり、②韓国には大規模金融機関が存在せず、③韓国が資金を外国から借り入れている国であること、ということでもあります。

日本企業の場合は、そもそも一部のメガバンク、商社などの特殊な業態を別とすれば、基本的にわざわざ外貨を借り入れなくても、普通に事業を営むことができます。町工場でも大手メーカーでもスーパーマーケットでも、「日本円」というおカネさえ調達してくれば、仕入も設備投資もできてしまうのです。

また、輸出入企業のなかには、米ドル、ユーロなどの外貨を必要とする企業もあるのですが、日本の場合、自国通貨である円をそのまま貿易に使うことができますし、財務省が公表する『貿易取引通貨別比率』などによれば、貿易相手地域によっては円建取引のシェアが半数前後に達していることもあります。

ちなみにアジア地域に対する日本企業の輸出取引についてはだいたい50%前後が円建取引ですし(図表1)、欧州連合(EU)からの日本企業の輸入取引については、近年、円建取引のシェアが50%を超えているようです(図表2)。

図表1 日本企業の貿易における通貨別シェア(対アジア、輸出取引)

図表2 日本企業の貿易における通貨別シェア(対EU、輸入取引)

(【出所】図表1、図表2ともに財務省『貿易取引通貨別比率』を参考に著者作成)

ウォンの国際化は進んでいない!

しかし、韓国企業の場合、日本企業と異なり、自国通貨で貿易取引を行うことは比べてより多くの企業が外貨を必要としています。

韓国のビジネスモデルといえば、外国(とくに日本やドイツ)から高付加価値な「素材、部品、装備」(半導体製造装置や高純度フッ化水素など)を買ってきて、国内で組み立てて外国に輸出する、というものですが、多くの場合、その「素材、部品、装備」を韓国ウォンで購入することはできません。

輸入するための条件が「韓国ウォン以外」である場合には、その外国企業からモノを買ってくるためには、必ず外貨(米ドルやユーロ、日本円など)を入手しなければならないのです。

ちなみに余談ですが、財務省の統計で確認すると、日本企業もごくわずかではありますが、韓国ウォンを使った貿易決済を行っています。

対アジア貿易では2022年上半期(1-6月期)の輸出取引において韓国ウォンのシェアが0.8%を占めており、これは米ドル(48.6%)、日本円(43.6%)、人民元(4.1%)、タイバーツ(1.1%)に次いで5位ですが、正直、このシェアであれば無視し得るほど小さいと考えて良いでしょう。

外国からおカネを借りなければならない韓国企業の実情

以上より、韓国がなぜ、外国からおカネを借りなければならないか、何となく事情が見えて来ます。

そもそも韓国ウォン自体が国際的に通用する通貨であるならば、わざわざ外貨を借りる必要などありません。韓国ウォンでモノを買ってくることができないからこそ、仕方なしに、韓国は外貨を調達しているのであり、韓国企業がそうせざるを得ないのも、歴代の韓国の金融当局がウォンの国際化に向けた努力を怠ってきたからです。

考えてみれば、世界10位圏入りをうかがうような「経済大国」であるとされるわりに、韓国には大規模な金融機関(俗にいう「G-SIBs」)の本店がありませんし、また、預金量で見ても、韓国の全金融機関を足して、やっと日本の最大手である三菱UFJの2倍に達するかどうか、というレベルです。

したがって、韓国企業は韓国国内の金融機関だけでなく、外国の金融機関とお付き合いせざるを得ないのでしょう(ちなみに国際決済銀行の国際与信統計【※英語】によると、2022年3月末時点において最も多いのが米系金融機関、2番目に多いのが英系金融機関で、3番目に多いのが日系金融機関です)。

逆にいえば、昨今のようにドルの流動性が干上がるような局面においては、これまで韓国企業におカネを融通してきた米系金融機関などが、韓国企業にこれ以上おカネを貸すことができなくなる、という可能性が上昇する、ということでもあります。

これまでに何度となく触れてきたとおり、「通貨安」自体もさることながら、韓国経済が本当に困るのは、通貨安を生じさせている「原因」である「金融市場におけるドル不足」による資金ショート・リスクです。

1997年のアジア通貨危機、2008年の世界金融危機、2020年のコロナ禍の共通点は、まさに短期金融市場からドル資金が枯渇するという現象であり、体力が弱い新興国や借入過多の新興国、高インフレの新興国からは、外貨資金が逃げ出しやすい状況が生じているのです。

その最もリスクが高いグループといえば、G20でいえばトルコやアルゼンチン、インドネシアであり、韓国です。

しかも、韓国の場合は「外貨準備高が4364億ドル(※8月末)であり、短期の対外債務を十分に上回っている」などとされているのですが、その内情は非常に怪しいもので、はすぐに換金できない資産が半額近くを占めている可能性が高いようです(『韓国外貨準備データと米財務省データの「大きな差額」』等参照)。

韓国の外貨準備高がどうも怪しいのではないか、といった仮説は、当ウェブサイトでもずいぶんと提示してきた論点のひとつですが、やはり調べるほどに怪しさは払拭できず、疑惑はさらに深まる格好です。IMFが公表する韓国の外貨準備高のうち証券の残高と、米国財務省が公表する韓国が保有する米国債等の債券の残高を比較すると、両者には埋められない差が存在しています。また、なぜ韓国がFIMAレポではなく為替スワップを欲しがっているのかのヒントも、このあたりにあるのかもしれません。韓国の外貨準備はピーク時から309億ドル...
韓国外貨準備データと米財務省データの「大きな差額」 - 新宿会計士の政治経済評論

スワップ、スワップ、スワップ

なぜ米韓為替スワップは期待できないのか

こうしたなかで、やはり韓国から聞こえてくるのが、「韓米通貨スワップ」、「韓日通貨スワップ」といった、「通貨スワップ」への待望論です。

ただ、さすがに昨今の日韓関係に照らし、日本が日韓通貨スワップないし日韓為替スワップの締結に応じる可能性はほぼゼロでもありますので(※著者私見)、最近だともっぱら「韓米通貨スワップ」(※厳密には米韓為替スワップ)への待望論がよく聞こえてきます。

酷いケースでは、『「韓米通貨スワップ協定を今週発表」報道を韓銀が否定』などでも取り上げたとおり、「米国が通貨スワップの締結に同意してくれた」などとする観測報道(というか、単なる飛ばし報道)も乱れ飛んでいるようです。

またもや「通貨スワップ」です。ロイターによると、「今週中に600億ドルを超える規模の韓米通貨スワップ協定が発表される見通し」とする韓国国内のネットメディアの報道を巡り、韓国中銀は21日、「事実ではない」とする声明で否定したのだそうです。ただ、FOMC直前でもあり、また、ロシアのプーチン大統領が「国家存立危機において予備役の召集等の部分動員を行う」などと述べたとする報道もあるため、市場のリスク選好次第では外為市場にも混乱が生じるかもしれません。「韓国が米韓通貨スワップの締結を希望しているが、現時点に...
「韓米通貨スワップ協定を今週発表」報道を韓銀が否定 - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、『韓国主要紙が相次いで「米韓通貨スワップ」締結を要求』を含め、当ウェブサイトではこれまでに何度となく指摘してきたとおり、米国政府が米韓為替スワップ締結で合意する可能性は、ゼロです。

韓国の主要紙が「5月の米国との約束に基づき、韓米通貨スワップを推進せよ」、などといっせいに騒ぎ出しました。このあたりはまったく予想どおりなのですが、その一方で韓国メディア『中央日報』には逆に、「脈絡のない通貨スワップ締結主張でむなしくなる代わりに外国為替市場安定に向け自分たちができることから探してやらなければならない」、などとするコラム記事も掲載されているようです。韓国に迫る通貨危機の脅威脆弱すぎる韓国の金融システムと資金調達力私たちの隣国である韓国は、GDPの規模でこそ世界10位圏内をうかが...
韓国主要紙が相次いで「米韓通貨スワップ」締結を要求 - 新宿会計士の政治経済評論

韓国メディアは「通貨スワップ」と「為替スワップ」の違いを理解していないフシがあるのですが、「為替スワップ」、正式には「外為流動性供給スワップ」とは、その名のとおり、短期資金市場に外貨の流動性を供給することを目的とするスワップです。

通貨スワップの場合、借り入れる主体は、あくまでも中央銀行である韓国銀行です。韓国銀行は相手国中央銀行から借り入れた資金を、極端な話、通貨防衛(ドル売り・ウォン買いの為替介入)に使用しても構いません。

しかし、為替スワップの場合、資金を借り入れるのはあくまでも市中金融機関です。担保としての韓国ウォンをNY連銀に差し入れる義務は韓国銀行にあるのですが、ドル資金は韓国銀行を通らず、直接、韓国の市中金融機関に提供されるのです。

為替スワップで借り入れた資金を韓国銀行(中央銀行)が通貨防衛に使うことはできませんし、お金を借りた以上、その金利は借り入れた韓国の市中金融機関自身が米FRB(実務的にはニューヨーク連銀)に対して支払う必要があります。

そして、こうした「流動性供給スワップ」は、金融市場に資金を供給するためのツールでもあります。NY連銀が韓国ウォンという「外貨」を借り入れ、それと引き換えに米ドルという資金を市場に供給しているのと同じであり、米国債などを買って米ドルを市場供給するという「量的緩和政策」と、経済効果自体はそっくりです。

したがって、そもそも為替スワップの管轄は米国政府ではなく米FRBであり、その米FRBも「金融引締め」を行うと宣言している以上、ニューマネーを市場供給するという意味での為替スワップ協定を新規で締結する可能性は、非常に低いと考えるべきなのです。

「国民年金との通貨スワップ」

ところが、韓国メディアで「韓日通貨スワップもない」、「韓米通貨スワップもない」、となってきたときに、意外な「スワップ」論が浮上してきました。

韓国メディア『中央日報』(日本語版)に木曜日に掲載されたこんな記事が、その典型例です。

韓銀総裁「国民年金と通貨スワップを協議中…近く発表」

―――2022.09.22 14:04付 中央日報日本語版より

中央日報によると、李昌鏞(り・しょうよう)韓国銀行総裁が22日、「国民年金との通貨スワップを協議している」と述べた、というものですが、この記事では詳細はほとんど触れられていません。これについては翌・金曜日に出てきた、こんな「続報」が参考になるでしょう。

ウォン安ドル高止まらず…年金基金・輸出企業管理、韓米通貨スワップ示唆の韓国政府

―――2022.09.23 08:54付 中央日報日本語版より

これによると、韓国銀行としては「内部者管理」として、国内の年金基金や輸出入企業が「過度なドル両替」を行うことを防ぐために、韓国銀行が保有する米ドルを(おそらくは市場外で)これらのドル需要者に提供することにする、という構想だそうです。

もっとも、中央日報は、「輸出入企業の管理も、韓銀・国民年金間の通貨スワップも、根本的な処方にはならない」と述べます。

FRBが金利引き上げを続ける方針を明確にしているからだ。韓米間の政策金利差がさらに広がればドル不足は深刻になるしかない。8月に経常収支が赤字に転じ、9月の輸出減少が公式指標で確認されれば、さらに大きな問題だ」。

これは、まったくその通りでしょう。

日本は金曜日、秋分の日の祝日でしたが、韓国では平日であり、為替相場は動いています。

韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の速報によれば、韓国の外為市場の終値は前日比0.4ウォン高の1ドル=1409.3ウォンだったそうです。しかし、WSJのマーケット欄では、日本時間金曜日深夜時点では1ドル=1418ウォンにまでウォン安が進んでいました。

週明けにいったいどうなってしまうのか――。

最終的には「為替スワップ」で合意へ?

こんなことを考えていたところ、金曜日の夕方時点で、もうひとつ、非常に気になる報道を発見しました。聯合ニュースの次の記事です。

国民年金と韓国銀行 14年ぶり為替スワップ再開へ

―――2022.09.23 17:11付 聯合ニュース日本語版より

これは上記中央日報の記事で触れられていた話題の「続報」のようなものですが、こちらの記事のタイトルでは、なぜか「通貨スワップ」ではなく「為替スワップ」になっています。

聯合ニュースは韓国保健福祉部が23日、国民年金が韓国銀行との間で10月中に100億ドルを限度とする為替スワップ契約を締結することに決めたと発表したと報じました。

聯合ニュースによると、「為替スワップ」とは、「通貨スワップの形式を利用して短期の資金繰りを行う契約」を意味し、国民年金が海外投資に必要なドル資金を韓国銀行から調達できるようにするという性質のものだそうです。

国民年金と韓国銀行は、2005年にも同様の為替スワップを締結していたのだそうですが、2008年の世界金融危機時の韓国銀行における外貨不足を理由に契約を解除していた、などとしています。

契約が締結されれば、国民年金は海外投資のために外貨が必要な際、外為市場でドルを買い入れるのではなく、韓国銀行が保有するドルを調達して投資し、それに応じた額のウォンを支払うというもので、国民年金側には取引リスクと費用の削減、韓国銀行側は外為市場の安定、というメリットがあるのだとか。

なんだか、これも「焼け石に水」、という感があります。

この期に及んで米韓「通貨スワップ」を検討=韓国政府

ちなみに先ほども触れた中央日報の記事では、この期に及んで、「最後の砦である韓米通貨スワップ」を韓国政府が示唆している、と報じています。

具体的にはこの日、尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領がジョー・バイデン米大統領との間で、「両国が必要に応じて金融安定のための流動性供給装置を実行するために緊密に協力」することに合意したと伝えられた、などとしています。

「たった48秒の会談でそんな合意ができるのか」、「為替スワップは米国政府の管轄外ではないか」、「本当に米国が『流動性供給装置』などと発言したのか」、といった数々のツッコミどころについては、この際、敢えて口に出さないことにしたいと思う次第です。

ちなみに韓国メディアに関する話題でいえば、こんな「社説」にも、いちおうは触れておきましょう。

【社説】米国が3回連続0.75%利上げ、衝撃を防ぐべき=韓国

―――2022.09.23 13:29付 中央日報日本語版より

記事タイトルだけで何となく内容がわかってしまいますが、「米利上げの衝撃に備えるために、政府は輸出を増やし、貿易赤字を削減するなどして衝撃を防ぐべき」、などと主張するものです。社説でそう書くわりに、具体的にどうやって貿易赤字を削減するのかに関する詳細の説明はありません。

そもそも現在の韓国は、利上げをすれば家計債務が返済能力を超えて破綻し、結果的に金融機関が巨額の貸倒引当金の計上・貸出金償却などを余儀なくされ、資本不足に陥る(かもしれない)という「金融危機」が、利上げをしなければ米韓金利差によって外貨が韓国から逃げていく(かもしれない)という「通貨危機」が、それぞれ手ぐすね引いて待っています。

正直、どちらかを避けるためにはどちらかを容認するしかありません。

言い換えれば、中央日報のこの「社説」で具体的な処方箋がほとんど提示されていない理由も、この社説を執筆された方が、「通貨危機と金融危機の両方を回避する妙案はない」ということを理解しているという間接的な証拠なのかもしれません。

荒療治ができますかね?

さて、まとめておきましょう。

そもそも金融機関の放漫経営を許してきたのは韓国の金融当局ですし、韓国の金融機関を育成してこなかったのも、韓国ウォンを国際通貨にしてこなかったのも、歴代の韓国政府、韓国銀行などの不作為の結果に過ぎません。

この点、米韓為替スワップや日韓通貨スワップ、日韓為替スワップなどを結べば、一時的に外貨流動性不足を回避することはできるかもしれませんが、根本的な通貨・金融政策の失敗のツケをどこかで払う必要はあるため、スワップは問題の先送りにしかなりません。

しかも、米韓為替スワップはFRBの金融政策との都合上、日韓通貨スワップ、日韓為替スワップは日韓関係との都合上、いずれも期待できません。

そうであるならば、家計債務が破綻するのをいとわず、韓国銀行としては大胆にFRB並みの「ジャイアントステップ」で利上げを行い、米韓金利差をなくし、金融機関の経営破綻に際しては韓国政府が公的資金で救済するのが筋ではないかと思います。これがいわゆるハード・ランディング(荒療治)です。

ちなみに日本は前世紀末から今世紀初めにかけての不良債権問題を自力で乗り切りました。韓国も「世界10位圏内」をうかがう経済大国なのであれば、不良債権や外貨流動性問題を自力で乗り切っていただくべきですが、問題は、「現在の韓国政府と韓国銀行にそれができるかどうか」、でしょう。

あるいは、それが無理なら4000億元という巨額の通貨スワップを提供してくれている中国に救済をお願いするのでしょうか?

このあたりは、興味が尽きないところです。

新宿会計士:

View Comments (54)

  • いっそのことドルを韓国内で流通させれば通貨安とか問題にならないんじゃないかな?

    新宿会計士様が、かつて指摘してたように、韓国の北の方ではドルを刷ることができるんだから、多分、簡単なことなんだと思うのです♪

    • 【独自】
      韓国政府、カリオストロ公国と通貨協定を発表
      「全世界的にドル紙幣が不足している状況において、北の同胞たちばかりでなくカリオストロ公国と協定を結ぶに至ったことは光栄である」

      • それ「どこの国の通貨」か書いてくれないと…。

        ●形「世界中の国の偽札だー!とんでもないものを見つけてしまった!」

      • 「こちらは懇談中継報道隊です
        「ぁ、これはどうしたことでしょう。何か起きています
        「カメラさんぐっっと近寄って
        「ご覧ください、憮然とした表情です(ぱしゃ」

    • 韓国国内でのドル流通、私もそれは悪くないと思います。ただし、韓国国内の需要を賄える程のドルは足りないでしょうし、スーパーKやゴート札でも間に合わないでしょうから、1ドル1200ウォンに固定してドルペッグ制にする方が現実的です。
      その代わり、独自の金融政策は取れなくなります。

    • ネタはすでに十分そうなので真面目に考えますと、この場合新宿会計士さんの過去の記事でも登場している「国際金融のトリレンマ」のうち、「金融政策の独立性」を諦めることを選択することになります。
      この場合、韓国ができなくなる事の一つとして「政策金利の決定」があるため、今のアメリカの志向に従うということはジャイアントステップの3段飛びを行うという事です。
      つまり、やったら家計が借金の利息で死ぬ。

    • 皆様

      コメントありがとうなのです♪

      まぁ、正直なところ、ハードランディングであれ、ソフトランディングであれ、韓国のお好きなようにすれば良いと思うのです♪

      ただ、新宿会計士様が掲げている
      >いわゆるハード・ランディング(荒療治) と
      >中国に救済をお願いする
      というふたつの対処方のうちどっちが日本にとって望ましいかってことなのです♪

      ハード・ランディングで、一時的に金融機関とかがダメダメになっても、その後、万が一、
      >不良債権や外貨流動性問題を自力で乗り切って
      しまって、韓国が強い経済を持ってしまっちゃうと、日本にとっては何かとデメリットが大きいように思えるのです♪

      一方で、
      >中国に救済をお願いする
      って方は、その結果として韓国が中国に首根っこを掴まれて、中国の言いなりになっちゃったりすると・・・・
      すると・・・
      ( ̄ー ̄?).....??アレレ??
      ・・・
      うん♪ いまと変わんないんじゃないかな? 
      (゚∇゚〃)ナットク!

  • 韓国通貨危機を回避する為の穏健なる提案です。

    この際、韓国は韓国通貨の変動相場制を捨てて、韓国の原点に回帰して、韓国通貨の価値の裏付けを金本位制(キムほんいせい)にすれば好いのです。幸い韓国にはキム姓の方々が多数存在するので、1ウォンを出せばキムさんを一人購入出来るという事です。

    当然人身売買が復活しますが、「日帝強占時代以前には普通にあった4900年の歴史を誇る文明独立国朝鮮の風潮であり、日本の干渉以前の状態に帰るという点で、誇り高い半島の住民の皆様には納得が行く制度だと思います。

    • >金本位制(キムほんいせい)
      >人身売買が復活

      実施するのは(クーデターで?)大統領に返り咲いた文在寅で、
      これを「文(ムン)民統制」と呼ぶのでしょうね

  • これは、愚かな経営者が破綻するまで同じ手口で金を調達すのに似ています。
    彼の国は、自国が困れば日本と云う福袋を“慰安婦(自称)だ!徴用工(自称)だ!”揺すれば金が落ちて来ると考えているのでしょう。
    それは、建国以来彼等の経済ルーチンに組み込まれ国の経済が悪くなってきたぞ福袋を揺する時期だ!とさも日本が彼の国の無策のケツ拭き業者の様に扱い、新たな大統領が就任する度に“前の大統領には日本は金を出したから今回もお前達に金を出させてやる。幾ら何でも何も無しでは出せないだろうから、今回の名目は通貨スワップにしておいてやる”って訳です。
    日本も日本で、打たれ弱い外務省のボンボン達は「彼等は何か言うと直ぐ逆ギレして凄むんですよ」とか「先方も『今回でもうお願いする事は有りませんから…』と言って下りましたから…」と金を出して来た訳です。
    出した後は「日本は許して欲しいと金だけ出した」とか吐かすのです。
    どちらが、金を持ち世界で信用されているか?を判らせる時が来たのです。
    彼の国よ、世界経済の荒波に溺れよ。
    長々とすいません。

  • このニュース・・・
    何度読んでも国内で為替スワップをすることの意味が全然分からなくて、ずっとモヤモヤしています。
    この記事で、なんとなく分かったような気がするけど、今イチすっきりしないです。
    結局、国内で持っているドルをぐるぐる回すための合意を結んだという理解でいいんでしょうか。
    そんなん、普通に出来ることじゃないの?
    つうか、そういうのをコントロールするのが中央銀行の役割じゃ無いの?
    わざわざ国内で「スワップ」にする意味は?
    「スワップ」いいたいだけなんと違う?

    彼等の行動の着地点が見えないから全然理解できないんですが、分かったからといって私の生活に影響があるわけでもなさそうだしなぁ。
    でもやっぱりモヤモヤします。

    • 「スワップ」と呼ぶなぞ、この期に及んで未だ言葉遊びをしていますが、要するに「徴発」では?

      • 市場外での疑似ウォン買い介入という事でしょう。

        韓銀が市場(相手はどこの外国人か判らない、空売りかもしれない)にドルを供給する代わりに少なくとも自国民の代理である国民年金に直接ドルを供給し海外でドル資産を買わせる。

        外貨不足に陥った国が、輸入代金の外貨割り当てを行うようなものでは?

    • 恐らく、です。
      資産を少しでも増やしたい国民年金は、海外の株運用などで、預かった資金を増やすべく運用するのでしょう。当然、海外運用なので、ウォンでドルを買うことになります。
      (ウォン売り、ドル買い)
      このように国民年金が外為市場で、巨額のドル調達するとウォン安に拍車がかかって、悪影響がでるので、政府は国民年金に直接ドルを貸すから、外為市場でウォンを売るな、という事にしたのではないかと思います。
      見当違いならゴメンナサイ。

    • https://money1.jp/archives/89661

      国民年金基金が市場におけるクジラであるためです。
      国民から徴収して積み上がった巨額の資金を増やさないといけないので、あちこちに分散投資を行うのですが、資金が潤沢であるため国民年金基金が動くと市場に大きな影響を与えます。
      Money1でもご紹介したことがありますが、「国民年金基金」は投資先のポートフォリオを韓国内から海外重視にシフトしています。

      韓銀手持ちドルが減っていますし、取れる手段が余りにもなくなってきたからだからとおもわれます。
      K人ですから、着地点などは考えてはいないのでは。
      最終的に金利引き上げ、自業自得で破産続出させ見捨てるのでは?

      特に何かを考える行動でなく、その場しのぎの行動でしょう。

    • まりも様

      >国内で持っているドルをぐるぐる回すための合意を結んだという理解でいいんでしょうか。

      いやいや、多分そうじゃないはず。国民年金が保有している換金性の高いドル建て債券を韓銀がウィンで買い取って為替介入資金に溶かすのか、あるいは。例えば海外でヤバい信用取引をやって多額の追い証が発生した国民年金に、韓銀が外貨準備からドルを融通してやるのか、そのどちらかは分かりませんが(唐突さから考えると、後の可能性の方が高そう)、いずれにしてもドルは国内から流出していき、外貨の枯渇は一層進む。

      そして、多分もう返っては来ないでしょう 아이고。 合掌。

      • 失礼。

        為替スワップですから「買い取って」ではないですね。一時的に「ウォンと交換」が正しいんでしょう。だけどまたドルに替えて返せるのかな?

    • 韓国の年金基金がドル建の債券投資をするに場合、通常は市場にて手持ちのウォンを売ってドルに交換し、そのドルをもってドル建て債券を購入する流れです。これに対し、彼らのいう「国内スワップ」とは、ドル建て債券購入に必要なドルを市場ではなく、韓銀で購入するということだと思います。
      この場合、市場を通さず相対取引ですので、取引が為替相場に与える影響はありません。ウォン安に悩む韓銀&韓国政府にとっては有利です。
      ここからは推測ですが、韓銀は外貨不足を理由に外貨の提供を拒否したり、市場よりもドル安のレートでの交換を強要(年金基金にとって不利なレート)する可能性が考えられます。また、裏ではドルの融通を期限付きにして、購入したドル建て債券を韓銀に担保によこせといっているかもしれません(韓銀が債券を担保にドルを調達するため)。
      いずれにせよ、韓国の年金基金にとってはメリットのない契約となる可能性大です。

  • 日本も先日、為替介入しましたが投資家に一瞬だけ冷や水を与えただけでしたね、韓国も同じだと思いますスワップスワップってチョット騒ぎすぎじゃ無いですかね。
    物価が多少上がっても、ここ何年間?国民所得が日本の倍近くに上がって居るのですから、輸出が好調なら別に問題ないんじゃ無いかなっと思いますがね。

    • まあ、新宿会計士さんが言われている通り、「円安とウォン安の大きな違い」なんでしょうね。
      日本は円決済で輸出入できるからドルの変動も許容できる。
      (ただマネーゲームは困るのでゲリラ的な為替介入はする。)

      韓国は常にドル決済なので為替変動がそのまま経済に影響する。
      だからレートが高くても低くでも騒ぎになる。

    • ”条約・合意を守らない。嘘つき、コソ泥推奨”国は
      その輸出が好調ではなく、貿易赤字が膨らんでいるようです。
      なので、自転車操業の運転資金の枯渇を皆さん心配しているのです。

    • スワップと言っておくと、いかにも無尽蔵にドルが出てくるように思えて、市場を騙せる、国民を騙せる、自分も騙せると思っているのでしょう。
      実際はタコが自分の脚を喰っているだけなんでしょうけど。

  • 内輪での外貨融通だからと、外貨準備高の公称額を減じないつもりなのでしょうか?

    • 韓国の国内通貨での基金を持った団体が海外投資の為の米ドル資金調達を韓国ウォンを韓国銀行の「手持ちの米ドル」引とき換えして使うのですから、韓国銀行の外貨準備高はその分減るのでは?
      (判り難い言い回しで失礼します。)

      なんだか為替レートとか手数料とか返済期限に透明性が無ければ、韓銀のエライさん達の天下り先確保の策の一つに見えてしまいます。

      • そうです。財布の中身(すぐに使えるおカネ)は減るんですよね。
        アジア通貨危機時(民間に融通して手持ち無し)の二の舞かもと。

        国民年金から差し出されるのが米国債とかなら、状況も違うんでしょうけどね。

        • オレは経済の事や仕組みはわからないけども、国民年金とスワップをして、年金から調達したドルが溶けたら、どうなるんだろう。通貨防衛にカネを突っ込んで、介入を続けるんだろうからな。ネタは割れているんだから、ウォン売りを浴びせ続けられれば、いつかは終わる。国民年金の支給はどうなるのか。

          • 国民年金自体はウォンで支給される性格のものですので、政府が使い込んだのであれば政府が刷った”ウォン札(*痛貨?)で尻をぬぐう”ことになるのでしょうね。

            *紙幣の表層は鋭利なため、物理的なご利用はお控えください。(局所にもツラの皮と同じ厚みを要します)

        • 仰る通り、これは韓国銀行が国民年金の名義を借りて外貨市場でウォンを米ドルに換金してもっと投機性の高いギャンブル的な投資をするための口実かも。

        • 国民年金が差し出す担保が米国債ってことはあり得ないでしょう。米国債なら、どこに持って行ってもドルを貸してもらえますから、わざわざ韓国銀行に出す必要がないのです。
          100%自国通貨建て債券でしょうね。

          で、間違いなく外貨準備の中の「現金、預金」の項目がスワップの実行により減少します。「証券」の項目は受け取る担保が外貨建てでないので一切増えません。外貨準備は減っちゃいますね。さらに流動性が高く、介入の実弾になる部分が減るので、為替市場への睨みも効かなくなる。スワップの名で誤魔化すだけの愚策ですよね。

          • 仰る通りですが、この前提は、まともな国・機関であればですね。
            詐欺師は外貨準備を減らすことはしないと睨んでいます。

          • 言葉修正します。
            詐欺師は、外貨準備の公表額をこれによって減らすことはしないと思います。

  • 国民年金の急銭ドル需要って何なんでしょうね。
    年金資金がウォン・国を捨てて逃げると言うことはちょっと想定できませんから、
    もしかして昨今話題のマージンコールの可能性があるかもしれません。
    外貨準備ですら収益目的の投資に使う南朝鮮ですから、
    年金資金で無理な投資をして,例えば大量お衣装発生とか南の場合は考えられると思います。
    >ブラックロックが6か月で1.7兆ドルの損失
    もしかして何らかの関係があるのかも・・・
    いずれにしろ南のドルの需要は増え続けます、南の保有するドル資金で解決するはずはありません。
    しかしこのスワップで、スワップ締結成功!と南朝鮮国民は安心するんでしょうね。

  • 外貨準備高は十分にある
    スワップなんて必要ない
    通過危機はこない、以前とは違う

    とたった数ヶ月前に言っていたのに、
    国民年金との良くわからん仕組みをスワップと呼ぶことで
    一喜一憂できる国民性ってなんなんでしょうね

  • 国民年金とスワップ。私みたいな凡人には、全く意味がわかりません。

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