BIS統計で確認する世界通貨安:本質は「ドル不足」
国際決済銀行が公表している主要国の米ドルに対する為替相場を確認してみると、新興市場諸国だけでなく、先進国通貨なども下落していることがわかります。ただ、通貨安のインパクトは先進国と新興市場諸国で等価ではありません。日本は友好国(たとえば台湾など)の通貨危機を防ぐため、通貨スワップや為替スワップなどの金融支援手段を積極活用すべきではないでしょうか。
ドル高を受け、新興市場諸国を中心に通貨安が続いています。
こうしたなか、国際決済銀行(BIS)がほぼ毎週のように公表しているデータのひとつに、主要通貨の対米ドル相場というものがあるのですが、これで今年の初めと比べた通貨別の騰落率をチェックすると、やはり新興市場諸国通貨だけでなく、さまざまな通貨が広範囲に下落していることがわかります(図表)。
図表 各通貨の騰落率(上位20通貨、対米ドル相場表示、9月19日時点)
通貨 | 対ドル相場 | 下落率 |
---|---|---|
1位:スリランカルピー | 201.00→359.00 | 78.61% |
2位:トルコリラ | 13.47→18.29 | 35.82% |
3位:ウクライナフリブニャ | 27.30→36.57 | 33.96% |
4位:ハンガリーフォリント | 319.95→401.25 | 25.41% |
5位:日本円 | 115.76→143.56 | 24.02% |
6位:スウェーデンクローナ | 9.06→10.81 | 19.32% |
7位:英ポンド | 0.74→0.88 | 19.05% |
8位:ノルウェークローネ | 8.81→10.29 | 16.89% |
9位:ポーランドズローティ | 4.03→4.71 | 16.76% |
10位:韓国ウォン | 1196.76→1393.21 | 16.42% |
11位:ニュージーランドドル | 1.47→1.68 | 14.74% |
12位:台湾ドル | 27.60→31.42 | 13.84% |
13位:クロアチアクーナ | 6.64→7.53 | 13.34% |
14位:ユーロ | 0.88→1.00 | 13.30% |
15位:ブルガリアレフ | 1.73→1.96 | 13.30% |
16位:デンマーククローネ | 6.57→7.44 | 13.29% |
17位:ルーマニアレフ | 4.37→4.93 | 12.94% |
18位:チェココルナ | 21.72→24.52 | 12.90% |
19位:フィリピンペソ | 50.99→57.40 | 12.58% |
20位:南アフリカランド | 15.85→17.74 | 11.98% |
(【出所】BISウェブサイト “Download BIS statistics in a single file”, US dollar exchange rates データより著者作成。なお、9月19日のデータがない場合はその2営業日前まで遡及した者を表示している。また、データが取得できない通貨についてはランク表に掲載していない)
このランク表、何らかの事情で直近の為替相場が反映されていないなどの通貨(たとえばアルゼンチンペソなど)については図表に出てこないのですが、この点を除けば、デフォルトしたスリランカが下落率でトップであるのを除くと、新興市場諸国を中心としつつも満遍なくさまざまな通貨が登場していることがわかります。
(※なお、アルゼンチンペソについては9月13日時点まで遡れば1ドル=142.58ペソでしたので、年初の103.15ペソと比べれば下落率は38.23%に達し、トルコリラを抜いて2位になるはずです。)
注目すべきは、(アルゼンチンペソなどを除けば)日本円が5位、スウェーデンクローナが6位、英ポンドが7位、スウェーデンクローナが8位と、先進国通貨も対ドルで大きく下落している、という事実でしょう。
ただ、やはり先進国通貨の場合はそれ自体がハード・カレンシーであるため、為替相場が下落してもこれらの国に通貨危機が発生することはあり得ませんが、新興市場諸国についてはそういうわけにはいきません。とくにトルコ、韓国、フィリピンといった国々で、ドル資金が借りられなくなる現象(いわゆる「通貨危機」)は懸念されます。
いずれにせよ、今般の新興市場諸国などの通貨安は、スリランカなどの事例を除けば、その正体はどちらかといえば「ドル高」であり、これらの通貨安ではありません。しかし、それと同時にドル資金不足が世界全体で生じているという事実は、これから新興市場諸国を中心に通貨危機が頻発する可能性を示唆しています。
やはり、日本にも、「友好国」(たとえば台湾)の通貨危機を防ぐために、1.3兆ドル近くに達する巨額の外貨準備を使った通貨スワップ協定や、日本円を使った為替スワップ協定などを展開するような外交が求められているのかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
台湾…
国葬儀のタイミングで目立たずサラッと…そんな外交姿勢も外交力も期待できない現内閣では無理でしょうかなあ
最悪中共と米国の顕言応酬に塞んでナニもできないとか???
総理大臣になることだけが目的で、なってから何をしたかったのか?がまるで無い財務省の操り人形の岸田総理に気の利いた外交を期待するには無理がありますね。検討を加速することだけで精一杯のご様子で、立法、行政すべてにおいて官僚管理内閣ですので、早く菅元総理の再登板に期待したいと思います。
二国間通貨安定を基板とした日台経済産業一体化構想なんてのがあり得るとして、夢見るには楽しい未来です。
日本を食い潰すために、半島や大陸から人が押し寄せるのはもううんざりですから。
今日の夕方5時から30分くらいの間に5円くらい円が高騰した。
日銀が介入したとのこと。
日銀の介入資金が円高にしたというより、「介入なんかするわけねぇよ」と安心してドル買いのポジションを持ってた投機筋が慌ててポジションの清算に走ったのだろう。
30分で5円はきつい。相当数のトレーダーがロスカットでお陀仏になってるはず。
今後は次はいつ介入するのかという疑心暗鬼で円安のペースが弱まると思う。
スリランカ国民には同情するのですが。
なんか最近「耕さない農業」というのを朝日が異常に推してるんですよねぇ。一部に取り入れ長く試験していくのはアリですが、ああいう「えりーと様」達は急転換すりゃ大成功するぞ遅れるなみたいに煽るので。農業政策の失敗が国家経済破壊に有効だって立証されたからかなぁと危惧……まだ邪推レベルですか、しています。
朝日が単に考察がうっすーい新しもの好き海外出羽守日本sageしたいだけって線は十二分にありますが。
農民様
朝日新聞とかマスコミとかジャーナリズムとか称する業界は、エポックメーキング的な、つまり、画期的なこと、期を画すことを書かないと記事が読まれないからでしょう。特に、朝日はそういう傾向があるようですね。朝日に関しては、口にもしたくないようなことを多々やってきています。
農業については、「有機農法」が出て来て、まあそれが定着して、次は、「耕さない農業」ですか?
有機農法が出てきた理由は、残留農薬が無い(或いは少ない)、農作物が美味しい、ということで盛んになりました。作る人にとってのメリットは、価格が高いということです。
まあ、農薬を使わないので歩留まりが悪くて収量は多くない、化学肥料を使わないから収量が少ない(有機肥料は効率が悪い)。
まあ、昔の農業のやり方に戻ったのですから、当然のことですが。
よって、価格は高くなります。
青森で奇跡のリンゴというのがありますが、極めて高いので、売り先は、高級レストランらしいです。
従って、食べる人が少ない。つまり、恩恵を受ける人が少ない。
長くなりますので、言いたいことは、「化学肥料と農薬が人類を飢餓から解放した」と言うことです。
今、地球の人口が増え続ける理由は、勿論、医学薬学の進歩がありますが、医学薬学で救われた命を養うのは何でしょうか?、食糧です。そして、これだけの莫大な地球人口を養える莫大な量の食糧が生産できているのは、化学肥料と農薬があるからです。
化学肥料を使うことによって、可能になったことは、収量が増加する、安定した収量を予測できる、地力が弱いところでも農地にできるので、耕作面積が容易に増やせる。農作業の行程と総労働時間が減る、等々・・・。
言いたいことのここでの結論は、「有機栽培」の食糧の量では、地球の人口を養うことはできない、ということです。
そこへ来て、今度は、「耕さない農業」ですか?
世界中が、耕さない農業をやったとして、地球人口分の食糧が確保できるのでしょうか?
かく言うのは、当返信主が農家出身であり、高度成長期に彗星のごとく現れた、化学肥料と農薬によって、作物の収穫量が1.5倍以上、農薬により(人間から見れば)害虫被害の激減というより根絶、作物の病気の根絶、総農作業量の画期的な減少、ということを目の当たりにして実感しているからです。
ここまで書けば、何を訴えたいかが分かって頂けると思いますので、ここで止めます。
が、マスコミ人は、浮世離れしていているな、ということです。
自分の職業が、インテリな職業だと思ているなら、せめて、大局からものごとを見ることが出来るようになったら、どうですか、と言いたいですね。
食糧生産に於ける化学肥料・農薬の効果関係、食糧生産量と人口増加の関係、そのような人類の歴史、つまり、人類が、環境を利用して生き延びるために様々に努力してきたこと、少なくとも、小学中学で学ぶレベルの基礎的な知識とその知識の意味を咀嚼する教養を持ってから、記事を書いて貰いたいものですね。
農民様のコメント欄をお借りして、普段思っていることを書かせて頂きました。
農民様は、農業をされているので、言いたいことを少しは理解して頂けるかな、と思いましたので。
実感と懸念は全て仰るとおりまるっと同意です。
新聞に放送法は適用されないにせよ、別分野に公平性を目的にした法が存在するのだから少しは意識してほしいものですが。この場合でも、①この研究をしている組織、②該当省庁、③大学や普及組織、④現場、⑤消費者……と異なる立場が2者どころか多数あるわけです。①の主張のみ垂れ流しではただの宣伝です。あ、ただの宣伝なのか。
現場に取材なんかしたらまぁ鼻で笑われるばかりになってしまうでしょうしね。「革新前衛」の彼らからしたら進歩を拒む愚民ってとこなんでしょうけど。この選民意識が……と
超長文書けそうですがドル高の記事から脱線しましたのでここまでに。
きっと朝日新聞は今でもルイセンコ農法は正しかったと確信しているのでしょう。
https://www.pictet.co.jp/investment-information/market/deep-insight/20200601.html
https://jp.tradingeconomics.com/united-states/money-supply-m0
2020年からのドルの通貨供給拡大によるインフレ
ロシア進行による有事のドルで各国がドルを確保
インフレ対策の利上げによるドルの回収⇒インフレが収まるまでのタイムラグで米国内へ世界のドルの回収
⇒ドル不足によるドル独歩高
⇒日銀による介入でドル補給によりドル独歩高解除?
日銀砲がんばれ
であってます?
ドル不足は間違いで,ドルは大量に(株式市場や金融市場に)だぶついています。もちろん,円も大量にだぶついています。今までの円安ドル高の原因は,基本的には金利差です。貿易(黒字・赤字)のほうは,金利差ほど関係しません。そこに,ヘッジファンド等が便乗してくるので,相場は常に行き過ぎます。物価水準を無視した金融投資家達の取引によって形成された相場なので,購買力とか貿易量から見たレートとは乖離してしまいました。相場は振動するものですから,そのうち揺り戻しがあるでしょう。
P.S. 1日に5円も動くと,ディーラーも慌てるでしょう。
確かに、リーマンショック後の通貨増発は、各国がやりました。今、世界には、実需の4倍以上の通貨発行量があると言われています。その通貨は、投資家・投機家の元にあり、彼らが、好きに株価や通貨を操作するのに使われています。
通貨発行が多いとインフレになるとか、そういうケインズ派の考えは、とっくの昔に現実に合わなくなっています。
リフレ派の通貨供給を増やせば、需要が増えて景気が良くなるは、現実がそうなっていないです。
増加した通貨は、投資家や投機家のもとで留保され、彼らがマネーゲームをしたい時に、市場に出てきます。
世界の金融構造から考えると、世界各国に基軸通貨たるドルへの需要がある限り、
アメリカは経常収支赤字である必要があるということが構造的に見てとれるわけですね。