これが本物の為替介入、といったところでしょうか。財務省が22日、24年ぶりに円買いの介入を実施し、1ドル=145円台だったドル円は、現時点で一気に1ドル=140円台にまで買われています。そして、会計学的に見れば、これは平均して1ドル=100円で購入したドル資金を1ドル=145円で売却したようなものであり、それだけ巨額の利益を国庫にもたらした計算です。政府はこの為替介入で得た巨額の利益を国民に大盤振る舞いすべきでしょう。
財務省は22日、24年ぶりに「円買い」の為替介入を実施しました。
為替相場が1998年8月18日以来の最安値となる1ドル=145円台に突入するなかで、財務省の神田真人財務官が為替介入の事実を認めたものです。
政府・日銀が24年ぶり円買い介入、神田財務官「一方的な動き」
―――2022年9月22日17:25付 ロイターより
ちなみに財務省が公表する『外国為替平衡操作の実施状況』のデータに基づけば、財務省が前回、「ドル売り・円買い」の為替介入を実施したのは1998年6月17日のことであり、1ドル=138円となるなかで2312億円規模の為替介入を行っています。
また、データが存在する1991年5月13日以降、最後に為替介入が行われた2011年11月4日までの実績で見ると、日本政府の為替介入総額は85兆8664億円であり、売った通貨で最も多いのは日本円の80兆9038億円、買った通貨で最も多いのは米ドルの79兆8237億円です(図表)。
図表 日本政府による為替介入実績(1991年5月13日~2022年9月21日)
通貨 | 買い | 売り |
---|---|---|
日本円 | 4兆8794億円 | 80兆9038億円 |
ユーロ | 1兆0753億円 | 0億円 |
インドネシアルピア | 693億円 | 0億円 |
独マルク | 187億円 | 0億円 |
米ドル | 79兆8237億円 | 4兆9626億円 |
合計 | 85兆8664億円 | 85兆8664億円 |
(【出所】財務省『外国為替平衡操作の実施状況』より著者集計)
また、国際決済銀行(BIS)が公表する為替相場をもとに、このうちの米ドルの売買額をドル換算したものを求めると、ドルの買入額が7847億ドル、ドルの売却額が377億ドルで、差し引き7470億ドルを購入した計算です。要するに、ドルの買入額の方が売却額を遥かに上回っていた、ということです。
図表に示した米ドルの過去の純買入額は74兆8611億円相当ですので、取得原価はざっくり1ドル=100円、といったところでしょうか。
言い方を変えれば、日本政府は今回の為替介入の結果、過去に安値で仕入れた米ドルを高値で売り抜けた、という意味でもあります。
為替介入の今回の規模は、おそらく今月末に公表されるであろうデータを見てみないとなんともわからないのですが、かりに100億ドル程度を145円で売却した(つまり1兆4500億円程度で売却した)のであれば、それだけで少なくとも4500億円の為替差益が生じた計算です。
というのも、上記図表より、日本の外貨準備のうちのドル建ての資産は、平均して1ドル=100円前後で取得していると想定されるため、100億ドルの取得原価は1兆円という計算であり、これを1兆4500億円で売却すれば、当然、4500億円が「儲け」、という計算です。
しかも、現実の日本政府の外貨準備高は今年8月末時点で1兆2921億ドルにも達しています。つまり、現在の日本の外貨準備高は、過去の円高だった時期に買い入れた7470億ドルという巨額の資金を、米国債などで運用しているうちに膨らんだのに加え、昨今の円安でも円換算額が膨れ上がった格好です。
この点、先日の『【速報】円安の恩恵受け日本の外貨準備高は過去最大に』では、昨今のドル高を受け、日本の外貨準備高が過去最大を更新した、などとする話題を取り上げましたので、具体的な円換算額の恩恵についてはそちらもご参照くださると幸いです。
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いずれにせよ、財務省が「財政危機」を騙るのであれば、昨今の円安局面は「円の防衛」に見せかけた外貨準備の処分という好機ではあります。仮に1000億ドル(取得原価10兆円)のドル資産を15兆円で売れば、10兆円分の国庫短期証券(TDB)を圧縮したうえ、5兆円もの利益が入るのです。
5兆円といえば年間の申告所得税の税収(約3兆円)を大きく上回りますし、消費税の税収(22兆円)の4分の1にも相当する額です(ついでにいえば、2019年10月に無理をして消費税の税率を上げる必要があったのかは大いに疑問でもあります)。
いずれにせよ、政府は「為替介入還元」と称し、大盤振る舞いをしていただきたいと思う次第です。
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現政権の大金星ですやん。
なんで大手のメディアは、報道せんのかな?
そういえば年金の運用も、損したときは大騒ぎだけど、益を叩き出したときには黙ってるのですよね、彼らは。
Z省の犬たるマスゴミは国の財政にプラスになるようなことは絶対報道しないでしょう。
これから先も「円安悪玉論」と言うデマを性懲りもなく流し続けるでしょう。
机上の評価益(含み益)を現実の確定利益に変え、国内社会にどんどん還元して欲しいですね。
活用してこその財産です。
カズ様
御説に全面的に賛成。
少子化対策(出産子育て支援)、返還なしの奨学金制度の拡充、大学等への教育研究資金の投入、未来産業への先行投資、等々。
不必要に多額の外貨準備をこの機会の取り崩して、やって欲しいことは幾らでもあります。
いやあ、真面目に日本のことを考えている人は、同じ事考えてますね。
わたしもわたしの友人も同じ事考えてます。酒を一緒に呑むとこの話題が出てきます。
日本は、格差社会になってしまいました。
この格差を埋めることが出来るものは、教育です。
前世紀の貧しくて教育が受けられない、という社会は無くさなければなりません。
公的教育は、高校まで無料、大学の奨学金は、無償。
更に、高校以降は、個性と適正に合った教育プログラムとする、等。
話せばキリが無くなりますので、この辺で。
長期金利が上がり気味だから、全部国債行なんだろうな・・・
そんなに儲かるなら、もう少し円安になってからでも良かったな。
ウォンの方むいてたハゲタカさんがこっち見ないように。
まだ全然我慢出来たし…
国民への還元?
無い無い(ヾノ・ω・`)
キシダが日本のためになることをするわけがない。
円安の差益をなぜ還元しないか。大企業が収益好調の時に社員の給与を上げない言い訳がそのまま通用します。
終身雇用が給料上げない言い訳に使われるんだよね。
「不景気でも解雇しないために内部留保増やしておきます」って言われたら労働者は何も言えない。
「整理解雇していいから今の給料上げろ」なんて言う労働者は皆無。
えー、マネタリーベースが増えて円安に振れ為替介入した意味が消失するので還元はしませーん。
と国庫に入れておしまいでしょう。
貯め込み過ぎた米国債を、整理する良い機会です。
貯め込み過ぎた米国債を、整理する良い機会です。
1回しか投稿していないのに、同時刻で2つ入っているのは何故?
そういえば、原油の戦略備蓄の放出でも同じことが起きていたような。
安値で仕入れた原油を、高騰時に払い下げるのだから、ぼろもうけ。(笑)
まあ、こちらは設備の維持管理に充当するのでも構いませんけども。
ブログで触れない内容?
それマクドナルドだ!