トリプル安の発生回数はアジア通貨危機当時を超過した
韓国銀行のデータベースに金利情報などが掲載されていましたので、改めてトリプル安の回数を調べてみました。その結果、意外なことに、2021年と比べ、アジア通貨危機時やグローバル金融危機時の方が、トリプル安の回数は少なかったことが判明しました。逆に言えば、現在の韓国のトリプル安発生回数は過去最多規模にある、ということでもあります。
2022/09/07 14:25追記
書式設定が誤っていましたので修正しています。
ついに1ドル=1380ウォン突破…どこまで行くのか?
どうも私たちの隣国で、通貨の下落が加速しているようです。
ウォン相場1ドル=1380ウォン突破…13年5カ月ぶりのウォン安水準
―――2022.09.07 10:20付 中央日報日本語版より
韓国メディア『中央日報』(日本語版)の報道によると、ソウル外為市場では午前9時3分時点で1ドル=1380.30ウォンだったそうで、まさに2008~09年の金融危機以来の水準です(※ちなみにWSJのマーケット欄によると午前11時11分時点で1ドル=1387.42ウォンとさらに通貨安が進んでいます)。
このウォン安については米国における利上げ観測に加え、ロシアによる天然ガスの供給中断などの応酬エネルギー危機などが市場不安を加速させたものとしていえます。
こうしたなかでやはり気になるのが、市場のリスク選好の後退にともない、ウォン安がどこまで進むのかという観点に加え、これが通貨危機に発展するかどうか、という視点です。
トリプル安の定義
先日の『韓国「トリプル安」現象が今年に入り明らかに増加した』では、WSJのマーケット欄から取得したデータをもとに、韓国におけるトリプル安の回数を調べてみました。
ここでいう「トリプル安」とは、「株安・債券安・通貨安」のことであり、当ウェブサイトとしては便宜上、このトリプル安を次のように定義しています。
- 株安…韓国総合株価指数(コスピ)が前営業日と比べて下落すること
- 債券安…韓国3年債利回りが前営業日と比べて上昇すること
- 通貨安…ウォンの対米ドル相場が前営業日と比べて上昇すること
こうしたなか、韓国銀行のデータベースが先日リニューアルされ、改めてこれを眺めていたら、いろいろと興味深いデータがあることに気付きました。しかも、これらのデータはたいていの場合、1990年前後から整っているようです。
1995年以降のデータで調べてみた
先週の議論ではトリプル安の回数は2011年以降からでしかカウントできなかったのですが、改めて韓国銀行のデータをもとに、1997年のアジア通貨危機、2008年のグローバル金融危機のときのデータを含めて集計すると、興味深いことが判明しました。
意外なことに、アジア通貨危機やグローバル金融危機のときの「トリプル安」の回数は、「過去最大規模」というわけではなかったのです。これに関連し、トリプル安についての集計が図表1、トリプル高についての集計が図表2です。
図表1 韓国市場におけるトリプル安の回数
図表2 韓国市場におけるトリプル高の回数
(【出所】韓国銀行データベースより著者作成)
いかがでしょうか。
1997年や2008年のトリプル安の回数は、2021年と比べればむしろ少なかったほどです(※ただし、1998年11月12日以前については、データベースには3年債利回りが収録されていないため、翌日物コール金利にて代用しています)。
また、2022年、つまり今年に関しては、トリプル高の回数は43回であり、過去最大だった2021年の51回と比べれば少ないのですが、2022年のデータは8月のものまでしか使用していませんので、これからさらにトリプル安の回数は増えるかもしれません。
さらには、「トリプル高」に関しては、むしろコロナ禍直後の2020年に非常に多く発生していたことがわかりますが、これはFRBの緩和政策に伴う資金が韓国に流入していた間接的な証拠ととらえることもできるかもしれません。
まさに韓国観察者である鈴置高史氏の言を借りるなら、「山高ければ谷深し」、です。
通貨危機+金融危機のダブルショックも?
このあたり、経済は複雑なものですから、通貨安、金利上昇、株安がただちに通貨危機・金融危機につながるというほど単純なものではありません。
ただ、韓国の場合は家計債務や対外債務が膨張しており(『韓国の家計信用が過去最大:利上げ後も住宅ローン増大』、『韓国の対外債務は過去最大:外貨準備高との関係は…?』等参照)、「多重債務者」が人口の1割近くに達しているとの報道もあります。
また、『韓国不動産バブル「山高ければ谷深し」と鈴置氏が警告』でも取り上げたとおり、不動産市況は最近、値崩れが始まっているようです。
こうしたなかで、警戒されるのはウォン安だけでなく、外国金融機関などからの借入金の更新(ロール)ができなくなってしまうという可能性であり、そうなれば金融危機と通貨危機が同時に韓国を襲うというおそれが生じてきているのです。
日本の場合は1990年代の「住専問題」などを皮切りとした金融機関の不良債権問題や経営破綻などの危機を自力で乗り切ったのですが、韓国の場合はこれを自力で乗り切るだけの余力があるのかどうか、微妙でもあります。
いわば、現在の韓国は、「住専問題と「リーマンショック」が同時に日本を襲っているようなインパクトに晒されかねない状態だ、ともいえるからです。
いずれにせよ、隣国初の突発的な金融危機・通貨危機という可能性については、市場の不安要因のひとつとして頭の片隅に置いておいて良い論点かもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
(根拠なき予感にすぎないのですが)世界は時代の激変期に入りつつあるのではないでしょうか。その前ぶれの一つが韓国のトリプル安ではないでしょうか。
アメリカ経済の今後も気になりますね。
ドルの信用が崩壊するギリギリまで金融緩和策をやってしまった今のアメリカで、リーマンショックの様な事が起きたら再度の利下げや金融緩和等のまともな対応は出来ないでしょうから。
そうなれば韓国経済どころの話ではなくなります。日本以外の国で小傷程度で乗り切れる国は殆ど無いような・・・
今日も朝からドル買いにつられたウォン売りが大盛況ですね。心配でしょうがないです。
ちょっとクライマックス感もありますが。
ところで、最新記事一覧で最初の記事を全文表示するのは仕様でしょうか。
タグ閉じ漏れでしょうか。
いつもと違うので、ちょっと気になったもので。
通貨に限らず、寄せる波あれば返す波あり。備えを軽んじる彼らのこと。海岸線の後退は、自明の理。
*****
例えば、ASK(アン・食・カレー)のトリプルパンチを喰らったら、敵役は空の彼方へ・・。
そして、ASK(安保・政治・経済)のトリプルパンチを喰らったら、ウォンは何処まで・・
・・”とんで”くと云うのでしょうね?
m(_ _)m (askしてみました)
きょうは 日本円も安くなってます。
日本嫌いのマスコミさんは 日本下げのいいネタに 大きく騒いでくれそうです。
そして突然飛び出てくる 「日本の信用が下がっているから韓国とスワップ」という トンデモ理論。
前回も前々回も ”日本企業を守るために韓国とスワップ”と 謎理論で 韓国を救済。
マスコミも特定役人も よっぽど日本が嫌いなんでしょう。
同じ通貨安でも 政策金利を上げてもウォン安になってる韓国と まだまだ開放政策をおこなっていての円安。中身違いますよね。
”金利を上げない”でも 資本流出の心配が少ない日本ですが 反日本のマスコミの表現だと ”金利さえ上げられない日本”と なります。ものは言いようです。
アメリカの利上げ、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機、中国のバブル崩壊など世界中に暗雲が垂れ込めてきました。
中国、ロシアと対峙する西側の自由主義諸国は外憂内患状態です。
発展途上国の政治経済もかなり不安定化しそうな気配が漂っています。
岸田首相が、金融引き締めや増税など誤った選択をしないか大変気になります。
国葬でもたついていますので余計に不安になります。