順調に下落する韓国ウォン、1350大台を難なく突破

私たちの隣国である韓国の通貨・ウォンが下落しています。昨日は終値ベースで見て、13年4ヵ月ぶりの安値水準に到達しました。韓国の通貨・ウォンが国際的に通用する通貨ではなく、かつ、同国が外貨建債務を抱え、外貨準備の水準も怪しいという事情を勘案すれば、通貨危機に陥る可能性については警戒が必要かもしれません。

ウォンが13年4ヵ月ぶり安値

私たちは現在進行形で、ある国が通貨危機に陥る現場を目撃しているのかもしれません。

私たちの隣国・韓国の通貨である韓国ウォンの対米ドル相場については、昨日の終値ベースでは1ドル=1354.9ウォンであり、終値で1350ウォンの水準を突破するのは8月29日以来3日ぶりですが、それだけではありません。

2009年4月28日に記録した1ドル=1356.8ウォンまで、あと一歩の水準に迫っており、さらには日中最安値ベースで見ても1ドル=1355.1ウォンと、2009年4月29日に記録した1ドル=1357.6ウォンという水準にあと一歩の水準です。

ウォン安が問題となる2つの理由

これのいったいなにが問題なのか――。

じつは、現在のウォン安局面は、べつに「韓国ウォンだけが下落している」というものではありません。日本円を含めた低金利の(かつそれが続くと見込まれる)通貨や、新興市場諸国の通貨などについても、広範囲に下落しているという状況にあります。

したがって、たんなるウォン安自体が、ただちに韓国における金融危機の原因となる、というものではありません。

ただ、それと同時に、行き過ぎたウォン安は、通貨危機のリスクを徐々に高めていることも間違いありません。というのも、韓国の場合は①韓国の通貨自体が国際的に通用しない「ソフト・カレンシー」である、という事情に加え、②外国からの借入(対外債務など)も多い、などの特徴があるからです。

そもそも論ですが、通常の先進国の場合だと、自国通貨の価値が少々下がったくらいで通貨危機に陥ることは滅多にありません。なぜなら、先進国の通貨はたいていの場合、国際的に通用度が高い「ハード・カレンシー」だからであり、外国人投資家にとっては、その国の通貨自体が投資対象となり得るからです。

これに対し、韓国は「先進国」を自称しているわりには、通貨・ウォンは国際的に通用度が非常に低く、したがって、外国人投資家もウォン建ての資産(とくに債券)には、あまり積極的に投資しようとはしません。韓国ウォンの債券市場の薄さは、国際的な通貨としては「致命傷」でしょう。

対外債務水準と外貨準備の怪しさ

一方で、もうひとつの問題点は、韓国の通貨・ウォン自体が国際的なソフト・カレンシーであるにも関わらず、韓国の企業などが、外国から多額のカネを借りている点にあります

たとえば、国際決済銀行(BIS)が公表する国際与信統計(Consolidated Banking Statistics, CBS)のデータに基づけば、韓国は2022年3月末時点において、外国の金融機関から3903億ドルのカネを借りており(※最終リスクベース)、外貨建の債務は2353億ドル(※所在地ベース)に達します。

また、韓国銀行自身が発表する対外債務についても、最近はリーマン時と比べて1.8倍に膨張するなど、過去最高水準にあります(『韓国の対外債務は過去最大:外貨準備高との関係は…?』等参照)。

この点、いちおう、外貨準備統計に基づけば、韓国の外貨準備高は4386億ドルに達っしており、外貨建の債務は外貨準備の範囲内にあることになってはいます。

しかし、たとえば『韓国外貨準備データと米財務省データの「大きな差額」』でも述べたとおり、韓国銀行が発表している外貨準備高と、米国財務省が発表している「外国からの米国債投資」を比べると、両者には明らかな差異(あるいは矛盾)が生じています。韓国が保有する米国債の金額が少なすぎるのです。

こうした差異を説明する要因としては、『韓国が外貨準備高のうち1573億ドルを「積極投資」』などでも述べたとおり、どうも韓国銀行自身が本来ならば外貨準備にカウントすべきではない「積極投資」している資産を外貨準備にカウントしている疑いもあるのです。

日本が金融支援に踏み込み辛い状況

ただし、過去の通貨安局面においては、日本や米国などが韓国に対し、通貨スワップなどのかたちで救済資金を出していたのですが、今般の通貨安局面では、これが期待できない状況にあります。

ことに、日韓関係の現状を踏まえるならば、日本が国民の「血税」を原資として蓄えてきた、総額1.3兆ドルを超える外貨準備の一部を使い、韓国に対して日韓通貨スワップなどのかたちで金融支援を行うことに、そもそも国会議員や日本国民が賛同するということもないでしょう。

いずれにせよ、現状においては「韓国の外貨建債務が外貨準備の範囲を超えているというのではないか」、などとする疑念を払拭することは難しく、1997年や2008年のようなスタイルの通貨危機・金融危機の再発を、現在の韓国の通貨当局・金融当局が防止できるのかを巡っては、注目点のひとつでしょう。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    IMF再び かな?

    1. hallo より:

      以前に「経済規模的に見て、IMFでも助けられない」としたという記事だかを見た憶えがあります。
      実際、OECD内でも10位以内に入っているくらいにはIMF当時よりは経済規模が拡大していますから、先進国総掛かりでもしない限りは助けられないでしょう。
      破綻しても、取れる部分は切り取って後はそのまま放置で枯死、が妥当じゃないですか。

  2. 古いほうの愛読者 より:

    円・ウォンチャートや,ウォン・ユーロチャートをじっくり眺めてみるといいですよ。韓国経済より,アメリカ経済の原因が大きいので,そっちを良く研究しておくほうが,投資で損をしないかも。でも,ここからドルを買い上げていく勇気はないです。

  3. ダージリン より:

    今回は、アメリカから韓国を助けるようにという意向が出そうにないのは良い点でしょうか。意向が出たら、しぶしぶでも少しは動かざるを得ないですからねえ。韓国の影響下にあったり、支援を受けていたり広告を出してもらっていたり、弱身を握られている政治家や学者・マスコミは多いですから、旧宗主国がー、隣国がー、とかアジアの平和のためにーとか、韓国に愛はないのかー、とか大合唱が起こるかもしれませんが、まずあちらが日本に仕掛けている徴用工や慰安婦、原発、仏像盗難事件などの問題を解決してくれて以降に日本は動きましょうか。

  4. イジワルばあさん より:

    いや。今回はIMFも救済しづらいのではないでしょうか?
    1、前回IMFが支援したとき韓国はIMFの指示に抵抗したり約束を守らなかったりでIMFから「二度はない」と最後通牒を突き付けられています。
    そのくせそのIMFの支援に対して感謝するどころか韓国はIMFのせいで大変な苦労を強いられたと言ってIMFを死神呼ばわりで逆恨みしていますからね。韓国としても支援要請しづらいのではないでしょうか?
    2、仮にIMFが救済に乗り出すとしても、韓国の経済規模が前回の時より遥かに大きくなっている(何しろ世界10位の経済大国でもある)ので果たして救済は可能か?
    3、IMFの第一位の出資者は米国、第二位は日本です。そして米韓、日韓の関係はご承知の通り、韓国の理不尽な振る舞いの積み重ねにより冷えきっています。日米に韓国を救済しようとの意志が見えない状態で、IMFが動けるでしょうかね。

    ということでIMF頼りも難しいと思います。これで経済が破綻したら韓国はどうなってしまうのでしょう?

    1. ダージリン より:

      日米がダメなら中露が助ける、と一般的には考えますが、今回、スリランカに対して行った中国のしうちや、中国が朝鮮半島に行ってきた歴史的な行為や、ロシアがウクライナをはじめ周辺国に対して行っている行為から推測するに、まあ状況が好転することは考えにくいでしょう。中国など、水に落ちた犬は叩け、の国ですしね。まあ、韓国には「精神勝利」という奥義がありますので大丈夫です。

  5. sqsq より:

    外貨準備の中の「投資」をディスクローズしない理由として考えられるのは:
    ① そもそもない。
    ② ディスクローズすると反響が大きい、例えば日本国債またはトルコ国債
    ③ ディスクローズすると笑われる、呆れられるようなトンデモ投資

  6. ベビーヨーダ より:

    何年か前に、鈴置先生か真田先生が仰っていました。米国の安全保障の専門家から「我々がこの半島から撤収する時は、焦土化して引き上げる」と聞かされたそうです。
    焦土化とは物理的に燃やしてしまうと言うことではなく経済的な資産を破壊するとの意味です。
    それが今なのではないでしょうか。
    今回は米国も日本も助けません。
    米国が、金利を引締めているのに、スワップなど緩和策をするはずがありません。
    米国が北朝鮮に先制攻撃が出来る準備が整い、半導体産業も台湾日本に整いつつある今、中国の属国である韓国は不要です。だったら、日本の半導体産業を潰したあの時代は何だったのかと思いたくもなりますが、中国の危険性を滾々とトランプ大統領に説き、米国の方針まで変えさせた安倍総理大臣の偉業は大きすぎます。置き土産のFOIPを日本は大きく大きく育て上げなければいけません。

  7. 引っ掛かったオタク より:

    “話を聴く”からの後の先を気取ってんかしらんがココマデの岸田内閣はヨロズ後手後手な印象を蒔くことに長けていると見えるのんでおひとつ
    喫緊の課題として入国管理の厳格化とビザ切れ不法残留者の速やかな強制送還措置整備を期待したい
    強制送還費用は当該国の資産から徴収するなり懲罰関税的な上乗せをするなりすればよろしい
    当面の対象国は り地域限定でかまわんすから、こっちに逃げてこないように早く速く~

  8. サムライアベンジャー(「匿名」というHNを使っている方には返信しません) より:

     介入資金が足りないようですね、介入してあげても、ヘッジファンドがすぐに下げてしまう。

     9月末にも、なんか支払いが待っているはず。その時、1360ウォン台、1370ウォン台…さてどうなっていることやら。

  9. 三多摩野人(旧HN韓国紙への辛口コメンテーター) より:

    「順調に下落」「難なく大台を突破」・・・
    新宿会計士様のスパイスの効いたワーディングの小気味良さに思わずにんまりさせられましたが、アチラの方や国内に巣食うアチラ系の方は、この「倭人の無慈悲な言葉爆弾」に耐えられるでしょうか。
    心のマジノ線がみじめに崩壊して、顔を真っ赤に発狂しそうな。ぜひ一覧に供したいとこですね

  10. 新宿会計士 より:

    1. haduki より:

      1ドル1360ウォンをあっさり越えましたね

    2. JJ朝日 より:

      祝かどうかはあれですが、KRW/USDは1363を越えましたね、今月中には1400かなぁ。
      円も140YEN/USDで、レーガン大統領のプラザ合意の後に近いですね(違うのは、当時は240YEN/USDからの140で「超円高」で日本が終わる、と言われてたのですが、今は同じレートで「超円安」だと言われていることですかね。

      マスコミに登場する財務省関係者や経済ジャーナリストの矜持が問われますね。

      1. がみ より:

        皆様

        なんか韓国系の掲示板で親韓の方か韓国の方が「日本は24年ぶりの円安〜♪」ってはしゃいでました。

        だからなんね? って思いました…
        気休めになるのかなぁ〜 そんな事

        1. JJ朝日 より:

          日本の輸出企業は、調達と物流で下手をしなければ140YEN/USDでは相当儲かりますがねぇ。おっ、隣国は1370KRW/USDを突破してます、1400も近い・・。

    3. みの より:

      1356 -1392 元の併合解消、高麗国
      1392-1897 李氏朝鮮

      元が退いた高麗国まで来ました。
      元の影響のみならす、輸出による元獲得や、元スワップ?もなさそうです。
      次は長く安定した時代が来そうです。
      経済や文化レベルの高低は知りません。

  11. Sky より:

    これからは、KRWJPYを監視したい。こちらはまだまだです。かつては16ウォン/円という時代もあったはず。現状では日本からの原材料や工作機械がその時代よりずっと安く買えてしまう。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

JJ朝日 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告