肝心のポイント制度自体が7月の電力不足に間に合わないのだそうです。産経ニュースによると萩生田光一経産相は本日、節電ポイント制度の開始が8月にずれ込むとの認識を示したのだそうですが、もしもそれが夏場の電力不足に間に合わないのなら、そんな制度などやめて、電力供給能力の抜本的な改善に舵を切るのが筋ではないでしょうか。
目次
節電ポイントで電力を生み出すことはできない
『ポイントで電力は生まれない:いまこそ電力安定供給を』あたりで議論したとおり、基本的に「ポイント還元」、「節電要請」では現在の日本の電力不足という問題を抜本的に解決することはできません。
今度は月額640~1,280円、でしょうか。例の「節電ポイント」をめぐり、共同通信は週末、政府が「毎月の電気代の1~2割の減額を検討している」と報じました。この記事をどこまで信じるかはさておき、冷静に計算してみると、例の「月額数十円」と比べればいくぶんかマシですが、それでも我々日本国民が決して少なくない再生エネ賦課金を負担してきたことに照らせば、「1,280円をあげるから節電に協力せよ」とは、ずいぶん無理がある依頼です。「節電ポイントで毎月数十円を稼ごう」当ウェブサイトでも連日のように取り上げている話題の... ポイントで電力は生まれない:いまこそ電力安定供給を - 新宿会計士の政治経済評論 |
そもそも論ですが、現在の日本では「電力の総供給が電力の総需要に足りていない」という状況にあることは間違いありません。ただ、このことが発生した原因については、よく考える必要があります。
この点、政府が現在やろうとしていることは「需要側の抑制」ですが、本来やらなければならないことは「電力そのものを生み出す」という努力です。
電気事業連合会のウェブサイトに掲載されている『電源別発受電電力量の推移』というグラフによると、東日本大震災が発生する前年である2010年における年間発電電力量は1兆1495億kWhであり、その内訳は原子力が25%、石炭が28%、天然ガスが29%でした。
ところが、2019年時点で発電量は1兆0247億kWhと、2010年から約11%減少しました。内訳としては、原発の発電量は6%程度に回復しているものの石炭が32%、天然ガスが37%と化石燃料が増え、しかも「地熱および新エネルギー」に至っては全体の10%に過ぎません。
原発がベースロード電源として優れているという点を踏まえるならば、原発再稼働を過度に恐れるべきではありません。
原発事故は「地震で生じた」のではない!太陽光は環境に悪い!
この点、福島第一原発事故が発生した直接的な原因も、地震や津波ではなく「電源喪失」だったことを忘れてはなりません(東京電力『1号機はなぜ過酷事故に至ったか』等参照)し、震源地に最も近い原発である東北電力女川原発に至っては、大震災の当日、稼働していた全3基が安全に自動停止しています。
その一方で、「再生可能エネルギー」のうちの太陽光発電に関しては、各地で樹木伐採などの問題を頻発させています。
道に落石、土砂流入…メガソーラー施設建設「業者任せで事故」 埼玉で進む条例化、課題は今も
―――2022/6/7 9:50付 Yahoo!ニュースより【※埼玉新聞配信】
工事伐採の樹木 大量放置 鳥羽の太陽光発電
―――2022/05/14 05:00付 読売新聞オンラインより
また、昨年夏には熱海で大規模な土石流災害が発生しました。これに関しては現在でも原因の調査が進められていますが、崩落地点付近に設置された太陽光発電施設の工事に伴い発生した盛り土との関連性が疑われています。
熱海土石流盛り土 実態明らかに
―――2021.9.8付 あなたの静岡新聞より
ただし、これに関しては崩落地点の西側で太陽光発電の工事を行った会社の社長が静岡県熱海市の市議会の「百条委員会」の証人尋問で関与を否定したとも報じられているところでもあります。
崩落地点隣で太陽光発電 業者「盛り土関与ない」 百条委で証人尋問 熱海土石流
―――2022/06/14 20:50付 Yahoo!ニュースより【※テレビ静岡配信】
民主党政権の「負の遺産」
いずれにせよ、現在の日本経済の状況は、東日本大震災の影響を民主党政権がさらに増幅させたという意味においては、「人災」という側面が強いと断言せざるを得ません。
なぜなら、安定したベースロード電源である原発の操業が停止に追い込まれるなか、「脱原発宣言」(2011年7月13日)でも知られる菅(かん)直人元首相が強力に推進した再生エネ法(FIT法)が、現在でも日本経済の重しとなっているからです。
しかも、私たち日本国民は決して安くない「再生可能エネルギー賦課金」(※2022年5月以降は1kWhあたり3.45円、毎月260kWhの「モデル世帯」だと毎月897円、毎年10,764円)を強制的に徴収されています。
これで「電力が足りませんでした」、ではお話になりません。
したがって、政府が現在、全身全霊で力を入れなければならないことは、「節電要請」ではありません。FIT法の見直しと発電能力の増強です。
現在、参院選直前というタイミングで、岸田文雄首相自身にとっても身動きがとり辛いという事情もあるのかもしれませんが、選挙後に落ち着いたならば、「節電ポイント」といった姑息な手段によるのではなく、「供給量」を増やす政策に舵を切らなければならないでしょう。
節電ポイントは7月の需給逼迫に間に合わず
ところが、こうしたなかで、なかなかに驚くべき記事がありました。
節電ポイントは8月から 夏の需給逼迫には間に合わず 萩生田経産相「冬に向けて仕組み作り重要」
―――2022/6/28 11:42付 産経ニュースより
産経ニュースによると萩生田光一経済産業相は28日、例の「節電ポイント」制度をめぐり、「8月をめどに開始できるよう準備したい」と述べたのだそうです。そのうえで産経は、こう述べます。
「今夏では7月に最も電力需給が逼迫する見通しだが、このタイミングには間に合わない見通し」。
なんともあきれた話です。
節電ポイントがタイミング的に間に合わないのならば、そんな制度はさっさと撤回し、それよりももっと抜本的に電力の供給量を増やす政策んい舵を切るのが筋ではないでしょうか。
ちなみにこの節電ポイント、「節電した家庭にポイントを付与するサービスを提供するよう電力会社各社に求めたうえで、ポイントにかかる費用は国費で負担する仕組み」、「制度に参加する家庭に一律2000円相当のポイント付与」、といったことが検討されているそうですが、これも意味がありません。
もし本気で節電をさせたいのであれば、(どうやって測定するのかは知りませんが)「節電を達成した家庭」の電気代を全額政府が負担する、再生エネ賦課金を凍結する、消費税にゼロ%の軽減税率を導入する、といった方策の方が手っ取り早いでしょう。
まさかとは思うのですが、ポイント付与のためにデジタル庁あたりが主導して新たなシステムを作り出す、といった発想でもあるのでしょうか?
まずはロードマップ示せ
いずれにせよ、産経ニュースによると、「電力事業者によってポイント制度が異なるほか、現時点でポイント付与の仕組みがない事業者もある」などの事情により、政府はこの事業開始には「一定の時間が必要と判断したとみられる」、と記載されていますが、もしそうであるならば、政策の方向性を正すべきでしょう。
くどいようですが、ポイント給付で電力を生み出すことはできません。政府がいま全力で取り組むべきは、科学的な知見に基づき、安全性が確認された原発などについては稼働を認めることです。そしてなにより、政府は電力の安定供給に向けたロードマップを早急に示していかねばなりません。
そこまでやったうえで、なお足りない分については、各家庭や事業所に「緊急で具体的にこれだけの電力を節約しなければならない」とお願いするのが筋ではないでしょうか?
オマケ:輪番停派などはいかが?
さて、ツイッター上では本日、興味深いトレンドが出現していました。 #節電のためにテレビを消そう だそうです。当ウェブサイト的にもこのトレンドにひとつ便乗しようと思います。
考えてみれば、電力不足は一種の国難ですから、電力を消費する産業(たとえばテレビ業界)などが率先して電力消費量を減らすのに貢献すべきではないかと思います。
いっそのことNHKと民放各局が「輪番停派」などをすれば、国民からの理解も深まるかもしれませんね。
View Comments (12)
ポイントとかクーポンが好きな政権だな。
消費者が値下がりを実感できる施策を少しは考えろや。
>民主党政権の「負の遺産」
事実関係無視してクオリティ評論ですか?
民主党政権時に成立したとはいえ、再エネ法は内閣提出法案に民主党、自由民主党、公明党の3党合意に基づく修正を加えて成立したもので、しかも自民党は2012年、2014年の2回の解散総選挙で再エネの最大限の導入を公約に掲げて政権与党になっている。
民主党(政権)、自民党、公明党の3者による負の遺産であることを認めると何か都合が悪いのでしょうかね。
>いっそのことNHKと民放各局が「輪番停派」などをすれば、国民からの理解も深まるかもしれませんね。
玉川徹「うるせえよ」
まあ、逆にハッシュタグの起こった原因はこの人なんでしょうけどね。w
欧州のエネルギー政策が大転換を迎えている。
・EUは原発を「クリーン」と再定義
・ドイツは石炭火力発電へと回帰
・EU5カ国がガソリン車の販売禁止を5年延長要請
欧州は世界の環境基準で「デファクト・スタンダード」を握ろうと動いてきた。
だがロシア産パイプライン天然ガスの供給削減でその動きはとん挫しつつある。
EVとHV、再生エネと新型火力発電の関係は似ている。
見た目はEV、再生エネのほうが環境にやさしそう。
だがトータルで見るとHV、新型火力発電のほうが環境にやさしい。
EV、再生エネを否定するのではない。
革命的な技術革新が実現してから導入すればよいだけだ。
日本の政策も決まったようなもので
・原発の順次再稼働
・新型火力発電所の建設
今なら世界の環境活動家も日本批判ができない。
岸田が実行するなら国内左派もおとなしい。
小泉、河野といった利権議員は「雑巾がけ」最中で口出しできない。
これほど環境が整っていることはめったにない。
岸田は正々堂々日本のエネルギー政策を実行すればよい。
民主党支持者は地獄に落ちるかヘルコリアに行け
まあ、高齢者ばかりだから衰退するだけの奴らだがww
7月に間に合わないという事は、いかにこの制度が場当たり的な制度か、という事だと思います。
電力が足りないことが、急に分かったわけでもないでしょうに、事前に準備しておけば、間に合わないことないでしょう。
ポイントいいから、マジで賦課金を廃止してほしい。
別の記事のコメントでも書かせて貰いましたが、本当に節電をさせる気があるのか、本気度が疑わしいですね。
電力が足りないのなら、まず確保する方法を探す。
それでも確保出来ず、深刻な問題が発生しそうなら、コロナ禍対応よろしく、どれだけ足りないから、具体的な節電方法や目標を提示して、国民に協力を仰ぐ。
この際、ある程度の制限くらいは言うでしょう。本当に危機的状況だというのなら。
それもやらずに、ポイント? そりゃ、こんなすぐには無理だよねと分かりきっていたようなタイミングで? 誰も従う訳ないよなあという方法で。
何でもかんでも意味を求めるのは、人間の悪い癖かも知れませんが。何の目的でポイントと言い出したのか、よく分かりません。
実はポイント族(?)を炙り出して潰すためだったとか?
1度作った法律でも、時代にあわなければ廃止する事は出来ないのでしょうか?
FITですが、無力化する事は可能です。
まず、新たに建設しても補助金が出ない様に法律をかえます。
しかし、現在稼働してる分については、補助金を支払わなければなりません。
ならば、補助金の額は一定なんでインフレになるとその分ダメージも減ります。
次に山の斜面の設置を禁止します。
そして、ウイグル産の太陽光発電施設を輸入禁止にします。
最後に現在設置してる企業には、廃棄処理資金のプールを義務付けます。
これは、発電能力の減った施設をそのままにして外資が夜逃げするのを防ぐためです。
これだけ義務が増えれば、新施設を防げると思うのですが。
発電能力の減った施設をそのままにして外資が夜逃げするのを防ぐため・・・ということは現状は可能ってことですよね。廃棄処理資金のプールの義務付の方の成立のほうがポイント制度より急ぐべきと思います。
赤ずきん様
現状、日本法人を潰して関係者が外国なら、捕まえるのは難しいですし、それが中国なら引き渡し条約もないですし、捕まえても資産を外国に隠されたら、現状回復は不可能です。
また、能力の劣った施設を建て替えるインセンティブはゼロです。
なら、外人なら夜逃げが一番得だとなります。
輪番停派などと言わず、電力需要がピークになる午後は一斉にTV放送を停止して、全国一斉にテレビを消せばよろし。
どうせ昼のテレビは昼メロ(昭和に流行りました)やら、昼のワイドショーで知識の乏しいMCが放送局御用達の専門家と一緒に局のシナリオに沿って不正確な情報をセンセーショナルに流すだけだし、6時間くらい全テレビ波がストップしても影響ありません。製造業やオフィスで働く人達にばかりしわ寄せをしないで、マスコミも少しは痛みを分かち合えと言っても、利権の塊のようなマスコミ業界には、言うだけ無駄のような気もしますが。
国民民主党の玉木雄一郎代表が28日、「再エネ賦課金」徴収の停止を提案しました。たまに安倍さんでさえ言えないような「まともな事」を言うんですよねあの人は。しかしうちの選挙区の新人国民民主は立憲と組んでいるので論外。そして、新人自民も調査の結果、新人維新より若干あちら系であることが判明したので-----。