韓国貿易赤字化で「ウォン安スパイラル」は生じるのか
資源高は日本だけでなく、韓国の貿易収支をも削っているようです。ただ、韓国の場合は日本と違い、貿易赤字にはかなりの警戒が必要です。というのも、貿易赤字がウォン安を招き、ウォン安が貿易赤字を招く、という「ウォン安スパイラル」が生じる可能性があるからです。だからこそ、韓国からは今後、これまで以上に「韓日通貨スワップ」待望論だの、「G20スワップ」待望論だのといったものが出て来るかもしれません。「韓国で今年158億ドルの貿易赤字を予想」=韓国メディア
昨日の『日本経済の足を引っ張る「鉱物性燃料」の輸入額の急増』では、原油などを含めた「鉱物性燃料」の輸入のために、日本の貿易収支が赤字に転落している、とする話題を取り上げました。
ただ、世界的なエネルギー、原料価格などの高騰のためでしょうか、これまでは代表的な「貿易黒字国」だったはずの国が貿易赤字に転落しつつあるという事例は、日本だけではありません。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝、こんな記事が掲載されていました。
韓国、今年158億ドルの貿易赤字予想…金融危機当時より深刻
―――2022.05.31 07:36付 中央日報日本語版より
中央日報によると、韓国政府系シンクタンク「産業研究院」が30日に公表した『下半期経済産業見通し』とするレポートのなかで、今年の貿易収支が158億ドルの赤字に転落する、との予想が出てきたのだそうです。
これを受けて、中央日報は次のように危惧を示しています。
「研究院の予想通りならば米国発の金融危機があった2008年の133億ドルよりも赤字幅が大きくなる。過去最大の貿易赤字を出したのは通貨危機直前の1996年の206億ドルだった」。
たしかに貿易赤字基調に転落しつつある
ではなぜ、ここまで赤字が膨らむ予想が出ているのでしょうか。
中央日報によると、同研究院は今年の輸出額が前年比9.2%増の7038億ドルと、史上初の7000億ドルの大台に達するとしつつも、「ロシアのウクライナ侵攻と中国の封鎖措置などで増加率が大きく減る」と予想。あわせて原料・穀物・中間財などの価格上昇により、輸入額も7196億ドルに達するとしているのです。
これについて、気になってリニューアルされて使い勝手が悪くなったばかりの韓国銀行のデータベースサイトを検索してみると、国別輸出入に関する統計を発見しました(品目別について探してみたのですが、韓国銀行のウェブサイトには見当たりませんでした)。
これで韓国の毎月の輸出入額と、そこから試算した貿易収支をグラフ化してみると、たしかに貿易収支が急減しており、とくに昨年12月以来、貿易赤字を計上している月も散見されることがわかります(図表1)。
図表1 韓国の貿易(合計)
(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成。なお、左軸と右軸でスケールが異なる点には要注意)
意外とシンプルな韓国の経済モデル
じつは、韓国の貿易構造は、意外とシンプルです。
韓国は国を挙げて、サウジアラビアやUAEといった産油国、豪州といった資源国、あるいは日本やドイツといった先進国から資源、中間素材などを購入し、それを国内で加工し、中国や米国、香港などに売却することで儲けている、というビジネスモデルを採用しています。
ちなみに2022年4月時点における主要貿易相手国は、図表2のとおりです。
図表2 韓国にとっての主要貿易相手国(2022年4月)
相手国 | 貿易額 | 備考 |
---|---|---|
1位:中国 | 253億ドル | 輸出:129億ドル、輸入:123億ドル |
2位:米国 | 162億ドル | 輸出:96億ドル、輸入:66億ドル |
3位:日本 | 75億ドル | 輸出:26億ドル、輸入:49億ドル |
4位:台湾 | 47億ドル | 輸出:23億ドル、輸入:24億ドル |
5位:豪州 | 45億ドル | 輸出:16億ドル、輸入:30億ドル |
6位:サウジアラビア | 39億ドル | 輸出:3億ドル、輸入:36億ドル |
7位:ドイツ | 31億ドル | 輸出:9億ドル、輸入:22億ドル |
8位:シンガポール | 27億ドル | 輸出:19億ドル、輸入:8億ドル |
9位:香港 | 25億ドル | 輸出:23億ドル、輸入:2億ドル |
10位:インド | 24億ドル | 輸出:15億ドル、輸入:9億ドル |
その他 | 453億ドル | 輸出:219億ドル、輸入:234億ドル |
合計 | 1182億ドル | 輸出:578億ドル、輸入:603億ドル |
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
主要国との貿易状況
ここで、韓国にとって代表的な貿易相手国のうち、中国、米国、日本、サウジアラビアの4ヵ国について、輸出入の状況をグラフ化しておきましょう(図表3)。
図表3-1 韓国の貿易(中国)
図表3-2 韓国の貿易(米国)
図表3-3 韓国の貿易(日本)
図表3-4 韓国の貿易(サウジアラビア)
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
これで見ると、対米では貿易収支構造はほとんど変化していませんが、中国との間ではこのところ貿易黒字が急減している姿が浮かんできます。また、対日では輸入額が若干増えていますが、対サウジアラビアでは輸入額が急増している様子も確認できるでしょう。
このあたりは、原発停止で鉱物性燃料の輸入が急増している日本も韓国のことを嗤うことはできませんが、ただ、「外国から中間素材を購入して加工している」というビジネスモデルを採用している韓国の場合、自国通貨・ウォンの下落の悪影響はより大きく出て来ます。
先ほどの中央日報の記事には、こんな記述があります。
「今年の貿易収支を赤字と予想するのはそれだけ最近の原材料価格上昇傾向が深刻だという意味だ」。
中央日報によると、「韓国は原材料を外国から仕入れてこれを再加工して販売する中間財産業が多い」としつつ、特別な状況でもない限り、通年で貿易赤字に転落することはめったにないと指摘します(「原料価格の上昇が輸出価格に転嫁されるため」、という趣旨の説明が抜けていますが…)。
しかし、最近では物価上昇がエネルギー・原油価格のみならず、「鉱物など原材料・副材料全般に拡大している」、などと指摘しています。
ウォン安スパイラルの恐怖
こうなったときに怖いのは、韓国の貿易収支が減り、そのことが韓国の企業社会に対する信用不安との相乗効果をもたらすことでしょう。
韓国の通貨・ウォンについては、現時点では1ドル=1238ウォン前後と、一時と比べて小康状態にありますが、もしもウォン安がぶり返すようであれば、ウォンの下落のスパイラルが生じる恐れもあるのです。
つまり、ウォン安になると韓国の輸入品価格がさらに上昇し、その輸出品への価格転嫁が遅れれば貿易黒字が削られ、そのことが韓国という国自体への不安を招き、さらにウォンが売られる、といった展開は、十分にあり得る話でもあります。
とくに、韓国の通貨・ウォンは典型的なソフト・カレンシーであり、為替市場が未成熟かつ脆弱であるため、こうした「ウォン安スパイラル」の発生は、日本にはないリスクでもあります。
だからこそ、韓国の通貨・ウォンがさらに下落するような展開が生じてくれば、またぞろ、「韓日通貨スワップ待望論」だの、「G20スワップ待望論」だのといったものが隣国から出て来る、といった可能性には注意が必要かもしれないと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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自転車操業的な経営状況だと、「作ってから売る」の”作る”のプロセスで、資金繰りがショートしかねないんですよね。
かといって製造コストをそのまんま価格転嫁しちゃうと、せっかくの輸出競争力が削がれてしうんですよね。
貿易と財政。双子の赤字は大変ですね。
*経常収支の健全化策として、旅行収支の緊縮維持(特に日本路線)をおススメします。
韓国は素材・部品・装備の対日依存を低下させようと努力てきした。
中国はそれ以上に素部装の対韓依存を低下させてきた。
中国がかつては韓国から輸入していたが逆に輸出するようになった商品も多い。
現在では自動車から造船まであらゆる業界で中韓は対立。
韓国が優勢なのは半導体くらいでほとんど互角の勝負。
韓国の輸出金額だけ見れば多いが利益を出せていない企業も多い。
ここで重要なのは原材料を中国が握っていること。
例えばバッテリーの材料となるリチウム。
韓国向けに値段を上げてその分国内向けに値段を下げる。
これだけでバッテリーのシェアを奪うことができる。
そしてこれは様々な分野で応用が可能。
ヒュンダイはEVを輸出ではなく各地で地産地消する方針。
サムスンも数年で米国の半導体工場が竣工する。
結局、韓国の製造業は中国にとって代わられることになる。
韓国の昨年のGDPの成長率は+4.0%で、その内、輸出9.7%増、輸入8.4%増で、純輸出分+0.8ポイントが寄与したとのこと。
そして、民間消費で3.2ポイントが寄与したとのこと。
https://japanese.joins.com/JArticle/287116
1)まず韓国の貿易赤字について、本年度以降、ずっと韓国の貿易赤字が続くことになれば、徐々にGDPにも響いてきます。
このことは、韓国にとっては大問題になるでしょう。
また、もう一つ留意すべきことがあります。韓国は、サムスンなどの海外生産分を韓国国内の生産扱いして韓国からの輸出にカウントすることに切り替えたと韓国銀行が説明したという、中央日報の過去の記事がありました。それは事実なのでしょう。GDPを大きく見せるために!実際の貿易赤字額は、その時からずっと、そしてもっともっと膨大になっていると思います。
2)民間消費について言えば、2021年も家計実質所得は減少し、一方で家計負債比率は上昇していて、消費が増加している。つまり、民間の人たちは借金であれこれ購入していて、それがGDPの増加に大きく寄与している。
そして、一人当たりのGDPでは、日本は韓国に抜かれたとかいう意見がある。それが万一、本当だと仮定して、それは韓国にとっていいことなのでしょうか?
https://japanese.joins.com/JArticle/290698
韓国の財閥の持つ潤沢な資金ベースのパクリビジネスモデルが崩壊の方向に進んでいるという事も言えるかもしれませんね。ものづくりがパクリなので、製造するための原材料や装置も相当な割合で海外に頼るしか無いですからね。