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BBC受信料廃止の可能性高まる:NHKに議論波及?

BBCの受信料、正確には「ライセンスフィー」が廃止される可能性が高まったようです。NHKとBBCだと、法制度や公共放送に対する意識などはまったく異なりますが、英国でライセンスフィー廃止の議論が出てきた「背景」については、じつは日英でほとんどといって良いほど同じです。自然に考えて、NHKの受信料制度自体、もともとかなりの無理がありますが、BBCの議論はNHKにも波及するのでしょうか?

NHK問題

放送法第64条第1項本文

当ウェブサイトではしばしば、NHK問題について取り上げています。

このNHK問題とは、テレビを設置した人は放送法の規定に基づき、NHKと受信契約を結ばなければならないとされている問題のことです。

放送法第64条第1項本文

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

すなわち、あなたがもしテレビを設置した場合、極端な話、NHKの番組をたった1秒たりとも視聴していなくても、NHKと受信契約を結び、NHKに対して年間13,650円(地上波のみの契約で、口座振替やクレジットカードでの1年一括払いの場合)の受信料を支払う義務が生じるのです。

もちろん、「法律にそう書かれているから守らなければならない」、という議論はあり得ますし、私たちは法律を守る善良なる市民である以上、テレビを設置すればNHKと受信契約を結ばないという選択肢はないのだ、という主張はそのとおりでしょう。

そもそもそんな法律が存在して良いのか

ただ、当ウェブサイトで問題視しているのは、「そもそもこんな法律が存在していて良いのか」、という論点です。

そもそも日本は自由主義経済の建前を持つ国であり、税金、健康保険料、社会保険料などの例外を除いて、自分が買ってもいない財貨やサービスに対価を支払うということは、基本的にはあり得ませんし、また、本来ならばあってはならない話でもあります。

この点、NHK自身の言い分に基づけば、テレビを設置した世帯がNHKと(半強制的に)受信契約を結ばなければならない(=受信料を支払わなければならない)理由は、NHKが「公共放送」だからだ、というものです。これが「公共性の論理」です。

そして、NHK自身の定義では、この「公共放送」とは、「①営利を目的とせず、②国家の統制からも自立して、③公共の福祉のために行う放送」だそうです(NHKウェブサイト『公共放送とは何か』より)。

しかし、現実にNHK自身が①営利を目的としていないか、②国家の統制から自立しているといえるか、③公共の福祉のために放送を行っているか、という点については、どれも当てはまっていない可能性が濃厚です。

たとえば①については、NHKが看板として年1回放送している『紅白歌合戦』は、著名歌手を多数招き、派手な舞台をこしらえてヒットナンバーなどを歌わせ、その採点に野球選手などを含めた著名人を多数招いている、というものです(最近ではユーチューバーなども招かれているようです)。

はて?

これが「商業主義」ではない、と言うには、かなりの無理がありませんか?

また、②については、明らかにノーです。「国家の統制から自立」とは、国が法律や政令、省令などを変更したとしても、その放送局に放送内容をやめさせたり、変えさせたりすることができない、という状況をさしているのだとすると、NHKはこの定義に該当しません。

NHKに受信料の支払を義務付ける根拠が「放送法(※厳密には「放送法第64条第1項本文」)」という法律に存在しており、その意味では明らかに「国家の統制」に服しています。極端な話、国会議員がその気になり、「放送法第64条第1項を廃止する」と言えば、NHKは存在し得なくなるかもしれません。

いったい誰がNHKの「公共性」を担保しているのか

そして③については、そもそもNHKが製作する番組が「公共の福祉」に合致しているかどうかを検証する独立第三者機関が存在しておらず、事実上、野放しのような状態です。

いや、あえて「公共の福祉」という言葉を使うならば、むしろ、以前の『NHKが文化遺産「熊野古道」破壊=必要な許可を得ず』を含め、当ウェブサイトでしばしば指摘しているとおり、現実のNHKの行動自体、「公共の福祉」を破壊しているケースも多いでしょう。

英国の公共放送は一般人向けに「偽情報」を判別するためのテクニックを伝授するのに対し、日本で「公共放送」を騙る組織は職員1人あたり1573万円もの人件費を計上するなど、著しく公共性に反した行動を取り、挙句の果てには貴重な文化遺産である熊野古道を破壊するような組織だそうです。興味深いですね。NHK問題の本質当ウェブサイトでしばしば取り上げる問題のひとつが、「NHK問題」です。NHKといえば、放送法(※)の規定をタテに取り、テレビを設置したすべての世帯から事実上、半強制的に受信料を取り立てている組織です...
NHKが文化遺産「熊野古道」破壊=必要な許可を得ず - 新宿会計士の政治経済評論

この点、ごく一部の方は、NHKに大喜びで受信料を支払っていらっしゃるようですが、そのような方に対しては、「どうぞご自由に受信料をお支払いください」、としか言いようがありません。

しかし、NHKがみずからを「公共放送」だと騙っていることは事実ですが、NHK自身が定義する「公共放送」の条件に、NHKが著しく逸脱しているという点について、「NHK大好き」な皆さんはどのように抗弁しているのでしょうか?

極めて残念なことに、NHKを擁護する人から、この点についてきちんとした説明を聞いたことはありません(※「放送法自体は国会が決めたものだから、間接的に国民がこれを是としているということだ。したがって、これをウェブ評論サイトごときで議論することがおかしい」、などと揚げ足取り的に批判する人はいるようですが…)。

もっといえば、この「公共性」という単語が出て来ると、やはり、個人的には大変にうさん臭さを感じてしまいます。公共性とはいったい何なのか、そしてこの「公共性」を誰が担保するのか、などと考えていくと、本当によくわからなくなってしまうからです。

むしろ「公共性に反している」証拠ならいくらでもある

そもそも「公共性」とは、俗に、「一般社会に対し広く影響を及ぼすこと」、などと定義できると思いますが、ただ、その意味合いは、かなり曖昧でもあります。

というよりも、NHKの場合は「公共性に反している」証拠ならいくらでもあります。あるいは、「公共性」を隠れ蓑にして、受信料利権を死守する利権団体と化している、と言い換えても良いでしょう。

たとえばNHKの職員1人あたりの人件費(給与手当だけでなく、退職給付費用や法定福利費、福利厚生費などを含めた、広い意味での人件費)は、単純計算で1600万円近くに達します(『NHK「1人あたり人件費1573万円」の衝撃的事実』等参照)。

1兆円を超す金融資産、不透明な連結決算に加えて「隠れ人件費」疑惑もNHKが2021年3月期(=2020年度)の財務諸表と連結財務諸表を公表しました。当ウェブサイトとしては、NHKが「公共放送」として相応しくないほど非常識に超高額な人件費を負担している点や、国民からかき集めた巨額のカネを1兆円以上、さまざまな形で保有している点を指摘して来ましたが、ここで最新状況について改めてまとめておくとともに、あらためて、NHKの「あり方」について考えてみたいと思います。NHK問題の要諦NHK問題をまとめると…?当ウ...
NHK「1人あたり人件費1573万円」の衝撃的事実 - 新宿会計士の政治経済評論

そのうえ、NHKはかき集めた受信料をすべて番組制作に使っておらず、受信料をかき集めるためのコストは受信料の10%近くにも達していますし、また、毎年積み上がった巨額の剰余金のためでしょうか、NHKは連結集団内に莫大な不動産、1兆円を超える金融資産などを抱え込んでいる状況です。

さらには、こうした巨額の資産を乱脈に使用しているのでしょうか、『NHKの「隠れ人件費」600万円のケースもあるのか』でも触れたとおり、一部報道によれば、豪勢な社宅に職員が格安で入居できる、といった報道もあります(※ただし、このあたりについての正確な実態は不明です)。

先日の『NHK職員に対する住宅手当に潜む「隠れ人件費」問題』では、NHK職員に対して月額5万円の住宅補助が出ているとする内部告発や、広尾の物件に2万円で住んでいる職員もいるらしいとする記事を紹介しました。これについて、もう少し踏み込んで補足しておきたいと思います。NHKの人件費問題事情は伏せますが、個人的にはこの数日、大変に忙しく、あらためて振り返ると、ここ数日の記事については誤字・脱字も多く、また、いくつか議論したい論点がすっぽり抜け落ちていたりもします。そのひとつが、先日の『NHK職員に...
NHKの「隠れ人件費」600万円のケースもあるのか - 新宿会計士の政治経済評論

このように考えていくならば、NHKの行動は、巨額の剰余金を生じさせ、職員に対する人件費の形で浪費するという意味において、公共性とは無縁であるばかりでなく、もはや「強欲の塊」、「カネの亡者」と述べた方が、実態を正確に表しているでしょう。

あるいは「利権団体」と言えば良いのでしょうか。

余談ですが、財政再建の必要性をしきりに騙る人たちは、「増税により財政再建を図るべきだ」などと主張しているのですが、財務省・外為特会が保有する200兆円近くの外貨準備、NHKが保有する時価数兆円にも達する(かもしれない)資産、あるいは電波利用権などには頑なに言及しないのは不思議ですね。

BBCの動向とNHK

BBCのライセンスフィー問題

さて、以前の『利権団体は議論を嫌う:英BBC受信料廃止論とNHK』などでも取り上げた論点が、「英国の公共放送であるBBCの『ライセンスフィー』制度が2028年1月以降に廃止されるかもしれない」、というものです。

BBCの受信料廃止議論に「続報」がありました。視聴状況に応じて課金するなどの案が浮上しているのだそうです。そして、英国における受信料制度の議論は、日本でも受信料制度そのものを議論するチャンスといえるかもしれません。ただ、NHKは受信料制度そのものを議論することを極端に嫌っているように見受けられます。なぜなら受信料制度は一種の利権だからです。英国の受信料制度先日の『英BBC「受信料廃止議論」がNHKに与える影響は?』では、英国で公共放送・BBCに関する受信料廃止議論が出ている、とする話題を取り...
利権団体は議論を嫌う:英BBC受信料廃止論とNHK - 新宿会計士の政治経済評論

日本と英国ではそもそもの受信料制度(とくに法的な建付け)、あるいは公共放送の在り方、社会的な合意などが大きく異なっているため、単純に比較できるものではありませんが、やはりこれは大変に興味深いものと思わざるを得ません。

というのも、英国でそのような議論が出てきている理由のひとつに、インターネット動画配信サービスの台頭など、経済・社会環境が大きく変化してきていることがあるからです。

もっといえば、「視聴状況に応じて課金する」ということが、技術的にはさほど困難ではなくなっており、これに加えてNetflixだ、アマゾンプライムだ、Huluだ、YouTubeプレミアムだ、といった具合に、「コンテンツに対して課金する」という事例が、ほかにも出てきているのです。

この点、英国におけるBBCのライセンスフィーは、ただの1秒も視聴していなかったとしても課金されるものであり、その意味では英国の人々の目から見て、民間の動画配信サービスなどと比べたときの「不平等感」が増していることは間違いありません。

ドリス文化相、白書で「年159ポンドのフィーは持続不可能」

こうしたなか、その「続報」が出てきました。ここでは英『ミラー』紙の報道を紹介しましょう。

BBC licence fee faces the scrap from 2028 as Tories suggest it’s ‘unsustainable’

―――2022/04/29 12:37付 Mirrorより

ミラーによると、ナディーン・ドリス英文化相は4月28日に刊行された放送白書のなかで、「年間159ポンドのライセンスフィーについては持続不可能となるかもしれない」と示唆。現在は2027年12月31日まで保証されているライセンスフィー制度については「これで最後になる」と警告したのだそうです。

具体的には、「ライセンスフィーの資金調達モデルの見直し」が行われ、その詳細については「今後数ヵ月以内に発表される」、などとしていますが、その背景について、白書では次のように指摘しているのだとか。

“An increasing number of households are choosing not to hold a TV licence, as fewer people choose to watch live TV or other activities that require a TV licence.”

ちなみに「TVライセンス」は英国の制度上に特有のもので、一般家庭がテレビを所有する際に必要な許可のことです。この許可を得るために年間159ポンドを支払う必要があり、許可を得ずにテレビを視聴すること自体が違法で、違反した場合には最高1000ポンドの罰金と裁判費用を負担する必要があるそうです。

その知識を踏まえたうえでこの記述を解読すると、「一般家庭ではテレビライセンスを取得しないことを選ぶ人が増えており、また、テレビの生放送を含め、テレビライセンスがなければ視聴できない番組を視聴する人自体が減っている」、という意味でしょう。

(※ちなみにミラーの記事はまだ続くのですが、もしご興味があればぜひリンク先記事を直接読んでみてください。)

法制度は違うが背景はまったく同じ

このあたり、日本の場合は「ライセンス制度」ではなく「受信料制度」であり、「NHKと契約をしなければならない」というものに過ぎず、また、NHKに受信料を支払わなかったとしても、罰金などの刑事罰は科せられません。

また、英国の場合はライセンスフィーの未払に厳しい罰則が設けられているかわり、その制度自体が更新制となっているのに対し、日本の場合は受信契約を締結する義務が放送法に書きこまれてしまっていて、国民投票などでは規定を動かすことができない、という大きな違いがあります。

したがって、制度面だけで単純に日英の事例を比較することは難しいのですが、ただ、BBCやNHKを取り巻く社会情勢の変化の部分に関しては、日英ともに状況はまったく同じです。

また、『虚報疑惑が浮上するNHKに公共放送騙る資格あるのか』などでも指摘しましたが、BBCの場合は公共放送としての高いファクトチェック能力が観察されるのに対し、NHKにはBBCのような能力は観察されません(むしろ虚報、文化財破壊、職員に対する異常な高給など、組織からは腐臭が漂っているほどです)。

NHKを巡って、またしても虚偽字幕疑惑が浮上しました。小学館が運営するウェブサイト『NEWSポストセブン』の記事によると、NHKが4月10日正午に放送した番組で、ウクライナから来日した難民が話した内容に、まったく異なる内容の字幕が付けられていた可能性がある、というのです。事実関係についてはまだわかりませんが、これが事実ならば由々しき問題です。NHKは「公共放送」を騙るが…?NHKといえば、自分たちで勝手に「公共放送」だと名乗っている組織です。ただ、NHKの行動を見ていると、はたして彼らに「公共性...
虚報疑惑が浮上するNHKに公共放送騙る資格あるのか - 新宿会計士の政治経済評論

ことに、知床の観光船沈没事故などで大活躍している海上保安庁の予算は令和4年度ベースで2618億円に過ぎず、NHKの受信料収入(約7000億円)はこのざっと2.67倍という点に対し、やはり大変に奇妙にも見えてしまいます。

いずれにせよ、当ウェブサイトとしては、「公共放送」自体の必要性を無碍に否定するつもりはありませんが、少なくとも「NHKが公共放送に値する組織である」とはとうてい結論付けられませんし、ましてや国民から「NHKを倒産させる権利」を奪っている放送法の規定は、社会正義の点からも正当化するのは困難です。

NHKの「資産国庫返納+分割民営化」

以上の議論から、本稿では敢えて、少しだけ踏み込んでみたいと思います。それは、NHKの「資産国庫返納+分割民営化」スキームです。

少なくともNHKが保有する莫大な資産(時価評価すれば数千億円、あるいは数兆円にも達するかもしれない莫大な不動産、年金資産を含めれば1兆円を超える金融資産、NHKが過去に制作した番組のコンテンツ利用権など)については国庫に返納させたうえで、次の措置を講じるのも手ではないかと思います。

  • NHK自体を、公共性の高い事業(国会中継、国会中継、政府官庁の記者会見、気象庁発表の天気予報・地震情報、教育番組など)とそれ以外の事業(歌番組、クイズ番組、大河ドラマ、お笑い、アニメなど)に分割する
  • 公共性の高い事業については国営放送とし、「受信料」ではなく、それぞれの官庁等の予算において措置を講じる(たとえば教育番組については、いわゆる「F欄大学」に対する教育経費補助を削減し、文部科学省の教育予算から捻出する)
  • 歌番組、クイズ番組、大河ドラマ、お笑い番組、アニメ番組などについては引き続きNHKに残すが、放送法第64条第1項本文の規定については廃止したうえでNHK自体を民営化し、莫大な資産については国庫に返納させる

つまり、民営化されたNHKは、いままでどおり公共性が低い番組を自由に作って垂れ流せば良いのであり、視聴時間等に応じて視聴者に課金するなり、視聴料を廃止して民放と同じくスポンサーを募るなり、自由に経営すれば良いと思います。

極端な話、NHKは今までとまったく同じ放送を続けて良く、それとは「別に」、国が別途、公共性の高い放送事業を担えば良い話です(というよりも、すでに存在している「政府インターネットテレビ」、衆参両院の「インターネット審議中継」をそのまま地上波に流すだけなら、追加コストは限りなくゼロに近いでしょう)。

当然、その「新NHK」は民放ですので、経営が大成功してNTTのような巨大企業になるも自由ですし、経営に大失敗して某第三セクターのように経営破綻するも自由、というわけです。

NHKの存廃は国民が決めるべき

上記の考え方は、もちろん、著者自身が「ひとつの例」として考えているもののひとつに過ぎず、実際にはさまざまな考え方があってしかるべきでしょう。ただ、非常に重要な要素があるとしたら、「国民が有権者として、あるいは視聴者として、NHKの存続の可否を決める権利を持つこと」にあると思います。

たとえば、数年に1回、国民投票でNHKの存廃を諮るという制度を設けるのも良いと思いますし、あるいは余剰資産を国庫返納させたうえで完全に分割民営化し、スクランブル放送化するにせよ、名実ともに商業放送化に舵を切るにせよ、「新NHK」の選択に委ねるというのでも良いと思います。

しかし、国民投票、商業放送化のいずれであったとしても、NHKの存廃は、最終的に国民が決めるべきです。

とくに後者の場合、NHKが「素晴らしい番組」とやらを流すのであれば、国民が視聴者としてこぞってNHKを視聴するはずですから、この場合はNHKはいままでどおり、1万人を超す職員を雇い、1人あたり2000万円近い異常に高額な人件費を負担したとしても、まったく問題なくやっていけるでしょう。

ただし、そのためには「1秒たりとも視聴していないのに半強制的に課金される」という現在の仕組みを変えなければならないことは、言うまでもありません。

オマケ:民放こそ怒るべき

さて、ちょっとした「オマケ」です。

「イラネッチケー」敗訴:テレビ業界潰すNHKの強欲』でも触れましたが、当ウェブサイトとしては、NHK自身が受信料にこだわり続けていると、英国と同じような問題点が出て来ると考えています。

昨年7月の『イラネッチケー控訴:テレビ業界をNHKがぶっ壊す!』で予想した内容の途中経過報告です。例の「イラネッチケー」控訴審を巡り、東京高裁の広谷章雄裁判長は、イラネッチケーを装着したテレビに受信契約義務が生じないとした東京地裁判決を破棄しました。この広谷章雄裁判長の支離滅裂さもさることながら、より一層深刻なのは、長い目で見てこの判決がNHKとテレビ業界全体にとって自滅行為となる可能性が高いという点でしょう。驚きの判決イラネッチケー控訴審、衝撃の敗訴昨日は、久しぶりに驚きました。「イラネッ...
「イラネッチケー」敗訴:テレビ業界潰すNHKの強欲 - 新宿会計士の政治経済評論

すなわち、現時点において「良き市民として法律をしっかりと守りたいが、それと同時にNHKにはどうしても視聴料を支払いたくない」と思っている人は、究極のところ、「地上波放送が映るテレビを持たない」という選択を取るしかありません。

このこと自体、NHKが民放各社を道連れにして、テレビ業界の滅亡に向けた動きを加速させているようなものでしょう。

そういえば、以前の『NHKとの契約不要「ドンキテレビ」好調につき再販へ』でも取り上げたとおり、ディスカウントストアのドン・キホーテが発売した「チューナーレステレビ」が、どうもかなりのヒット商品となっているようです。

NHKと受信契約の締結義務が生じないとされる「チューナーレステレビ」の売れ行きが好調なようです。ディスカウントストアのドン・キホーテが2月中旬から、チューナーレステレビの再販を始めるとの報道に加え、一部のメーカーは同様のチューナーレステレビの発売に踏み切っているのだとか。これなど、NHKの強欲が、結果的にはテレビ業界自体を道連れにしているようなものでしょう。ドンキのチューナーレステレビ『社会はチューナーレスTVによりNHK排除に動くのか』を含め、以前からしばしば当ウェブサイトで紹介してきた話...
NHKとの契約不要「ドンキテレビ」好調につき再販へ - 新宿会計士の政治経済評論

この製品、「チューナーレステレビ」と銘打っていますが、現実には「テレビ」といえるかどうかは微妙です。そもそも一般に「テレビ」とは、地上波、衛星などの放送を受信するための製品を指す用語ですが、ドンキの「テレビ」自体、そもそもテレビ放送を受信するためのチューナーが最初からついていないのです。

ただ、「マスオ」様というコメント主の方からの指摘にもあったとおり、「スマートフォン」などと同様、一種の「慣用語」として、「動画を映し出す機械」という意味で、「テレビ」という呼び名が残っても良いものなのかもしれません。

(※もっとも、ついでに申し上げれば、「元ジェネラリスト」様というコメント主様の指摘によれば、そのチューナーレステレビを巡っては辛辣な評価も出ているようですが…。)

いずれにせよ、いまや「動画」はNHK、民放など、せいぜい数十の地上波テレビ局だけが制作し、流すものではなく、いまやユーチューバーなどを含め、数万人、いや、数十万人、数百万人というクリエイターが制作する時代になったのでしょう。

そして、優れた動画が存在すれば、これに対応し、いずれさまざまな会社から、さまざまな値段、スペックのチューナーレスTVが発売されるであろうことは、十分に予測できるところでもあるのです。

その危機意識が民放各局にあるのなら、民放連こそ声を大にしてNHK改革を主張すべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (15)

  • 取り敢えずは虚報を出した時にちゃんと周知するだけでもいいんだが
    仮に認めて修正出した場合でも極力ひっそりやるもんだから知らない人はほんと知らないからなあ

  • スクランブル化して払った人だけ視聴できるようにすればいいんだよ。
    大災害の時は災害関連番組のスクランブルを解除する。
    時々いい番組もやってるから月額視聴料ではなくペイパービューだともっとありがたい。

  • NHKの分社化(官・民)は、”公務員の国籍条項”にも適合可能な良い案だと思いました。
    「報道しない自由」の制約に繋がることを期待します。行政批判は民放の方ですればいい。

    • >行政批判は民放の方ですればいい。
       どのような意図のコメントか? わかりづらい?
      分社化した場合の行政批判は「官」ではなく「民」が主体で行へばよい
      と 受け取ったが
      賛同できるか?は微妙

  • そもそも民放テレビというビジネスモデルは終わりに近いんじゃないの?
    (1)みんなテレビをみなくなった。―>(2)コマーシャルを打っても効果がうすい。―>(3)コスパがよくないのでスポンサーが番組予算をしぶる。―>(4)低予算のつまらない番組が増える。―>ますますテレビをみなくなる。―>(1)にもどる。 この悪循環。
    番組を作りコマーシャルをつけて放送することが限界ー>電波だけ売る=ショップチャンネルが増える。

  • ドラマの質を下げるだけ下げて
    儲かっていないように見せていますし
    いざとなれば政治家の縁故者を大量採用しているので
    まったく問題ありませんw

  • 今度はドイツを見習えに鞍替えするだけ(by NHK)
    ドイツの公共放送は未だ受信料制で罰則ありだそうですから
    ただし、地方毎に分割されていて総予算7000億円にまで肥大化はしてないようですし、高過ぎる職員の給与を下げろ…という議論はちゃんと存在します。

  • 思いますけど、日本にNHK嫌いを増やしたのは受信料の集金人(中にはチンピラみたいなのも)でしょうね。
    受信料を文句も言わず払う人も一定数いるのだから、それで賄ってれば敵も増やさないですんだのでしょう。

    総務省もNHK改革と言いながら、ネット収入を法制化でもしそうな勢いです。ネット時代でもNHKを存続させることが目的じゃないかと勘ぐってしまいます。
    誰が総務相になっても結果パッとしませんし、NHK分割などを首相が公約するくらいでないと何も変わらない気がします。
    総裁選でNHK分割を謳う候補がいたら・・・マスコミが潰すかな?w
    マスコミから見たらマスコミに阿るキッシーは安牌でしょう。

    雑談板に書いたドンキテレビネタをここにも書かなきゃ、と思いながら読んでいたら本文でご紹介されてました。ありがとうございます。(笑)

    • 元ジェネラリスト 様

      こちらこそ、情報のご提供を賜り、大変にありがとうございました。
      引き続き当ウェブサイトのご愛読とお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

  • NHKの受信料が毎月1275円、衛星を含めた場合ですと2170円になりますよね。

    ネット配信サービスと比較すると、現時点で各社500円/月~1000円/月の料金ですので、同じ支払い料金でネット配信を2社くらい契約できます。

    となると、どこでも視聴でき、自分の趣味趣向にあったネット配信を契約して、TVをやめるのが自然な流れだと思います。

    若者のTV離れは、NHKがその原因を作っているのかもしれません。

  • NHK改革を言う議員があると、その地元のNHKはその議員の粗をほじくり出して放送する恐れがそうです。
    完全に清廉潔白な人なら大丈夫かも知れませんが、清廉潔白と言っても加計学園のように印象操作で疑惑があるように見せることもできるので、議員としては手を付けにくいようです。

  • 法律には疎いのですが
    受信契約を結ばなくてはいけない。

    NHKの提示する契約内容で契約しなければいけない。
    は同義語でしょうか?
    仮にすべての国民はTVを購入しなければいけない、と規定されたら販売店の言い値で買うことはなく価格交渉をすると思うのですが、受信料交渉をすることは法律違反なのでしょうか?

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