「日米が提案の3ヵ国軍事訓練を韓国が拒否」=韓国紙

日米両国が韓国に、朝鮮半島付近での「日米韓3ヵ国軍事訓練」を提案し、韓国政府が拒否した、などとする報道が出て来ました。まさに、朴槿恵(ぼく・きんけい)政権末期の状況を見せられているような気がします。おそらくは政権交代まで1ヵ月少々というタイミングを踏まえ、日米韓3ヵ国連携への尹錫悦政権の「本気度」を巡って、この手の報道は今後もしばしば出てくるのかもしれません。

日米韓3ヵ国軍事訓練を韓国が拒否

韓国で文在寅(ぶん・ざいいん)政権が退陣し、尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が発足するまであと1ヵ月少々となりましたが、最近、韓国側で政権交代をにらんだ動きが出てきたようです。これに関連するのでしょうか、韓国メディアが本日、相次いで興味深い記事を掲載しています。

米日からの「三カ国軍事訓練」提案を韓国外交部が拒否

―――2022/03/31 10:39付 朝鮮日報日本語版より

[単独]米日、韓米日3カ国軍事演習を重ねて提案…文在寅政権「受け入れられない」

―――2022-03-31 07:32付 ハンギョレ新聞日本語版より

『朝鮮日報』、『ハンギョレ新聞』(いずれも日本語版)が同時に報じている内容によると、日米2ヵ国が韓国に対し、「朝鮮半島海域近くでの3ヵ国の合同軍事訓練」を提案したものの、韓国がこれを拒絶していた、ということです。

提案された時期と機会を巡っては、朝鮮日報は「今年2月の日米韓3か国外相会合で」、ハンギョレ新聞は「今年2~3月ごろ、日米韓3ヵ国高官級協議で」と報じていて、内容には微妙な齟齬がありますが、ただ、共通しているのは「韓国が協力を拒否した」、という点です。

韓国政府が拒否した「理由」

これについて、ハンギョレ新聞は次のように述べています。

外交筋の話を総合すると、今年2月12日にハワイのホノルルで開かれた韓米日3カ国外相会談で、米国のアントニー・ブリンケン国務長官と日本の林芳正外相は、チョン・ウィヨン外交部長官に韓米日合同軍事演習を提案したが、チョン長官はさまざまな理由を挙げて難色を示した」。

ちなみに文中「チョン・ウィヨン」と記載されているのは、鄭義溶(てい・ぎよう)韓国外交部長官のことです。

ハンギョレ新聞によると、この日米韓3ヵ国の外相会合に続き、今月11日には日米韓外務次官による電話会談の際にも、ウェンディ・シャーマン米国務副長官と森健良外務事務次官が3ヵ国合同軍事演習を提案したものの、崔鍾建(さい・しょうけん)韓国外交部第1次官がやはり難色を示したそうです。

ではなぜ、韓国政府がこれを拒絶したのか。

朝鮮日報の方の記事では、「韓国政府は『韓半島周辺での韓米日連合訓練は中国とロシアを無用に刺激しかねない』と判断し、難色を示したようだ」、などと記載しています。

そのうえで、「複数の外交筋」は「31日にハワイで開催される韓米日外相会議でも米日は3ヵ国軍事訓練を改めて提案する可能性がある」と伝えたものの、「今の韓国政府がこれに同意する可能性は小さい」、などと伝えています。

ある意味で、「日米韓3ヵ国連携」に否定的であり続けた文在寅政権の姿勢が、最後まで一貫していた、ということでしょう。

日米韓3ヵ国協力の先行き

それでは、尹錫悦政権下での日米韓安保協力はどうなるのでしょうか。

これに関しても、興味深いことに、複数のメディアに取り上げられています。

韓米日の実質的な安保協力検討 軍事訓練には否定的=韓国次期大統領側

―――2022/03/31 11:50付 聯合ニュース日本語版より

「韓米日軍事同盟の基礎作り」提案する米日…尹政権には「試験台」となるか

―――2022-03-31 09:24付 ハンギョレ新聞日本語版より

このうち『聯合ニュース』(日本語版)の記事によれば、尹錫悦次期大統領の報道官を務める金恩慧(きん・おんけい)氏は31日の記者会見で、日米韓3ヵ国安保協力を巡る尹錫悦氏の立場について、日米韓の共同軍事訓練は「韓米日の安保協力とは次元が違う問題」、などと明らかにしたのだそうです。

つまり、「3ヵ国の実質的な安保協力は強化する」けれども、「軍事訓練を実施する段階にまでは入らない」、ということでしょう。

これに関し、ハンギョレ新聞の方の記事では、この日米両国による「3ヵ国軍事演習」への対応を巡っては、尹錫悦政権に対する「韓国政府の難問」として浮上している、などと指摘します。

『3国軍事演習』は、北朝鮮、中国、ロシアなどの北東アジア周辺国と韓国社会内部に、これまでの外交・安保協力をはるかに越え、『三角軍事同盟化』という長年の『越えてはならぬ一線』を消すための戦略的な基礎作りを韓米日3カ国が開始したとみなされる可能性があるからだ」。

…。

5年前のデジャブ

このあたり、今から5年以上前の朴槿恵(ぼく・きんけい)政権時代の話題をそのままリピートで見せられているのではないか、といった錯覚を覚えるのも事実です。

基本的に、地理的条件だけで見るならば、日本や米国にとって、韓国は同盟を結ぶべき相手としては非常に適しています。しかし、それと同時に、韓国自身が日米韓3ヵ国の軍事同盟締結に極めて後ろ向きであり、日米韓3ヵ国連携の歴史も、連携を嫌がる韓国を連携に留めておく努力の連続でもあったといえます。

たとえば、2015年12月の日韓慰安婦合意も、歴史問題を理由に日米韓3ヵ国協力に後ろ向きだった韓国を、連携に引き込むための日本なりの妥協だった、という側面があります。

実際、この慰安婦合意を契機として、2016年7月8日には在韓米軍への高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備、同11月23日には『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』(日韓GSOMIA)への署名が実現しています。

ただ、結局のところ、慰安婦合意については文在寅政権が実質的に反故にしてしまい、THAADについては韓国政府はその運営に非協力的で、GSOMIAについては韓国側が2019年8月に、日本に対して破棄を通告しています(のちに撤回)。

このように考えると、韓国に対して約束をしたところで、どのみち意味がないということを、日米両国も深く理解しているのではないかと信じたいところです。

そして、韓国側のメディアが報じた「日米韓3ヵ国合同軍事訓練」という構想は、おそらくは本当に韓国政府から韓国メディアにリークされたものだと考えて良く、また、このタイミングでこの話が出てきたのも、尹錫悦政権の日米韓3ヵ国連携に対する「本気度」を、日米ともに見極めようとしているからなのかもしれません。

韓国がなくても大丈夫な国づくり

ただし、日本としてはすでに、経済的にはCPTPPを主導して発足させているのに加え、外交的には「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」と日米豪印「クアッド」連携の仕組みを開始しており、それらの仕組みは韓国がなくても機能しています。

このあたり、「ジョー・バイデン-岸田文雄-尹錫悦」体制で、「日米韓連携」に戻ろうとする力学が多少は働く可能性はありますが、長い目で見てみれば、韓国が日米両国との連携ではなく、中国との「連携」(?)を重視するであろうことは、想像に難くないでしょう。

したがって、日本もいずれ、こうした「韓国がなくても大丈夫な国づくり」を進めていかねばならないことは間違いないと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. より:

    韓国が無くても大丈夫な家庭作り は終了しています。
    我が家の子供たちは韓流?何それ美味しいの?状態です。全く興味なし。

    電子機器・機械・食品・衣料・各種コンテンツetc
    テーパリング期間を終え、断交に近い状態です。隠れ部品までには徹底できておらず、今後の課題。
    テレビなし、韓国なしでも全く生活に困らないが、このサイトからこの2成分が抜けると娯楽が減ると危惧しております。

    1. 世相マンボウ 。 より:

      韓国の新政権を材料に
      日本の偏向マスコミと
      韓流脱糞派の人たちは
      日本が捏造元に謝罪と金銭要求される
      過去のおかしな日韓関係に戻すことを
      狙ってるようですが、
      プーチン朝ロシアに未来がないのと同様に
      そんな汚れた画策はもはや通用するわけがありません。

      韓流川勝知事が推し進める
      環境破壊韓流メガソーラーゴリ押しなど
      そうした日本社会を汚す
      モロモロ韓流からのデトックスが
      これから未来に向けての正しいトレンドです。

      1. より:

        世相マンボウ 。様

        返信ありがとうございます。

        『デトックス』 言い得て妙ですね

  2. 普通の日本人 より:

    だって中国、ロシアって怖いんだよ。
    しらないの? 本当に叩いてくるんだよ。
    これですね。

  3. taku より:

    韓国は、安保をどうする気なんですかね。他人事ながら心配します。「経済は中国、安保は米国」とか言って、タダ乗りしてたら、まさかの時に米国に簡単に裏切られますよ。米国も、朝鮮戦争の時に米国人の血を流して助けてやったのに、感謝もせずに(自分勝手な)正論を時折いうこの国にいいかげん辟易していると思うのですが。進歩派のみならず、尹錫悦の報道官を務める金恩慧までがこのありさまとは。尹錫悦は最初の訪米でバイデンにガツンとやられ、次の訪日はいつまでも決まらず、当然中国も相手にせず(次は習近平が訪韓する順番と韓国側は言っているらしい)、北朝鮮は鼻もひっかけないでしょう。韓国人は自分の国の立ち位置(因みに韓国では位相というらしい)を勘違いしているとしか思えません。嫌韓主義者の私にとっては、朗報ですが。

  4. ホワイト国 より:

    韓国の安保?

    「あっしには関わりのないことでござんす」で、
    日本は韓国を助けるな、教えるな、関わるな の『非韓三原則』を貫くべきです。

    韓国に関わると損をするだけなのは、朝鮮戦争で米国が韓国のために3万人の血を流したのに
    なんの恩義も感じていないことであきらかです。

    日本だけでなく、米国も、『非韓三原則』の精神を貫いてほしいものです。
    へたに、米国が半島に軍事介入すると、日本まで巻き込まれてしまいます。
    半島有事のときは、日本は、「韓国にヘルメット5千個供与」ぐらいでよいのでは
    ないでしょうか?

  5. 名無しの権兵衛 より:

     鈴置高史氏の最新論考が出ましたが、それによれば、「日米韓三か国軍事演習」の件については、「氷山の一角」だったようで、自称「保守派」で元「鬼検事総長」の尹錫悦次期大統領でさえも、民族の宿命から逃れることはできないようです。
     これからの5年間も、日韓関係は平常運転が続くことになりそうで、メデタシメデタシです。

    1. 世相マンボウ . より:

      韓国用日派新政権というものは
      凄んで因縁つけ方式の
      文ちゃん政権が惨敗したので
      じゃあ、甘い言葉で引き込んでの
      ボッタクリバー方式の
      同じ反日でも用日派手法での
      ポン引き政権のようなものに
      過ぎないと感じます。

      そんなポン引き政権の甘い誘いには
      まずは国際法違反の解消と
      捏造元にした自称従軍慰安婦の
      虚偽の歴史捏造への取り消しと
      日本への謝罪を行ってからが
      スタートラインであることを
      突きつけてあげることが道理です。

  6. より:

    北朝鮮だけでなく、ロシア、中国を逆なですることになるが、ウクライナの情勢が確定していない時点で、韓国抜きの日米合同演習ということになれば、日本だけがロシアの単独標的になりかねない。

    ロシアは日本にとって隣国だが、アメリカは遠い。
    アメリカはウクライナに対して、武器供与はしても兵を出していない。
    日本も同じ目に合わないとは限らない。

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