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見えてきた対ロシア制裁議論:航空便ではすでに影響も

英国「ロシアを常任理事国から解任する案を議論する用意がある」

ロシアに対する経済制裁が、各方面に及んできています。Bloombergは本日、EUが打ち出すロシアに対する具体的な金融制裁について報じています。また、英国ではロシアの常任理事国からの解任という議論が出ているほか、すでに航空便の世界では、欧州系航空会社のロシア領空通過禁止措置の影響で、日本路線が減便の憂き目に遭っているようです。

ロシアの7つの銀行に対するEUの制裁

ロシアに対する経済制裁の概要が、少しずつ見えてきました。

Bloombergは日本時間の今朝、(おそらくは独自情報として)「欧州連合(EU)はロシアの7つの銀行をSWIFTから排除する方針だ」、「ただし最大手銀行などは除外される見込みだ」、などと報じています。

EU to Ban Seven Russian Banks From SWIFT, Spare Key Firms

―――2022年3月2日 6:17 JST付 Bloombergより

これによると、EUによるSWIFTNetからの排除措置が適用される銀行としては、モスクワに本部を置く大手銀行・VTBバンク、サンクトペテルブルクに本店を置くバンク・ロシヤなどが含まれていますが、最大手であるロシア貯蓄銀行(スベルバンク)、あるいはガスプロム系列の銀行などは含まれていないのだそうです。

ほかにも、制裁対象となる銀行として、Bloombergの記事では「▼Bank Otkritie、▼Novikombank、▼Promsvyazbank、▼Sovcombank、▼VEB.RF」の名前が挙げられています。

また、EU当局者はBloombergの取材に対し、ポーランドを含めたいくつかの国が制裁リストへの銀行の追加を求めているとも指摘。「可能性は低い」ものの、具体的な制裁措置が発効する前に、さらにリストが調整されることもあり得る、などとも報じています。

もっとも、Bloombergは今回の制裁措置でスベルバンクやガスプロムバンクがリストから外れている点を巡っては、「エネルギー供給に関連し、ロシアの財政的孤立が世界経済に波及することによる欧州への影響」に対する懸念が残っていることを示唆するものだ、とも指摘しています。

英国では「ロシアを常任理事国から解任しては」

こうしたなか、西側諸国による対ロシア制裁には、ほかにもさまざまな議論が浮上しているようです。

たとえばAFPによる日本時間昨晩の記事によれば、英国のボリス・ジョンソン首相の報道官は1日、「国連安保理常任理事国からロシアを解任する案を、英政府として議論する用意がある」と表明したのだとか。

安保理常任理事国からのロシア解任、「選択肢」と英

―――2022年3月1日 23:02付 AFPBBニュースより

この点、「常任理事国からの解任」が現実的に可能なのかどうかはよくわかりません。

ただ、AFPの報道によると、報道官は記者団に対し、「我々はロシアが外交的に孤立することを望んでおり、それを達成するためにすべての選択肢を検討している」とも述べたとのだそうです。

航空便の世界では影響が大きい

そうなって来ると、やはり気になるのは物流への影響でしょう。

この点、当ウェブサイトで約1年前に議論したとおり、日本が物流でロシアに依存しているのは航空便の世界が中心であり、現状において日欧間の輸送などに関し、日本がシベリア鉄道に大きく依存しているという状況にはありません(『日本がシベリア鉄道よりもFOIPを重視するのも当然』参照)。

約束破るウソツキ国家のことを信頼しろと言われても無理ですあらかじめお断りしますが、本稿では『「中国を排除するな」発言の真意はFOIP不参加の言い訳』でも予告した「FOIPクアッド首脳会談」を取り上げようと思っていたものの、昨日深夜時点で首相官邸HP等に該当する記事がアップロードされておらず、話題として取り上げることができませんでした。ただ、良い機会なので、「日本がシベリア鉄道よりもFOIPを重視する理由」について、当ウェブサイトなりの見解をまとめておきたいと思います。クアッド首脳会談『「中国...
日本がシベリア鉄道よりもFOIPを重視するのも当然 - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、航空便の世界は違います。

日本にとっての北米路線、あるいは欧州路線は、ロシア上空を頻繁に通過しているからです(とくに欧州路線についてはシベリアルートを通るのが一般的です)。そして、その一方で、西側諸国とロシアの対立が深まるなか、航空便にも影響が及んでくる可能性が出て来ています。

この点、すでに欧州各国はロシアの航空機に対し、欧州領空の通過を禁止する措置を打ち出し、ロシア側もこれへの対抗措置を講じている、という状況にあります。

こうしたなか、この動きに米国も追随する可能性が出て来ました。ロイターによると、米国政府や航空産業関係者は「米国も24時間以内にロシアの航空機に対し米国の領空通過を禁止する」、などと述べたのだそうです。

U.S. to ban Russian flights from American airspace, officials say

―――2022/03/02 9:27付 ロイターより

米欧が揃ってロシアの航空機の領空通過を禁止する措置を打ち出せば、まさに冷戦期の再来、といった印象が深まります。

すでに影響は生じ始めている

この点、わが国に関しては、米国路線にせよ、欧州路線にせよ、ロシアの領空を通過しなければ燃料費が大きく増えるという事情もありますので、対応が難しいところです。日本がロシア機の領空通過を禁止する措置を打ち出せば、ロシアも対抗措置として、日本機の領空通過を禁止するであろうことは予想できるところです。

実際、林芳正外相は昨日の記者会見で、日本が欧州と同様の措置を講じるかどうかについては「物流に与える影響も考慮する必要がある」などと述べるにとどまっています。

林外務大臣会見記録

―――2022/03/01付 外務省HPより

このあたりは是々非々で判断しなければならない点ではあります。

ただし、すでに欧州の航空会社にとってはロシア上空の通過が禁止されているわけですから、欧州にとっての日本路線の運航コストは上昇しているはずですし、コロナ禍のおり、旅客数が以前と比べ減少していると想定されるなか、航空便が維持できなくなるケースもあるかもしれません。

この点、日経電子版の月曜日の記事では、欧州の航空会社がアジア路線を「南回り」の代替航路に切り替え始めており、「欧州とアジアを結ぶ便に大きな影響が出ている」、などとしています。

欧州航空会社、南回りでアジアへ ロシア上空避け

―――2022年2月28日 3:02付 日本経済新聞電子版より

これに加えて斉藤鉄夫国土交通相は昨日の会見で、ロシア領空内での欧州各国の飛行禁止措置に伴い、日本への運航を中止した航空便が、現時点で週20便程度に及んでいると述べています。

斉藤大臣会見要旨

―――2022/03/01付 国土交通省HPより

当然、こうした影響は、物流コストの上昇を通じ、我々の生活にも及んでくる可能性が濃厚です。

いずれにせよ、ウクライナ情勢を巡るさまざまな動きや議論に対しては、日本政府としても、また私たち一般国民にとっても、非常に高い関心を払うべき話題であることは間違いないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (16)

  • 実にどうでもいいことですが、なぜ、いちいちロシアの銀行名の名前の前には黒パンティの絵文字が付いているのですか?>▼

  • シベリア上空の通過は1998年から。
    24年前にもどるだけ。

    ロシアには通貨料が入らなくなる。

  • ソ連は1939年に国際連盟を除名されています。

    今度も国際連合を除名すれば?

    • 日本共産党の委員長が「ロシアに憲法九条があれば、プーチンがいても侵略戦争できなかった」と解釈できる発言していたね

      • プーチンだったら憲法9条は真っ先に改正されてるでしょう。
        憲法9条があって喜ぶのは自国ではなくロシアのような侵略国家だけですね。

  • (既報でしたらご放念ください)
    誤って配信され今は削除されているという「戦勝報道記事」を翻訳されたかたがいます。

    国営通信記事全訳「ロシアは歴史的完全性を回復する」2022-3-1 12:09 投稿
    https://buu245.blog.fc2.com/blog-entry-160.html

  • 海運大手複数もロシア航路を止めだしている模様ですが…
    ロシア国内の生活レベル低下が政権批判圧力につながってゆくかは不鮮明かなあ

  • 暗号通貨(仮想通貨、暗号資産、なんでもいいです。伝道師ではありません。)のルーブルとフリヴニャの取引量が激増したそうです。ルーブルのほうが多く、ビットコインよりも、米ドルと連動するUSDTのほうが多かったそうです。

    ▼仮想通貨「テザー」とロシア・ルーブルの取引量が1日で40億円超に
    https://gigazine.net/news/20220302-russian-ruble-tether-trading-volume/

    ▼この記事の中で引用されているこっちのほうが分かりやすかったです。
    https://www.vice.com/en/article/4awb9m/russians-are-piling-into-crypto-amid-financial-sanctions-data-show

    一方で、
    ▼ウクライナ政府、仮想通貨取引所に全ロシア人ユーザーの口座凍結を要求へ
    https://coinpost.jp/?p=325483
    上の記事にあるとおり、大手の取引所はこの要求には応じていませんが、弱者の逃げ道の面もあり、簡単ではないようです。

    ▼ウクライナで仮想通貨「テザー」などが難民になっても個人の財産を守れるので人気に、中央銀行が現金の引き出し・送金を停止したため
    https://gigazine.net/news/20220228-ukraine-bitcoin-ethereum-donation-refugee/
    >ウクライナの写真家だというTwitterユーザーは「ウクライナのクレジットカードはもう使えません。物理的にはカザフスタンにいるので安全ですが、預金はすべてなくなってしまいました。私に残された唯一のお金は仮想通貨しかないので、ビットコインやイーサリアム、非代替性トークン(NFT)は誇張抜きで家に戻れない間に私の命をつないでくれる存在です」と報告しました。

    ▼暗号通貨にしてしまえば、「パスフレーズ」さえ覚えておけば、どこかでそれを現金化したりできます。
    ということでパスフレーズを保管するためのこんなツールもあります。↓
    ステンレス製ハードウォレット

  • 今の飛行機は燃費がよくなり、航行可能距離も伸びています。
    かつてのようなアンカレッジでの燃料補給は必要とせず、北極海経由で欧州へ飛べるはずです。
    燃料の高騰は勘案する必要がありますが、ロシアへ領空通過料を支払う必要がなくなるという利点もあります。
    飛行時間は2〜3時間長くなるでしょうか。

  • 日米欧ともチュクチ半島さえ通過できれば、損失は軽減できるんですがね。ここは北極海航路も絡み、航空機だけでなく、船舶でも今後も話題になるであろう地政学的要衝です。

  • > 「国連安保理常任理事国からロシアを解任する案を、英政府として議論する用意がある」と表明したのだとか。

     そもそも常任理事国は「中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国」と国連憲章第23条に書かれてあります。ロシアではありません。
     ソ連が消滅した以上、ソ連の席は永久に空席とし、拒否権もそのまま停止が妥当です。
     ロシアをソ連の後継国とは認めず、排除する事に賛成です。
     ついでに中共の拒否権も停止してほしいですね。中華民国は国連から追放されてるのですから。

    > ロシアも対抗措置として、日本機の領空通過を禁止するであろうことは予想できるところです。

     アンカレッジ空港経由の成田ー欧州便が復活するのでしょうか?でもアンカレッジ空港は貨物便のハブ空港になってますので、果たして割って入れるかどうか。

    • JJ朝日様

      常任理事国を解体解散するのが、一番簡単で安価で効果的な現在国連の改善策なんですけど、それすら無理なんでしょうね…

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