連合が決定した参院選基本方針で「支援政党」記載なし
今夏の参院選:辻元清美氏が社民党の2%の壁を阻むのか?
連合が異例の「支援政党なし」を決定――。連合は昨日、中央執行委員会を本部で開き、今夏の参院選に向けた基本方針を決定したそうですが、異例にも「支援政党」が明示されていなかったったのだそうです。ただし、あくまでも報道ベースですが、政策協定については政党ではなく候補者個人と締結するとの方針を決めるなど、連合が立憲民主党に対し、「逃げ道」を作っているかに見えなくもありません。
ギクシャクする連合と立憲民主党の関係
昨年10月の衆院選のあたりからでしょうか、日本労働組合総連合会(連合)と立憲民主党の関係がギクシャクし始めました。それが、私たち一般人の目にも明らかになったのは、昨年10月に芳野友子氏が連合の会長に就任したあたりでしょう。
芳野会長は就任会見で、立憲民主党が当時、日本共産党と「閣外協力」を含めた選挙協力を行っていたことを巡り、「あり得ない」などと強い表現を使って批判しました(『連合新会長が立憲民主に「共産と閣外協力あり得ない」』等参照)。
ただ、それでも(当時の)枝野幸男代表らは日本共産党との選挙協力を維持したままで選挙に突入しました。ちなみに獲得した議席は96議席で、公示前の109議席と比べれば13議席減少し、結果的に枝野前代表が引責辞任しています。
なお、この議席数については、「日本共産党との選挙協力に拒否感を覚えた有権者が立憲民主党を忌避した結果、100議席割れに追い込まれた」という見方と、「むしろ日本共産党との選挙協力があったからこそ、100議席には届かなかったにせよ、96議席を獲得することができた」という見方があるかもしれません。
このことは、立憲民主党にとって、とくに今夏の参院選では、次の「ジレンマ」をもたらしています。
- 連合との関係を重視するなら、日本共産党との選挙協力を取りやめる必要がある
- 選挙協力を重視するなら、連合からの支援を諦める必要がある(かもしれない)
連合から立憲への「再三の警告」
こうしたなか、連合は選挙終了後、とくに11月末に泉健太・新代表が選ばれて以降も、日本共産党との選挙協力を巡っては再三にわたって「警告」し続けているようであり、『支持率低迷の立憲民主に対し連合が突き付けた「警告」』などでも触れたとおり、時事通信は1月31日付で、こんな記事を報じています。
立民・連合、揺らぐ協力関係 参院選支援方針案が波紋
―――2022年01月31日07時05分付 時事通信より
時事通信は、連合が先月21日にまとめた参院選基本方針の改定案で、「支援政党を明記せず、共産党と連携する候補は推薦しない」とする方針を打ち出したことが「波紋を広げている」、と報じています。
そして、この「連合の支援方針」を巡っては、先日の『連合、参院選で「立憲民主党を支援せず」もあり得るか』でも述べたとおり、朝日新聞が次の記事で、時事通信の記事と同じような内容を報じています。
「民主王国」で始まった労組の「与党シフト」 連合新方針の底流
―――2022年2月12日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より
(※「有料会員限定記事」であり、「有料会員」でない場合には、読める範囲が限られている点にはご注意ください。)
朝日新聞によると、今年1月、今後の政治方針を決める会議で配られた「厳秘」と書かれた参院基本方針には、「支援政党が明記されていなかった」のだそうです。
連合、「支援政党なし」も協力に含み
当ウェブサイトでは、昨年の芳野会長の記者会見、そして異なる2つの報道機関が似たような内容を報じた、という事実をもって、「おそらく連合は今夏の参院選で、立憲民主党に対し、何らかの選択を迫るのではないか」と予想しました。
結果的には、その予想は部分的には当たったようですが、部分的には外れたのかもしれません。
いくつかのメディアが昨日、「連合が今夏の参院選で支援政党を明示しなかった」と報じたのですが、それと同時にこれらの報道を読むと、連合は「立憲民主党を支持しない」と明言したわけではなく、あくまでも「日本共産党と協力する候補者を推薦しない」とする方針を示したにとどまっているようです。
ここでは共同通信と時事通信の記事を取り上げておきましょう。
連合、異例の支援政党なし/参院選、基本方針決定
―――2022/2/17 18:21付 共同通信より
参院選、立・国と「連携」 基本方針、共産との協力否定―連合
―――2022年02月17日20時12分付 時事通信より
このうち共同通信の記事によれば、「支援する政党を明示していない」、「立憲民主党や国民民主党とは政策実現に向けた連携を盛り込むにとどめた」、「共産党と協力する候補者を推薦しない意向も示した」、などとしており、これについて共同通信は「旧民主党の流れをくむ政党を支援しないのは異例」としています。
その一方、時事通信の記事によれば、1月の原案どおり「支援政党は明記しなかった」ものの、「政策実現に向けて立憲民主党、国民民主党と引き続き連携を図ることを基本とする」との文言を追加したとしており、時事通信は「両党との連携維持を明確にする軌道修正を図った」としています。
そのうえで、時事通信はまた、連合の方針には「基本政策が大きく異なる政党と連携・協力する候補者は推薦しない」とする方針が含まれており、これについては「日本共産党などを念頭に」明記したものだ、などと記載されています。
両記事を読んでいると、連合の方針は立憲民主党との「協力をやめる」方向なのか、「協力を維持する」方向なのか、いったいどっちなのかがよくわからなくなります。その理由は、「~なのは異例だ」、「~という軌道修正を図った」、「~を念頭に」、といった具合に、記事の書き手が主観的意見を勝手に付け加えているからです。
著者自身、日本のメディアの悪いところは、客観的事実に記事の書き手が勝手に主観的意見を付け加えるところだとつねづね感じているのですが、いずれにせよ、ここに示した共同通信と時事通信の記事などは、「連合が発表してもいない内容を、記者が勝手に断定して付け加えている」という典型例でしょう。
何とも中途半端な連合の新方針
こういうときには、可能な限り原文を読むのが基本なのですが、この点、昨日の夜時点で、肝心の連合自身がウェブサイトにこの「方針」を公表していないように見受けられるます。したがって、とりあえず現時点では、両メディアの報道などをベースに判断するしかありません。
ただし、両メディアとも、共通しているのは、参院選では政党名ではなく、「人物重視、候補者本意で臨む」、とする記述です。政党単位ではなく、個々の候補者を見ながら、あからさまに日本共産党との選挙協力をしている候補者については推薦しない、といった意味合いでしょうか。
そのような理解が正しいのであれば、何とも「玉虫色」の決着、という印象が払拭できません。すなわち、日本共産党とは選挙区で候補者調整をやりながら、それでも「政策協定は結んでいないよ」、などと屁理屈を述べることができなくもないからです。
その意味では、連合の側も立憲民主党に対し、「どっちにするのか決めてくれ」と踏み絵を迫ったというよりは、「候補者単位で推薦するかどうかを決める」という具合に、立憲民主党に対し「逃げ道」を作ってしまったようにも見えてしまうのです。
もっとも、これが本当に「逃げ道」として機能するかは、微妙ですし、「日本共産党を取るのか、連合を取るのか」というジレンマが続いていることは間違いありません。
日本共産党との選挙協力を取りやめれば、極端な話、32ある1人区のすべてで日本共産党が候補者を立ててくる可能性が出て来ます(※もっとも、最近の日本共産党は財政難であるという説もありますので、このあたりの事情は単純ではありませんが…)。
その一方で、政党単位で、あからさまに日本共産党との政策協定などを結んでしまうと、今度は連合が激怒し、立憲民主党に対し「支援しない」という報復が行われる可能性もあるでしょう。
いずれにせよ、立憲民主党にとっては、選挙直前まで曖昧な態度を維持し、この問題を「先送り」しようとするのではないか、というのが著者個人の予想であり、場合によっては連合側が、「基本方針」をさらに再改定する可能性もあると見ています。
今夏参院選の「見どころ」は多い…かも?
そういえば、今夏の参院選では、立憲民主党はすでに、辻元清美・前衆議院議員の比例での擁立を決めています。
辻元氏といえば、かつては衆議院の小選挙区で勝ち抜いてきた「大物議員」だったはずですが、昨年の衆院選では小選挙区で日本維新の会の候補に敗退し、比例復活もなりませんでした。そして、辻元氏が参院比例に回るというのは、時代の変化を感じざるを得ません。
こうしたなか、今夏の参院比例といえば、社民党の福島瑞穂党首自身も改選を迎えます。辻元氏は今から10年以上前に、社民党を離党した人物でもあるため、いわば、古巣、および福島氏に対して挑戦状をたたきつけるようなものでしょう。
この点、参院選の比例は「非拘束名簿式比例代表制」といって、有権者が政党名、候補者個人名のいずれかに投票し、各政党の議席数は政党名と個人名の合計に応じて配分され、当選者は個人名の得票数が多い順に決まる、という仕組みです。
したがって、辻元氏が当選するためには、「立憲民主党」と書いてくれる有権者、「辻元清美」と書いてくれる有権者が一定以上必要ですし、福島氏が当選するためには、「社民党」と書いてくれる有権者、「福島瑞穂」と書いてくれる有権者が一定以上必要です。
ただ、これまでであれば社民党や福島氏に票を投じていた層が、今回の辻元氏の立候補に伴い、福島氏に対してではなく、辻元氏に対して投票する、といった可能性もあります。要は、「票の奪い合い」が生じる、という展開でしょう。
このように考えていくならば、今夏の参院選は、意外と「見どころ」が多いのかもしれない、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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個々の候補者が支援者の勢力状況を鑑みて、青い立民と赤い立民に分離し、選挙後に統合(紫?)するいつものパターンをたどることになるのでしょうか?
連合は、立民(の個議員)とのしがらみを断ち切れないのかもですね・・。
連合として妥当な判断ですね、
既に傘下の組合の組合員は立憲民主党に対し、何もできない党・ブーメラン党
としか思っていないでしょうから、組合から組合員に立憲共産党に投票をお願い
するにしても、国会で何もしていない・訳が解らない理由で国会を無断欠席する
党に投票できないでしょ?と言われるのがオチです。
(組合員からはノーワーク・ノーペイだと言われると思います。)
ところで、ここ何年か立憲共産党は会社員(組合)に向けた施策・政策等
やった事ありました? 法案も出さず、反対とお好きなモリカケ桜しか
やっていないと思うのですが?
かといって連合が直ぐ・直接に自民党を応援する事は、過去の成立経緯からして
難しい問題があるから、下でコッソリとという形でしか進めませんしね。
先の衆院選、実はマスゴミの予想は大きく外しました。
元になったのは出口調査と、たぶん、党支持率。
で最近の党支持率ですが個人的には自民党(キッシー)は高すぎ、立件共産党w”も”高すぎな気が。
さて、参院選でマスゴミの支持率調査、本当に正しいのでしょうかね。
連合は労働組合の集合体であり、労組とは特定政党を支持してはいけないのです。新宿会計士様ともあろう方がこの足元も足元、一丁目一番地を抜かして議論して居られるのは如何なことか。日本では昭和の時代に総評が日本社会党支持を組織決定してそのまま来たから何となくOKの様になって居ますが「パチンコ屋の3店方式」ぐらいおかしな仕掛けです。。例えば皆さんご自分が就職する時特定政党支持など言われることがあってはならないはずです。ところが就職して職場に配置された途端にクローズドユニオンで全員加入の労組組合員になる。これは職能ギルドみたいなものある程度仕方ない。だが今度その労組が特定政党支持を決めて居て、選挙になれば大切な土日に動員され電話で好きでもない特定候補の名前を言わされる。自分の組合費の一部が政治献金に回される。そんな事は思想信条の自由を直接侵す問題と申せましょう。今現在、幾分連合議長の言い分が、日共に靡く立民の立場に痛快に見えて居たとしても、「それでは連合は労組ですよね?」「労組って組織決定(ザックリ言って多数決)で一党支持を決定して組織動員で組合員を動かしたり個人の内心の自由を侵して良いの?」となると解けない疑問にぶつかります。この点を踏まえた上で議論してゆかないと土台が危うい気がしました。
クローズドユニオンてのはなんなのでしょうか。
おっしゃっている内容はユニオン・ショップ制と思われます。
あぁそれと労働組合が組織決定として支持政党を決めることと、個人の思想信条の自由は競合しません。
組織決定に基づいて投票のよびかけは出来ますが、投票先の指示は出来ないからです。
まぁ勘違いしている労組が全くないとは言えないのも実情でしょうが。
>労組とは特定政党を支持してはいけないのです。
これに関しては,みったぁ様が書いている通りです.
確かに,組合員から実質的には強制的に(何故ならば組合費は多くの場合に天引きされ,支払いを拒否すれば恐らくは組合から除名されて組合員の資格を失うのでユニオンショップの制度の下ではその会社の被雇用者の地位も喪失することになるでしょうから)組合費を徴収して運営されている労組が特定政党やその候補を支持するのは,組合員の思想信条の自由に反するのではないか?という批判が昔からあるのは事実です.
ですが,それを言い出すと,登録弁護士から高額の会費を徴収して運営されている個々の弁護士会やそれらからの上納金によって運営されている上部団体である日本弁護士連合会やその幹部が,それら弁護士会の幹部である立場を明確に主張して特定の政治的立場を主張する行為(典型的な例としては,日弁連会長がその立場から死刑廃止という特定の政策を実現すべきだと主張する行為)こそ,個々の弁護士の思想信条の自由を厳しく糾弾されねばなりません.そもそも弁護士はローファームに所属するのでない限り個人事業主であって,企業という大きな組織に所属しているという意味で個人事業主でなく仕事の上でも組織の方針に従わねばならない(そして日本の場合,公務員以外の労働組合は雇用されている企業単位で組織されているケースが圧倒的に多い)労働組合員とは全く違いますから.(つまり本来は個人事業主が基本である弁護士は,労組員以上に,全ての面で個人の意思に反する事柄や政治的立場を(弁護士会や日弁連から)強要されるべきでない,ということ)
個人的には,労組の特定政党支持よりも弁護士会が特定の政策や政治的立場を主張する行為のほうが遥かに重大問題だと考えます.
(話が逸脱したついでとして,そもそも徴収している額でも,組合費と弁護士会の登録料=年会費とでは桁が違いますからね.そして余りにも高額な弁護士会の会費は,司法試験には合格したが経済的な裏付けのない人々が弁護士という職業を選択することを実質的に困難にしている現実があります)
みったぁさん
そこがパチンコ屋の3店方式なんですよ。表向きは合法ですが実態は矛盾の塊で「解けないナゾ」と言うべきです。単純に考えてみてください。自民党推しの労働者が心ならずも何故立民推しの選挙運動に動員されても良いのでしょうか?
迷惑王さん
日弁連がやってるから連合も当然とはなりませんよ。「日弁連もおかしいし連合もおかしい」と言うべきでしょう。それに政党支持は流石に日弁連ですら特定政党支持なんて決定して居ません。
そして皆さんのご心配の核心である立民が日共と共闘連立政権やら閣外協力やらで組むと言うお話が、例えば立民側の大英断?で日共を切ったとして、それなら【正気に帰った正しい立民】だから組織労働者は根こそぎ立民支持に組織動員させられてよろしいのでしょうか?そうある事が健全な二大政党制につながるのでしょうか?私にはそうは思えません。特定政党支持を組織決定するのは労組のする事ではありません。
労働組合が、労働者の権利擁護とは無関係な原発反対とかに傾倒するのもよろしくない
大阪10区(高槻市・三島郡)と大阪9区(池田市・茨木市・箕面市・豊能郡)の境目にある駅をよく利用するのですが、昨年の衆院選の際はにぎやかでした。いつもは選挙区の境目なので選挙戦も終盤になってから「最後のお願い」とやらに来てたのに(たくさん人がいても聴衆の半分くらいは自分の選挙区の住民じゃない訳ですし)前回は最初から最後まで毎日誰かしら来てました。大阪10区の辻元候補も大阪9区の大椿候補(社民党副党首)も日替わりで来るような勢いで。最終的にはどちらの選挙区も維新の候補が勝った訳ですが。
落選した両候補とも次回の参院選には全国比例で出るんですよね。もし当選しても地元の選挙民の責任じゃありませんよね…