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立憲「ヒトラー」騒動に対しダブル・スタンダード批判

菅直人元首相の「ヒトラー発言」を巡り、維新の馬場伸幸幹事長が昨日、菅氏の事務所を訪れ抗議文を手渡しました。その際のやり取りの詳細が報じられているのですが、注目すべきはこれに対するインターネット上の読者の、立憲民主党に対する総じて批判的で冷ややかな反応でしょう。とりわけ、「自民党議員の失言に対し舌鋒鋭く追及したわりに、自分たちの失言には徹底的に甘い」、という、「ダブル・スタンダード」への批判は根強いようです。

何かと異例な「ヒトラー騒動」

公党を「ヒトラー」呼ばわり:一般人はどう感じるか?』では、元首相で立憲民主党最高顧問でもある菅直人氏が、日本維新の会や橋下徹氏をヒトラーに例えるツイートを発した、などとする話題を取り上げました。

菅元首相の「ヒトラー」投稿が波紋を広げています。維新が強く反発し、投稿の削除や謝罪を求めたところ、泉健太・立憲民主党代表はこの問題に「党として関与するつもりはない」と逃げ、菅直人氏自身は「謝罪はあり得ない」と開き直っているからです。ただ、政党支持率で「維新>立憲」が定着しつつあるなか、こうした騒動自体が立憲民主党のイメージをより悪化させることはないのでしょうか。菅直人元首相が橋下徹氏らを「ヒトラー」呼ばわり当ウェブサイトでは先週、取り上げそびれていた話題がひとつあります。それは、「菅元首相」...
公党を「ヒトラー」呼ばわり:一般人はどう感じるか? - 新宿会計士の政治経済評論

あらためてこの騒動を振り返っておくと、やはり何かと異例であるようにも思えます。

基本的に、国会議員を含めた政治家は「公人」であり、舌鋒鋭く、ときとして人格攻撃を伴うかのような批判が社会的に許されてしまう、というのは事実ですが、橋下氏は元大阪市長であるとはいえ、現在は民間人でもあります。そんな橋下氏に対する人格攻撃がなされるということ自体、違和感を禁じ得ません。

もちろん、橋下氏が「日本維新の会」の事実上の創設者であり、現在もテレビなどのメディアに頻繁に出演するなど、大きな社会的影響力を持っている、といった点を踏まえるならば、ある程度は人格攻撃を伴う批判がなされても仕方がない、という面はあるでしょう。

菅直人氏は謝罪を拒否

ただ、「ヒトラー」という単語を用いて舌鋒鋭く批判した菅直人氏が、一般人ではなく、衆議院議員という「権力者」であること、あるいは菅氏自身が現在でも立憲民主党の最高顧問という立場にあることなどを踏まえるならば、やはり、一般人が批判するのとは意味合いが異なってきます。

この点、菅氏は本件について、「謝罪することはあり得ない」と述べ、橋下氏や日本維新の会に謝罪することを拒否していますが(※下記ツイート参照)、百歩譲ってこれが菅直人氏の政治的な信条なのであれば、それはそれとして理解できなくはありません。

菅直人 衆議院議員(府中・小金井・武蔵野) 立憲民主党

1月21日の私のツイッターでの発言に対し、維新の馬場伸幸代表名で立憲民主党泉代表に謝罪を求める抗議文が1月26日に来た。私のツイッターでの発言は党の指示によるものではなく私自身の意志であり、抗議するなら私にすべき。議員会館での馬場代表の部屋は隣だ。もちろん謝罪することはあり得ない。
―――2022年1月29 0:09 ツイッターより

しかし、立憲民主党が本件について、「党は無関係」と一線を画す行動については、やはり理解に苦しみます。

自党の「最高顧問」という立場にある人物が、元政治家であるとはいえ現在は民間人に過ぎない橋下氏、あるいは公党である日本維新の会のことを「ヒトラー」云々と発言したことについて、党としての見解をちゃんと出していないのは、公党としての説明責任を果たしているとは言い難いでしょう。

いや、もちろん、立憲民主党が「党として」、橋下氏や日本維新の会のことを「ヒトラーのようだ」と考えている、ということであれば、それはそれで仕方がないのですが…。

菅氏と維新・馬場氏の舌戦20分

こうしたなか、昨日は日本維新の会の馬場伸幸共同代表が国会内の菅直人氏の事務所を訪れ、抗議文を手渡したそうです。そのやり取りの詳細は、いくつかのメディアが記事にしているのですが、全部を文字お越ししているのが次の産経ニュースのものです。

菅直人元首相と維新・馬場共同代表が舌戦20分

―――2022/2/1 17:00付 産経ニュースより

正直、内容については、個々人が直接読んで、どちらの言い分が妥当であるかを判断していただくのが良いと思いますが、個人的感想を申し上げるなら、「どっちもどっち」、という気がします。

もちろん、最初に民間人や公党のことを「ヒトラー」に例えたのは菅氏の側ですが、馬場氏の側も、追及する舌鋒があまり鋭くなく、「せっかくのチャンス」(?)をうまく生かし切れている感じではありませんでした。あるいは、菅直人氏や立憲民主党にとっては、馬場氏の追及から「うまく逃げた」(?)、ということなのかもしれません。

立憲民主党「ダブル・スタンダード」に対する批判

もっとも、本件の「舌戦」などに関するインターネット上の読者コメントなどを眺めていると、菅氏や立憲民主党に対しては、総じて批判的な意見が多数を占めているようにも見受けられます。そのなかでもとくに「なるほど」と思ったのは、「ダブル・スタンダード」という指摘です。

たとえば、自民党の議員がなにか「失言」をした際には、立憲民主党は総理大臣まで巻き込んでこれを徹底的に追及していたではないか、といった趣旨のコメントがいくつかありました。

考えてみれば、もしも自民党の一介の議員が「菅直人(氏)はヒトラーみたいだ」、「立憲民主党はナチスみたいだ」、などと批判したとすれば、立憲民主党のことであれば、それだけで国会審議を止めて徹底的に大騒ぎしたのではないか、という気がします。

それなのに、自分たちの関係者が問題発言をしたとして、相手から批判されたときには、発言した本人が「(発言を)撤回しません」、「謝罪しません」と開き直り、党としては「関係ありません」、では、多くの有権者を納得させることができるとも思えません。

もっとも、本件については、また違った視点からの指摘もありました。

それは、「泉健太氏が新代表として、立憲民主党を統率し切れていないのではないか」、といったものです。すなわち、菅氏ら党の「重鎮」(?)が、党執行部の意向を無視して暴走し始めているのではないか、という仮説でしょう。

この指摘は、なかなかに鋭いと思います。

実際、泉氏は本件騒動を巡って、「党としては無関係」とする姿勢を堅持していますが、これは菅氏に対し、注意・戒告処分を下すだけの党内基盤が、泉氏にはまだない、という可能性を示唆しているからでもあります。

ということは、逆にいえば、菅直人氏以外の「有力議員」からも、今後は「失言」が相次ぐ可能性がある、ということでもあります。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

いずれにせよ、菅氏の今回の「ヒトラー」発言を巡っては、もちろん擁護する意見もないではないにせよ、世間一般では総じて冷ややかな視線が注がれていると考えて良く、立憲民主党のイメージをまた下げるのに貢献したことは間違いありません。

おりしも『今夏参院選の投票先でも維新・立憲「逆転」=日経調査』でも取り上げたとおり、複数の世論調査では、参院選での投票先に関する意識調査では、維新と立憲の「逆転」が生じ始めているところでもあります。

政党支持率で「維新>立憲」が定着しつつあるなか、日経新聞の調査では「投票先」でも両党の逆転が生じたようです。日経によると、夏の参院選で投票したい政党などについて尋ねたところ、1位は43%を獲得した自民党でしたが、2位は16%だった日本維新の会で、立憲民主党は10%にとどまり、3位に沈みました。その一方、例の「ヒトラー発言」を巡ってはほかにも報道があったようです。政党支持率の逆転現象昨日の『支持率低迷の立憲民主に対し連合が突き付けた「警告」』では、最新の政党支持率調査に加え、立憲民主党の支持基盤のひ...
今夏参院選の投票先でも維新・立憲「逆転」=日経調査 - 新宿会計士の政治経済評論

こうした傾向が続くのかどうかについては、今後とも注目する価値があるのではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (23)

  • 言葉が軽いのは、政権を絶対獲らないぞという意識の表れですね。
    もし、自民党が同じ言葉を使っていたら、マスコミを始め夜盗が
    政権交代だと勇んで喜び踊り狂っていたでしょうに。
    立憲共産党の人達が使うと、マスコミは凄~く静かですよね。
    いつもの界隈も静かだし、これって答え合わせなのでしょうか?

    • >言葉が軽いのは、政権を絶対獲らないぞという意識の表れですね。

      全く違うと思います.
      立憲民主党の連中,少なくとも菅直人氏らは政権を握ることの旨味を体験しましたから,再び政権を獲りたいと本気で考えていると思いますよ.

      何しろ福一が津波で冷却用の電力喪失という事故を起こしたのを奇貨として,復旧作業を妨害して目一杯の大事故へと仕立て上げ,「原発は危険だ」というラベル貼りをした上で,広大な日本の山林や農地をどんどん有毒物質で汚染するという売国行為によって,莫大な経済規模の太陽光発電利権を孫氏や韓国・共産チャイナ企業と共にデッチ上げるのに菅直人氏らは成功しましたからね.(お蔭で我々日本の国民や企業はバカ高い電気代を払わされ続けている訳ですが)

      「言葉が軽い」というよりも,菅直人氏ら立憲民主党にせよ社民党や共産党にせよ,在野でその方面に賛同する人々にせよ,日本のサヨクの殆どに(そして韓国や共産チャイナなどにも)共通する点として,ほぼ常に自分達自身の絶対的な正しさを前提として発言し議論します.

      従って,サヨクには自ずから自分自身の言葉を批判・反省する余地はないので,必然的に彼らの発言は二重基準(韓国風に言えば「他人がやれば不倫,自分がやればロマンス」)となります.その結果,菅直人氏の今回の問題発言のみならず,サヨクの人々の発言のほとんどに含まれる二重基準的な表現は,是々非々で判断する正気の一般人が聞けば「何て軽率で軽い発言なのだ」と感じるのです.

  • 毎度、バカバカしいお話を。
    重要なのは、何を言ったり、やったりしたかでなく、誰が言ったり、やったりしたかだ。特に自分が、当事者の場合は。
    おあとが、よろしくないようで。

  • 2人のやり取りも、部外者から見たら割とどうでもいいんですよね。本人たちにとっては死活問題なのでしょうが。ヒトラーネタでの攻撃はリスクあるので悪手ですよ。
    ただ、公開討論会をやるなら早回しで見てみたいですね。菅直人氏は多分ボコボコでしょう。死んでも逃げると思いますが。

    「科学的な分析」顛末でも表れていましたが、泉代表は党内のうるさ型を掌握しきれないんでしょう。「やれるもんならやってみろ」くらいでナメられてるんじゃないでしょうか。
    マジメにまとめようとすればするほど足元を見られて突き上げられるでしょう。そういう人達です。党を割るくらいの覚悟で臨まないと、立憲を変えることはできないと思います。

    以上、主観に基づく感想でした。

  • 公党をヒトラー呼ばわり >

    あれ?これってどこかで見たことのある図式だな?と思ってしまいました。
    そう、日本の自衛隊が使用している旭日旗をハーケンクロイツになぞらえる、あの国の言い分にそっくりです。

    日本政府や公党をあからさまに誹謗愁傷しておいて謝罪するつもりはないと、開き直っているところなどもそっくりです。こういう言い方ができるというのも、韓国人もこの管(かん)元首相も、自分は何ら間違っていない、正義は自分の側にあると勘違いしているからでしょう。

    まぁ一人で勘違いしてる分には何ら構いませんが、それを外部に向けて大声でアナウンスし始めるとなると話は別です。はっきり言って迷惑ですし、何よりも鬱陶しくってたまりません。こういう手合いには自らの発言の責任を、きっちりとってもらうことにしましょう。

    辻元清美の参議院鞍替えの件といい、この管(かん)元首相の妄言といい、夏の参議員選挙が楽しみな理由が、またひとつ増えたようです。

  • 第4列の男、イラ菅さんの場合には、ダブルスタンダードではなく「ネロナムブル」か「ツートラック」でしょう。
    東京18区の市民として本当に恥ずかしいです。
    それにしてもこの人の目はいつ見てもドロ~っとしていると思う。

  • 習近平や金正恩とでも言っていれば、ウィットに富んだ発言かも。

  • 習近平や金正恩とでも言っていれば、ウィットに富んだ発言だったかも。
    ぼちぼち立憲共産も分裂のはじまりはじまり。楽しませてくださいね。

  • 政局が立憲/共産党による自民党叩きから野党第一党の座を賭けた維新vs立憲の泥試合に主軸が移ったという事でしょうか?
    マスコミは相変わらず立憲贔屓の様ですが

  • 泉は今後も党に取って不都合な醜聞には一貫して「党は関与しない、してない」と言い張り続けるでしょうね。
    どう見ても無関係ではないCLPやブルージャパンへの不透明な支出までもそういう態度な訳ですから。

    維新には菅直人のヒトラー他の侮辱的発言の更なる追及は勿論のこと、CLPやブルージャパン、菅野完への不透明なカネの流れについても徹底的に追及して欲しい。
    これらの当事者は元より、CLPの番組に出演していた、ドラマ「新聞記者」で疑惑の渦中にある望月イソ子や津田大介などを国会に証人喚問してでも追及すべきですね。

  • そもそも、
    CLPやブルージャパン疑惑への
    国民からの厳しい目を逸すために、
    菅直人氏が
    『ヒトラーレッテル貼りで橋下徹を殴ってみた』
    から始まって、
    橋下徹氏の反論をハッピー米山さんを陣頭に、
    待ってました!と涌きだす立憲民主党さん
    のお姿は滑稽です。

    その後昨日も、
    あの辻元が『私も・・・』(?笑)だとかで
    どっちもどっち論持ち込み狙い発言、
    さらには、その辻元の援護射撃に、
    ビーチ前川喜助平さんが
    『(辻元落選させた)有権者がアホなんや』
    発言までわめき出し(これ、もちろん問題発言ですな)、
    なんともはや、善悪別にすると
    ヒール役オールスター総出演で
    見ごたえある茶番劇です。

    そんな立憲民主党の茶番劇には
    親切に付き合ってなどあげないで、
    菅直人氏には
    『立憲民主党さんはいろいろ追求されて
     たいへんだからなのでしょうが、
     だからといって、ごまかそうと
     ”ヒトラーレッテル貼り発言”などなされては迷惑です』
    と、きっちり 
    CLP・ブルージャパン疑惑の追求に
    振り戻して上げましょう。

    • ところで以前から
      『ダブスタ(=Double Standard』
      姿勢が眉を顰められる
      立憲民主党さんなのですが、
      『どぶスタ』であるとも言われています。

      日本言論立ち位置標準分類においては、
      寛容で多様な日本の言論界を広い道に例えて
      左の道から右の道まで公正に分類するものです。
      ところが、
      他国の捏造加担してしまっているようでは
      もはや日本の道とは言えないことから、
      道の脇のどぶにあたる
      『どぶサヨ』という補助分類を設けて
      分類されています。
      そうしたどぶサヨの方々の行動様式は、
      『どぶスタ(=DOBU Standard)』と
      呼ばれるのがわかりやすくて妥当です。

      なお、日本言論標準分類の
      補助分類名『どぶサヨ』ついては、
      偶然にもその方たちの
      リアル社会でのイメージにあまりに
      「ぴったりだから気に食わねえ」と
      当該の方々からのご意見が寄せられたようですが
      だからといって分類基準を歪めるわけにはいかない
      ことをご理解いただく必要があるものと考えます。

      • どなたかは「外翼」という概念を提唱されていました。

        意味はそのまま外道というそうです。中道ならぬ外道。

        • ねこよんさんレスありがとうございます。
          たしかに
          彼らがことさらに持ち出す
          右翼?だの左翼?だの構図は
          あたかも対等であるかの
          錯覚狙いでしょうなあ。

          彼ら少数のそんなこんなの
          お方さんたちには、
          「外道」や「害道」といった
          生きざまに見合った呼称が
          ふさわしいのでしょう。

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