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岸田政権「北京に政府代表を派遣しない」とやっと表明

やっと、決断したようです。すでに報じられているとおり、松野官房長官は会見で、北京オリパラに政府代表団の派遣を「予定していない」と述べました。この決定が正しいか間違っているかはともかくとして、まずは「決断したこと」自体は評価に値します。ただ、問題がひとつあるとしたら、この決定を下すまでに、かなりの時間を要したことです。

松野長官「政府代表団派遣を予定せず」

松野博一官房長官は本日午前の記者会見で、2022年北京オリンピック・パラリンピックに対し、政府代表団を派遣しないと述べました。

冒頭発言で、北京オリンピックには山下泰裕・日本五輪委員会(JOC)会長と橋本聖子・東京2020組織委員会会長の両名が、北京パラリンピックには森和之・日本パラスポーツ協会(JPSA)会長が、それぞれ出席すると言明。

その後のNHK記者とのやりとりで、「橋本会長は東京2020の会長として、IOCの招待を受けて出席するものだ」、「山下会長と森会長はそれぞれIOC、IPCの招待を受け、JOC、JPC代表として出席するもの」と述べたうえで、あわせて「政府代表団派遣については予定していない」と明らかにしたものです。

また、松野氏は「中国において人権侵害がなされているかどうか」そのものには言及しませんでしたが、「わが国としては国際社会における普遍的価値である自由、基本的人権の尊重、法の支配が、中国においても保証されることが重要であると考えている」などと述べました。

(※余談ですが、個人的に、松野長官のこの嫌味な言い方、嫌いではありません。「自由」も「基本的人権」も「法の支配」も、まさに中国が最も嫌うたぐいの用語だからです。また、「民主主義」の用語を出さなかったあたりも、中国に対する強烈な当てこすりでしょう。)

いずれにせよ、この松野長官の発言から考えるに、日本政府が事実上、米国流の「外交ボイコット」に日本としても参加すると表明したようなものだと考えても良いでしょう。

(※なお、『米国が北京冬季オリパラ「外交ボイコット」を正式表明』でも述べたとおり、米国政府は公式には「外交ボイコット」という用語を使用していませんが、本稿では敢えて「外交ボイコット」ないし「事実上の外交ボイコット」と称することにしたいと思います。)

米ホワイトハウスのサキ報道官は北京2022オリパラに関し、事実上の「外交ボイコット」をする方針を明らかにしたようです。といっても、五輪自体をボイコットするわけではなく、あくまでも「政府代表を送らない」というものです。こうしたなか、日本は欧米諸国の対中人権制裁に同調しなかった過去もあります。日本がFOIPを推進するという立場にあることを踏まえるならば、岸田政権には迅速な対応を期待したいところでもあります。本日の「速報」です。米国が来年の北京冬季オリパラに対し、外交官や政府代表などを派遣しないことを...
米国が北京冬季オリパラ「外交ボイコット」を正式表明 - 新宿会計士の政治経済評論

「決断したこと」自体が評価に値する

さて、松野長官が会見で述べた内容を、どう評価すれば良いでしょうか。

この点、当ウェブサイトとしては、日本が「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)を重視する立場から、米国が提唱し、英国、豪州、カナダなどが賛同する「外交ボイコット」に参加することは、国益に照らして必要だ、などと考えて来ました。

ただし、このいわゆる「外交ボイコット」を巡っては、各メディアが実施する調査によれば、日本国内で世論は割れていると考えられますし、当ウェブサイトにおける「日本は外交ボイコットに参加すべきだ」とする主張が絶対的に正しい、というものではありません。

すなわち、今回の決定自体は、「日本が外交ボイコットに参加するか、しないか」という議論のある政策命題に対し、岸田文雄内閣が政権としてリスクを取り、「(事実上)日本として参加する」、と決断したものと考えることができます。

当然、本件に限らず、政府の方針や政策は、限られた情報をもとに、政権としてのリスクを取り、そのときどきの選択肢のなかから果敢に選択して行かねばなりませんし、結果としてその選択が正しかったという場合もあれば、間違っていたという場合もあるでしょう。

そして、こうした個々の決断が結果的に正しかったのかどうかについては、それこそ国政選挙のたびに、私たち有権者が投票行動を通じ、総意として判断していくべき筋合いのものでもあります。

その意味では、現在の限られた情報のなかから、事実上の「外交ボイコット」を選んだことについては、個人的には岸田政権の判断を評価し、尊重したいと思います。

ただし、ここで「岸田政権の判断を評価する」ポイントは、(当ウェブサイトが「正しい」と主張してきた)「外交ボイコット」に、政権が事実上賛同したことに対して、ではありません。

「結果的に外交ボイコットが誤った選択肢である可能性を踏まえたうえで、敢えて外交ボイコットという選択をしたこと」に対して、です。

メディア調査では世論が割れている論点について、片方の選択肢を選んだことは、結果的に世論を敵に回すことにつながるかもしれませんが、敢えてそれをやることこそが、リーダーとしての本当の役割です。

その意味では、松野長官が逆に「北京オリパラに政府代表団を派遣する方針だ」と発表したとしても、「政治的決断を下した」という観点からは、評価することができていたでしょう(※ただし、その場合は、当ウェブサイトとしては「その決定が間違っている」という視点から政府を批判する議論を展開していたと思います)。

問題は、「遅すぎる」こと

問題は、ここに至るまでの決定が、じつに遅かったことです。

米国政府が事実上の「外交ボイコット」を表明したのは12月上旬であり、豪州、英国、カナダは、数日以内にこれに賛同しました。

また、『外交ボイコット巡り優柔不断な首相に保守系議員が不満』でも述べましたが、日本国内でも自民党の保守派議員らは、やはり12月上旬ごろから、「日本もこの外交ボイコットに賛同すべきである」とする意見を表明し続けています。

「岸田首相、大丈夫ですか?」――思わずそう言いたくなる今日この頃です。10万円給付金を巡る混乱に続き、今度はバイデン政権が打ち出した外交ボイコットへの煮え切らない態度。どうも岸田文雄政権については、見ていて不安になります。自民党内では保守系議員らからの突き上げもあるようですが、その一方で親中派議員からは政府の煮え切らない態度に理解を示す向きもあるようです。カナダも外交ボイコットへ=産経『米紙「ジェノサイド五輪」:外交ボイコットは広まるか』でも報告した北京五輪の「外交ボイコット」に関連し、その後も...
外交ボイコット巡り優柔不断な首相に保守系議員が不満 - 新宿会計士の政治経済評論

ちなみに当ウェブサイトでは12月中旬の『首相、外交ボイコット決断「適切な時期」は今ですよ!』のなかで、「外交ボイコットを決断する時期は今をおいてほかにない」と申し上げてしまいましたが、正直、その時点でも決断するには遅すぎたのではないでしょうか。

林芳正外相は青山繁晴参議院議員との面談で、外交ボイコットを巡り「適切な時期に判断する」と述べたそうですが、「適切な時期」とは「いまこの瞬間」ではないでしょうか。決断すべきタイミングで決断しないことは、どれだけ日本の国益を損ねることにつながるかわかりません。その意味で、岸田文雄首相の決断力のなさ、優柔不断さには不安を覚えてしまうのです。なし崩し的に「全額現金」岸田文雄首相という人物は、果たして「決断力」に照らして、信頼に値するのか――。昨日の『もし岸田首相ならば「1日100万回」は挫折していた』を含...
首相、外交ボイコット決断「適切な時期」は今ですよ! - 新宿会計士の政治経済評論

もっとも、『外交ボイコット:米国は岸田首相を信頼していないのか』でも述べたとおり、個人的な懸念ではありますが、ジョー・バイデン米大統領自身が岸田首相をどこまで信頼しているのか、やや疑問でもあります。

「米国側は岸田首相の人となりを知悉しているがために、現在の日本政府を信頼していないのだとしたら」――!?岸田文雄首相が「北京オリパラへの外交ボイコット」に即座に賛否を明らかにしなかった件について、もう少し考察してみると、なんだか嫌な予感がします。それは、そもそも米国が「外交ボイコット」の方針を、事前に日本に伝えていなかったのではないか、という仮説です。もしこの仮説が正しければ、現在の米国政府は日本の岸田首相のことを信頼していない、という可能性が出て来るのです。ビジネスは「人」だ!大企業の従業員...
外交ボイコット:米国は岸田首相を信頼していないのか - 新宿会計士の政治経済評論

その意味では、岸田首相の決断の遅さは、やはり気になるところです。

一時が万事、「岸田首相が優柔不断な人物であり、さまざまな決断を先送りする癖がある」のだとしたら、この先の政権運営には不安も多々あると思う次第です。

もっとも、本件についてはまだ政府から発表されたばかりというタイミングでもあるため、もう少し深い事情(たとえば、岸田首相とバイデン大統領の確執など)でもあるのかどうかについては、今後出て来るであろう情報にも注目してみる価値はあるかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (67)

  • 更新おつかれさまです。

    年内には表明しないだろうと思っていたので少し安心しました。
    が、その一方で元日韓友好議連の河村氏が副総裁特別補佐に?などと言うニュースを目にして眩暈がしております。
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2021122200398&g=pol

    本当なら嘆かわしいことです。

  • そもそも「決断」などする必要が無い事案だったと思います。
    夏の東京五輪に来ていた中国の要人は五輪組織委員会の人でしたから、外交慣例上も同クラスの人を派遣するだけで良かった。

    アメリカや他の国がボイコットを表明し始めた早い段階で、
    「東京五輪に中国から来ていただいた方を念頭に人選している」
    「岸田首相や林外相が訪中する予定はない」
    とだけ言っておけば、それで済んだのですが。
    無意味に引っ張ったことで、政治問題化してしまいましたね。
    決断ができないというより、単にセンスが無いのかも。

    • お世話になります 様

      賛成ですね。

      どうせ大した話でもないわけですので、国益などと大義名分を振りかざして政治問題化せず、米国、豪国に続くくらいのタイミングで「スポーツの祭典である東京五輪にお越しいただいた方を踏まえて検討することになる」、「感染症対応、予算審議もあるので閣僚の訪中予定はない」とサラッと流せば良かったと思います。

      あまり早くすると、他のボイコット国と異なり、中国と地理的に近い日本がターゲットとなるというご意見もあるでしょうが、逆に日本が時間をかけてしまって目立ってしまった感もあります。また、来年は日中国交正常化50周年ですし、国賓としての招聘もオアズケになっているわけですから、中国もこんな瑣末な問題で事を大きくする必要はないでしょう。サラッと流せばよかったと思います。

  • 「実があるなら今月今宵、一夜明くれば誰も来る」
    高杉晋作の言葉を思い出しました。

  • もし、遅らせた理由がこれなら、「わかりやすぅ」。

    12/21
    第7回日中企業家及び元政府高官対話(日中CEO等サミット)における岸田総理ビデオメッセージ
    https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/discourse/20211221message.html

    第7回日中企業家及び元政府高官対話 共同声明(経団連)
    https://www.keidanren.or.jp/policy/2021/118.html

    掌返しということにならないように、先方と「うまく」話したのでしょうかね。

    •  それが理由の可能性はありそうです。私は、そもそも「外交ボイコット」に対して、アメリカが日本に即決を迫っていたとは思いません。即決できないことでアメリカから信用を失っているとも思いません。
       余談ですが、日米首脳会談が遅れているといっても、外務省のホームページをみたら、安倍元総理の初訪米は就任3か月後で、8年弱の期間に4回しか訪米していません。菅前首相がこの4月に訪米しているのに、岸田総理が先方の都合を考えずすぐに訪米できるわけありません。岸田総理の政策が気に入らない一部の保守系言論人が勝手な解釈を広めているだけです。(これらの言論人は茂木幹事長や林外相に対してもあらぬ噂を広めています。)
       話を元に戻しますが、アメリカから即決を求められていないのだから、日本は日本の都合で、外交ボイコットの表明時期や表明方法を決めるのは自由だと思います。日本としては、「外交ボイコットを明言せずに、閣僚の派遣見送り」というのは最初から決まっていたはずで、中国側も上層部はそれは承知していたはずです。ただ、末端を怒らせないために、日中経済対話終了まで待ってほしかったのかもしれません。
       日中間のそういうプロレスも許さずに、アメリカの言うことだけ聞けというのは、それこそ媚米だと思います。そもそも、インテルがウイグル製品不使用で中国に謝罪しているぐらいです。アメリカこそ自国企業の媚中姿勢を正してほしいです。

      • 他の記事でもコメントは何度か書いてますが、主要国とは外交レベルではきちんと会話をしていたと思います。
        トルドー首相もボイコット表明時に、長い時間をかけて同盟国と協議を続けていた、と言っていました。
        対中も会話をしていたからこそ、延ばしたということでしょう。

        この短期のことで主要国の信頼を失ったとは思いません。この件は大した話じゃないと思います。

        私の関心はどちらかと言うと、国内にボイコット推進派が声を発している中での、岸田氏の捌き方ですかね。
        岸田氏は「人権外交をやる」と宣言していますが、そこを期待する向きには色々と疑念を抱かせるものだったと思います。

        私自身は米国の圧力とは関係なしに、5eyes-NZが揃ったあたりでさっさと宣言すれば良かったと思っています。

  • 「適切な時期を見計らって」
    この時期を、オミクロン株の市中感染が確認されたら、と仮定する。
    すると中国政府に対して、「オミクロン株を中国に持ち込んだら大変なので五輪関係の者だけ少数派遣しますね。」と言い訳が出来る。
    もしも、この命題が真ならば岸田さんは策士だな(錯乱)

  • 日本共産党がHPで日本政府に対して外交的ボイコットを求める声明を発表したのが13日でした。

    日本共産党にも得点を与えちゃいましたね。

    この後は、赤旗とかで岸田政権の判断の遅さを批判しそうですね。

    •  こんな下らない事で共産党が得点?
       またまたご冗談を。ただのポーズでしょ。

      • KY さん

        「くだらない得点」でも「得点」ですから。
        で、こんな「くだらない得点」を日本共産党に与えるのは「くだらないミス」だと受け止めてます。

  • 安部元首相と会談したというのが、事後報告というか、やっときましたよ通知だったりすると、現政権の今後にマイナスに作用するのでないですかね。永田町パワーバランス的にも、国民意識的にも。それとも凡人には理解できない斜め上の尺度が隠されているんですかね。そう疑われるようになるだけで問題と思えますが。

  • "問われて語るも烏滸がましいが問われりゃ応えてしまいやしょう"

    オミクロン株市中感染確認待ちだったスかねぇ?
    市場影響を嫌気なら今日このタイミングではなさそうだしハテ??

  • 外交ボイコットはすると決めていたが、一応中国や親中派議員のメンツをたてて、出来るだけ発表を遅らせた。というのが、普通の解釈ではないかと思いますが、なんかグダグダですね。安倍さん、菅さんの決断が早かったので余計に、モヤモヤした感情が残ります。

  •  「政府代表団の派遣を予定していない」ことだけを言っているだけで、中国での人権状況問題うんうんにはだんまりっぽいですね。

     まさか、まさかウイグルの人権状況がどんなものか知らない日本人はいないと思いますが、リンクを貼っておきましょう、

    ●私の身に起きたこと ~とある在日ウイグル人女性の証言~
    https://note.com/tomomishimizu/m/me68470f9ccfa

    ↑この人の漫画に限らず、チベットやウイグルで行われることは、昔からよく漫画にして知らせていました。ネットを使っていて、まさか、まさか知らない人はいないと思いますが。
     漫画にはなっていませんが、内モンゴル自治区の状況を小冊子にまとめた日本語版があります。こうした「人種洗浄」に日本人ならはっきりNOを言いま種。1919年、国連で「人種差別反対」の提案をした国、それが日本です。

    •  ところが、逆に財界の中には「日本は将来、中華社会の一員になって生きていくことになる」なんておっしゃる御仁がいたりします。
       自分から北京の奴隷になりたがる奇特な人種ですが、意味するところはウイグルやチベットと同じ目に遭わされるということだとは、多分分かっていないのでしょう。最近の財界人を見ていると、自社の儲けだけで世間にモノを言う輩が多くて、ゲンナリですね。

      • >宇宙戦士バルディオス様
         サラリーマン社長が経営しているのが問題なんですかね、目先の利益に左右されてしまうという。メディアなんかも「中国との貿易が大事」といった論調が危険ですよね。

         アメリカなんかも中華といろいろズブズブでどこまで反中国史てくれるかが疑問ですが。

         かつての日中戦争(正しくは中華事変?)~太平洋戦争は、騙されるからやめろというのに民間人が中華の中に入って行って、その民間人を守るために軍が中華に足を踏み込まざるを得なくなって、中華との争いに巻き込まれた、といえるのでは。つまり、戦中の体験から学んでいないかと。
         安全保障は経済の上に優先されるべきですが、どうも逆になってしまうんですよね。

    • その手の人権外交を否定するのがGHQ史観だと思われる

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