日本はモノづくり相手を韓国から台湾に切り替えるのか

10月分の貿易統計からは、台湾が日本にとって引き続き3番目の貿易相手国であることが判明しました。といっても、4番目の貿易相手国である韓国と比べると、その差は肉薄しています。ただし、もしも当ウェブサイトが考える「日本企業がモノづくりのパートナーを韓国から台湾にシフトさせている」とする仮説が正しければ、いずれ「台湾>韓国」という流れは完全に定着するかもしれません。

普通貿易統計・10月分

最近、当ウェブサイトで毎月のように確認するようになってきた統計のひとつが、『普通貿易統計』という統計データです。その理由は、日本にとっての貿易相手国の順序が、いままさに入れ替わろうとしているところだからです。

この貿易統計データは毎月公表されているものですが、今月分に関しては先週金曜日に公表されています。

さっそくですが、輸出高・輸入高と、それらをもとに著者自身が計算した貿易高(輸出高+輸入高)、貿易収支(輸出高-輸入高)を、貿易高の順に並べ替えたものを確認しておきましょう(図表1)。

図表1 相手国別の貿易状況(2021年10月)
相手国輸出高/輸入高貿易高/貿易収支
1位:中国1兆5972億円/1兆7153億円3兆3124億円/▲1181億円
2位:米国1兆3030億円/7173億円2兆0203億円/+5856億円
3位:台湾5242億円/3329億円8571億円/+1913億円
4位:韓国5069億円/2980億円8048億円/+2089億円
5位:豪州1175億円/5645億円6820億円/▲4470億円
6位:タイ3195億円/2412億円5607億円/+783億円
7位:ドイツ2134億円/1950億円4084億円/+184億円
8位:ベトナム1777億円/1749億円3526億円/+28億円
9位:香港3382億円/102億円3483億円/+3280億円
10位:インドネシア1343億円/2024億円3366億円/▲681億円
その他1兆9522億円/2兆8009億円4兆7532億円/▲8487億円
合計7兆1840億円/7兆2525億円14兆4364億円/▲685億円

(【出所】『普通貿易統計』より著者作成)

中国が1位、米国が2位、台湾が3位

輸出入ともに第1位は中国、第2位は米国ですが、後述するとおり、コロナ禍直後に落ち込んだ対米輸出高については、最近になって徐々に戻っていることが判明します。また、輸入額で見て第3位は豪州ですが、貿易額で見て第3位には台湾が、第4位には韓国が、それぞれ入ってきています。

次に、日本にとっての貿易額上位5ヵ国について、輸出入額を合計した「貿易額」の推移をグラフ化してみたものが、図表2です。

図表2 日本にとっての貿易額上位5ヵ国
図表2-1 対中貿易の状況

図表2-2 対米貿易の状況

図表2-3 対台貿易の状況

図表2-4 対韓貿易の状況

図表2-5 対豪貿易の状況

(【出所】『普通貿易統計』より著者作成)

こうやって眺めてみると、対台湾貿易を除けば、上位5ヵ国のうち、4ヵ国において、見事に同じような傾向が見て取れます。

各国との貿易の状況

対韓・対豪貿易については2018年後半ごろから、対米・対中貿易については2019年後半ごろから前年同月比で減少し始め、武漢肺炎・コロナ禍が始まったあたりからさらに大きく減少するものの、その後は持ち直している、ということです。

2018年後半から2019年といえば、「半導体不況」などと呼ばれる世界的な貿易高減少の影響が出始めた時期ですが、日本も貿易額上位5ヵ国のうち4ヵ国との貿易高が同じような傾向を示した、というのは、大変に興味深いところです。

普段から当ウェブサイトで繰り返し申し上げているとおり、日本の輸出品目の中心を占めているのは、「最終製品」ではなく、「中間財」「生産財」(つまり「モノを作るためのモノ」)であり、「世界の工場」である中国や「半導体王国」である韓国との貿易額も、中韓両国の世界への輸出高とある程度比例して増減します。

また、対豪貿易も対中貿易、対韓貿易などと同じような動きを示している点については、日本が「モノを作るためのモノ」のさらに原料を豪州などから輸入しているためである、などと考えると、スッキリと説明がつくのではないでしょうか。

そして、2020年下期以降は、コロナ禍のなかでも半導体などを中心とする製品の需要が世界的に伸びたためか、対豪輸入高、対中・対韓輸出高などの貿易高についても、前年同月比で見て大きく伸びているのが確認できるでしょう。

なお、日本の対米輸出については例外的に、「モノを作るためのモノ」ではなく、「最終製品」である自動車などの輸出が多いため、コロナ禍のさなかに大きく輸出が落ち込んでいるのが確認できるものの、その後はほぼ同額、前年同月比で貿易が伸びています。

韓国を追い抜きつつある台湾

さて、対台貿易については世界的な半導体不況やコロナ禍でも極端に輸出入が落ち込まず、むしろ今年に入って、貿易高が急増していることが確認できます。

このあたりの事情については、まだよくわかりません。ただ、ひとつの仮説としては、「韓国代替説」というものを考えても良いのではないでしょうか。

そもそも論ですが、台湾と韓国については、日本からの輸出品目を細目に分解すると、その構造がかなり似ています(図表3図表4)。

図表3 台湾に対する輸出額の品目別分解(2021年1月~10月)
品目金額構成割合
輸出額合計4兆8694億円100.00%
機械類及び輸送用機器2兆5636億円52.65%
 うち半導体等電子部品8611億円17.68%
 うち半導体等製造装置5636億円11.58%
 うち自動車2365億円4.86%
化学製品8866億円18.21%
原料別製品5827億円11.97%
雑製品3427億円7.04%
 うち科学光学機器1551億円3.19%

(【出所】『普通貿易統計』より著者作成)

図表4 韓国に対する輸出額の品目別分解(2021年1月~10月)
品目金額構成割合
輸出額合計4兆6824億円100.00%
機械類及び輸送用機器1兆8339億円39.17%
 うち半導体等製造装置4875億円10.41%
 うち半導体等電子部品2665億円5.69%
化学製品10767億円22.99%
 うち有機化合物2516億円5.37%
原料別製品7195億円15.37%
 うち鉄鋼のフラットロール製品2190億円4.68%
雑製品3630億円7.75%
 うち科学光学機器1910億円4.68%

(【出所】『普通貿易統計』より著者作成)

つまり、いずれの国も、日本からの輸出品目は、半導体製造装置や半導体等電子部品、科学光学機器など、おそらくは「モノを作るためのモノ」(半導体そのものを作るための装置、スマートフォンなどに組み込むカメラ等)といった品目が多いのです。

このことから、日本企業が「モノづくりのパートナー」として、台湾企業を選び始めているのではないか、といった仮説が成り立ちます。

貿易高「台湾>韓国」基調は定着するのか

そして、ここ数ヵ月、当ウェブサイトで興味深く眺めているのが、わが国と台湾・韓国との輸出高、輸入高、貿易高です。というのも、最近、台湾と韓国の「逆転」が続いているからです(図表5)。

図表5 対台湾・対韓国の貿易高等の状況

(【出所】『普通貿易統計』より著者作成)

これで見ると、日本にとっては輸出、輸入、貿易総額すべての面において、数年前までは韓国の方が重要でしたが、ここ数ヵ月に関していえば、輸出、輸入、貿易総額のすべての面において、むしろ台湾が韓国を上回ることが増えているのです。

ただし、「台湾>韓国」という基調が定着したと断言するには、まだ少し早いかもしれません。

とくに輸出高においては、台湾と韓国は依然として肉薄しており、まさに「抜きつ、抜かれつ」という状況が継続しているからです。

ただ、過去からのトレンドで見れば、日本にとって貿易に占める台湾の相対的な重要性が増していることは間違いないと考えて良いでしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

外務省が刊行する『令和3年版外交青書』の55ページ目には、台湾について、こんな表現が出て来ます。

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」。

この点、台湾は公式には「国」ではないとされているため、外務省の表現も台湾を「国」扱いしないよう、慎重に記載されていますが、近年、日本の産業界も徐々に台湾との交流を拡大していることは、統計的なデータからも裏付けが取れた格好です。

さらに、最近は台湾の大手半導体メーカー・TSMCが熊本に半導体工場を新設する、といった話題もありました。

TSMCとソニーが熊本に半導体工場 設備投資8000億円、雇用1500人

―――2021/11/10 18:35付 西日本新聞より

設備投資額、新規雇用もさることながら、日台両国の産業、経済的な結びつきがさらに強まり、また、半導体供給の安定という国家的課題にも合致する、大変に良い話題でしょう。

外務省が「基本的価値を共有する友人であり、パートナー」と位置付ける台湾との関係がさらに深まることを含め、日台関係の今後については、さまざまな期待が持てそうだと思う次第です。

読者コメント一覧

  1. 門外漢 より:

    台湾も韓国も日本も、資材を輸入して製品を売って稼いでるという構造は同じです。と言うより台韓が日本をモデルにして来たと言えるかも知れません。
    今までは台韓の人件費が安かったので、日本とは補完的な相手として意味があったと思いますが、今や日本の方が人件費だけでなく諸物価が安くなったと言われてます。
    更に台韓には地政学的リスクがあります。日本も安全とは言えませんがまだマシでしょう。ならば台韓への投資でなく、国内回帰を目指して欲しいものです。
    但し国内だけでは完結しないでしょうから補完先は必要ですが、それはTPPやクアッドという枠組みで考えるべきなんでしょうね。
    中国は市場を抱えてると言う点で、台韓とは事情が異なりますから別扱いですかね。

    1. マスオ より:

      門外漢様、まったく同感です。

      円安傾向、海外依存による安全保障の問題、また岸田総理がすすめる(と思われる)低賃金化の受け皿としての、外国人の移民の受け入れ、等々勘案すれば、生産拠点の国内回帰が正解だと私も思います。
      低賃金産業は淘汰されて、高給払って日本人雇えるような改革をするのがいいと思います!

  2. 理系初老 より:

    韓国と台湾と日本の関係ということで、ここでは貿易ではなくコロナについて述べさせてください。「なぜ韓国はコロナ陽性者と重症者数が日本と台湾に比べて酷いのか」の理由がわかりました。韓国の主張は、「日本が嘘をついている」から最近は「アストラセネガが悪い」となっているようですが、台湾を見ればそれも即ウソだとばれます。
    勿論私見ですが、「韓国は、ワクチン保管や運用についての解説説明を理解できずに守れなかった」ことが主原因ではないでしょうか。嘘をつくことや他人のせいにするといった性向も理由の一つですが、主因は、「漢字がないため読解力が低い」ためであり、「日本と台湾が抑え込んでいる」ことがその証左ではないでしょうか。
    貿易だけでなく人の行き来についても、韓国に対しては台湾に対する場合の百倍は管理を厳しくすべきです。

  3. イーシャ より:

    2020年3月10日の第8回輸出管理政策対話を最後に、韓国との政策対話は行われていません(韓国による WTO 提訴も影響しているのでしょう)。
    すでに1年8ヶ月も行われていないわけです。
    そんな状況で、「り地域」を優遇したグループBに留めておいてよいのでしょうか?
    そろそろ、普通の国としてグループCに落とし、台湾と韓国が同じ土俵で競争するようにして欲しいものです。
    すでに「り地域」を他とは違う扱いにする枠組みはできているので、変更は容易なはずです。
    2年が過ぎる最後の日、2022年3月9日の朝に変更を発表するのも一興かもしれません。
    韓国大統領選挙と同日に発表すれば、韓国人が発狂して、用日派ではなく明確な反日を掲げる候補を選ぶよう助長できるからです。

    1. だんな より:

      イーシャさま
      大統領選挙の当日より、その前の方が効果的だと思います。
      また、その前に現金化して自爆制裁になるかもしれません。

      1. イーシャ より:

        だんな 様
        韓国人の熱しやすく冷めやすい鍋根性を勘案すると、最適なのは一週間くらい前でしょうか。

        1. だんな より:

          イーシャさま
          反日は、冷めないでしょう。
          以前書きましたが、「韓国人が投票日に実害が分からないタイミング」が一番だと妄想してます。

        2. はにわファクトリー より:

          TSMCは高雄に半導体製造工場設立を発表しました。アリゾナ、熊本、高雄の3新工場の操業開始がそろって2024年に設定されています。高雄には南方交易の重要拠点として船舶修理から派生した機械産業・金属産業の下地がありますが、TSMC新工場は旧帝國海軍の油廠跡地に作られます。左営駅のそばです。オフィスを構えるなら楠梓加工出口区になるでしょう。高雄メトロ紅線で中心市街までほんの数駅、そのまま乗って行けば高雄空港です。川崎横浜神戸戸畑の立地特性に似た状況ですかね。

          1. はにわファクトリー より:

            (挿入位置を間違えました …)

          2. はにわファクトリー より:

            誤爆ながらもうひとつこちらの記事もどうぞ。産業経済動向に敏感でありたい方々におすすめの情報です。

            Taiwan Today 2021-1-15
            https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=148,149,150,151,152&post=192681

  4. だんな より:

    現在の日台関係と日韓関係を比較すれば、台湾との関係が強まるトレンドでしょう。
    将来日本のサプライチェーンに、韓国が含まれるかどうかも分かりません。
    それはさておき、台湾有事のリスクが、一番問題だと思います。

  5. お世話なおばちゃん より:

    アストラゼネカ水ワクチン説。が強くなってきました。
    それも韓国製だから。
    そういえばベトナム他に韓国から送られたアストラゼネカワクチンの効果はどうなったのでしょうか?
    日本へ関係はありませんが気になりますねえ

  6. だんな より:

    韓国の輸出入企業93%が「日韓の協業は必ず必要」…関係改善については「悲観的」
    https://s.wowkorea.jp/news/read/324902/
    日韓の協業が必要なのは韓国で、日本では有りません。
    朝鮮脳は、「日本が韓国に対して貿易黒字だから、日本は韓国を切る事は出来ない」と考えています。

    1. はにわファクトリー より:

      「日本国は、不愉快な隣人とは距離をおき、友誼を温めるパートナーとして台湾を選択した。その証のひとつがワクチンを贈与である」

  7. 羊山羊 より:

    今回のtsmcの熊本進出に関して特筆すべきはソニー(日本政府も?)が出資することです。米国、中国いずれの工場もtsmc単独出資なので史上初となります。それだけ日本を信頼しているとも受け取れますが、やはり政治的要因(TPP、グループA格上げ等)があると思います。
    日本の技術が盗まれるとトンチンカンな心配する人もいましたが、同じ事をtsmcも考えてたかもで製造プロセスは数年前の旧世代22-28nm。しかし、悲しい事にその世代すら対応できるプロセスエンジニアが日本にはおらず、隔世の感すらあります。

  8. ちょろんぼ より:

    台湾が大陸派を何とかしないと、中共に取り込まれてしまいそう。
    地政学的リスクと大陸派の二つの問題が大きすぎて。
    救いがあるのは、南国が謝罪と賠償を求めてくる(何の?)のに対し、それが無いだけですね。
    地理的にはロシアの沿海州辺りが何とかなれば、再開発して何とかなるのですが
    又は樺太とか。 相手がロシアだし、COCOMが再開されそうな時だし、日本の回りに
    まともな自由主義国が欲しい。 後は諦めて豪かニュージーランドか?
    途中の東南アジアの比重はそのままですね。

  9. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    日本はウィズコリア政策からノーコリアに舵を切っている

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