鈴置論考「韓国はもはや、日米欧とは価値観が異なる」

大変うれしいことに、優れた韓国観察者である鈴置高史氏の最新論考が、ウェブ評論サイト『デイリー新潮』に掲載されていました。今回の論考では、韓国で進行している「言論仲裁法改正案」を巡り、鈴置氏が事実上の「メディア懲罰法」だと指摘します。そして、単なる民主主義の後退という事象ではなく、そもそも韓国が「日本や欧米とはもはや、価値観が異なる」国であることに起因する構造的なものだと考えるべきでしょう。

日本外交の変化

「日米韓」から「日米豪印」へ

週末の『近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた』で報告したとおり、菅義偉政権下で日本外交の「基軸」が「近隣国重視外交」から「価値重視外交」に転換し、その総仕上げとして、菅総理は退任間際であるにも関わらず、日米豪印「クアッド」首脳会合に参加して来ました。

この変化、私たちの国・日本にとっていかなる影響をもたらすのでしょうか。

あくまでも私見ですが、現時点においてただちに「目に見えた影響」というものが出て来るということはありません。

日本にとっては経済的に見て、中国や韓国は引き続き主要な貿易相手国であり続けるでしょうし、安全保障面でも、おそらく日米両国政府は「北朝鮮問題などにおいて日米韓3ヵ国連携は重要だ」と引き続き唱え続けるでしょう。

というのも、日米豪印「クアッド」は、現時点において何らかの条約機構の発足を伴っているわけではありませんし、だいいち、この「クアッド」枠組みへの参加国を増やすなどの構想自体、現時点ではとくに見当たりません。

もっとも、この「クアッド」自体の目的は、「自由で開かれたインド太平洋」、すなわち英語でいうところの “Free and Open Indo-Pacific” (FOIP)の実現にあります。そして、このFOIP自体にコミットしている国・関心を示している国としては、カナダ、英国などがあります。

つまり、FOIP自体は「自由、民主主義、法の支配、人権尊重」などの基本的価値を共有していると宣言する国であれば、どんな「国」であっても参加可能であるはずです。極端な話、中国が「一体不可分の領土である」と騙る台湾ですら、このFOIP構想に参加する資格があると思うのです。

FOIPを無視する韓国メディア

ただ、こうしたなかで、いくつかのメディアの報道を眺めていると、「クアッド」、「クアッド」としきりに強調するわりに、その裏付けとなっている重要な概念である「FOIP」についてはほとんど言及がありません。

ことに、昨日の『FOIPの用語をかたくなに無視する韓国メディアの謎』でも申し上げたとおり、隣国・韓国のメディアの報道を眺めていると、このFOIPという用語が報じられることがほとんどありません。

それどころか、ケースによっては「インド太平洋戦略」( “Indo-Pacific Strategy” 、略して「IPS」)など、ちょっと他では聞いたことがないような呼称を勝手にでっち上げている事例もあります(『文在寅氏訪日に冷淡な日本、米大統領夫人には「歓迎」』、『噴飯物:「文在寅氏歓迎しクアッド・プラスに入れよ」』等参照)。

なぜ韓国でこのFOIPがまったく報じられないのか。

なぜ韓国で、ときとしてIPSのような見慣れない用語が勝手に報じられるのか。

その理由は、よくわかりません。

もちろん、韓国政府自身がFOIPの用語を使わない理由については、「中国を刺激することを避けるためだ」、などのという理屈で説明がつかないわけではありません。

しかし、韓国のメディアが、べつに検閲を受けているわけでもないくせに、頑なにFOIPの用語を避けるのは、いったいどうしたことなのでしょうか。

  • FOIP自体が日本発祥の用語だから、使いたくない」。
  • 本当のところは、自分たちの国が自由・民主主義の国ではないと認識しているから」。
  • たんに不勉強だから」。

仮説は、いろいろと成り立つと思います。

しかし、一部メディアが「IPS」などの用語を捏造しているという事実を踏まえるならば、「韓国メディアが単なる不勉強のためにFOIPという用語を知らない」という説は排除できます。

やはり、個人的には韓国が、自分たちの国が実際には「自由・民主主義国」でもなく「近代法治国家」でもない(かもしれない)、と気付いている証拠ではないかと思えるのです。

最新鈴置論考

「メディア懲罰法」を通じて韓国の民主主義を見る鈴置氏

こうしたなか、優れた韓国観察者として、当ウェブサイトでもしばしばその論考を引用させていただいているのが、鈴置高史氏です。大変うれしいことに、本日も最新論考がウェブ評論サイト『デイリー新潮』に掲載されていました。

韓国に民主主義が根付かないのはなぜか 儒教説、傲慢説、米国離れ説も

韓国の与党がメディアを懲罰する法の導入を図る。何人もの犠牲者を出してようやく民主化した国が、34年後の今になって「独裁時代」に戻るのはなぜか――。韓国観察者の鈴置高史氏が考える。<<…続きを読む>>
―――2021/09/27付 デイリー新潮より

ウェブページ換算で4ページに分割され、トータルで6000文字を少し超える文章ですが、正直、すべての日本国民に読んでいただきたいと思ってしまう論考です。

私たちの国・日本では、韓国についてよく知らない人ほど、「韓国は日本と同レベルの自由・民主主義国だ」、などと考えているフシがありますが、鈴置氏はいつもの「豊富な証拠付き」で、こうした考え方が幻想であることを示しているのです。

今回の話題は、2005年に成立した「言論仲裁法」(正式名称は「言論仲裁および被害救済等に関する法律」)を、韓国の政権与党「ともに民主党」が改訂しようと躍起になっている、というものです。

恣意的にメディアを潰すことが可能に?

鈴置氏によると、この法律は、もともとは「虚偽報道による被害者を救済するため」のものでしたが、今回の改定では「損害額の5倍を超えない罰金を(メディアに)科す」との条文を新たに設けることが主眼となっているのだとか。

  • 『損害額』の認定次第で、天文学的な罰金も可能になります」。
  • 『虚偽報道』の定義も不明確なうえ、報道被害と認定するのは文化体育観光部という省庁の傘下にある言論委員会です。改定案が通れば、メディアは手がすくんで暴露記事などを載せにくくなります。政府のメディア支配は一気に強まるでしょう」。

なんだか、恐ろしい話ですね。

要するに、恣意的に「この報道は虚偽だ」と認定する権限を政府・政権が手にすることで、メディアの権力批判を事実上、封殺してしまおうというのが、この条項の意味です。

もちろん、日本でも「ワクチン接種が遅れた」という虚偽報道で菅義偉総理大臣を貶めるメディアが多いですが、こうした虚偽報道に罰則はありません。

個人的には、メディアに対する何らかの社会的懲罰は必要だとは思いますが、やはり公的な組織がメディアによる虚報を認定し、罰則を適用するというのは、「権力とメディア」の関係上、なかなか難しいのが実情でもあります。

実際、鈴置氏もこの条項を事実上の「メディア懲罰法」と位置付けたうえで、こう指摘します。

いわゆる西側の先進国で、こんな“メディア懲罰法”を持つ国はありません。そこで国際社会も驚き、こぞって非難しているのです」。

では、こうした批判は韓国に届くのでしょうか。

東亜日報からハンギョレ新聞が生まれた

鈴置氏の論考、毎回結構な分量ですが、豊富な実例、証拠などが揃えられているためか、文章の運びがうまいためか、読者はその文章量の負担をほとんど感じることがほとんどありません。

そればかりか、あれだけの長文にもかかわらず、読み終わったあとで「もっと読みたい」、「物足りない」と感じる人が多いというのも、鈴置論考の特徴なのですが、その特徴があますところなく示されているのが、1974年の「東亜日報白紙広告事件」以降の記述でしょう。

朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代の1974年から翌年にかけて『東亜日報白紙広告事件』が起きました。政権に批判的な東亜日報に広告を出さないよう、政府が企業に圧力をかけたのです」。

鈴置氏によると、この事件は朴正煕(ぼく・せいき)政権時代に発生したもので、東亜日報は結局、反政府的な記者らを大量解雇することで政権と手打ちにしたところ、解雇された記者らが1987年6月の民主化以降、創刊したのが『ハンギョレ新聞』だ、というのです。

この事実は、存じ上げませんでした。

しかも、鈴置氏によると、驚いたことに与党の「メディア懲罰法」には、普段は文在寅(ぶん・ざいいん)政権の「御用新聞」などと揶揄されているハンギョレ新聞ですら、反対しているというのです。

鈴置氏はこれを「言論弾圧に抵抗した遺伝子が残っているのでしょう」と指摘しますが、こうした物事の背景を丹念に掘り起こした説明は、物事の本質を理解するうえで大変に有益です。

なぜか反対しない一般国民

では、その「メディア懲罰法」、実際のところはどうなのでしょうか。

鈴置氏はこの法案自体、8月19日に委員会で強行採決され、野党の必死の抵抗で本会議への上程は阻止されたとしつつも、9月27日、つまり本日以降の与野党の攻防により成立するかどうかがかかっていると指摘します。

ただ、ここで気になるのは、野党側が本当にこの「メディア懲罰法」に反対しているのかどうか、そして肝心の韓国国民自身がこれについてどう考えているのか、という点でしょう。

実際、メディアに対する統制を強めるのは、ときの政権にとって都合が良いものですし、共産党一党独裁国家である中国を筆頭に、独裁的・強権的な国ではメディアが政権の意向に背く内容を報じることは難しいのが実情です。

言い換えれば、保守側としても、自分たちが政権を握る機会が生じれば、これらの法律を利用して自分たちの権力維持に使用することができる(かもしれない)と感じるかもしれません。

これについて鈴置氏は、こう述べます。

――“メディア懲罰法”が成立したとして、保守が政権を取れば廃止するのでしょうか?

鈴置:法案は存続するだろう、と見る韓国人が多い。権力を握った側にとって、メディアの批判を無言のうちに抑え込める、こんなに便利な法律はないからです」。

このあたり、自由・民主主義がいかに脆弱な仕組みであるか、権力を持つ側が権力の乱用をいかに自制しなければならないか、という証拠でもあります。自由・民主主義は社会に根付くまで大変な時間と労力が必要ですが、壊れるのはあっという間なのです。

その証拠に、韓国の一般国民の間でも、この法律に対する反発は生じているフシはありません。

鈴置:それが、まったく起きていないのです。それどころか、世論調査を見ると『言論仲裁法の改定に賛成』と『反対』はほぼ半々。敢えて言えば『やや賛成の方が多い』調査結果が目立ちます」。

その理由のひとつは、韓国人の「メディア不信」にあります。

つまり日本のネットスラングでいう「マスゴミ」に相当する「キレギ」、すなわち韓国語の「記者(キジャ)」に「ゴミ(スレギ)」を足した表現がネット上で定着し、「『キレギ』を憎む人々は、いい加減なことを書き散らすメディアは天文学的な罰金で懲らしめてやればいい、と考える」のだとか。

ただ、それだけで、韓国がみずから言論の自由を捨て去ろうとしていることの説明が付きません。

この点について、鈴置氏はこう述べます。

鈴置:確かに、成熟した民主主義の最大の長所は、法治を通じた『社会の安定性』です。政権が変わっても前の政治指導者は監獄に放り込まれないし、自分の名誉や地位が突然に侵されることもない――。しかし、こうした『安定性』は民主化後の韓国にもたらされなかった。そのため『安定性』を保障する、司法の中立や報道の自由がいかに重要かに韓国人は気付かないのだと思います」。

すなわち、みもふたもない言い方ですが、そもそも1987年の「民主化」が本当の民主化だったのか、「首を傾げる」というのが鈴置氏の指摘なのです。

台湾vs韓国

そんな鈴置論考では、最近、欧米の韓国専門家の間でも「韓国の民主主義の崩壊」が話題になっている、と指摘されます。あるいは、「同じ日本の植民地だった台湾の民主主義が着実に進化しているのに、韓国で後退するのはなぜか」、という論点でもあります。

ただ、残念ながら、この議論には結論は出ていません。

鈴置氏はこの疑念に対し、いくつかの仮説を提示します。たとえば、こんな具合です。

『傲慢・謙虚説』というのもあります。韓国人は『高度の民主化を実現した』と信じ込み、外の世界に広がる成熟した民主主義の存在に気付きもしない。一方、台湾は謙虚に自らを見つめ、民主主義の成熟に努めている、との分析です」。

そのほかにも、「儒教説」や「米国離れ説」など、いくつかの仮説が示されていて、どれも説得力があります。

もっとも、現在進行形の事象をきちんと説明するのは困難ですし、「本当のところ」については後世の歴史家の分析などにも委ねられるべき部分でもあります。

それよりも、私たちが気を付けなければならないのは、「自由・民主主義」に「進化」したとする認識が、もしかしたら誤っているのかもしれない、という点ではないでしょうか。

そういえば、個人的には南米の産油国・ベネズエラが親米から反米に舵を切り、経済が崩壊したという「ベネズエラ化」という論点には大変に興味を感じているのですが、その「ベネズエラ化」を最初に指摘した論者が、ほかならぬ鈴置氏です(『改めて思い出したい「韓国のベネズエラ化」という議論』等参照)。

つまり、いったん「自由・民主主義国」に「進化した」と思っていた国が、それと真逆の方向に歩み始めるという事例は、世界的には決して少なくないのです。

こうしたなか、鈴置論考では、「従中」、すなわち「中国につき従うこと」が加速すれば、それだけ西欧型の成熟した民主主義から韓国が離れていく可能性が示唆されています。

ここで出て来るのがクアッド(QUAD)でしょう。

日米豪印の人々が、事実上の対中包囲網、QUADを構成した心情と比べると明らかです。『中国のような反民主的な国が世界を主導するようになっては大変だ』というのが4カ国のコンセンサスです」。

だからこそ、クアッドの「構成原理」であるFOIPが世界に広まることが重要だ、ということでしょう。

そして、韓国がクアッドにもFOIPにも頑なに参加しないのは、いったいなぜなのか。

次の鈴置氏の指摘には、目から鱗が落ちる経験ができます。

  • 韓国人が西欧型の民主主義を目指しているのなら、QUADに躊躇なく参加しているはずです。中国から圧力があろうと、自分の価値観を守るために必要なコストだからです」。
  • 日本と異なり、韓国が『離米従中』するのは地理的にも歴史的にも中国と近いという地政学的な原因に留まらない。『日本や欧米とはもはや、価値観が異なる』ことにも起因するのです」。

まったくそのとおりでしょう。

鈴置氏は、「今後、韓国の民主主義が後退するほどに、中国への傾斜も増す」と予言。

そのうえで、「我々は韓国の民主主義の行方をじっくりと観察する必要がある」と指摘するのですが、まったく同意します。

いずれにせよ、価値外交の重要性を認識しない者が次の日本の首相になってはなりません。

著者自身は少なくとも、日本が生きていくべき道は、自由・民主主義社会である、と信じている次第です。

日本企業の台湾シフトは?

さて、「余談」です。

当ウェブサイトで最近、とみに注目しているデータのひとつが、財務省税関が作成する『普通貿易統計』です。

台湾が韓国を抜き「3番目の貿易相手」に浮上した意味』などでも触れたとおり、このところ、日本の貿易相手国としては、台湾の相対的な重要性が高まっており、とくに日本の輸出相手国としては、台湾が韓国を上回ることが増えて来ました。

8月分の普通貿易統計のデータは9月29日に公表されるそうですが、その最新状況がどうなっているかについては、引き続き注視していくつもりです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. しおん より:

    韓国に民主主義がいまだ根付かないのは、歴史にあると思います。

    何百年もの間、大国に虐げられて「他人を蹴落としたものが偉い=蟲毒の国」になってしまったのだと推測されます。

    ちょど日本が、何百年も内乱も他国による理不尽な支配もなくて「名を惜しむ」という共通認識ができたのと正反対だと思います。

    何百年もかけて形成された、蟲毒による生き残りの虫は、50年や100年でいなくなるものではないと思います。

    敵であっても、死者を供養する日本とは逆に敵であったものは、墓からでも引きずり出してはずかしめを与える事が勝者の当然の行為とされている国とでは、わかりあえる日は当分来ないと思います。

  2. はにわファクトリー より:

    台湾島は米中間の天秤を妄想することはなかったという指摘にハタと膝を打ちました。
    stand firm(おのれの足でしっかり立つ)今の彼らのスタンスはこれなんですね。

    過日第5回目のワクチン供与がありましたが、日本国の決定=国家意思を全世界に知らしめた転換点は2021年6月だったと永く記憶されることになるでしょう。

  3. だんな より:

    雑談部屋に書いときましたが、

    >韓国に民主主義が根付かないのはなぜか
    答は、「対等平等の概念が無く、差別を好む民族性だから」です

    「韓国はもはや、日米欧とは価値観が異なる」
    についても、同じ答から導かれています。
    やっと「日韓は、価値観が違う」が、世間に出て来た感じですかね。
    この先の結論は、「この価値観の乖離は拡大し、関係が希薄になる」です。

    1. パーヨクのエ作員 より:

      だんな様

      上記ご意見に同意します。
      対等平等の観念が民主主義だけでなく主権国家成立の絶対的条件が本来の姿であると考えます。

      そして対等平等の観念を彼らが一秒でも社会基板にするコンセンサスとして持っていたかどうかの観点については

      鈴置氏>日本や欧米とは「もはや」、価値観が異なる

      見方よりもこのサイトの多数のコメント主様達の観点のほうが、ずっと秀逸と思うのです。

      以上です。駄文失礼しました。

    2. より:

      まあ、ここでもさんざん議論してきたことですよね。
      表面的には民主主義であるかのようなシステムを取っていながら、内実としては全く機能していないという国など珍しくもありません。アメリカ人はとてもナイーブなので、投票箱さえ置いてあれば民主主義が実現したかのように思い込んでいるようですが、そんなものはただの錯覚です。旧ソ連にだってちゃんと選挙はあり、投票率だって毎回90%超えていましたし、中国や北朝鮮でも毎回驚異の投票率を誇示しています。西欧式民主主義は単に投票箱を据えただけでは実現しないし、機能もしません。それだけでは、結局のところ、「仏作って魂入れず」にしかならないのです。

      日本は、まあまあ民主主義が機能しているほうの国だと思いますが、西欧諸国と価値観が100%共通しているかと言えば、けしてそんなことはありません。正確を期すのであれば、「法治主義や言論の自由など、西欧式民主主義を機能させるために重要な価値観の多くを共有できている」とすべきでしょう。実際問題、日本的価値観による行動様式、例えば「水に流す」などは、そのまま持って行ってもまず理解してもらえません。よく言われるように、日本の常識は「世界」の常識とイコールではありません。
      その一方で、日本と韓国との間で共通する価値観が全く無いかというと、おそらくそんなことはないでしょう。ただ、韓国的価値観が西欧式民主主義を機能させるために重要な価値観とは相反する部分が多く、結果として日本的価値観のほとんどとも大きく相反することになっているのではないかと考えます。
      問題は、昨今ようやく日本ではそのような価値観の相違に関する認識が広まりつつあるのに対し、韓国側には全くその自覚がないという点にあります。ここ数年、韓国が日本とばかりではなく、他の多くの国と外交的摩擦を引き起こしているのも、韓国が自らの「特殊性」に全く自覚がない事に拠ります。アメリカのような超大国であれば、自らの特殊な価値観を押し付けようとすることも可能ですが(それでしばしば失敗してはいますが)、韓国程度の国では却って反感を買うだけです。

      結局のところ、日韓関係も、韓国側が自らの価値観・世界観だけが正しいとする姿勢を改めない限り、疎遠化が進む一方になるでしょう。いずれは、若干の経済的関係とささやかな民間交流だけが残されるということになりそうです。

  4. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    でも、日本マスコミもFOIPと言ってないじゃん

  5. ちょろんぼ より:

    米国は何度も失敗していますが、国が「民主化」できるかどうかは、その国次第です。
    他国から指示・援助等を与えれば、「民主化」するなんて傲慢です。
    国により独裁(王制)・民主制の国に必ず分かれます。(一時的に共和制)
    南国は日本がいなくなったので教育水準が低下し(漢字廃止及び日本文化の廃棄)、
    独裁化(過去の王制)に戻るはずでしたが、米国の指示により民主政治の衣を
    被っていただけです。(漢字は他国の概念を自国の概念に変更・取り込む時に重要です。 
    漢字があれば、中共や日本で欧米等の思想を咀嚼し、漢字化してくれるからです。)
    共産主義が資本主義の次の段階に位置するスバラシイ事だといわれても
    共産主義になれる国となれない国があるのと似ています。
    共産主義国の多くを見れば、教育が行き渡っていない国と判断する事ができます。
    日本が第二次大戦後、シベリア抑留者でロシアに共産主義を叩き込まれた者とか
    満州引上げ者の一部・教育関係からの人達が、ロシア・中共でやったように村から
    都市へ共産主義を広めようとしましたが、ロシア・中共と異なり日本の村人は教育を
    受けていた為、共産主義の啓蒙に失敗しました。(当時ロシア・中共の農民は殆ど教育を
    受けておりませんでした。 教育をうけた事のある者は、日本で言えば庄屋等村役
    だけです。)

  6. だんな より:

    朝鮮日報から
    IAEA「核を放棄せよ」…金与正氏、韓国に「核保有国であることを認めよ」
    https://news.yahoo.co.jp/articles/44abfbf400d02e082f399897df039266b8565a57
    国連で文大統領が「終戦宣言」に言及した事で、金与正氏から「南北首脳会談をしてやっても良いニダ」的な「お褒めの言葉」を頂いています。
    欧米の価値観では「核放棄せよ」ですが、北朝鮮が南北首脳会談の条件として「北朝鮮の核保有を問題視するな」と要求した時に、文政権(韓国の左派、進歩系)が、大統領選挙向けの成果として要求を受け入れる可能性が有る様に思います。
    表立って国連制裁決議違反とならない言い訳が、出てくるでしょうが、韓国の北朝鮮に対する非核化要求がより一層後退するように思います。
    こうやって独特の価値観により、欧米との関係も希薄化するんじゃ無いかな。
    南北朝鮮を区別するのは、そろそろお終いにしましょう。

  7. ミネソタの減量中 より:

    多分こういうことはあまり言わない方がいいのでしょうが、ヴァイマール共和制が引っ繰り返ってナチスが台頭したのは米国が信頼に値しなかったからなのでして、民主制の大前提には独立独歩を原則として組む相手を間違えないということが常にあります。会計士さん、そろそろK国などという塵芥を離れて来たるべき新秩序を語るべきなのではないでしょうか。
    個人的なことを言わせていただくと、ビリー・ジョエルの人類への貢献は「ピアノ・マン』と「飛ばなきゃ飛行機じゃない」という指摘だと思います。我々の置かれている環境はいつも哀しい、いつもくわえ煙草のピアノ・マンを必要とする場所で、そろそろそこから飛び立たない限り日本は本来あるべき姿にはなれないのだと。

  8. TDa より:

    シンシアリーブログや呉善花さんなど半島にルーツを持っている方の著作を見ていると、
    K国は民主主義を発展させようと思っていなくて、現代の両班=ヤンバン(李氏朝鮮時代の官僚。支配層)になろうという精神構造だと思いますね。
    両班になったら我が世の春を貪り、以前の支配層を貶める。
    日本併合時に中間層を分厚くしたことで、みんなが両班であったという幻想にしがみついてるのでしょうね。

  9. j より:

    お疲れさまです。

    私も鈴置さんがおっしゃっる、中国や北朝鮮が世界を主導するようになっては大変だ、という意見に賛成です。

    価値観の分かれる第一歩が、言論の自由、報道の自由だとおもいます。

    野田候補が、韓国と日本は運命共同体、と言ってたのは勉強になりました。マスコミの記者は、ぜひ今でもそう思ってるか聞いて欲しい。

  10. 奥の細道 より:

    結局のところ、朝鮮半島の人々にはpublicなる観念がないのでしょうな。残念ながらそのような観念を持つことが出来なかったと判断せざるを得ません。何をやるにせよ、詰まるところは私益追及のみであり(それは表面的な民主主義を装う韓国にしても、或いは独裁政権下の北鮮でも同じこと)、これをcoatingする為にもっともらしい装飾をかぶせてくる。反日にしても政治家や公務員の連中が自己の私的利益を拡大する為の手段であって、国という極めて歴史的なpubulicなるものをどのように構築し、国としてのpresenceを確保し、繁栄させていくのかという事は全く考慮外。従って、自由なり法の支配なりという価値観などは根付くはずもないのです。

  11. WindKnight.jp より:

    台湾に関しては、日帝が平定した後、国民党が来たことが大きいでしょう。
    他、他国に統治を認めてもらうのに、議会制民主主義を敷くのは、
    一番、手っ取り早い方法だと思います。
    ここらへんは、シンガポールもそうですが、小国としての生存戦略だと思いますね。

    韓国は・・・自身が新興国家である自覚が無いんだよなぁ・・・。

  12. ふもうのち より:

    文明には早過ぎた:報道・表現の自由がなく法治が機能しない疑似民主主義国家

  13. 豆鉄砲 より:

    アメリカが台湾を国として認めたなら、台湾が輸出管理のAグループに入るのも近いかも知れませんね。その時の韓国の反応が楽しみです

  14. クロワッサン より:

    >8月20日「共に民主党」の宋永吉(ソン・ヨンギル)代表は「国民の力」に向かって「一生、野党だけするつもりか」と言い放ちました。「政府・与党になれば実に使い勝手のいい法律だから、賛成したらどうか」と持ちかけたのです。

    此処の部分、『不正が許せないのではなく、不正利得を得られないのが許せない』の価値観なのではないかと。

    公正な社会を追求せず、不公正な社会を維持しつつ不正利得を狙う、そんな社会はいつまで経っても文明社会になれないでしょうね。

  15. はぐれ鳥 より:

    半島には縁故が無いので、以下は単なる思い付きです。

    韓国が民主主義となじまないのは、思想とか価値観と言うよりも、社会構造的なものに起因するような気がします。つまり韓国社会の構造が、未だに「治める者」と「治められる者」とに分離しており、それらが上下の関係になっているからではないでしょうか?つまり韓国の国民意識は、まだ全国民誰もが平等との意識(民主主義の基礎)に辿りついていないのでしょう。そのことは、以下のような韓国社会の特徴という形で表面化しているようにも思います。

    ◎権威主義:日常においては「治める者」から「治められる者」への上意下達の一方通行。
    ◎デモ文化:「治められる者」が「治める者」に物申すためには、言論では勝てない。法も「治める者」有利にできている。よって、実力(暴力、示威行動他の実力行使)で反抗するしかない。
    ◎民主主義に逆行すると思われる施策に一般国民が反対しない:これら施策は、所詮「治める者」同士の争い。「治められる者」にとっては、どちらが勝っても負けても関係ない。むしろ、有名政治家、メディアなど日頃威張っている「治める者」が痛い目に遭うのを見るのが痛快。
    ◎反日:「治める者」にとっては「治められる者」の不満を逸らすのに利用できる。「治められる者」にとっては日頃の鬱屈や不満を発散できる。ということで、双方にとって利益があり一致協力できる唯一の課題。
    ※他にも多々あるでしょう。

  16. 簿記3級 より:

    マズローの五段階欲求で考えると第一段階目の生理的欲求が資本主義の格差が進行し過ぎ左派に是正してもらう他、ご飯を食べる手立てがなく実現できていないのかなと思います。

    ゆえに民主主義がなくなり言論の自由や身体の安全の欲求が保てなくなくなったとしても、職と食べる生きることがまずは第一なのかなと思います。

    それでも膨れ上がった韓国の承認欲求がどこに向かうのか、また韓国人にとっての真の自己実現は何なのか気になります。

    まぁノーベル賞をくれないとミサイルを打ち込むぞとかBTSのCDを買わないと軍事侵攻するぞ、などと言い出す、自己実現でないことだけ祈っています。

  17. 五十路メガネ(ワクチン1回目) より:

    結局は上下関係を確認したいんですね。
    「自分が上」っていう。
    両班になるとして、一体誰にかしずいてもらう気なんでしょう?
    他の国を従わせる事などできないのに…

  18. 甲乙人 より:

    韓国に限らず、元々磐石な小金持ち層がいない国で民主主義は育たないのでは。
    イギリスでも王に法遵守を求めた小金持ち層(貴族とか)がマグナカルタ作ったわけで。

    鈴置先生推薦の本でも、フェアなスポーツの様な関係が政敵同士で成り立たないと民主主義は難しいと書いてました。
    紳士のスポーツを成立させるには襟を正す紳士層が要るのでしょう。

    中間層の歴史がある国はヨーロッパと日本しかないとブローデルが書いてた記憶が。
    そういう意味ではシンガポールとかも実は結構怪しいのでしょう。

  19. 匿名2 より:

    わたしも鈴置さんのYou tube動画をよく見ます。鈴置さんの語りは、政治経済の専門家的な性急な感じでなく、何か竹越与三郎や内藤湖南といった有名な歴史学者の論考スタイルみたいなゆったり、含蓄のある感じが好きです。

  20. 新大久保彦左衛門 より:

    私見ですが、韓国が特殊なのは『異なった価値観を持っているから』では無く、『劣化版朱子学に基づいた幼稚な現状認識能力とテンプレ式思考様式を持っているから』では無いでしょうか? 

    『価値観』以前の問題です。

    コンピューターに例えると「価値観=環境変数」、「思考様式=アルゴリズム」ですな。

    件のレーダー照射事件に関する韓国民と国家としての反応をリアルタイムで目の当たりにして仮説が確信に進化しました。

    結局のところ韓国の場合はアルゴリズムと言うプログラミング自体が狂っているので、日本にとってはある程度の外交的操縦は出来ても、長期的、根本的な信頼関係は築けないし、その構築さえ無理してまで試みるべきではありません。

    1. 酔狂 より:

       一言でまとめると、ヒ〇モ〇キですね(笑)
       最初にこの言葉を思いついた人は、凄いなぁ。

  21. ホワイト国 より:

    https://news.yahoo.co.jp/articles/a24172492c08b8b6c664ada4e4cadcbfd2481d30
    【ソウル聯合ニュース】韓国の外交部は27日、オーストリア・ウィーンで開かれた国際原子力機関(IAEA)理事会で次期議長国に韓国が全会一致で選出されたと明らかにした。韓国が核兵器の拡散防止や原子力の平和的な利用に取り組むIAEA理事会の議長を務めるのは1957年に加盟してから初めて。

     韓国は今月から来年9月までの1年間、議長国を務める。

     日米欧とは価値観が異なる韓国が、国際原子力機関(IAEA)の議長国を
    務めることになりました。嫌な予感しかしません。
     
    東京電力福島第1原子力発電所の処理済み汚染水問題への影響が心配です。
    とんでもない屁理屈で、大騒ぎをして、IAEAを混乱させるのではないでしょうか。

     とにかく、日米欧とは価値観や常識が異なる異常な民族に、国際機関の議長を
    させてはいけません。

      

  22. 匿名 より:

    >「日韓は利益や価値観を共有する。だから手を携えよう」と考える日本人がいまだにいます。

    「いまだに」にワロタw

  23. 名無しの権兵衛 より:

     「民主主義の服」を着ている韓国も、「共産主義の服」を着ている北朝鮮も、本質は同じだということだと思います。
     経済力を高め国力に自信を持った韓国は、これまで口うるさく関与してきた親(米国や日本)の干渉から晴れて自由になり、「これからは、自分自身の心に忠実に生きて行くのだ」ということで、結局は、北朝鮮の政治体制にどんどん近づいていくと思います。「どの国よりも中国を最も恐れる」ということも南北同じままだと思います。
     ただし、「民主主義の服」は、国際社会で生きていく上でまだまだ利用価値が高いので、当分の間、脱ぎ捨てることはしないでしょうけど。

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