民放テレビ局の経営悪化なら、NHKも困ったことに?

先日の『「実質債務超過」も疑われる、某新聞社の決算公告画像』などの「補足」です。今期決算の状況は苦しいものの、それでもとくに大手の新聞社やテレビ局の経営にはまだまだ、経営上の体力があります。しかし、ごく近いうちにこうした「体力」が少しずつ失われていく可能性はありそうですし、そうなった場合、果たしてNHKは現在のままでいられるのでしょうか?

大手メディアの先行き

先日より、当ウェブサイトでは、マスメディア、ことに大手新聞と大手テレビ局の苦境について、取り上げることが増えています。

たとえば、在京テレビ局の減収減益という話題は『コロナ禍でのテレビ局経営:在京5局はすべて減収減益』で、大手全国紙のなかでは詳細な決算を公表している株式会社朝日新聞社についての最新決算については『株式会社朝日新聞社の決算:一過性要因とその他の要因』で、それぞれ取り上げました。

あらためてこれらの話題を振り返り、気付くのは、ある企業が存在するかどうかを決めるのは、その会社自体が業界の中でどういう位置づけにあるのか、というファクターと、その業界自体がどこに行こうとしているのか、というファクターである、という点です。

前者は、たとえば新聞業界のなかでは株式会社朝日新聞が、テレビ業界のなかでは株式会社フジ・メディア・ホールディングスが、それぞれ業界内ではかなりの力を持っています。

しかし、新聞業界やテレビ業界が先細りとなっていけば、いくらこれらの会社が業界でシェアを占めていたとしても、その事業自体が立ち行かなくなるというリスクからは、逃れようがありません。

やはり大手が盤石と見られる理由

こうしたなか、意外に思われるかもしれませんが、個人的に、在京テレビ局(の親会社)や株式会社朝日新聞社、株式会社日本経済新聞社、株式会社読売新聞グループ本社などは、まだまだ「潰れない」と考えています。

そう考える理由は2つあります。

1つ目は「高コスト体質」、2つ目は「優良資産」です。

このうちマスメディアの「高コスト体質」については、今まで取材経費や番組制作費などを湯水のように使い、それでも採算が取れてきた、という意味でもあります。今後、マスメディア各社の収益が厳しくなるなかでも、取材経費や番組制作費などを絞れば、まだしばらくは利益を捻出し続けることができます。

また、「優良資産」については、たとえば新聞社・テレビ局の社屋や土地などの不動産を開発すれば、テナントの賃料収入なども期待できます(株式会社TBSホールディングスや株式会社朝日新聞社、株式会社フジ・メディア・ホールディングスなどがこのパターンでしょう)。

さらに進退窮まれば、これらの優良不動産を少しずつ「切り売り」する、という手段も残されています(※ただし、これは最後の手段かもしれませんが)。

新聞社とテレビ局の事例

実際、在京民放各局の決算を確認してみると、コロナ禍によりCM収入が落ち込んだためか、どの社も減収・減益ではありましたが、少なくとも「赤字決算」ではありませんでした。おそらく番組制作費や販管費などを大幅に削ったことで、何とか黒字にしたのでしょう。

株式会社朝日新聞社の場合、2021年3月期には営業赤字に陥ってしまいましたが、これは販管費などの圧縮が間に合わなかったためと思われますし、実際、同社は優良不動産物件などを大量に保有し、財政状態は極めて良好でもあります。

(なお、株式会社日本経済新聞社や株式会社読売新聞本社については詳細な決算を公表していないため、「経営に余裕がある」というのは、あくまでも株式会社朝日新聞社の事例から類推した仮説に過ぎません。ご留意ください。)

このため、新聞社やテレビ局のなかでも、大手に関しては、現時点ではまだまだ余裕があると見て良いでしょう(もっとも、あと数年から10数年という単位で見れば、それも怪しくなるかもしれませんが…)。

某社さん、大丈夫ですか?

しかし、こうした余裕がなかった場合には、いったいどうなってしまうのでしょうか。

昨日の『「実質債務超過」も疑われる、某新聞社の決算公告画像』では、とあるツイッター投稿画像をもとに、有名な某新聞社の事例を取り上げました。

あらためて振り返っておくと、次のとおり、なかなか新鮮で衝撃的です。

  • 数期連続して営業赤字が続いている
  • 総資産は1402億1400万円だが、自己資本にあたる「純資産の部」が42億2500万円と、宗さんに比べて3%少々しかなく、その半額に相当する21億6600万円は「土地再評価差額金」である(※株主資本は11億7100万円に過ぎない)
  • 同社は「純資産の部」に計上された42億2500万円を上回る66億6100万円という巨額の繰延税金資産を計上しているが、その資産性を検討した形跡は見られない
  • 2020年3月末時点で資本金は41億5000万円だが、29億78百万円の欠損金を抱えており、また、一部報道によれば同社は今年、中小企業としての特例を受けるのに加え、欠損金の解消などを図るために、1億円への減資を実施した

なんだか、これも大変な話ですね。

今後の隠れた焦点は「NHK」

さて、現時点における新聞・テレビ業界は、テレビ局は軒並み減収・減益ではあるものの、現時点では経費節減などで「何とかなっている」のに加え、大手新聞社も似たような状況にあるであろうと想像がつきます。

ただ、だからといって、やはり新聞社やテレビ局のなかには、「どうして自分たちはこんなに苦労するのか」と思う人もいるでしょう。

そんな人たちから見れば、NHKはどう映るのでしょうか?

当然、「経営努力」ではなく「放送法の規定」で守られているNHKは、こういうときに強みを発揮します。社会にテレビがある限り、放っておいても視聴者がおカネを貢いでくれるのですから、笑いが止まらない、というわけでしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ただ、そのNHKにしたって、やはり安心できない材料が少しずつ出てきました。敢えて偏見も交えて申し上げるならば、それは、「国民が賢くなったこと」、だと思います。

いうまでもなく、NHKはテレビを設置したすべての世帯から、なかば強制的に受信料をかき集めていますが、その一方で先日の『「平日に少しでもテレビを見る」若年層は半数に留まる』では、「若年層を中心にテレビを見るという習慣が消滅している」という話題も取り上げました。

また、同業他社の人たちからも、「放っておくだけで受信料収入が入って来る」というNHKのビジネスモデル自体に拒絶反応を示すようになるのかもしれません。そうなるのが楽し心配で心配でならない、というのが偽らざる感想なのです。

読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    ATMの3番目の会社は、特に非常事態です。アソコは「コロナ禍は政府に責任ある」とか「菅政権では駄目だ」「モリカケ」「サクラ」、、なんてでっち上げを言ってる場合じゃない。お宅の方がコロナより酷い。先に全員路頭に迷うことになるのに(笑)。

    さてアソコは今、何で凌いでいるか?ズバリSGの機関紙を刷って貰い糊口を凌いでいる。そら政治面でも自紙でSG系党の悪口書けんわな(嘲笑)。あの印刷代金が無くなれば、イチコロでしょう。

  2. だんな より:

    >宗さんに比べて3%少々しかなく

    どこの宗さんか気になって気になって。

    1. 裏縦貫線 より:

      瀬古さんはお呼びでないですね。

  3. 引きこもり中年 より:

     毎度、馬鹿馬鹿しいお話しを。
     NHKが、税金を投入しないと朝の連ドラが続けられないと、言い出したんだって。
     おあとがよろしくないようで。

    1. カズ より:

      NHK国営化に伴っての税金投入なら大賛成なのです。
      但し受信料無料化・人件費削減とのセットなのです。

  4. へちまはたわしのみに非ず より:

    先日の記事で紹介のあった若年層のテレビ離れについて、NHKが滅ぶまでの残り時間を考えてみました。

    平日に少しでもテレビを見る」若年層は半数に留まる
    https://shinjukuacc.com/20210521-03/

    2020年調査での平日にテレビ及びインターネット動画を視聴する人の年代・性別の割合は下表の通りです。記事紹介の通り30代男性、20代女性以下の年代のテレビ視聴は半数程度となっており、男女とも概ね30歳代以下はインターネット動画視聴が増えつつある状況がわかります。

       テレビ  インターネット動画
    年代 男 女  男 女
    10  54 50  48 37
    20  49 52  44 43
    30  51 72  34 30
    40  60 77  29 23
    50  83 83  16 15
    60  95 94  12 09
    70  95 96  06 06

    ※上表の数値は平日のみ(但し、土日も傾向は変わらず)
    ※数値は見た人のパーセンテージ、費やした時間でないことに留意

    NHK:国民生活時間調査 2020年 全員平均時間量 男女年層別
    https://www.nhk.or.jp/bunken/yoron-jikan/

    もし、年齢とともにテレビ視聴率が上がると仮説をおけば、数年先も状況は変わりません。
    しかし、2010年の同調査との比較は下表のとおりです。そのまま並べてもつまらないので、2010年の10代を2020年の20代と並べ、その年代の推移を示すようにしています。

       2010   2020   差
    年代 男 女  男 女  男  女
    10  82 83  49 52  -33 -31
    20  78 78  51 72  -27 -06
    30  80 86  60 77  -20 -09
    40  86 92  83 83  -03 -09
    50  93 93  95 94  +02 +01
    60  93 96  95 96  +02 +-0
    70  98 95  ー ー  ー  ー

    現在の20代は10年前8割がテレビを視聴していたところ、10年を経て3割ほど減少したことがわかります。この傾向は程度の差はあれ現在の40代まで続いています。
    従って、年齢とともに視聴率が上がるという仮説は否定されることになり、おそらくは年を経るごとにテレビ視聴率は下がり、それはおよそ現在の30歳代以降でより顕著になると予想できます。

    詰まるところ、テレビはオワコン。
    NHKが滅ぶ限界点を予想してみると、半数ほどしか平日にテレビ視聴しない現在の30代が50歳に至る頃、あと20年ほどではないかと考えます。
    その頃にはほぼ全員がテレビ視聴する現在の50代も80歳、全年齢層の視聴率を押し上げる層を喪えば流石に存続もかなわなくなるものと期待する次第です。

    1. りょうちん より:

      NHKの収益構造の基本である、TV受像機の寿命がキーだと思います。
      スマホからは、すっかりTV受信機能が無くなりましたが、不満を持っている人はほとんどいません。
      同様に、TVも電波方式より、overIP式だけでいいやとなったときに、NHKはPCやスマホにまで課金しようとするでしょうが、それを国民が許すかどうか。

  5. 福岡在住者 より:

    日本放送協会(NHK)は放送法による「特殊法人」だそうです。

    この特殊法人はWikipediaによると、運営上は、法人税や固定資産税などの納税が免除されるそうです。 また、「大きな特典を有している反面、事業計画には国会の承認が必要となること、不採算事業からの撤退が簡単には出来ない点など、国や政治家の意向に大きく左右される点も有する。」とありますが、過去に国や政治家の意向に大きく左右されたことは無かったと思います。
    法改正して一定以上の資産(資金)は、国もしくは国民に返納して頂きたいですね。

    また、税金対策で中小企業に鞍替えしたマスコミ関連企業は、総理の記者会見での質問枠もそれなりに縮小されないといけませんね。 フリーランス枠くらいに。

  6. ぬくぬく@移民反対 より:

    新聞もテレビも完全に構造不況ですが、景気が良くなれば朝日新聞グループ、読売新聞グループ、日経新聞グループ、フジサンケイグループは余命が延びるでしょうに(例の新聞以外ですね)、何で緊縮財政を主張するのかわからないですね。本気で緊縮財政が正しいと考えているのでしょうか。

  7. 匿名 より:

    2021.3.24のダイヤモンドの記事ですが、毎日新聞は本社ビルを手放して210億円を借り入れると書いています。本社ビルにはまだ210億円相当の含み益があったということなんでしょうか? この210億円がなくなったらアウトなんでしょう。

    >毎日新聞社が大阪市にある自社ビルなどを信託銀行に譲渡し、210億円を借り入れることが分かった。販売部数の減少に歯止めが掛からない毎日新聞は、社員の早期退職などのリストラを進めてきたが、虎の子だった不動産も手放さざるを得なくなった。

    どの程度信用できるか知りませんが、IR Bankのウェブでは借入金等の返済予定額が記載されており、3年以内に約200億円の返済が予定されているようです。 昨年度は大赤字は間違いなく、赤字は今後も続くとすれば210億円を借り入れても3年以内に資金ショートするんじゃないでしょうか?

    > 借入金等の返済予定額
    1年以内 2億7000万
    2年以内 132億8800万
    3年以内 65億3100万
    4年以内 96億2100万
    5年以内 51億2400万

    1. 匿名 より:

      借入金の返済予定額は古い情報でした。IR Bankの情報は無視してください。

  8. わんわん より:

     NHKは総務省とセットで改革しないとなかなか進まなのではないかと思います

    コチラ ちょっと面白い
    東洋経済https://toyokeizai.net/articles/-/430927?display=b

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。